2014年8月24日日曜日

二人の碩学から学ぶー原子力の本質的な問題

朝日新聞の川崎版で8月24日、<「神奈川と核」9 身近な「存在」どう考える 専門家2人に聞く>という欄がありました。専門家として、広島で被爆した医師の肥田舜太郎さんが「教育 放射線への防衛に」、NPOピースデポ特別顧問の梅林宏道さんが「米と同盟「脱原発の壁」について語られています。非常に示唆に富む、考えさせられる内容です。

肥田さんは内部被曝の専門家で、私は彼の本から低線量であっても問題があることを確信させられました。私のブログではこのようなことを書いています。
2012年5月11日金曜日
内部被曝についてー戦後世界を根底から問い直す視角になるのか?
http://oklos-che.blogspot.jp/2012/05/blog-post_11.html

「私はこの本を読むまでは、勿論、内部被曝の問題、その恐ろしさは知っていましたが、核問題とは何かを実はよく知らなかったということを思い知らされました。核兵器がどうして許されないものなのか、その根本の認識が私には甘かったのだと思います。」
「世界の原発の半分が集中する東北アジアにあって、「内部被曝」の問題を中心に据えて物事を捉えた時に、核兵器による抑止力、原発によるエネルギー確保という、戦後当然視されてきた考え方を根底から変えることになるように思うのですが、読者のみなさんはいかがでしょうか。」

朝日新聞のコラムの中で肥田さんはこのように語られています。
「原爆を平気で使ったことは人道上許せないこと。それが核兵器廃絶運動の根元にあります。他方で、大国は核兵器を持ち続けています。原発だけをやめろという運動は力がないし、理屈が合わない。核兵器をつくる限り、原発を動かす限り、その過程でだれかが被害に遭う。核兵器廃絶と原発反対は、一緒に進めなければならないのです」。そして結論として、「それには教育が必要です。人間の体の仕組や、技術の成り立ち、自分の命は自分が守るという教育を幼稚園から続ければ、矛盾に気づくようになる。放射線に対する防衛も、できるようになるでしょう」。

一方、梅林さんは、原子力の問題を国際的な構造に言及しながら発言されます。米国のアイゼンハワーが言いだした「原子力の平和利用」は核技術で同盟国を組織する戦略であり、日本が脱原発出来ない理由は、「原発で利益を得ようとする人たちの産業戦略上の問題」の他に、「米国との同盟関係に響く」からだみます。核拡散の防止のために、世界の核を管理したいアメリカは、結局、自分と同盟関係のある仲間の原発が増えた方が自分の軍事上のメリットになり、原子炉の建設にあたっても「肝心なところは機密にする。それが同盟国を囲い込み、支配する手法」だと言うのです。

本質的な問題は、核兵器であれ原発であれ作りだされる放射性物質は健康被害や環境問題を起
こすが、「それを議論する枠組みが、冷戦起源の大国の利害に左右されてしまっているのが現状」だとして、NPT体制のことを示唆します。軍事利用であれ平和利用であれ、核を扱うということは、一度汚染すると取り返しのつかない事態になる、「核を扱うということは、そういうこと」なのだというのが、梅林さんの結論です。


こす

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