2012年9月3日月曜日

アメリカの専門家が見る福島から学ぶべき教訓とは何かーガンダーセンさんの講演から


昨日、日本弁護士連合会主催のシンポジュームに参加しました。「福島原発事故の真実 国会事故調報告書を受けて」というタイトルで、ネットを通して全世界に福島の真実を情報発信しているガンダーセンさんの講演と、パネリストに、よくぞ国会事故調査委員会員に選ばれた(?)田中三彦さんと、東京新聞の田原牧さんが加わったパネルディスカションがありました。

(1) ガンダーセンさんの講演内容
The Real Lessons We Must learn From The Fukushima Daiichi Catastrophe というタイトルで通訳をいれた70分の講演でした。原子力産業に従事しその中心にいた氏が妻に語ったという冒頭の言葉が印象的でした。3・11以降、余生を原発はいかに危険かということを伝えるために捧げたいというのです。その言葉に運動への媚や、売名的な臭いはなく、ユーチューブで見るよりもっと淡白で誠実な印象を受けました。

「原子力発電を十分安全にすることなど不可能である」ことを福島原発のメルトダウンは示していると氏は語ります。The Lesson is that nuclear power is inherently unsafe 原発はそもそも安全でないということこそ、福島事故から学ぶべき教訓だというのが氏の結論であり、信念であるようです。以下四つの教訓をあげています。
1.原子力産業界とそれを規制しているはずの諸機関は、人々の生命や健康より、経済を優先させている。2.技術者には予知能力はなく、予測されていなかった原子力事故が起こりうることを、歴史は既に証明している。
3.人は間違いを犯すし、人為的なミスと計算違いが事故を招く。
4.福島第一原発事故は、起こりうる最悪の事故ではなかった。

この四番目のことは講演の中、1000名の現場の人たちが命をかけて最悪の事態をくれたということと、あの事故がもし夜、週末に起こっていたら、とても最悪の事態を防げなかっただろうと力を込めて話されていました。3号基の爆発速度は音速より速く、4号機の格納機の上に置かれた使用済み核燃料を冷やすプールで爆発があったら、日本は完全に汚染地域とそうでない地域に分断され、お互い行き来できない状態になることが予想されたそうです。それはいち早くアメリカ人の帰国を促しながら「ともだち」作戦と触れ込みで被災地で活躍していたアメリカ軍が、四号機の情報を知るや否や、戦艦をいつでも経てるように船尾を陸に向けたという事実とも一致します。

福島の事故は世界どこでも起こりうるというのが氏の結論です。GEのMARK 1という原子炉はそもそもが原子炉に比べて格納容器が小さいという批判が当初からあり、その欠点をベントといって穴をあけ圧力を逃そうとしたところに設計上の問題があるのではないかという指摘がありました。使用済み核燃料を冷やすジーゼル発電機が地震で機能できなくなっていた可能性が高く、その冷却プールにある使用済み核燃料が炎上する可能性は実験でも証明されており、4号機が大事故につながる危険性をアメリカははやくから知っていたものと思われます。

福島事故前はどの専門家も予測していなかったことが今回の事故であったそうです。それらの問題点は、WH社が小型、廉価、安全で売り込んでいるAP1000でも解決できず同じ問題を抱えているという指摘がありました。それなのにアメリカの大統領候補者は二人とも原子力発電を推進するという公約を掲げているのですから、あの国の権力(支配)構造はよく見えません。私はあのビルゲイツに注目しています。「ビル・ゲイツと中国が新型原子炉の実験」の意味すること」 http://www.oklos-che.com/2011/12/blog-post_1505.html

最後に氏が述べたことは、東電も保安委も現状の危機的状況を解決する想像力に決定的に欠けているということでした。外部の独立した原子力の専門家の助言を受けることを薦めているのですが、政府も東電も耳を傾けようとしないようです。彼らはIAEAの発言を重要視しているが、IAEAは原発推進を目的にしている機関であり、独立した第三者ではありえないと断言していました。韓国の読者にも伝えたい内容ですね


(2)パネルディスカション
田中三彦さん:
・東電と政府が最終報告書に記している津波が福島の原発の海岸に到達した時刻は、第一波が3月11日午後3時27分、第二波が3時35分ですが、それは1500メートル離れた地点でのことであることは政府も認めているそうです。そうすると計算上、実際に津波が福島原発海岸に到達したのは2分後の3時29分と3時37分ということになり、津波の前の地震によって燃料管の破損、冷却に関連する部品の破損があったと推定されるということでした。

地震によって原子力発電システムの重要部分の部品が破損することが津波の影響をさらに受け爆発につながったということが明らかにされると、現存する原発の再稼働はとてもおぼつかいないという結論にならざるをえず、津波の到達時間をわざと早めるという恣意的な作業を政府と東電はしていたことになります。

・原子力圧力の強弱をSR弁(原子炉圧力容器の主蒸気逃し安全弁)の開閉で調節されることから大きな音が何度もするにも拘らず、現場の技術者の証言では一切そのような音がしなかったということ自体、1号機は圧力がどこかに抜けていたことになり、そのことで圧力が急激に低下したと推測されのだが、このことは(証拠不足でか)国会事故調調報告書には触れていないそうです。

事故調は報告書で書かれた以外のことは墓場まで持っていき、口外してはならないということなので田中さんも司会の海部さんの質問に答えるのを躊躇する場面があったのですが、それでも大体の雰囲気はよくわかりました。即ち、地震による破損が事実起こっており、そのことが大爆発に関係していると推測できるということです(最終的に原子炉の中に入らないと確認できないのですが、それには後何年もかかるでしょう)。

・田中さんのご意見は、国会の要望で作られた報告書でその中に7項目の提言が記されているのだから、国会議員はまじめにそれと取り組んでほしい(なかったことにするな)ということにつきるようです。

・私が福島原発事故について原発メーカーの責任があるのではないか、それを曖昧なままにして海外輸出をしていることをどのように思うのかというい質問に田中さんは、「死の商人」「最悪」と応え、テレビなどで原発の輸出ができないと困るともっともらしく語る人たちがいるが、とんでもないことで、事故がおこった場合の責任がとれないことはすべきではないと断定されました。

原発メーカーの責任を徹底的に追及するという点では、今後、No Nukes Asia Actionsの活動に協力していただけるという強い印象をもちました。なお、メーカの製造物責任があるのではないかという福島瑞穂さんへの個人的な質問では、そう、調べようと思っているということでした。参考までに。

田原 牧さん:
・国会事故調査委員会という独立した委員会設けられたことは画期的なこと。これまで日本社会は戦争責任や、みなまた病の問題にしろ独立した委員会が設けられることはなく曖昧なままになされ背景の責任を問うということがなされなかった。しかし今回の事故意の具体的な提言にもかかわらず再稼働をしたということは、国会は機能不全に陥っていると言わざるをえない。

・デモの拡がりはいいことで、政府の実態は福島の人たちへの棄民政策ではないか。東電は賠償責任を遅らせ、買い叩こうとしているが、そこに会社として生き残ろうとする野心が見える。政府は先手を打って5月にはもう倒産させないと閣議決定してしまっている。彼らに刑事責任をとらせるべきではないか。国会議員の中には弁護士が多く、原発推進派もいるので、日弁論の中でそれらの弁護士を集めて公開討論会をやるべきではないか(ここで拍手)。

田原さんは集会後の個人的な話の場で、私の名刺から韓国名と川崎という地名から、30年前に取材した日立闘争、青丘社、地域活動と連想したらしく、私がまさにその「関係者」であるといことがわかり、お互い連絡をしあうことになりました。人の縁とは不思議なものですね。

ガンダーセンさん:
・政府は全体像を把握しておらず、問題解決にあたって想像力に決定的に欠けている。政府PRと国民の健康を守るにはどうするのかということが混同されている。例えば、小出しにしないで、福島県内の放射能の除去
をいつまでにどれほどの費用をかけてやるのかというコストの問題を認識し実行していない。

・福島の人たちから家のゴミをおくってもらい測定しているが、3万ベクレル、10万ベクレルの数値が検出されている。効果の高いフィルターを使い家の中を清掃するとか、濡らした布できれいにふき取るとか、今すぐにでも放射性物質を取り除く作業に力をいれなければならないのではないか。

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