2018年6月8日金曜日

日朝首脳会談は無条件で開催されるべき

テレビでは安倍とトランプの日米首脳会談の記者会見の様子が報道され、各社、会談の内容が説明されています。しかし各社とも安倍の発言として、北朝鮮のミサイル・核兵器の破棄と拉致問題が解決されれば、日朝平壌宣言に基づき、国交正常化を進める、とまことしやかに、まさにそれは当然のこととして伝えています。解説者も誰一人、その言葉に疑問を発する人はいないのです。しかし両国首脳(小泉総理大臣と金正日委員長)が署名した日朝平壌宣言にはそのような「条件」がしるされているのでしょうか。日朝平壌宣言を反故にしてきたのは、その宣言に立ち会った安倍本人です。

そもそも日中平壌宣言は、「両首脳は、日朝間の不幸な過去を清算し、懸案事項を解決し、実りある政治、経済、文化的関係を樹立することが、双方の基本利益に合致するとともに、地域の平和と安定に大きく寄与するものとなるとの共通の認識を確認し」、そのうえで、「双方は、この宣言に示された精神及び基本原則に従い、国交正常化を早期に実現させるため、あらゆる努力を傾注する」ことを謳っており、その努力の開始にあたっていかなる条件も付けていません。

北朝鮮は韓国と日本を先制攻撃するためにミサイルと核兵器を開発したのでしょうか。朝鮮戦争以降も米軍の攻撃を恐れ、その対抗策として核開発とアメリカ本土に届くミサイルを開発し、それを恐れるアメリカがようやく対話のテーブルにつくようになったのです。

12日の米朝首脳会談で両者は、朝鮮半島の非核化で合意せざるをえないでしょう。安倍はまだ「最大限の圧力」をかけると言っていますが、トランプ自身、もうその言葉は使わないと公言しています。朝鮮半島の非核化の実現には、アメリカが北朝鮮に先制攻撃をしないという確約が不可避のはずです。

南北朝鮮は「朝鮮半島の平和と繁栄、と統一に向けた板門店宣言」を発表しました(注)。それで米朝首脳会談が可能になったのです。その後、日朝首脳会談は間違いなくもたれるでしょう。日本の植民地支配の謝罪と清算のためにはやるしかないのです。しかもそれは無条件で開催されるべきで、その中で拉致問題の解決が議論されればいいのです。日本側はその件はすべてに優先すると主張すればいいのではないのでしょうか。同時に北側は植民地支配の謝罪と清算を要求するでしょうが、そのことは日朝平壌宣言で小泉元総理が明確に承認していることです。

話し合いの条件として拉致問題の解決とミサイルの廃棄を約束しないと会わないというのであれば、またそれを日本のマスコミと国民が当然のこととするのであれば、拉致問題の解決は延びるばかりです。私はそれは安倍の責任であると断じます。拉致問題の一刻も早い解決のためには、無条件で日朝首脳会談は開催される必要があります。

参考資料
2018年5月10日木曜日
安倍政権の北朝鮮に対する外交方針に異議あり
http://oklos-che.blogspot.com/2018/05/blog-post_10.html

2018年5月30日水曜日
北朝鮮に対する日本政府の課題はなにか

http://oklos-che.blogspot.com/2018/05/blog-post_30.html

日朝平壌宣言
平成14917


 小泉純一郎日本国総理大臣と金正日朝鮮民主主義人民共和国国防委員長は、2002917日、平壌で出会い会談を行った。
 両首脳は、日朝間の不幸な過去を清算し、懸案事項を解決し、実りある政治、経済、文化的関係を樹立することが、双方の基本利益に合致するとともに、地域の平和と安定に大きく寄与するものとなるとの共通の認識を確認した。 

1
.双方は、この宣言に示された精神及び基本原則に従い、国交正常化を早期に実現させるため、あらゆる努力を傾注することとし、そのために200210月中に日朝国交正常化交渉を再開することとした。
 双方は、相互の信頼関係に基づき、国交正常化の実現に至る過程においても、日朝間に存在する諸問題に誠意をもって取り組む強い決意を表明した。 

2
.日本側は、過去の植民地支配によって、朝鮮の人々に多大の損害と苦痛を与えたという歴史の事実を謙虚に受け止め、痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明した。
 双方は、日本側が朝鮮民主主義人民共和国側に対して、国交正常化の後、双方が適切と考える期間にわたり、無償資金協力、低金利の長期借款供与及び国際機関を通じた人道主義的支援等の経済協力を実施し、また、民間経済活動を支援する見地から国際協力銀行等による融資、信用供与等が実施されることが、この宣言の精神に合致するとの基本認識の下、国交正常化交渉において、経済協力の具体的な規模と内容を誠実に協議することとした。
 双方は、国交正常化を実現するにあたっては、1945815日以前に生じた事由に基づく両国及びその国民のすべての財産及び請求権を相互に放棄するとの基本原則に従い、国交正常化交渉においてこれを具体的に協議することとした。
 双方は、在日朝鮮人の地位に関する問題及び文化財の問題については、国交正常化交渉において誠実に協議することとした。 

3
.双方は、国際法を遵守し、互いの安全を脅かす行動をとらないことを確認した。また、日本国民の生命と安全にかかわる懸案問題については、朝鮮民主主義人民共和国側は、日朝が不正常な関係にある中で生じたこのような遺憾な問題が今後再び生じることがないよう適切な措置をとることを確認した。 

4
.双方は、北東アジア地域の平和と安定を維持、強化するため、互いに協力していくことを確認した。
 双方は、この地域の関係各国の間に、相互の信頼に基づく協力関係が構築されることの重要性を確認するとともに、この地域の関係国間の関係が正常化されるにつれ、地域の信頼醸成を図るための枠組みを整備していくことが重要であるとの認識を一にした。
 双方は、朝鮮半島の核問題の包括的な解決のため、関連するすべての国際的合意を遵守することを確認した。また、双方は、核問題及びミサイル問題を含む安全保障上の諸問題に関し、関係諸国間の対話を促進し、問題解決を図ることの必要性を確認した。
 朝鮮民主主義人民共和国側は、この宣言の精神に従い、ミサイル発射のモラトリアムを2003年以降も更に延長していく意向を表明した。 

 双方は、安全保障にかかわる問題について協議を行っていくこととした。 



日本国
総理大臣
小泉 純一郎
 朝鮮民主主義人民共和国
国防委員会 委員長
金 正日
2002年9月17日
平壌


                             (注)板門店宣言の概要
全文:http://japanese.korea.net/Government/Current-Affairs/National-Affairs/view?subId=641&affairId=657&pageIndex=1&articleId=3355

  • 朝鮮半島の完全な非核化を南北の共同目標とし、積極的に努力をすること
  • 休戦状態の朝鮮戦争の終戦を2018年内に目指して停戦協定を平和協定に転換し、恒久的な平和構築に向けた南・北・米3者、または南・北・米・中4者会談の開催を積極的に推進すること
  • 過去の南北宣言とあらゆる合意の徹底的な履行
  • 高位級会談、赤十字会談など当局間協議の再開
  • 南北共同連絡事務所を北朝鮮の開城に設置
  • 南北交流、往来の活性化
  • 鉄道、道路の南北連結事業の推進
  • 相手方に対する一切の敵対行為を全面的に中止し、まずは5月1日から軍事境界線一帯で実施する
  • 黄海北方限界線一帯を平和水域にする
  • 接触が活性化することにより起こる軍事的問題を協議解決するため、軍事当局者会談を頻繁に開催。2018年5月に将官級軍事会談を行う
  • 不可侵合意の再確認および遵守
  • 軍事的緊張を解消し、軍事的信頼を構築し段階的軍縮を行う
  • 首脳会談、ホットラインを定例化。2018年秋に文在寅大統領が平壌を訪問する

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