2012年8月3日金曜日

モンゴル国のウラン開発・原発建設・核廃棄物処理場建設についてー今岡良子

今岡良子さんとは大阪大学のキャンパスで先月、私がモンゴルに行く直前にお会いしました。モンゴル語がまったくわからない私が聞いても、今岡さんの話すモンゴル語はとても
チャーミングに聞こえました。おそらく今岡さんは現在のモンゴルの情況に関して最も通じていらっしゃる日本人だと思います。それはネットを通じての情報だけでなく、自らFBに参加して現地の人と議論をし、その上、自らモンゴルでのフィールドワークに身を置き、実際の見聞、インタビューなどで情報を集めて情報の確認をするという作業をされている方だからです。

今岡さんの事務所で、つい今しがたウランバートルでNGOの緊急記者会見があったということでその記者会見の内容を通訳していただきながらPC画面を見つめました。内容は、前政府が政権交代のどさくさに紛れて、あろうことか、核廃棄物の保管施設と小型実験用原子炉をつくるプロジェクト予算を通したことに対する批判でした。それは昨年の5月に毎日新聞がスク―プした、モンゴルのウラン採掘、精錬、輸出、輸出国の核廃棄物の輸入、処置・保管、埋蔵というCFS(燃料一括サービス)構想を記した日米モの三ヶ国での秘密契約が、それぞれの政府は否定したものの実際に存在していたばかりか、そのCFS構想がいよいよ、金額、設置場所、工事開始時期まで明記されて具体化されることを意味していました。

今岡さんはこの切羽詰った重要なことが今、モンゴルで起こっており、そのことを現地で確認することはとても大切で、自分は8月1日に原水禁の科学者会議での報告があるから
今直ぐには行けないのが残念と語られ、その言葉で私は今回のモンゴル訪問の重要性をひしひしと感じました。

帰国後、東京新聞のロングインタビューを受けたのですが、記者は私の発言内容の真偽を今岡さんに連絡をとりながら確認をとり記事にしました。モンゴルでそのような重要なことが起こっていることを知らせた東京新聞の記事はまことにタイムリーでしたし、私たちが実際に現地でデモをしたことを知らせてくれていました。他のマスメディアはモンゴルの動向を一切伝えなかったこともあり、東京新聞の記事は大変意味のあるものだと思われます。実際、ツィター、Facebookでの反応も大きかったことを伝えておきます。

モンゴルでの7・16デモ、東京新聞で大きく報道
http://www.oklos-che.com/2012/08/blog-post.html
危機的な状況に瀕したモンゴルを訪れて
http://www.oklos-che.com/2012/07/blog-post_26.html

この論文は今岡さんが8月1日に発表されたものです。ご本人の了解を得て発表させていただきます。実際の講演はプロジェクターを使用し、最新の情報(モンゴル政府が予算案の目的を急遽変更した)を入れられたそうですが、ここではその時の写真を入れながら、私の責任において編集し、公開させていただきます。もし間違いがあればご本人のご指摘を受けて、訂正させていただきます。今起こっているモンゴルの情況だけでなく、その歴史的背景にまで言及された貴重な論文です。少し長いですが、ご一読ください。なお、最後にモンゴル人当事者の発言も英文で載せられておられます。この文も是非、お読みください。モンゴルの人たちがCFS構想をどのように捉えているのか、お分かりになると思います。                               
                                   崔 勝久

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モンゴル国のウラン開発・原発建設・核廃棄物処理場建設について 

 今岡良子
         大阪大学言語文化学科准教授

はじめに 
 大学3年生の時、モンゴル語の授業で、1957年に原水禁世界大会に参加したモンゴルの文豪ダムディンスレンの日本滞在記を読みました。「太陽の国日本には2つの黒点がある。1つは広島の原爆。もう1つは米軍基地。この黒点がなければ、太陽の国はもっと輝く国になるだろう。」マルクス・レーニン主義の作家は、短期滞在であっても資本主義の本質をとらえ、見せかけの繁栄に誤摩化されず、憧れの思いで読み続けたことを思い出します。今、彼が生きていたなら、太陽の国には3つ目の黒点、フクシマが増えたと言うでしょう。
 昨年5月9日の毎日新聞第一面の記事でご存知のように、日米モンゴル政府は核廃棄物処理場をモンゴルに建設する計画を密かに話し合っていました。つまり、モンゴルでは、ウラン開発、原発建設、核廃棄物という3つの黒点ができようとしています。この3つの黒点がなければ、モンゴルはもっと輝く国になるだろう、というメッセージを滋賀会場からモンゴルに送りたいと思います。

(1)社会主義時代のウラン資源開発
  第二次世界大戦後、ソ連主導でモンゴルの地質学調査を始め、100のウラン鉱を含んだ地質を発見し、1970年代にはドルノド県(ゴルバンボラク、マルダイ)、南ゴビ県(ハラート)には経済的に成り立つ鉱床があることを特定しました。1980年代に入ると、ソ連とモンゴルの秘密協定の下、本格的な探査が行なわれ、ドルノド県で露天掘り、1988年から1996年にかけて、ウランを産出、チタ州クラスノカメンスクに輸送、精製と最終加工を行ないました。
 ソ連は1991年で解体し、ウラン資源開発からも手をひくようになりました。

(2)市場経済移行後、地下資源開発の国際化
 市場経済移行後、モンゴル政府は家畜を私有化し、土地は住宅地を私有化しました。遊牧が行なわれる放牧地は、モンゴルの憲法では国有として保護されています。地下資源開発には新たな法律の制定が必要となりました。1994年の鉱物資源法の制定により、地下資源の探査計画に参入するモンゴルの企業が増え、1997年の鉱業法により外国資本が探査権、採鉱権を入手することができるようになりました。2006年に鉱物資源法を改正、ウランについては2007年に戦略的鉱床を定め、ウラン開発大手企業も本格的に進出します。

(3)2008年「モンゴル・ウラン・イニシアティブ」
 モンゴル政府は2008年4月以降、原子力長期計画を核エネルギー庁に移し、人員増加、それをまとめるゾリクト資源エネルギー大臣が「モンゴル・ウラン・イニシアティブ」という言葉を使うようになります。

①モンアトム社
 2009年3月、核エネルギー庁(NEA)の下に国営原子力企業MONATOMを設立し、ウラン鉱床の探査や採掘のライセンス発給、開発プロジェクトの実施を行なうようになります。大阪にはモンアトムジャパンが設立されました。そのウェブサイトは次のように業務を紹介しています。 

 「わが国の原子力平和利用の実績は他国に類を見ない高水準にありますが、海外進出の遅れや国内市場の縮小など、我が国独自の「技術的・人的ノウハウ」業績の機械が失われつつあります。モンゴル政府は2021年までの原子力発電所の建設を表明しており、自国におけるノウハウの業績に向け、外国企業の参画にも積極姿勢を見せております。モンアトムジャパンは、原子力開発にまつわるモンゴル国の各プロジェクトチームとの協調関係を構築し、わが国の原子力関連企業のプロジェクト参画に向けての環境整備を推進いたします。」図1には、ウランの輸出だけではなく、劣化ウランを再処理してMOX燃料として再利用できるようにすることや高レベル廃棄物処理のこともモンゴル国内の課題として書かれています。(筆者:現在、このウェブサイトは取り外されています)
 
ウランに関して、「ゆりかごから墓場まで」あらゆる事業の展開をしようという意気込みは下の図からもわかります。



図1 モンアトムジャパンの活動紹介

 また、図2では輸送インフラ整備をもう1つの重要なミッションと考えるモンアトムジャパンがウランを日本に運ぶルートを紹介しています。








図2 モンアトムジャパンの考えるウラン・核廃棄物ルート

 この国営モンアトム社が設立された2009年から2010年にかけて、モンゴルはロシア、中国、韓国、カナダ、フランス、インド、アメリカ、日本とウラン・原子力関連の覚書を締結しました。


②核主要国との協力覚書締結年度

表1 モンゴルがウラン・原子力関連の覚書を締結した国

時期
内容
締結機関
ロシア
2009年5月
ウラン探査と原子力エネルギーの利用に関する覚書
モンゴルNEAROSATOM


原子力エネルギー分野の人材育成に関する覚書
モンゴルNEAROSATOM
日本
2009年7月
原子力エネルギー協力文書(DOC
モンゴルNEAとと経済産業省資源エネルギー庁
インド
2009年9月
原子力エネルギー平和利用協力覚書
モンゴルNEAとインド核エネルギー省
フランス
200910
原子力エネルギー協力覚書
モンゴルNEAAREVA
中国
2010年6月
原子力エネルギー協力覚書
モンゴルNEAと中国CNNC
アメリカ
2010年9月
原子力エネルギー協力覚書
米国エネルギー省
(出典:原産協会国際部まとめ「モンゴルの原子力発電導入準備とウラン鉱業」より抽出、20111227日)

③日本とのかかわり
 ここで、ウランに関する日本との外務省のホームページから見ていくことにします。

 2009年7月16日に日本とモンゴル両政府は共同で新聞発表をしています。当時、モンゴルはバヤル首相、日本は麻生首相。A4で2ページ余りの報告の中に5行、ウランについての記述があります。

 双方は、両政府の関係当局間で、ウラン資源開発、投資環境の整備及び人材育成などを含む「原子力エネルギー及びウラン資源に関する協力覚書」の署名を行うに至ったことを歓迎し、今後、同分野での協力が効果的に進むことが有益であることを強調した。これに関し、モンゴル側は、モンゴル国のウラン資源開発について、日本側の協力及び日本国の企業の積極的な参加を希望している旨述べた。
 
と書かれています。

 20091217日の外務省のホームページにはプレスリリースのところで日本・モンゴル外相会談が掲載されている。当時、モンゴルはザンダンシャタル外務大臣、日本は岡田外務大臣。その第4項目目にウランについての記述があります。

 4.ザンダンシャタル大臣から、ウランをはじめとするモンゴルの鉱物資源開発に対して日本の協力を期待する旨発言がなされ、岡田大臣からは、外交当局としても可能な支援や取組を強化していきたい旨発言するとともに、日本企業が円滑に参画できる環境整備をお願いしたい旨発言しました。
 
 2010年7月22日の外務省ホームページの「日・モンゴル外相会談」というところに、ベトナムを訪れていた岡田外務大臣とザンダンシャタル外務大臣が30分間の会談をしたことが紹介されている。A4で1ページの報告の中にウランについての記述があります。

 岡田大臣より、両国関係を戦略的に発展させる上で、両国経済関係の促進は重要であり、世界最大規模のタバン・トルゴイ炭田やウラン鉱床等、モンゴルの鉱物資源開発への我が国企業の参入が実現することに強い関心と期待を表明した。(中略)
 双方は、昨年12月に両大臣間で一致をみた日・モンゴルEPA官民共同研究について、その第一回会合が6月に開催されたことを受け、今後、共同研究の報告も踏まえながら、EPA交渉の開始に向けた検討していくこととなった。

 2010年9月24日の外務省のホームページの「日・モンゴル首脳会談」というところに管首相が国連総会出席のために訪問中のニューヨークで、25分間、バトボルド首相と会談を行い、その概要を紹介しています。A4で1ページの報告の中にウランについての記述があります。

 管首相より、モンゴル政府の方針を歓迎し、石炭、銅、ウラン及びレアメタル等の共同開発における日本企業の参入実現への期待を表明するとともに、このような経済交流を進める上ではモンゴルにおけるビジネス環境の一層の整備が重要である旨指摘しました。また、双方は、現在官民共同研究が行なわれている日モンゴル経済連携協定(EPA)のプロセスを引き続き活性化させていくことで一致しました。

 201010月2日の外務省、管総理大臣のページに「日・モンゴル首脳と日本企業との懇談会について」のところで、日本は管首相、モンゴルはバトボルド首相の会談概要がまとめられている。A4で2ページの報告の中にウランという言葉が一カ所出てきます。

 3.続いて、日本の民間企業から、モンゴルのタバン・トルゴイ炭田、ウラン、レアアース等の鉱物資源開発や、輸送を含めた関連インフラ整備に関する日本経済界の関心につき述べました。
 
 と書かれています。この懇談会には、日本企業として伊藤忠商事、住友商事、新日本製鐵、双日、東芝、丸紅、三井物産、三菱商事、石油天然ガス・金属鉱物資源機構の名前が書かれています。

 20101115日から19日まで、エルベクドルジ大統領は、公式実務訪問賓客として訪日。訪問の目的にウランという言葉があります。

石炭、ウラン、レアメタル・レアアースをはじめとするモンゴルの鉱物資源開発における両国の協力推進を確認。

 20101119日の外務省、アジアのところに「戦略的パートナーシップ」構築に向けた日本・モンゴル共同声明(骨子)があり、そこにもウランという言葉が一カ所出て来ます。モンゴル側はエルベクドルジ大統領、日本側管首相。

(2)経済関係の更なる促進
モンゴルの鉱物資源(石炭、銅、ウラン、レアメタル・レアアース)開発における互恵的関係の構築
・「新成長戦略」に基づきモンゴルのインフラ整備に対する日本企業の取組支援に留意。
・日・モンゴル官民合同協議会の定期的開催
・日・モンゴルEPA交渉の2011年度早期の開始に向けた検討加速。
(略)
電力、農牧業、防災等の分野における若手専門家50名招へい。


(4)2011年日米モ核廃棄物処理場建設の秘密協定原案発覚
 2011年1月16日の「米モ共同声明」によると“The United States and Mongolia have decided to explore mutually advantageous activities in nuclear energy based on the September 2010 Memorandum of Understanding between the two countries. 

 この後、日本との間でも、2011年1月25日の外務省、プレスリリースのところに「モンゴル国家大会議議員団による前原外務大臣表敬」というA4で1ページ弱の報告があります。この中にはウランと原子力の平和利用という言葉が身受けられます。
 
 3.これを受け、ナランフー議員より、モンゴル国は「第三の隣国」である日本と緊密なパートナーシップを構築する方針であり、特に、ウラン等の鉱物資源開発原子力の平和利用を含むエネルギー分野において、技術と経験を有する日本との協力を強化していきたい旨述べました。
 4. 前原大臣は、ウラン、レアアース、石炭等のモンゴル鉱物資源開発における我が国との協力、また、EPA交渉の4月以降早期の開始の実現に向けて、モンゴル議会の果たす役割の重要性につき言及し、協力を求めました。また、原子力の平和利用に関して、日本の有する技術、優れたマネジメントに関して紹介しつつ、日本との協力の推進のためにも、モンゴルの関連法制度、投資環境の一層の整備を期待すると述べるとともに、議員団の今次調査の成果に対する期待を表明しました。

 同年2月15日には、外務省ホームページの管総理大臣のところに「モンゴル国家大会議議員団の管総理表敬」とあり、15分の表敬訪問中にウランという言葉が書かれています。

 3.管総理より、両国間の共通外交目標である「戦略的パートナーシップ」の構築に向けて、モンゴルとの関係をより一層発展させたいと述べるとともに、特に、石炭やウラン、レアメタルをはじめとするモンゴルの鉱物資源開発における両国の協力の促進、また、日・モンゴルEPAの4月以降早期の交渉開始に向けた期待を表明しました。

 2011年3月、モンゴルの社会問題を提起するGolomtというブログが、アメリカの”National Journal”誌が、オバマ大統領がモンゴルと国際的な放射性廃棄物施設建設について非公式に協議している、と警鐘を鳴らしました。
 この頃、日本とモンゴルの間で二国間の経済連携協定(EPA)の官民協同報告書がまとめられ、外務省のホームページに掲載されました。英語版にはその全容がわかるようにまとめられていますが、そこには

Peaceful use of nuclear energy (technology transfer and capacity building

という項目が書かれています。
 そして、東日本大震災が起こり、5月の毎日新聞のトップ記事が出ます。しかし、私は5月10日に前述のEPA関連の文書をプリントアウトしますが、その後、外務省はこの資料をホームページから取り外します。

 




しかし、モンゴル側はその後も積極的に動いていました。
 6月にエルベクドルジ大統領はオバマ大統領と会談、原子力エネルギー分野での関係強化を確認しました。

The United States and Mongolia have decided to explore mutually advantageous activities in nuclear energy based on the September 2010 Memorandum of Understanding between the two countries.  The United States recognized and supported the Mongolian Nuclear Initiative, and applauded Mongolia’s nuclear weapons free status.  Mongolia confirmed its support for President Obama’s Prague vision to include the call for a “New International Framework.”

(The WHITE HOUSE
U.S.-Mongolia%20Joint%20Statement%20%7C%20The%20White%20House.
webarchive/

 7月に共同通信が、「東芝がアメリカ政府高官に核廃棄物処理場の候補地としてモンゴルを薦めた」と報じたことをきっかけに、モンゴルの一般紙においても激しい議論が沸騰しました。

 7月23日の外務省ホームページの松本外務大臣のところにインドネシア訪問中に45分間行なわれた「日・モンゴル外相会談(概要)が掲載されている。モンゴル側からはザンダンシャタル外相。これまで、石炭や銅の次に名前があがっていたウランの言葉がなくなりました。しかし、原子力協力という言葉が書かれています。

4.以上の他、双方は、地域協力、民主主義国家間の協力、原子力協力について意見交換を行なった。
 
 松本大臣が社会党服部議員の質問に対して、核廃棄物処理場の受け入れは、現行法の下では難しい、という回答を得たが、この時の会談の内容だったのかもしれない。

(5)バトボルド首相とエルベクドルジ大統領の幕引き
 9月1日、核エネルギー庁長官のエンフバットは核廃棄物処理場建設問題について非公式の協議が行なわれたことを証言し、急病で倒れます。同日、バトボルド首相はツィッターなどを使って「外国の核廃棄物受け入れはしない」と明言しました。
 
 9月22日、エルベクドルジ大統領は国連総会で「モンゴルに核廃棄物を搬入されてはならない」と演説しました。国民的な反対運動が起こる前に首相と大統領が幕引きをしました。
  
 1213日、外務省ホームページの野田総理大臣のところには、13日に20分間、野田首相は、デンベレル国家大会議長の表敬訪問を受けた。A4で一枚未満の概要の中に、ウランという言葉はなかった。
 
 同じ日、玄葉外務大臣とデンベレル国会議長は20分間会見していますが、その内容にはウランという言葉はありません。

 2012年1月12日の外務省その他のところに「斎藤内閣官房副長官のモンゴル訪問(概要)があり、ここにはウランという言葉はありません。

「タバン・トルゴイ炭田開発をはじめとするモンゴルの鉱物資源及びインフラ開発への日・モンゴル間の協力の強化の重要性について述べたところ、モンゴル側より、我が国との間で「石炭、レアメタル等の鉱物資源分野における協力を具体化していくこと」
 
 というようにウランという言葉が書かれていません。このように外務省のホームページでは311後、ウランや原発という言葉が使われなくなります。

(6)2012年バトボルド首相、来日。EPA締結
  一方、2012年、311追悼集会に参加するために来日するバトボルド首相に共同通信がインタビューし、英字電子版の毎日新聞が伝えました。モンゴル側はウランや原発という言葉を使っています。

ULAN BATOR (Kyodo) -- Mongolian Prime Minister Sukhbaataryn Batbold has called for boosting economic cooperation with Japan in the areas of nuclear energy and development of natural resources such as rare earth minerals.In a recent interview with Kyodo News, Batbold said he plans to visit Japan in March and expressed eagerness to forge cooperation with Japan as Mongolia, which also has rich uranium reserves, plans to build its first nuclear power plant. "Japan possesses high technology in the peaceful use of nuclear power and has lessons from Fukushima," he said, ..(Mainichi Japan) February 21, 2012

 また、外務省の「世界が報じた日本」海外主要メディアの日本関連報道(3月1日〜3月8日)のページhttp://www.mofa.go.jp/mofaj/press/sekai/2012/0308.html
には、

7日付アルドチラル紙(モンゴル)(「原子力を支持するか,反対か」):
 福島原発の事故が発生してちょうど1年の時期にバトボルド蒙首相が訪日するが,同首相は共同通信へのインタビューで,ウラン開発や原発建設の面で日本と協力をする関心を有している点を強調した。311日の午前11時より予定されている反原子力デモ参加者は,首相のこうした立場を批判・非難することは明らかだ。

と記録が残っています。モンゴルのメディアも共同通信のインタビューを共有しています。

 
この共同通信のインタビューでは311の哀悼集会に参加する一方で、モンゴルのウランを売り、日本の原発をモンゴルに建設することが書かれていますが、来日時の共同記者会見には、「ウラン」も、「原発」も、出て来ませんでした。外務省のホームページにもこの言葉は使われていません。



(7)5月18日、2012年から2017年の投資計画予算案発覚 放射性廃棄物保管、加工、埋蔵施設建設関連施設が予算化

 5月18日、バトボルド首相、部局から出て来た投資計画予算案を承認。ここには、核廃棄物処理施設という言葉が使われています。

 この計画書は、部局案をバトボルド首相が5月18日に政府案としたものです。500ページを越えるPDFにまとめられ、最初の説明のところでは、まったく核関連施設について触れられていませんが、最後の表に突然と4つの核関連施設の予算がつけられています。

モンゴル政府 投資計画2012年〜2017年 1T:1ドル:80円:1300T

計画内容
実施
年度
予算
2013
2014
2015
ダランジャルガラン郡で放射性廃棄物保管、加工、埋蔵施設建設(ドルノゴビ県)民間資本
20132014
50T
20T
30T

マルダイ村で放射性廃棄物保管、加工、埋蔵施設建設(ドルノド県)民間資本
20142015
50T

20T
30T
放射性鉱物資源の保管、埋蔵施設と核化学実験所(アルダルトルゴイ)国費
20132014
10T

4億T
6億T

実験炉(ウランバートル市)国費
20132014
20T
4億T
6億T


 上の表は、選挙後、6月の中旬以降、反核団体が見つけ、FBなどインターネット上で共有されるようになります。

(8)予算案閣議決定に反発する反核団体
  そして、6月の選挙で核関連施設建設反対を明言した野党が勝ちました。バトボルド政権最後の国会の日にあたる7月4日、「2012年から17年にかけての投資計画」の予算がわずか2時間の議論で通過させたと反核団体は怒り、首相、外務大臣、エネルギー大臣を提訴すると、記者会見を開きました。

 連立を組まないと成り立たない新政権は、この項目を削除するという姿勢を見せていますが、7月16日現在、動きがありません。

(9)閣議決定された予算項目から放射性廃棄物保管、加工、埋蔵という言葉が消える。
 しかし、7月26日の夜、反核運動をしているAさんがFBの私のコメントに返事を書き、「国家発展改革委員会のホームページに閣議決定した予算が掲載された。恐ろしい。もっとひどいことになっている。予算の金額は同じで、項目が変わっている。予算案には『放射性廃棄物を保管、加工、埋蔵する施設を建設する』と書いていたのが、決定した予算には『放射能を測定する施設』と名付けている。」
   閣議決定された投資予算の資料を見ると、予算案では表のトップに核廃棄物関連の項目が書かれていたが、今回は中程にある。予算立案者は核エネルギー長、首相が最終責任を負っている。「6月26日に印刷」と書かれている。

番号
計画名
期間、場所
総額
2013
2014
2015
2016

2017
 
 
 
 
 
 
 
 

投資
 
 
570
94
186
100
190

 
 
 
 
 
 
 
 

1
鉱山、採掘
 
110
24
56
30
 

 
 
 
 
 
 
 
 

 
鉱山、採掘の補助事業
 
110
24
56
30
 

 
 
 
 
 
 
 
 

1
ダランジャルガラン郡に放射線測定施設建設(ドルノゴビ県)
2013
2014
50
20
30
 
 

 
民間投資
国内
 
 
 
 
 

2
マルダイ村に放射線測定施設建設(ドルノド県)
20142015
50
 
20
30
 

 
民間投資
国内
 
 
 
 
 

3
放射性資源の放射化学実験所(アルダルトルゴイ)
20132014
10
4
6
 
 

 
国費
国内
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 

2
専門科学分野への投資
 
460
70
130
70
190

 
 
 
 
 
 
 
 

1
国立核研究所の建物(ウランバートル)
20152016
260
 
 
70
190

 
国費
国内
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 

2
核研究実験機器(ウランバートル)
20132014
200
70
130
 
 

 
国費
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 
 
 
 

3
技術支援/プロジェクト準備
 
108.9
26.90
15
20
20
24
 
 
 
 
 
 
 
 
 
1
技術、経済的研究
 
97
26.9
15
20
20
24
 
 
 
 
 
 
 
 
 
2
核物理学の技術的経済的研究
20132017
97
15
15
20
20
24
 
国費
国内
 
 
 
 


 
 
 
 
 




 
技術、経済的根拠
 
11.9
11.9




 
 
 
 
 




3
放射性資源のラジオ化学実験所の技術、経済的研究 ウランバートル
2013-2013
1.9
1.9




 
国費
国内
 
 




 
 
 
 
 




4
核実験設備の研究 ウランバートル
20132013
10
10




 
国費
 
 
 





 Aさんの言うように、「放射性物質を保管、加工、埋蔵する」という言葉はなく、放射線測定の施設に変わっている。しかし、それ以外は、核に関する基礎研究、実験をするための基盤づくりに力を入れているようにも見えます。

10)国家発展改革委員会による幕引き
  Aさんは、7月5日の『ウヌードゥル』紙をFBに紹介しました。7月11日のナーダムの前後は、仕事も手につかないほど、モンゴル中がお祭りムードになります。当時、反核団体の誰もこの記事を取り上げる人はおらず、AさんがFBで取り上げたことをきっかけに、関心が高まっていきます。

 「ウヌードゥル」紙は7月4日に閣議決定し、国家発展改革委員会の声明文を掲載している。

 要点は、この投資計画には工場や事業所のしばらく使用しない、使用するには設備が充分ではない、将来使用する可能性がなくなった放射線源、それから生み出された廃棄物を保管し、管理する施設の問題については『モンゴル政府2013年から2017年の投資計画』には反映していない、と廃棄物保管問題を否定しています。
 この文章からは外国からの核廃棄物、国内の試験的に採掘しているウラン鉱山から出る残土の処理をするような大規模な施設よりも、実験所や病院で使われる極少量の放射性物質やそれを使った時に使用した手袋などの汚染物質の処理をイメージさせます。
 もう1つの要点は、そのような工場や事業所の放射線源から出る廃棄物の保管、管理施設は、核エネルギー庁が核エネルギー法に従い、一カ所にまとめ、管理しなければならない。それに関する、2011年2月18日の1/203号中期投資計画と誤解したようだ、と書いている。

 仮に、反核団体の誤解ならば、なぜ、モンゴル政府は、2013年から2017年の投資計画書の予算案の一番最初の項目に、放射性廃棄物関連の4項目を書いたのか?誤解を生じさせた責任を追及しなければならない。

 また、「ウヌードゥル」紙は、次のように締めくくっている。
 国家発展改革委員会は、今回新しく作る研究施設などは、放射線を管理し、国民の安全を守るためのものである。それを曲解し、政治的利用することがないようにと述べている。

 「ウヌードゥル」紙は国家発展改革委員会の文書をそのまま掲載し、最後は反核団体を牽制する文で記事を終えている。マスコミなら、この表にあげられた支出項目と、エルベクドルジ大統領やバトボルド首相、ザンダンシャタル外務大臣、ゾリクト鉱物資源エネルギー大臣がオバマ大統領、管前首相、野田首相、岡田外務大臣らに会い、締結した協定との関連性について、1つずつ質問し、国民の前に明らかにすべきだろうと思います。

 このように日本政府は311後、ウランや原発に関連する言葉を使わなくなり、モンゴル政府は毎日新聞のスクープ以降、慎重になり、反核団体やマスコミが騒ぐと、彼らを悪者にし、政府は法に従って国民を守るために頑張っている姿勢を見せます。その言葉の通り、国民の安全を守らせるよう、反核団体やマスコミは目を光らせておかなければなりません。
 一方、情報が表に出て来にくくなり、証拠を掴むことが難しくなってきました。しかし、ウランによって利益をえたい人たちがいる限り、廃棄物処理で困る国がある限り、いつでも再燃する問題であろうと思います。
 それまでの間に、国民は自分で知的に武装しておかなければならないし、そのために国の枠を超えた協力が必要となってくるでしょう。

 わりに
  311の追悼集会以降、野田首相が再稼働に意欲を示したのは、モンゴルがウラン燃料を日本に提供し、日本では建設できない原発と処理できない廃棄物を受け入れるという秘密協定があったのではないか、と私は仮説を立てています。これから証明していくことになるでしょう。

 3つずつ黒点をもった日本とモンゴル。滅びのための相互的、互恵的二国間協定で心中するのではなく、自然に学び、人間の英知を集めて創造的に生きる関係を築いていきましょう。社会主義の時代と違って、ネットなどを通じて、尊敬すべき個人を探り当て、つながることのできる時代です。


ここに、モンゴル人の友人のメッセージを紹介します。アメリカに住んでも、資本主義の本質を把握し、見せかけの繁栄に誤摩化されない、モンゴル人は健在です。彼女は若い反核運動のリーダーの1人、モンゴルの希望です。

Mongolia’s Nuclear Future: Truth and Lies
                                                                    E. Amarlin              http://golomt.org
For many Mongolians, the words “March 2011” bring back the memories of the nuclear meltdown in Japan followed by shocking revelations of secret political plots to store nuclear waste in Mongolia. Yet, to date, the artfully woven web of deceit and political intrigues continue to cloud people’s minds leaving the Mongolians confused, angry, and often powerless to fight.

After the earthquake and tsunami, and a deadly accident at the Fukushima-Daiichi nuclear plant, Mongolian people were alarmed and genuinely mourned the losses in Japan. Then, just a few weeks later, when the information about secret nuclear talks between Mongolia, Japan and the United States about the construction of a nuclear waste repository in Mongolia leaked to the media, the same people responded with anger, shock and disbelief. All three governments vigorously denied the media reports, but, gradually, as the evidence continued to build, their masks of innocence began to slip, revealing the dark secrets underneath.

The general public in Mongolia strongly opposes the idea of hosting a nuclear waste facility. However, many feel confused about nuclear power due to the limited information and lack of knowledge about nuclear power and radiation. In the past few years Mongolian public has been intentionally misled by powerful government campaigns. To date, nuclear energy is promoted as a symbol of safety, development and prosperity. A Mongolian–born Stanford visiting professor announces on TV that “nuclear waste is a valuable resource”[1]. Nuclear accidents in Chernobyl and Fukushima are described as “unfortunate events” that Mongolia would surely elude. Facts are intentionally distorted, and those with opposing viewpoints are called names like “foreign spies” who are trying to impede the country’s progress.    

Despite that a small group of anti-nuclear activists connected via social media have not given up. They have been making efforts to reach out to the masses, but with most media sources owned and censored by politicians, their voices are frequently muffled. Poverty, corruption, lack of infrastructure, sparse population, and limited internet access impose additional hindrances to their efforts to uncover the truth about nuclear power. Besides, after the tragic events of July 1, 2008, when the rigged parliamentary elections triggered public riots and police shootings that killed five persons, many Mongolian citizens are afraid to speak up. One example is a recent peaceful protest[2] held against uranium mining, nuclear power plant construction, and nuclear fuel production and leasing held in Ulaanbaatar on March 11, 2012. While over 600 hundred persons signed up on the Facebook, only about 150 attended the event. Many protesters remained deeply concerned about being identified even wearing “V for Vendetta” masks. After the demonstration, at least one person admitted to watching from distance afraid of joining in.      

Unfortunately, their fears are grounded. The Ulaanbaatar city government had refused to register the peaceful demonstration, citing possible “obstruction to traffic that may cause public displeasure.” Abundant police forces were present at the event-- they demanded the protesters disperse and confiscated their speech. Intelligence officers in civilian clothes interrogated and intimidated the event organizers.     

Meanwhile, the government continues covertly orchestrating its nuclear business. New laws and significant amendments to the existing ones have been covertly adopted. New contracts have been signed but the details are withheld from public. Studies have been conducted to determine the locations for the waste facility and a new nuclear plant. New uranium licenses have been issued. Local communities are deceived by promises of safety and benefits of the uranium mining industry, and their complaints are ignored. Few past clashes already proved that herders and rural villagers are powerless against corrupt officials and armed guards employed by mining companies.

Uranium mining is underway, with large corporations impatiently eyeing Mongolian uranium resources estimated at 1.4 million tons. The French-owned “Areva” has already started uranium extraction via the in-situ leaching method --the uranium will apparently be processed into fuel by the Japanese “Mitsubishi.” The nuclear fuel will then be loaned to the United Arab Emirates, India, Japan, Korea, Taiwan and others. The spent nuclear fuel rods will be returned to Mongolia to continue emitting lethal radiation for hundreds of thousand years. Storing nuclear waste in Mongolia appears safe as the country has neither technology nor ambitions to enrich fissile material to weapons grade. This is a part of the “comprehensive fuel service” (CFS) concealed under the project name “Mongolia’s Nuclear Initiative”[3],[4]. The latter, in turn, seems to be a part of the Prague Initiative[5] and the initiative to build a multinational repository funded by the US, Nuclear Threat initiative, European Union and a number of countries including the United Arab Emirates[6].

Sure, the project seems beneficial and will possibly yield high profits. The International Atomic Energy Agency will be happy having resolved at least one region’s nuclear waste and proliferation issues. The project will also help the United States to supply nuclear reactors to the Arab Emirates yet maintain and encourage non-proliferation in the Middle East. The Japanese, that have no place or desire to store the deadly spent nuclear fuel, will be able to continue using nuclear energy. It will remove lethal waste from South Korea and Taiwan and contribute to the global nonproliferation. Finally, the corrupt Mongolian politicians who expect to pocket billions from the pending deal will benefit as well.
Not for regular Mongolians, though. But who cares?  



[1] Dr. Agvaanluvsan Undraa, TV program “Unfinished dialogue” broadcast on May 19, 2011
[2] The event was held at Sukhbaatar Square, main square in the capital of Mongolia on Sunday, March 11, 2012, by the activists from the Anti-Nuclear Movement of Mongolia Facebook group.
[3] Wikileaks. Report on A. Undraa’s meeting with US Ambassador Addleton, December 29, 2009. http://wikileaks.org/cable/2009/12/09ULAANBAATAR375.html
[4] US Mongolia joint statement issued after private meeting of the Mongolian President T. Elbegdorj with president B. Obama. June 16, 2011. http://www.whitehouse.gov/the-press-office/2011/06/16/us-mongolia-joint-statement
[5] Assessing implementation of the 2010 Nuclear Posture Review. Kevin Kallmyer, June 2011. http://csis.org/files/publication/110826_NPR_Imp.pdf
[6] Managing the Nuclear Fuel Cycle: Policy Implications of Expanding Global Access to Nuclear Power. Nikitin, Andrews, Holt. July 1, 2009. http://www.fas.org/sgp/crs/nuke/RL34234.pdf

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