2018年5月25日金曜日

原発メーカー訴訟のこの間の混乱の根本原因について

昨日、5月24日、横浜地裁で、原発メーカー訴訟の原告弁護団長の島昭宏弁護士が、原告団の事務局長であった私と朴鐘碩を名誉毀損で訴えた裁判で5人の陳述を終えて結審になりました。判決は9月6日(木)の午後1時、横浜地裁です。

この裁判は、原告弁護士が裁判の方針をめぐって自分の考える方針と違うということで、原告団の事務局長の解任を求めるという「越権行為」と、東京地裁の指示である委任状の捺印を不要とする、弁護士としての「不適合性」を二人の原告が指摘し批判したことを名誉毀損として訴えるという、典型的なスラップ訴訟です。

そもそも裁判の主体は原告であり、法的代理人である弁護士の役割は「原告(依頼者)の権利を守る」ことです。これは裁判制度の大原則です。弁護士法にも明記されています。しかし島弁護士は、原告団の人事に干渉し、事務局長が国際連帯運動を進めることは問題があると言い、原告団の事務局、総会で決めた方針に対して、事務局長は裁判のことに限定するべきであると主張し、事務局長の解任を求めました。原告団が裁判と並行して原発体制に反対する国際連帯運動を展開するために、核大国が実験をにぎるNPT体制と、それが植民地主義であること、原発体制は差別を根幹にしていることを問題にしましたが、しかし島弁護士は、それらの単語そのものが左翼用語で、若い人の賛成を得られないというのです。

この間の原発メーカー訴訟における混乱は、広く運動圏でも知られるようになりましたが、その根本原因は、上記した、弁護士の「越権行為」と「不適合性」にあったという真実が伝わらず、人間関係の問題と矮小化されていました。しかし島弁護士は頑なに、弁護士の原告団の運動方針および人事にまで干渉したことを「越権行為」と認めず、弁護士としての正当な行為であると主張してきました。
このことがこの間の原発メーカー訴訟における混乱の原因です。

日本の裁判所は、果たして島弁護士の批判を封じるスラップ訴訟である「名誉毀損」訴訟を正当なものとするのか、裁判の主体はあくまでも原告にあるという被告の主張を認め、批判する自由を認めるのか、判決を待ちたいと思います。

以下、私が横浜地裁で陳述書として提出したものを公開します。


平成29年(ワ)第180号損害賠償請求事件
原告  島 昭宏
被告  崔 勝久 外1名

陳 述 書
平成 30年 5月21日
横浜地方裁判所 第4民事部   御中
                     被告   崔 勝久

 私は被告の崔勝久(チェ・スング)です。福島における3・11の甚大な事故は原発運営会社の東電の責任であるとされ、原子力損害賠償法でも原発事故は原発運営会社の責任であり、原発を実際に作った原発メーカーは免責されています。しかし私は、フクシマ事故は人災であり、原発運営会社の東電と共に原発メーカーのGE、日立、東芝にも責任があると考えました。

 私はたとえ、法律で原発メーカーに責任がないということが記されていても、実際の原発の計画から設計、製造、保全において主要な働きをしてきた原発メーカーに今回の事故の責任がないというのは納得できませんでした。事実、私は同じ被告の朴鐘碩の「日立就職差別裁判闘争」のときの川崎での集会で、地域の在日住民から、法律では児童手当や市営住宅入居は日本人に限るとなっているがそれは同じ税金を払っている私たち在日韓国人に対する差別ではないかという質問を受けた経験があります。そのとき、法律よりも実際の人権のほうが優先されるということを学びました。そして川崎市長と交渉をはじめて、法律では日本人に限るとなっている児童手当などの支給を在日外国人も受けるようになりました。

 私はその時の経験があったものですから、たとえ原賠法で原発メーカーには責任がないということになっていても、裁判で彼らの責任を問うべきだと考えたのです。原発に反対する弁護士の中でも、私の主張は、法律で免責されているのだからその裁判は無理だと言われていました。その中で唯一、そんなことはない、原発メーカーを相手に訴訟は可能だと言ってくれたのは、原告の島弁護士だったのです。私たちはどれほど彼の言葉に感謝し期待したかわかりません。そのようにして島弁護士を代理人とする原発メーカー訴訟がはじまりました。私は世界の市民団体やキリスト教会の組織に支援を求め、国内はもちろん、韓国、台湾、フィリピン、インドネシア、ドイツ、アメリカなどを周り、最終的には4000人の原告を事務局のメンバーと一緒になって世界中から集めました。

 私は講演会のたびごとに、法律では免責されているのにどうして世界で初めて私たちが原発メーカー訴訟を起こせたのかという話をし、それが川崎での在日韓国人住民から法律よりも人権が重要であるということを学んだからであるという説明をしました。どこへ行っても多くの人はその話に納得し拍手をしてくれました。どの会場でもそのくだりで大きな拍手がありました。

しかし島弁護士はそれを快く思わず、私が民族運動のために裁判を利用している、そのような人物は原発メーカー訴訟の事務局長として相応しくないと言って私の事務局長の辞任を求めたのです。私は、それは原告団に対する弁護士の不当な介入であると思っていましたが、島弁護士の貢献と他にそのような弁護士はいないと思い、事務局長を辞任しました。原告団の分裂を避け、裁判を続けることを願ったからです。

できるだけ多くの人に原告になってもらう署名活動を事務局が始めたのですが、島弁護士は捺印が必要とする東京地裁の指示にもかかわらず、捺印はなくてもいいという判断を事務局に示したものですから、私たちは信頼する島弁護士の指示に従いました。しかし東京地裁は改めて捺印は必要不可欠という法的な根拠を示してきたので、私たちは署名活動をやり直すことにしました。そしてあろうことか、島弁護士は自分に従わないということで、4000名の原発メーカー訴訟の原告の中から私と私の次に事務局長になった朴鐘碩の委任契約を解除しました。

 以上の事実は、島弁護士の原告団に対する不当な越権行為と、弁護士として裁判所とは異なる不法な指示を原告団事務局にした、弁護士としての不適格性を明らかにしたものです。私たちは事務局内部で島弁護士の解任を考え、新たな弁護士を探す準備を決断しました。そのためには、4000人を超す原告団と裁判を支持してくれている多くの人たちに事実を伝え島弁護士の実態を知って、もらう必要がありました。

私はそのためにSNSを通して情報発信をするようにしました。それしか島弁護士の実態を多くの人に知らせるすべがなかったからです。新たな弁護士に関しては相談した弁護士会会長から、本人訴訟のほうが適切だと助言され、40名の原告と選定当事者制度を活用した本人訴訟をすることを決断しました。島弁護士は自らの越権行為と弁護士としての不適合性を反省することなく、島弁護士の実態を知らせる私の情報発信を名誉毀損として私と朴鐘碩を訴えてきました。これこそ、言論の自由を抑圧するスラップ訴訟の典型であるという多くの人の助言と支援を受け現在に至っています。島弁護士は私の情宣によって経済的な不利益を被ったと主張しますが、スラップ訴訟の典型である今回の損害賠償請求訴訟において、私たちの行為は名誉毀損に当たらないという判決が下されることを確信しています。


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