5月30日の朝日新聞から北朝鮮に関する3つの記事を選びました。私は毎朝、時間をかけて、基本的にはすべての記事に目を通します。そしてその中でいくつか、しっかりと読むべき記事を選んで後で精読するようにしています。今日の朝日新聞の社説では安倍政権に対する厳しい、正当な批判をしていることも確認しました。まさにリベラルな新聞の評判にふさわしい社説です。
1つ目の記事は、多くの日本のマスコミが北朝鮮の実現や歴史的背景を説明せず、一方的に危険な国と報道する中で、北朝鮮のアメリカへの要求を記したものです。十分とは言えませんが、重要な視点です。
北朝鮮側は実務協議の中で、トランプ政権がこれまで「イランとの核合意や、地球温暖化対策の国際ルールであるパリ協定、及び環太平洋経済連携協定(TPP)から次々と離脱した事実を指摘。米朝首脳会談で非核化をめぐる合意が実現しても、後で合意を守らない事態を懸念しているという。」
また北朝鮮は、「抑留していた米国人3人の解放や咸鏡北道豊渓里の核実験場撃破などを通じ、ます「非核化への意思」を示したと主張。米側はそれに見合った対応はしていないと訴え、「トランプ政権を信頼できる証拠」を示してほしいと求めているという」。朝日の記者がどこでこの情報を入手したのか、入手源は当然、記していないが、この内容を読むとまさに会議に参加した当事者から直接聞いたような印象を受けます。
北朝鮮側は実務協議の中で、トランプ政権がこれまで「イランとの核合意や、地球温暖化対策の国際ルールであるパリ協定、及び環太平洋経済連携協定(TPP)から次々と離脱した事実を指摘。米朝首脳会談で非核化をめぐる合意が実現しても、後で合意を守らない事態を懸念しているという。」
また北朝鮮は、「抑留していた米国人3人の解放や咸鏡北道豊渓里の核実験場撃破などを通じ、ます「非核化への意思」を示したと主張。米側はそれに見合った対応はしていないと訴え、「トランプ政権を信頼できる証拠」を示してほしいと求めているという」。朝日の記者がどこでこの情報を入手したのか、入手源は当然、記していないが、この内容を読むとまさに会議に参加した当事者から直接聞いたような印象を受けます。
2番目は、「動く朝鮮半島」の連載記事で、北朝鮮と非核化交渉をした元米国務次官補の「クリストファー・ヒル氏に聞く」です。比較的に温厚で現政権のスタッフでなく、ある意味、アメリカ側の意思を客観的に伝える、北朝鮮の専門家としての意見だと思います。
氏は北朝鮮の核兵器とミサイルは北が主張するように体制存続のための自己防御でなく、北が「世界の大国の地位」を得ることと、統一に有利な状況を作るために米国を日韓から分離させるためと主張します。そして結論は、北の核放棄の検証が保証されるかどうかが重要だと言うのです。トランプには批判的なコメントをしますが皮肉の域を出ず、私は所詮、米国の元官僚と読みました。
3番目は、朝日の主張である論壇時評の「明日を探る」での、北海道大学の遠藤乾教授の「北朝鮮の攻撃意図を減らせ」という長文です。安倍の党首会談での姿勢に厳しい批判をした朝日新聞が、北朝鮮に関してはステレオタイプな北朝鮮像に乗っかり、一方的な、日本のナショナリズムを前提にした北朝鮮を「敵性国家」として危険視する意見を載せているのはフェアーではありません。
遠藤氏は、「核とミサイルは、日本にとって脅威だ。独裁のもとにある敵性国家が直接的な攻撃能力を持つことは不安全そのものだ。」という立場から、北朝鮮の攻撃意図を減らすことを提案します。
遠藤氏は、「核とミサイルは、日本にとって脅威だ。独裁のもとにある敵性国家が直接的な攻撃能力を持つことは不安全そのものだ。」という立場から、北朝鮮の攻撃意図を減らすことを提案します。
氏は「非核化に向けた具体的行為」の内容は示さず、そういうものが「あれば」、「象徴的な独自性制裁から緩和や解除を模索してもよかろう。」とあくまでも尊大な物言いです。
私は氏の著作を読んでいないので断定的なことは言えませんが、少なくとも、紙面で公表された氏の主張からは、いくら朝日新聞からテーマを与えられて書いたとしても、氏には①日本の植民地支配の清算という歴史的な課題意識が見られません。②北の核兵器とミサイルが日本にとって危機だというのであれば、米韓演習とそれを後方から支える日本に対して北朝鮮は朝鮮戦争の停戦以降、どのほどの危機にさらされてきたでしょう。私は伊藤孝司氏が主張する「朝鮮が求めて続けてきたのは平和条約の締結」が正しいと思います。
遠藤氏のいうような主張はあり得るでしょう。しかし私は遠藤氏の偏った、北朝鮮を「敵性国家」とする主張を朝日が論壇時評で取り上げたのは、朝日もまた遠藤氏と同じ感性、主張を持つからだろ思います。安倍を批判するリベラルなメディアの限界を強く感じます。これはまさに日本のリベラリストがもつ思想的な問題だと言えば言いすぎでしょうか?
以下、記事内容
朝日新聞 論壇時評 明日を探る
遠藤 乾(えんどう・けん 1966年生まれ。北海道大教授・国際政治学。)
北朝鮮の攻撃意図を減らせ
北朝鮮の攻撃意図を減らせ
米朝首脳会談の中止が発表され、各国の駆け引きが激化している。米朝間には、本質的に異なる非核化イメージが横たわる。日本とともに米国が目指す非核化は早期に北朝鮮が完全に核廃棄すること。対して北は半島全体をめぐる軍縮の長い過程の中で体制と安全が保障されることを思い浮かべる。その違いを乗り越え、史上初の会談が成功裏に行われるのなら、半島の雪解けを後押しする絶好の機会となりうる。
他方で、日本の外交当局・専門家は中止の知らせに胸をなでおろしたことだろう。首脳会談は、日本の頭越しに米朝が下手な手打ちをする場にもなりうるからである。もし日本だけが北の核ミサイルの脅威にさらされ、半島が在韓米軍の縮小・撤退とともに大陸色に染まっていくのなら、それは戦争よりは遥(はる)かにましとはいえ、望ましいとはいいがたい。
したがって、米朝首脳会議が開かれるのならば、そうした日本の懸念に手当てがなされる必要がある。当面、日本が米国に外交努力を集中するのにはそれなりに理由があることになる。しかし、米国第一を掲げる大統領にはリスクが残る。
懸念はそこにとどまらない。日本外交の目標は一見明確である。北朝鮮の核・ミサイルは早い段階で物理的に廃棄するべきとされる。妙な言い方かもしれないが、問題は、誰も否定しえない目標の正しさにある。その圧倒的な正しさは自縛的だ。
核とミサイルは、日本にとって脅威だ。独裁のもとにある敵性国家が直接的な攻撃能力をもつことは不安全そのものだ。また、ここで核兵器の拡散を許せば、他国やテロ集団が同様の技術を手にするかもしれない。それは、被爆国としての願いにも反する。だから、日本の誰もが核兵器・関連物質はミサイルもろともモノとして廃棄すべきと考える。
こうした目標に沿って、国連決議など多くの了解を日本政府は引き出し、世界的に制裁も強化された。けれども、北の核廃棄という外交目標の実現はおぼつかない。
実勢はこうだ。もとより北朝鮮は一方的な核廃棄の気配を見せていない。その北が恐れ、嫌がることを二つ挙げると、戦争と制裁だろう。日本にとっての問題は、その二つの見込みが弱含みだということだ。
この間、南北は接近し、中朝もよりを戻した。中韓のいう非核化は、内容や道筋の点から日本とずれる。頼みの米大統領は、歴代大統領がしえなかったことを自ら成しとげたと見せつけたい。暗転はありうるが、米朝は接近を模索している。
その結果、開戦前夜といわれる状況は南北・中朝接近のなかで反転し、戦争は非常に困難となった。ならんで、制裁の実効性に疑義がつきまとう。カギは中国だ。北の貿易の9割がたは中国とのものだが、すでに、中朝国境では人と物の行き来が再開しているといわれる。
結局、北朝鮮にはたいして恐れるものがない。今後も非核化の演技を続け、少なくともしばらくは核とミサイルを保持することになろう。
そんななかで、米朝対話が進むとなると、米国による核の傘の意味がかわりうる。それに応じて、日本は目標とそれへの接近法を再考することを余儀なくされる。
安全保障論のいろはだが、脅威とは物理的能力と攻撃意図の積である。日本が追求してきた非核化は核の物的廃棄であり、前者に関わる。それを追求しつつ当面叶(かな)わぬのなら並行して後者を減ずるほかない。
いま考えるべきは、北の攻撃意図をどう減ずるか、それに資する政策手段は何かである。たとえば、非核化に向けた具体的行為があれば、それに合わせ、個人・団体を対象としたものなど、象徴的な独自制裁から緩和や解除を模索してもよかろう。そうしたサインの交換と全般的な関係改善のなかで、遠目にみる核廃絶への移行期においても、日本の安全を確保することが求められる。
(えんどう・けん 1966年生まれ。北海道大教授・国際政治。「シリーズ日本の安全保障」編者)
私のFBに寄せられた、意見を紹介します。
返信削除A:朝日新聞もそうだが、戦前から今に至るまで、日本の政府とマスメディアの特徴の一つは隣国非難である。なぜか?
それは隣国への悪感情を国民に植え付け、振り込め詐欺が金をだましとるように、投票詐欺で票をだましとり、不平不満の矛先が自国政府に向かないようにするためだ。
A:朝日新聞は戦前も、日本の対外侵略戦争をあおり、賛美し、正当化した前科があり、戦争に敗けると一夜にして豹変し、自らの戦争犯罪にも何らの処断もしなかった。
朝日新聞が戦前と同様、隣国について何を書こうが、やはり戦前と同様、国内の愚民しか動かせず、愚民の世論が向かう先は隣国との対決と、その消耗による衰退と孤立化と袋小路の敗北だけしかない。
B:朝日よ お前もか? 新聞を幾つも買う余裕の無い あるいはテレビしか見ない ニュースは産経電子版しか読まない 実生活からニュースの内容は読み切れない国民は悲しいです。
C:朝日新聞ずっと頑張ってるではありませんか。態度をはっきり見せています。野党も心強かったと思います。問題は国会中継流さないテレビです。
崔:私のブログをよくお読みください。私は安倍に対する適確な批判を評価しています。そのリベラルな朝日にして北朝鮮を「敵性国家」として日本に脅威を与えていると断定した論文を載せているのです。いったい、日本の植民地支配の清算、日本が朝鮮国連軍の後方司令部を横田基地に置き、北朝鮮に対して長年威嚇してきた事実を踏まえて遠藤教授は書かれているのでしょうか?
A:日本に民主主義が根づいていないのは「獲得していない」からだ。「与えられたもの」では何でも身に付かない。
例えば料理も「与えられたレシピ」を見ながらやれば、誰でもレシピみたいな料理は出来る。
だが、料理人の料理は「習得し獲得したもの」であり、素人の料理とは似て非なるものだ。
朝日新聞の論調も毎日、注意深く読んでいれば「与えられたもの」であり「獲得したもの」でない、借り物であることがわかる。
紋切り型の建前論、清く正しく美しくと言うだけなら、幼稚園児でも言える。
D:遠藤氏はTwitterで何度かやり取りしたことがあります。確かヨーロッパ方面が専門の国際政治学者のはずですが、明らかにミスマッチですね。作為的な人選でしょうか…??