2015年6月21日日曜日

『シビアアクシデントの脅威ー科学的脱原発のすすめ』を読んで

『シビアアクシデントの脅威ー科学的脱原発のすすめ』(舘野淳 東洋書店、2012)を読みました。シビアアクシデント(以下、SAと記す)とは日本語で過酷事故と訳されています。


本の帯には元朝日新聞論説委員の柴田鉄次さんのこのような推薦の言葉が書かれています。「福島厳罰に限らず、いま日本にあるすべての原発(軽水炉)は欠陥品だ、という原子力の専門家から出てきた驚くべき告発。内容は科学的で説得力もあり、これから原発を「さあ、どうする?」と国民に決断を迫る書だ」

「いま日本にあるすべての原発」が問題なのか、世界中の原発(軽水炉)そのものが欠陥品なのか、興味をもって読みました。結論は、原発(軽水炉)そのものが欠陥品だという著者の主張です。

ただし国会事故調を以下のくだりを引用しながら、福島事故は日本の原発体制の特徴と捉えているようです。「日本のSA(シビアクシデント)対策規制は海外に比べて遅れてきた。また平成10(2007)年の国際原子力機関(IAEA)の指摘を受けて、保安院および安全委員会はSA対策の規制化に関わる検討を行ったが、電気事業者はSA対策の規制化を経営上のリスクととらえ、それに抵抗した」。

「日本の原子力産業界は、規制する側も、規制される側も、客観的な知見を提示する役目の有識者でさえも、ほとんど全てのプレーヤーが既設炉に依存していたわけあり、独立性と専門能力を両立させることが極めて難しい『一蓮托生』の構造になっていた」。

著者は、SAについて、軽水炉という原子炉の本質、技術的な特徴として、「原発の備えている固有の安全性や、安全装置の範囲内では収拾できない種類の事故」と定義し、このように断定します。「このSA問題が解決しない限り、現在私たちが使っている軽水炉発電炉は、実はいざというときにブレーキが利かなくなるような自動車と同じく、欠陥商品なのである」。

「議論を避けて既成事実だけを積み上げるーこれは日本の原子力開発がたどってきた「いつか来た道」であり、とりもなおさず「福島への道」を再び歩み始めることを意味している」。
著者の指摘する欠陥品である根拠は、「軽水炉の最大の弱点は熱のコントロール機能が極めて脆弱な点にある」ということにつきるようです。

「米国での軽水炉開発のころに経済性・効率性の追求によって、軽水炉技術に宿命的に埋め込まれた、ブレーキの利かなくなる、熱除去の失敗=シビアアクシデントの存在こそが軽水炉の死命を制するものであり、筆者はこの欠陥が技術的に取り除かれない限り、軽水炉は使いべきではないと考えている。そのようなシビアアクシデント問題がなぜこれまで見過ごされてきたのか、あるいは隠蔽されてきたのか、開発の歴史と技術の両面から追求しようと考えて書いたのが本書である」。

著者は、日本原子力研究所での組合の委員長であった経歴の持ち主で、実際に「アカ」攻撃をされながらの戦いの歴史は興味深く読みました。特に、最初に導入されたGEの原子炉がいかに杜撰なものであったのかということを説明するくだりは、私たちの裁判においてもGE及び、その基本技術を踏襲した日立、東芝の事故責任を追求する多くの情報とヒントを与えられました(69~73ページ)。

軽水炉の原発が根本的に欠陥品だとしたら、その責任は誰がとるのでしょうか。運営会社の東電だけでなく、原発利益共同体にも責任を取らせるべきではないでしょうか。
1.日米原子力協定の88年改訂以降はアメリカに免責がないと政府答弁している
2.原賠法で謳われている運営会社の責任集中の原則は、原子力損害賠償支援機構法(機構法)で実質破られている
3.機構法附則6条2項では、「「早期に、事故原因の検証、賠償実施の状況、経済金融情勢などを踏まえ、東京電力と政府・他の電力会社のと政府・他の電力会社との間の負担のあり方、東京電力の株主その他の利害関係者の負担のあり方等を含め、法律の施行状況について検討を加え、その結果に基づき必要な措置を講じる」とある
福島事故の賠償金は税金で賄われているのです。原発利益共同体(利害関係者=原子力ムラ)にも負担させるべきです。メーカーにも事故の責任を取りお金を出させるべきではないでしょうか。原発メーカー訴訟はそのような意味において、大変、重要な意義があると考えます。

1 件のコメント:

  1. トルコの久美子の手紙より2015年6月26日 8:11

    舘野淳一氏のシビアアクシデントの脅威-科学的脱原発のすすめをご紹介してくださりありがとうございます。私も是非読ませていただきます。皆様お忙しいことでしょうが、舘野淳一氏にお会いされることを私は希望します。更に、昨年、私は、帰国した際に、福井県を訪問しました。農業をする合間を、脱原発の活動をされている中野充さんはじめ、素晴らしい方々にお会いさせて戴きました。その中で、確か、軽水炉に関する研究をされていた大学の教授を紹介されました。数時間お話し、専門家の意見を伺ったことがあります。専門家であり、更に脱原発の運動のリーダーとしても活動されておられます。是非その教授に、お会いされることをお勧めします。現在、私の手元に資料がありませんので、福井県の中野さんに連絡され、アポをお取りになってください。確か娘さんはドイツで生活されていると伺っています。確かな、素晴らしい資料と、たくさんの知恵をお借りできると思います。

    返信削除