2018年5月30日水曜日

北朝鮮に対する日本政府の課題はなにか

トランプの突然の米朝首脳会談の中止宣言がありましたが、これは北朝鮮との首脳会談を有利に進めようとするためであり、やはり、元の鞘に収まり、予定通り12日にシンガポールで持たれるようです。
北朝鮮が譲歩したと報じられていますが、私はそうは思いません。北が非核化を進めると事前に公表した以上、米朝首脳会談さえ実現されれば、何らかの形で朝鮮戦争は停戦から終戦に変わります。それがトランプが要求している短期間のミサイルと核兵器の廃絶になるのか、段階的になくしていくのか、これは交渉事です。しかしロシア外相が急遽、北を訪問すると発表した以上、北は米国との首脳会談を前にして2度の南北朝鮮と中国戸の首脳会談を持ち、ロシアとも首脳会談をもつことになります。即ち北朝鮮は、米国とそれに追随するだけの日本を除き、韓国、中国、ロシアを後ろ盾にしたことになります。これは北朝鮮の外交の成果です。先頭に立った金正恩委員長の行動力と交渉力の評価は世界的に高まりました。日本政府は米朝首脳会談の後に、日朝首脳会談を持たざるをえなくなります。拉致問題と植民地支配の精算として国交樹立の交渉という歴史的な課題があるからです。
アメリカから朝鮮戦争以降、絶えず核の攻撃に怯えていた北としては、それに備えるために核兵器とミサイルを開発したのであり、逆に北のアメリカ本土に届くミサイルに怯えたトランプはなんとしても秋の選挙の前に北と話し合うしかなかったのです。それが可能になったのは、なんといっても南北首脳によって発表された板門店宣言があったからだと思います。韓国の文在寅大統領がノーベル平和賞の第一候補にあがっているのも当然だと思われます(断じて、トランプにノーベル平和賞を与えるべきではありません!)。
(伊藤隆司の「朝鮮が米国に求め続けてきたのは平和条約の締結」「週刊金曜日」2017年5月19日、1136号)

本日、12日の米朝首脳会談を前にして、日米首脳会談が6月7日に持たれることが決定されました。日本政府が北朝鮮と首脳会談をもつにあたって、何が課題なのか確認しておく必要があります。
日本政府は北朝鮮に対して拉致問題の解決だけを最優先にして、北朝鮮との外交的課題は何かまったく公表していません。マスコミもそれに触れていません。私は日本社会のさまざまな問題は、日本が植民地支配の清算に本気で取り組んでこなかったことに起因すると見ています。つまり戦後の「平和と民主主義」は偽りであったということです。旧約聖書のエレミヤの言葉を思い出します。
米朝首脳会談が実現すれば一挙に浮上するのは、日本政府の解決すべき課題です。
1.日朝平壌宣言の即時実行
https://www.mofa.go.jp/mofaj/kaidan/s_koi/n_korea_02/sengen.html
2.植民地支配の清算の課題
①北朝鮮との国交樹立
②「賠償金」の支払い
③慰安婦問題、韓国人被爆者の問題
④北朝鮮に帰国した被爆者の問題
3.板門店宣言への協力ー朝鮮半島の平和への貢献
①北朝鮮への自然エネルギーを活用した発電技術の供給
②民間レベルでの北朝鮮との交流ーまずは北朝鮮訪問から
③横田基地にある朝鮮国連後方司令部の撤退
4.拉致問題の解決

上記2~4はすべて1の日朝平壌宣言の具体化の中で話し合われることになります。したがって、日朝首脳会談をまずもって、実務者会議を設定し、上記の課題を話し合うことになります。安倍がこれまでのように、まず拉致問題をすべての前提にすれば拉致問題の解決さえ困難になります。北側は拉致問題は「解決済み」という立場だからです。日本の市民とマスコミが、冷静に日朝の関係を歴史的な、日本の植民地支配の精算をどう進めるのかという視点から見つめ、取り組むことができるように願うばかりです。

私たちは16日(土)の1ー5時まで、明治大学のリバティタワーで日朝韓のもっとも鋭い論客を交えて、「日朝韓ジョイント討論・講演会」を持ちます。ソウル、東京、大阪、福岡などを繋げたスカイプでの自由討論にご参加ください。
http://oklos-che.blogspot.com/2018/05/blog-post_84.html

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