2015年4月30日木曜日

熊本一規氏『電力改革と脱原発』を読む ー(その2)原子力村を優遇する法体系の問題点ー原賠法と機構法

講演(学習会)のお知らせ(先着定員40名)
お申し込みはメールで。che.kawasaki@gmail.com
★内容:原発問題の真相を知る=原発をエネルギー源にする根本的な過ち、原子力村を優遇する法体系の問題点ー原賠法と機構法
★講師:熊本一規(明治学院大学 国際学部教員) 環境問題、ごみ問題、共同体の権利(漁業権、水利権等)、埋立問題等, 実践と学問の立場から現実に関わることをモットーとされる研究者。
現在、上関原発を止めてきた法的根拠を辺野古でも活用できないかを検討するため沖縄に滞在中です。
★日時:5月9日(土)15-18時
★場所:水道橋・御茶ノ水、YMCAアジア青少年センター3階
参考文献:『電力改革と脱原発』(熊本一規著、緑風出版)
参考資料:熊本一規氏『電力改革と脱原発』を読むー
(その1)原発をベースロード電源にする誤り
    http://oklos-che.blogspot.jp/2015/04/blog-post_24.html
(その2)原子力村を優遇する法体系の問題点ー原賠法と機構法
    http://oklos-che.blogspot.jp/2015/04/blog-post_30.html
主催:原発メーカー訴訟の会、NPO法人NNAA

熊本一規氏『電力改革と脱原発』を読む
ー(その2)原子力村を優遇する法体系の問題点ー原賠法と機構法
熊本さんは第3章「電力システム改革は脱原発を促進する」のところで、「責任集中の原則」の原賠法(原子力損害賠償法)と「相互扶助の仕組み」である機構法(原子力損害賠償支援機構法)が矛盾することを説明されています。地域独占の現電力会社の電力システムを改革することで、市民運動として原発をなくしていくという熊本さんの考え方がそこに表されています。

原発事故の損害賠償に関して制定された法律が、「責任集中の原則」を謳う原賠法(原子力損害賠償法)です(1961年)。ここには三つの原則が示されています。
1.無過失責任の原則(故意・過失を問わず原子力事業者が賠償責任を負う)
2.無限責任の原則(賠償責任の限度額を問わない)
3.責任集中の原則(原子力の事故による損害賠償は原子力事業者のみが負い、それ以外の(メーカーであっても)賠償責任は負わない)
東電は会社更生法を申請するか、原賠法16条に基づく国の支援を要請するかの選択しかなく、当然のごとく、2011年5月に国に資金援助を要請し、それによって制定されたのが、原子力損害賠償支援機構法(機構法)なのです。この機構法に基づき「原子力損害賠償支援機構」2011年9月に制定されました。資本金は140億円(そのうち国は70億、電力9社・日本電源・日本源燃・電源開発の12社で70億円)で、発足時に国から5兆円、2013年12月の20日の閣議決定で交付国債が4兆円追加され、計9兆円になっています(113ページ)。
しかもこの機構は、2014年8月より、損害賠償支援業務の他に福島第一原発の廃炉支援業務を行うように変更しました。除染・廃炉・損害賠償に要する費用は最低20兆、最大250兆円と見込まれているそうです。
この機構の果たす役割については熊本さんの本に詳しく説明されていますので、一読ください。一言でいえば、原賠法で東電1社の責任であり、東電で足りない分は政府が国会決議で支援するとなっていたものを、機構を「介在させることで、東電の返済義務を免除する」仕組みを作ったということです。機構は国に交付された国債分を返済しなければならないのですが、東電は返済しなくてもいいのです!業者は電気料金、国は税金でまかないます!
私がこの章で一番気になった箇所は以下の点です。原発建設を通して一番利益にあずかってきた東電の「利害関係者」はどうなっているのか、という点です。機構法附則6条2項はこうなっています。
早期に、事故原因の検証、賠償実施の状況、経済金融情勢などを踏まえ、東京電力と政府・他の電力会社のと政府・他の電力会社との間の負担のあり方、東京電力の株主その他の利害関係者の負担のあり方等を含め、法律の施行状況について検討を加え、その結果に基づき必要な措置を講じる」

熊本さんはこのように書かれています。「今日に至るまで、一切見直しは行われておらず、原子力村の負担はゼロのままである。
要するに、機構法に基づく仕組みは、「原子力村の救済」を至上命令とした仕組みであり、そのツケが電気料金や税金を通じてこ国民に押し付けられているのである。」
単刀直入にこの「その他の利害関係者」に福島事故をおこしたGE、日立、東芝ははいっているのでしょうか?そうすると、政府自ら、「責任集中の原則」を謳った原賠法にもかかわらず、機構法でその他の利害関係者の負担のあり方等を含め、法律の施行状況について検討を加え、その結果に基づき必要な措置を講じる」としながら何もしてこなかった、政府の不作為の責任があるということにならないのでしょうか。わたしにとって、「責任集中の原則」の原賠法(原子力損害賠償法)と「相互扶助の仕組み」である機構法(原子力損害賠償支援機構法)が矛盾しているという指摘にとどめず、その政府の不作為をなんとかしたい気持ちです。
私たちは、その原発メーカーを相手にして彼らに責任があるという裁判をはじめました(現発メーカー訴訟 http://maker-sosho.main.jp/)。熊本さんのご指摘を受け、この機構法に触れ、私たちの訴訟の中で「利害関係者」の責任問題を取り上げることはできないか、検討したいと思います。多くの方のご意見をお願いします。

6月13日(土)は大阪で、元国会議員の吉井英勝さんの講演会(学習会)をもちます。吉井さんは、このような回答を武藤官房審査官から引き出しています。「一九五八年の(日米原子力)協定、それから六八年の協定、これにはいわゆる米側を免責する規定がございました。ただ、八八年の協定にはそのような規定はございません。」即ち、1988年以降の日米原子力協定によって、GEに事故の責任を問うことができる、賠償金を求めることができる、PL法は適応できる、ということです。
吉井英勝さんの講演(学習会)の日程です。
6月13日(土)午後2時より、大阪南YMCAにて講演会(学習会)
この講演内容はネットで情報発信されますので、海外や大阪以外のところでお住まいの方も是非、ご参加ください。

要するに、熊本さんの指摘された機構法と原賠法の矛盾した内容、及び吉井さんが国会で引き出された、日米原子力協定に基づくGEの事故の責任の追求を具体的に原発メーカー訴訟の場で、そして運動の場でやれないのかということなのです。





1 件のコメント:

  1. トルコから久美子の手紙2015年7月6日 1:28

    機構法附則6条2項

    「早期に、事故原因の検証、賠償実施の状況、経済金融情勢などを踏まえ、東京電力と政府・他の電力会社のと政府・他の電力会社との間の負担のあり方、東京電力の株主その他の利害関係者の負担のあり方等を含め、法律の施行状況について検討を加え、その結果に基づき必要な措置を講じる」

    機構法で「その他の利害関係者の負担のあり方等を含め、法律の施行状況について検討を加え、その結果に基づき必要な措置を講じる」と。 しかし、政府は何もしていない。

    政府の不作為の責任について、「責任集中の原則」の原賠法(原子力損害賠償法)と「相互扶助の仕組み」である機構法(原子力損害賠償支援機構法)が矛盾している。政府の不作為についての追及に対して私は賛同する。
    更に、一市民として、政府にも、原発メーカーにも、更に、電気料金の値上げ、更に、国の税金の使用に関し、その他の利害関係者の負担のあり方について、何もしてこなかった市民の一人一人に対して、自分を含めて、8月28日に行われる原発メーカーに対する訴訟裁判では、的確な追及をともどもに行っていきたい。私たち市民一人一人が、熊本一規氏『電力改革と脱原発』の本を読み、学び、弁護士に任せることなく、頼ることなく、8月28日原発メーカー訴訟裁判立ち向かう必要があると思う。弁護団の代理人が、原告の代弁ができず、更なる、訴訟裁判に対する的確な代弁の訴訟もせず、勉強と追及ができない中で、裁判を行うことは、結果を見ずとも明らかである。           

    更に、私たち市民が団結して訴訟裁判に立ち向かう必要があると思う。原発メーカーに対する訴訟裁判だけでなく、戦後70年になる時、市民運動から、このような裁判に持ち込むことは大きな、意義があると私は思う。歴史に残る訴訟裁判になると思う。一部の日本人のなかにある、責任追及の曖昧さを、大きく変える裁判となることを強く期待する。

    ドイツのメルケル首相が、あのベルリンの壁の崩壊について、語った言葉に、『変革を求める市民の勇気がなければ、ベルリンの壁が崩壊することがなかった』と…ドイツ政府がやったのではないと。 

    原発メーカー訴訟裁判は、私たち市民が勇気をもって声を上げたことにより、始まったのではないだろうか?そして、日立闘争を勝ち取った、朴さん、崔さんを中心に、原告市民が、推し進めて、今日を迎えたのではないだろうか?いよいよ裁判を目前にして、一層の知恵と団結で、朴事務局長を中心に、調査、研究、勉強を深め裁判に臨まれることを期待する。私たち市民も、裁判に向けて、人任せにするのではなく、一層の勉強を深めていく決意をしているのは、私一人ではないと思う。熊本一規氏の著書『電力改革と脱原発』を紹介してくださり、感謝です。小出裕章先生の本と共に、私の参考資料となると思う。

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