2012年7月29日日曜日

モンゴルこそアジアの核問題のカギを握る国


先週は妻が保育園の休みを取っていたので、上野美術館に行ってレンブラントやフェルメールを観ました。あの17世紀のオランダの名作は単なる写実主義ではなく、絵画の技巧を含め作者の明確な主張があることがよくわかりました。一見単なる肖像画のように見えて、甲冑の質感を浮かび上げながら、肖像画を通してその人物の人となりを大胆に描くいているのには驚きました。はやり名画って直接観るものですね。

しかし何よりもヨーロッパの文化がアジアへの植民地による富の上で成り立っていることも実感しました。あのフェルマールの少女のターバンはトルコ風であるとか。ヨーロッパの人権の主張はアジアへの搾取を当然のこととしていたふしがあります。これまではヨーロッパの思想は思想として読んできたのですが、昨年、JSミルの自伝を読み、ふと疑問を感じました。


7月23日、横浜国大における西川長夫さんの講義
人権思想と民主主義の思想を徹底して深めてきたヨーロッパにあって、植民地化の民衆の実態や痛みに触れていないという点に気付きました。これは戦前の日本の姿とも重なりますし、現在の原発輸出とモンゴルへの核廃棄物を持ち込むことに鈍感なこととも重なるように思います。少し唐突な印象をもたれるかもしれませんが、みなさんの御意見をお聞かせください。私は西川長夫さんの国民国家を批判する視点を考えれば考えるほど、植民地主義を当然視してきた西洋社会のあり方と、人権・民主主義(及び文明・文化)なるものの限界を感じるのです。

このところツイターとFacebookで継続的にモンゴルのことに触れて、多くの反応がありました。長文のモンゴルのリポートを書きましたが(「危機的な状況に瀕したモンゴルを訪れて」 http://www.oklos-che.com/2012/07/blog-post_26.html )、その後、モンゴル政府のHP(国家発展改革委員会)は核関連プロジェクトの予算案が決定したことを伝えながら、目的を変更したと伝えられてきました。運動側から最も厳しく批判された「放射性廃棄物保管、加工、埋蔵施設建設」は「放射線測定施設建設」に、また、「実験炉」は「核研究実験機器」にと変更されています。しかしこれは批判をかわすための小手先の「目的変更」です。現地での徹底的な検証が望まれます。

私は日本の外務省のモンゴルに関する記事を読みましたが、この2年間の日本とモンゴル政府の異常な接近、「戦略的パートナー」への格上げ、モンゴルへの国際貢献の7割を日本が占めること、昨年の毎日新聞のすっぱ抜き以降、ウランと原発に関する単語を極力使わなくしていること、日本・モンゴル経済連携協定(EPA)締結への異常な執着、そしてその内容の官民共同研究報告書のHPからの削除、モンゴル首脳陣の原発建設、ウラン発掘と核廃棄物の引き受けに関する発言の削除など、目につきまました。

これらは逆にモンゴルが、日本、アメリカ、韓国など「原発大国」の最大のアキレス腱である使用済み核燃料の処理(地下への埋蔵)をモンゴルに定めてその準備を進めていることを意味するでしょう。

それと昨日台湾の活動家と会って話したのですが、自分の不明を恥じます。台湾の第4原発はなんと日本の原発メーカ御三家(東芝、日立、三菱)がアメリカGEの下請けになって建設してきたんですね。しかし台湾国内の反対や事故で10年経っても完成していないとのこと。かつてその3社への不買運動があったとのこと。しかし日本では一部の運動に終わったことを知りました。その原発の存亡は台湾の自治と関係するのですが、台湾は中国との関係でアメリカの言い分を聞くしかないのでしょうか。

台湾政府は廃棄物は国外に持ち出さないと言明しているそうですが、日本と同じく地震の多い台湾に最終埋め立て地を求めることなどできるはずはないと思われます。本当に日本、韓国、台湾とアジアの成長の象徴であったこの3ヶ国が「原発大国」になってしまっている現実は、いずれもアメリカの核戦略から来るものと判断せざるをえず、独自の政策、独自の国づくりができていなかったと改めて思わざるをえないですね。

改めて国際連帯運動の必要性を痛感します。台湾政府は使用済み核燃料を国内に置くと言明しているそうですが、あの地震の多い国では不可能でしょう。台湾もアメリカの傘下でモンゴルに埋めるつもりなのでしょう。いずれにしてもモンゴルこそ、アジアの核問題のカギを握る国であるという私の確信はますます強まります。

2 件のコメント:

  1. 崔勝久様、コメント欄を利用して、初めて私信を送らせてもらいます。SAM KANNO(姜ヘイ勇)といいます。3.11以来オクロスを共感を抱いて欠かさず読ませていただいております。ロサンゼルスに住んでおりますが、このたび「原発いらない福島の女たち」の椎名千恵子さんのLA集会をお手伝いすることを通じてサンフランシスコの萩谷海さんと知り合いました。海さんが崔様をよくご存知で、なにか崔様が西海岸に活動のつながりを持ちたいとのお考えをお持ちであると伺いました。このブログでも英語版をおだしになりたいとのこともうかがいました。なにか私にお手伝いが出来ればと思いこれを書いております。ただしわたしに英語力はまったくありません(ここは重要です)。ただつなぐ役目なら果せるかなと思っています。
    実は私は45年ほど前から崔様のことは存じております(お会いしたことはありません)。朴さんの日立就職差別裁判でご活躍のころです。そのころ私は在日大韓基督教東京教会に通っておりました。李仁夏牧師は副牧師だったかと思います。申英子牧師は船橋教会で伝道師だったかと思います。私は大学で(在日朝鮮人でありながら)日本人と同じ課題を背負って活動しておりました。そのころキリスト教とは離れております。紆余曲折があって、1994年に渡米し以後LAの日系社会で生活しております。
    3.11以来日本の状況が非常に心配です。もちろん対岸の火としてではなく、「原発体制」についてはそもそもの大本の原因がこの米国にあるとおもっています。このアメリカを何とかしなくては日本、朝鮮、台湾、モンゴル、はたまた中国を入れたとしてもどうにもならない問題だと思っています。現在はリタイアして比較的時間もありますので出来る限りのお手伝いをさせていただけたらと思っています。Kang

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  2. SAM KANNO(姜ヘイ勇)さんへ

    それでは私の大先輩ですね。うわ、うれしいですね。
    私のメールアドレスは、skchoi777@gmail.com です。
    或いは、FB: http://facebook.com/seungkoo.choi

    こちらの方で意見や情報の交換をしましょう。それにしても
    海さんとお知り合いとは驚きました。これからもよろしくお願いします。

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