2015年3月24日火曜日

モンゴルを訪問してーその② 記者会見とセミナーに参加して

3月18日、ドルノゴビで家畜とアレバ周辺の放射能量の実態を見てウランバートルに戻った私たちは翌日の午後、市内のあるテレビ局で、19日のセミナー開催についての記者会見を持ちました。驚いたことに、急な記者会見であったにもかかわらず、50名くらいの記者と10局ほどのテレビ局が来ていました。ドルノゴビの実態を見た科学者の意見と、日本と韓国からきた私たちの意見に関心があったからでしょうか。その夜、9時のテレビニュースで記者会見の様子が報道されました。



19日はウランバートル農業大学のキャンパスでセミナーがもたれました。元々は500名規模の教室を確保したらしいのですが、外部からの圧力で100名規模の教室で開催されました。大きなスクリーンを背景に進められたセミナーは、11時から16時まで昼食をとりながら多くの講師の発題と質疑応答が続きました。


このセミナーは、先月国会近くの広場で2週間にわたり、金鉱山の採掘に自然破壊の立場からハンストを決行したDMNNと、Mongolian National Council Scientists とMongolian State University of Aglicultueの主催によるものでした。

一昨年、台湾で開催された、No Nukes Asia Forum in Taiwanに参加したDMNNのメンバーが中心になり、獣医学の専門家と一緒になって、ウラン採掘の問題をプラス、マイナス両面から科学的な見地から議論をしようという試みで、ウラン採掘を進める中央・」地方政府や企業、賛同する学者まで声をかけていました。政府よりのセミナー開催に反対する活動家も多く、私たちにもセミナーをボイコットするべきだという働きかけがありました。

しかし主催者側の立場は明確で、一昨年、家畜の死亡や奇形家畜の問題が公になったとき、その地域一帯の立ち入り禁止が政府から命令された経験から、幅広い層に参加を求めて内容はセミナーの中で議論をしようという考えでした。そうでないと外国人へのビザ発行問題もありうるし、はやく開催を知らせたら、開催そのものさえ危ぶまれるという配慮であったようです。


国際会議の開催に慣れていないこともあるのか、宿泊施設の確保や通訳の体制に問題はあったのですが、ウラン発掘の対する賛否両論、活発な意見が出されているということは言葉のわからない私たちにもよくわかりました。

海外からは、ドイツで放射能を専攻する学者と、日本と韓国の活動家、ジャーナリストが発題しました。山本節子さんは英語で福島の実態をスクリーンに写真とデータを示しながら詳細な説明をされました。その内容はいずれ公開されると思います。韓国のイ・デスさんは、私の発題の直後、韓国で甲状腺がんと原発の因果関係を認めさせた判決を勝ち取ったイ・ジンソプさんの例と、この7月私たちが訪米して会うことになっている、ロナルド・レーガン号の裁判のことに触れました。

セミナー全体の講師の発題と質疑応答の内容は早晩、事務局から文書されるでしょうから、改めてご報告いたします。


私は事前に発題内容を公表していましたが、ゴビ砂漠にあるアレバ周辺の遊牧民の実態を知り、また記者会見での記者たちの質問から彼らが何を知りたがっているのか私なりに理解しましたので、前日書き直したものを発題しました。以下、掲載いたします。


その最後に触れていますが、私は事前に主催者やモンゴルの友人とも相談し、2017年に反核・反原発を謳った国際会議をモンゴルで開催することを提案しました。みなさん、大賛成でした。ウラン採掘の問題点、CFS(核)燃料総合サービス構想ー各ゴミの処理の問題を中にして2年間の準備を経てモンゴルでの国際会議の開催に向けた準備を始めます。みなさんのご協力をお願いします。


注:写真はすべて同行した仁宮早苗さんの提供です。

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セミナーにおける発題内容

反核・反原発を掲げる国際連帯運動の広がりを求めて
                                  Seungkoo CHOI

私の愛するモンゴルの地でこのような発題をする機会与えられ感謝しております。

今回は3回目のモンゴル訪問になります。
フランスのアレバのことはよく知っていましたが、ドルノゴビに行ってその実態を知りました。アレバがドルノゴビに来てから家畜が死に、奇形の家畜が生まれています。私は全世界にモンゴルの実態を知らせるべきだと強く思いました。

私が初めてモンゴルを訪れましたのは、2011年3月11日の福島事故が起こったあとでした。毎日新聞のスクープで、日米モンゴルの3ヶ国がCFS(Comprehensive Fuel Service)包括的燃料サービス構想に合意した秘密契約があることを知ったからです。すなわち、モンゴルでウランを採掘、精錬、輸出し、輸出先で出る核ゴミを輸入し処置・保管してそれを砂漠地帯に埋蔵するという構想です。

もちろん、3ヶ国とも否定しましたが、一昨年、モンゴルの政権が変わる直前、CFS構想の投資計画予算案が国会で承認されました。私はモンゴルで反原発運動をする人たちがそれに抗議する記者会見ビデオを見てすぐに、モンゴルに飛びました。その後、小型原子炉を作り、4ヶ箇所の核ゴミを埋蔵する施設を作るというプロジェクトがどのようになったのかはよくわかりません。モンゴルではこのCFS構想についてよく知られていませんが、とても重要なことですので、必ず注意をしておく必要があると思います。日本で核ゴミの最終処理場が決定されなかった場合にどうするのか、私は何度か日本の原子力関係の官僚と話し合う機会がありましたが、彼らはモンゴルとの秘密契約を保持したまま様子をみていると確信しています。

さてモンゴルはウランの埋蔵量は世界の15%になると推測されていますが、このウラン濃縮技術は簡単に持てない高度なものです。広島原発はウラン235、長崎原発はプルトニウムを使ったものです。

モンゴルで採掘されたウランは、原子力爆弾、劣化ウラン兵器などの軍事目的、次に原子力の平和利用の美名のもとで原子力発電に使われます。原子力発電の過程で作られるプルトニウムはいつでも軍事利用されるのです。従って、54基の原発をもつ日本は既に潜在的核保有国です。日本は分離プルトニウムを48トンもち、これは長崎原爆の4000発分に相当します。世界は日本のもつ大量のプルトニウムに注目しています。私は、日本はロケット技術をもち大量のプルトニウムを所有しており、いつでも核兵器を作れる状態にあると見ます。事実、日本の政治家は潜在的核保有国であることが安全保障につながると公言しています。だから原発を廃止するとは言わないのです。そこが同じ第二次世界大戦の敗戦国であってもドイツと日本の決定的な違いです。

日本は戦後の経済復興のために原子力発電所をたくさん作ってきました。の比重を高める政策を続けてきました。広島・長崎の原爆被害の経験者をもつ日本がどうして54基もの原発を作るようになったのか、これは日本の国民が科学信仰と経済最優先主義に陥ったからにほかなりません。アメリカは原子力の平和利用を訴え、原発を作ることを日本に求め、日本は賛同していきました。

しかしアメリカは日本政府に原発を輸出するにあたってある要求をしました。万が一、事故があっても原発メーカーに責任を負わせない法律を作ることです。それが原子力損害賠償法です。日本は独立国ですが、私はアメリカの植民下にあると理解しています。沖縄の米軍基地の問題や、安全保障に関することは裁判の場で裁くことはできないということを見ても明らかです。

そのため原子力発電も同様、これまで多くの原発に反対する裁判がありましたが、最高裁まで行って勝った例がありません。日本政府が原発問題を安全保障の問題と捉えているのです。従って原発に反対する運動はエネルギー問題という視点だけでなく、安全保障の視点から捉えられているのです。従って、原発に反対する運動は、エネルギー問題にとどまらず、安全保障、即ち、世界の大国の植民地主義政策の問題として捉える必要があります。世界の大国がモンゴルに関心をもつのはそのためなのです。

さて福島の現実を見てみましょう。安倍首相はオリンピックを東京にもってくるために大嘘をつき、「Under Control(福島は完全な管理下にある)と言って東京は安全であることを世界に訴えたのですが、福島事故後は、汚染水の問題は何ら解決されず毎日汚染水は太平洋に流れています。いずれ国際問題になるでしょう。

東日本大震災から4年が経ち、亡くなった方15889人、行方不明者の方 2584人、その後の関連死した方3194人、避難者の方239000人とネットで報道されています。既に甲状腺ガンを患った110名の子どもの例が報告されています。

私は日本の反原発運動が再稼働反対一本に絞られたことを非常に残念に思っていました。原発事故の原因が地震か津波によるものかはっきりしていないのに、どうして再稼働をし、そして原発輸出をしようとするのでしょうか、輸出先で原発事故が起こったらどうするのでしょうか。それでわかったことは、いくら原発事故が起こってもメーカーには何の責任もないのです。メーカーの免責を明記する原子力損害賠償法は実は日本だけでなく、韓国、台湾、世界どこでも同じような法律が作られているのです。これはアメリカを中心にした核兵器をもつ国が作ったNPT体制(核不拡散条約体制)に関連します。核兵器はなくしましょうと言いながら、どんどん原発は世界で作られています。私はモンゴルも原発建設の計画があると聞きました。モンゴルの原子力基本法はどのようになっているのでしょうか。

メーカーというものは事故が起こったら責任をとるものです。どうして原発はそうでないのか、私は原発メーカーにも福島事故の責任があると考えました。そしてアメリカのGE,日立、東芝を相手に彼らの責任を問う裁判を提起しました。原告は世界中に39ヶ国4000名います。モンゴルは338名になります。世界初の原発メーカー訴訟です。原発は事故の危険性があるということだけでなく、存在そのものが地域住民の健康を害し、自然を汚染するのです。核兵器と原発は表裏一体です。非核宣言をしたモンゴルは原子力発電をするべきではありません。

アメリカのロナルド・レーガン号という船は「トモダチ作戦」で福島沖に停留し多くの乗組員が被曝しました。中には死亡した人もいます。彼らは被曝の責任を求め東電とメーカーを相手に裁判を始めました。1000億円の賠償金を求めています。世界の原発は437基あります。原発をなくしていくには国際連帯運動が必要不可欠です。原発と核兵器は人類と共存できません。使用した核ゴミは処理の方法がないのです。

私はアジアにおいてモンゴルはもっとも注目すべき国だと考えています。原発にとて必要不可欠な燃料であるウランを発掘させない運動と、核ゴミを埋蔵させないという運動ができるのは世界でモンゴルだけです。モンゴルのみなさんと一緒になって世界から原発をなくしていく運動を一緒にやれることをうれしく思います。


最後に、2017年、モンゴルでの選挙の翌年、反核、反原発を掲げる国際会議をモンゴルで開催することを提案します。私たちは全力をあげて協力いたします。ありがとうございました。

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