2015年4月5日日曜日

日本は滅亡に向かって邁進する

有馬哲夫『原発と原爆ー「日・米・英」核武装の暗闘』(文春新書、2012)より、初めて知った事実を書き記します。

その一、GEは福島第一原発の一号炉、二号炉、敦賀原発の第一号炉などGE製原子炉に使った濃縮ウランは、そのかなりの部分をソ連で濃縮していた事実(P190)。
アメリカは米ソ対立の最中にあっても、核兵器・原発の燃料になる最も重要な部分を敵対するソ連にウラン鉱石を売り、濃縮ウランを買い、それを自分たちのものとして福島原発の燃料として日本側に買わせていたということになります。

その二、田中角栄のロッキード事件で騒がれたエアバス購入時、日本側が一番最初に購入を約束したのは濃縮ウランであった。アメリカ側の条件を飲んだのは、日中国交回正常化にアメリカ側の横槍をいれさせないためであった(P173)。田中はアメリカに反抗して中国に接近したために首相の座を追わせたわけではないという著者の解説。 

著者は原発のもつ「外交カード」の役割を詳細に検討していくのですが、結論としては、そのカードのためには日本は核武装してもよいという結論を放棄していないようです。私には著者は「策に溺れ」ている印象をもつのです。白井聡がいみじくも語っているように、ドイツが3・11以降、原発を使わないという決定をしたのは、ドイツが核保有を放棄していたからです。ドイツは核保有をちらつかせなくともそれでも独自の「外交カード」を使っています。日本がエネルギー源として原発を使い続ける目的は、核保有の隠された願望を持ち続けているからなのです。

ドイツと日本は置かれれている状況が違うからということになるのでしょうか。中国や北朝鮮の核武装に対抗せざるをえないからということなのでしょうか。ここで紹介したい本があります。黒崎輝『核兵器と日米関係ーアメリカの核不拡散外交と日本の選択1960-1976』(有志舎)』です。その本の感想を書きました。

二回目の朝鮮戦争はあるのか?外交関係は小説より奇なりー黒崎輝『核兵器と日米関係』を読んで、日朝関係の将来を予測する
http://oklos-che.blogspot.jp/2013/03/blog-post_10.html

米ソ対立下にあっても両国の隠された「信頼関係」があることをおそらく中国は見抜いていたのでしょう。「張子の虎」と両国を見て、文化大革命のさなかにあっても核開発を進めていた理由がうかがい知れます。

私は過去の米ソと中国の関係から、現在の米中と北朝鮮の関係を類推するのです。吹けば飛ぶような小さな北朝鮮が、大国相手に交渉ネタを見つけ出すのは、ひとえに北朝鮮が核開発に成功したからでしょう。

日本は小泉が北朝鮮で約束した国交正常化より、安倍の信念によって「拉致事件」を問題にし、経済制裁などで北を懲らしめることを謀っています(白井聡『永続敗戦論』)。しかし北朝鮮はソ連への接近という、金日成時代からの、大国間の力関係を利用するカードをちらつかせることで、安倍の経済制裁が有効になることはないと思われます。

これからも対北朝鮮ということでとどまらず、対中国も念頭に置いた、日本の潜在的核保有国であり続けるために原発を再稼働し、新規建設も視野に入れながら原発輸出を続ける政策が続くのでしょう。嫌韓・嫌中のキャンペーンは安倍の戦争をする国にするための政策と表裏一体です。すなわち、ナショナリズムの鼓舞です。日本は滅亡に向かって邁進していくように思えます。

それを止めることができるのは果たして自公や維新にかわる、共産党などの政党の躍進なのでしょうか。私は台湾やモンゴルの政治状況を見ていて、政党政治に愛想を尽かす層の動きが日本に圧倒的に少ないことを残念に思います。この層が直接行動を起こし、そこから新たな社会の変貌が見えることを私は期待するからです。市民による反核・反戦・反差別を掲げる国際連帯運動の広がり、私はそこにかけていくつもりです。

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