2018年6月3日日曜日

「餅一つあげれば捕えて食べないだと?」韓国の金民雄教授の論説


          日朝韓ジョイント討論・講演会

朝鮮半島情勢の変容と日米歴史責任の所在
  東アジア平和構築の前提とは何か?
講演者:金民雄(キム・ミヌン)韓国慶熈大学教授 &  纐纈厚(こうけ       つ・あつし)明治大学特任教授 
日時:2018616日(土) 午後12時開場 午後13時~午後17
場所:明治大学 リバティ・タワー1032号室 <御茶ノ水校舎>
参加費:無料
6月12日にシンガポールでようやく米朝首脳会談の実現が決定したようですが、その首脳会談の結果から何を読み取るのか、特に今後の朝鮮半島の緊張緩和およびアジアの平和建設における日米の責任は何なのか、歴史と現実を踏まえて、しっかりと検証したいと私たちは、「日朝韓ジョイント討論・講演会」を企画しました。
今回、韓国のインターネット週刊誌プレシオンに投稿され、今回の集会の講演者である金民雄教授の2018年5月17日の投稿文をご紹介いたします。
餅一つあげれば捕えて食べないだと?
[金民雄の人文精神] 米国の北朝鮮体制戦略を阻止しなければ
                                         2018年5月17日 

                                   金民雄 慶熈大学校 教授
     


韓半島の平和の脅威、原因提供者アメリカ

すでに日付と場所まで決められたた北朝鮮と米国の首脳会談が不安定な状態を露出している。南北高位級会談が、北朝鮮の対米(対米)非難と対南(対南)不満表明にキャンセルされ、北朝鮮と米国の間の会談も不透明になる恐れが生じた。原因は、当然、米国の対北朝鮮敵対的軍事行動にある。

軍事力中心の圧迫政策を掲げるネオコン勢力であるジョン・ボルトン ホワイトハウス国家安保補佐官は一方的な武装解除モデルである、リビアを取り上げながら、対北圧迫を連日最大化している。対北朝鮮対話窓口の確保に努めて​​きたマイク・ポムペオ国務長官とは全く異なる姿勢を見せているのだ。異なるふりをしながらシナリオを組んで動く、いわゆる「悪党警察(bad cop)」と「優しい警察(good cop)」の役割を分担している状況である。

「リビアモデル」発言が問題になると、ホワイトハウスは「トランプモデル」を掲げ早急に進化したが、まだそれに伴う発言と行動はない。そのうえ普段より攻勢強度を高めた韓米軍事合同訓練である「マックスサンダー(Max Thunder)」は4.27南北首脳会談の成果を正面から脅かしている。

板門店宣言は、誰が違反したのだろうか?

米国の対北朝鮮軍事圧迫戦略を防げず、かえって合同訓練という方法で働かせた韓国政府の責任も論議を避けることができなくなった。南北首脳間での相互合意の約束を破ったのだ。今まさに実務合意をすることにした瞬間に、なぜこのようになったのだろうか。一切の敵対行為をしないことにした過去4.27板門店宣言の基本精神と実践意志が重大な岐路に立たされた。

北朝鮮の立場では、虎が山奥を超えていた母親に「餅一つあげればと捕まえて食べることはない」としておいて、結局最終的にすべて奪い剥い殺してしまった、私たちの民話を思い浮かべるしかない状況だ。ところが、統一部は北朝鮮の南北高位級会談キャンセルの通知について」427日両首脳が合意した「板門店宣言」の根本的な精神趣旨に適合していないことは残念だ」と明らかにした。これはなんという話なのか。

圧迫すると、手がかかる?

<ニューヨークタイムズ>は、北米首脳会談が実現されない可能性があるという北朝鮮の発表を「脅威(threat)」と表現しながら、会談を提案したのは北朝鮮であるため、ホワイトハウス側は実現されていなくても、惜しむことはないと報じた。もしそうなった場合、アメリカは北朝鮮に対して「極大化された圧迫(maximum pressure)」を継続して加えると付け加えた。

こうなると、来る2325日に予定さ北朝鮮豊渓里(プンギェリ)核実験場公開廃棄も不確実になる。また、廃棄したとしても、その意味が矮小化される可能性がある。すでに米国中央情報局(CIA)などは、北朝鮮が核実験場の廃棄後も、いつでも核実験能力を回復することができていると北の核実験場の廃棄決定の意味を剥ぎ取っている。会談の日程が近づくほど対北圧迫強度がさらに高まることを予想している時期だ。

南北首脳会談に先立ってある日刊紙に寄稿した文の一部を再び注目してみる。

「非核化の議論は、北朝鮮の全面武装解除を意味せず、米国の軍事的圧迫の存続と維持を意味もない。(中略)米国が平和協定に積極性を見もせず関係正常化のビジョンは出さないまま、北朝鮮の武装解除を一方的に図ったり、核先制攻撃戦略を維持し続ける姿勢を取ったまま交渉に臨むならば、結果はより厳しいものになるだろう。(中略)北の非核化に劣らず、米国の対北朝鮮敵対政策の全面撤廃が重要になる"425日付の「ハンギョレ> '[なぜなら]南北が一緒に北 - 米関係正常化の橋を作ろう」の中)

米国は今、これらの懸念通りに行動しているところだ。

戦争国家アメリカの本質は、「パックス・ロマーナ」(ローマの平和)
(注:ラテン語で Pax Romana という。前27年、ローマ帝国のアウグストゥスの即位から、後180年の五賢帝時代の終わりまでの200年間、地中海世界に大きな戦争がなかく、ローマの支配権のもと平和が実現された。地中海世界は、前5世紀のペルシア戦争とペロポネソス戦争、前4世紀のアレクサンドロスの戦争、イタリア半島統一戦争、前3世紀のポエニ戦争、前2世紀のマケドニア戦争、前1世紀の「内乱の1世紀」とその終わりのアクティウムの海戦まで、常に戦争が絶えなかったが、ローマの派遣によって地中海は「ローマの内海」と化したことをいう。パックス=ロマーナはラテン語で「ローマの平和」の意味。「世界史の窓」より)

米国がキューバとフィリピンを武力征服した1898年以来、帝国主義政策を折リ畳んだことは一度もない。米国の対外政策史の分野の権威者であるロイドガードナー(Lloyd Gardner)は、彼の本<帝国アメリカ(Imperial America>で、これらの歴史を正確に認識しなければならないと強調している。米国の軍事主義体制を集中解剖したリチャード・バーネット(Richard Barnet)もやはり「戦争の根(Roots of War)」を通して、米国政府の武力を通じた帝国拡大戦略を暴いたことがある。事実、戦争国家としての米国の本質は、米国の研究をしてきた人には一つの常識である。

このような米国を相手に「平和外交」をしようとするということは絶対に簡単ではない。平和は彼らに相手を屈服させ、自分を中心とする秩序を確立することを意味するローマの平和、すなわち「パクス・ロマーナ(Pas Romana)」である。でなければ、平和は彼らに戦争を通じて利益を創出する「安全保障国家 - 大企業同盟体制(National Security State Corporate Complex)」への脅威を意味する。ポール・ニッツは1950年に作成した冷戦戦略の指針書である国家安全保障文書「NSC-68」も、このような同盟体制の所産であった。したがって、相手を完全に武装解除させてこれにより国の解体に至る道を確保することができれば、米国はそれを選択する可能性が常に高い。これが弱小国に対する帝国の外交政策である。

米国の政治学者マイケル・ペリネッチ(Michael Parneti)は「国家殺害(To Kill a Nation>という本を通して、民間人虐殺はもちろん、政治と経済体制を全部米国のニーズに合わせて解体してしまった1992年ボスニア戦争の過程を告発している。以降、イラク、リビアにこの方法がそのまま続いたのはもちろんである。国際問題調査報道に優れた能力を示すジャーナリストのウィリアムブルーム(William Blum)やジョン・ピルジョ(John Pilger)などが明確に規定したように、「不良国家(rogue state)」は、他でもない、米国である。平和を破壊する最強の軍事力を永遠に独占しようとする国、米国は今、パレスチナ人に対するイスラエルの国家暴力を擁護している唯一の国である。

北朝鮮の一方的に武装解除、降伏文書調印なのか?

米国は北朝鮮を一方的に武装解除することができる状況へとごり押しするか、、それとも会談が不可能だという口実を作っていないか疑わしい。そうでない場合、平和協定と外交関係樹立を介して相互に軍事的敵対体制を完全に清算する構想を出さなければならないのに、全くそのようにしていない。非核化の対価を民間投資を可能にという方式の、自分たちのための市場確保の戦略を打ち出しているだけだ。外交関係の正常化は取り上げてさえしていない。降伏文書に調印すると、その後、必要な措置を取ってくれるだろうというやり方である。どのような主権国家がこれを受け入れることができるのか。

これを解くための手段が非常に限られたムン・ジェイン政府は立場が困難であろう。しかし、ムン・ジェイン政府は板門店宣言を名分に、韓米軍事合同訓練マックスサンダー実施を北朝鮮と米国の首脳会談の後に検討するか、戦略資産武器まで含まれている方式は、避けなければならなかった。北朝鮮の懐疑心を買うのに十分な状況を招いたわけだ。上手く行っていた流れに痛恨の一撃だ。だからといって大勢に支障がないように移るのではなく、深く推し量り振り返らなければならない。

マックスサンダーが「毎年のことで防御的」という釈明したが、相手が北朝鮮という韓米同盟の基本を注目すると、このような姿勢は、説得力がない。敵対行為概念に基づいた軍事訓練でないのであれば、当初からそのような訓練をやる理由が存在しない。

一切の敵対行為は停止が答え

方法は一つしかない。断固として板門店宣言の原則に戻らなければならない。 いきなり襲いかかって相手をひざまずかせる帝国の戦略は、危険危険千万だ。一切の敵対行為を停止することにしたら、停止しなければならない。

「南と北は地上と海上、空中をはじめとするすべての空間で軍事的緊張と衝突のもととなる、相手側に一切の敵対行為を全面停止することにした。 」板門店宣言21の条項である。誤解の余地のない明確な内容であり、文章である。

韓米合同軍事訓練は、私たちがする理由がないとするとできないものである。同盟の一方側が受けない合同訓練はない。これを実行できないのであれば、韓国は主権国家ではないことを告白するのと同然だ。北朝鮮の非核化措置に並列的に配置されている、米国の対北朝鮮敵対政策の終了、そこに答えを見つければすむのだ。

敵対関係消滅ではなく、平和というものがありうるのだろうか?米国が北朝鮮解体戦略をもくろんだ瞬間、私たちに災いである。

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