2012年4月30日月曜日

原発の海外輸出を止めるにはどうすればいいのかー近い将来の日本の姿の予感


4月30日の朝日新聞の朝刊3面の下の方に小さく、「日仏とロシアに原発建設交渉権 ヨルダン」という見出しがありました。三菱重工と仏アレバ連合とロシアの会社が競い、年内に決定されるそうです。建設予定地は首都アンマンの近郊、冷却水は首都の生活排水を再利用するそうでうが、ヨルダン国内でも反対運動があるそうです。朝日が入手した資料によると、「福島の事故で得た教訓を含め、最大限の安全を確保することを考慮して決定した」そうです。

福島の事故の原因も明らかにされずにおり、津波の前に地震によって配管が破損されたことを政府でさえ無視できない状況になってきています。そして日本では間もなく54基すべての原子炉は運転停止されます。大飯原発の再稼働を巡って地元や近隣の反対が大きくなってきているのに、どうしてベトナムに次ぎ、ヨルダンに原発を輸出しようとするのでしょうか。勿論、民間の三菱が応募しているのは、その前に国会決議で、日本とヨルダンの原子力平和利用の協定が締結されたからに他なりません。国家的プロジェクトです。再稼働の動きが同時に、海外への原発は許さないという運動になっていくのでしょうか。

野田首相は昨年9月27日の国会での答弁で、「我が国としては、今回の東京電力株式会社福島第一原子力発電所の事故の教訓を生かしつつ、ヨルダン政府の意向も踏まえて、高い水準の原子力安全が実現されるよう、協力してまいりたい」と語っています。これは再稼働と同じ論理です。「ヨルダン政府の意向を踏まえ」てもヨルダン国民の意向は無視するのでしょうか?

あの狭い、地震が多発する中近東の地で、そして何よりもイスラエル・パレスチナの争いが続くすぐそばで、ただ相手国政府の意向ということで、日本が原発輸出を進めていいのでしょうか? 日本の国会は国内の再稼働については慎重に進めるべきだという声がようやく高まってきましたが、それは同時に海外への輸出を許さないという主張と連動すべきです。

いずれ近いうちに文章をまとめますが、戦後の日本社会が「原発体制」となってきた背景として、日米関係や単に保守派政治家の策動というレベルではなく、日本社会が核に反対しながらも原子力の平和利用に邁進したのは何故か、ここにメスを入れる必要があると考えます。荒っぽい言い方ですが、これは豊かさを求めてきた日本社会が、結局は、大量生産・大量消費・大量廃棄という資本主義社会のメカニズムを疑いを入れず受け入れたことによって、それを前提にした社会構造を作り上げ、戦後も戦前と同じく植民地主義政策を続けてきたということなるのだと思います。

3・11によって、国内においては必然的に地方格差、国民の生活格差が露呈されるようになり、相も変わらず外国人への差別は温存され、そして何よりも戦後民主主義なるものは形骸化されているということが明らかになってきたのではないかと私は考えます。国内の様々な矛盾は、これまで目に見えなかったゴミの問題として、何よりも瓦礫の問題として浮上しはじめています。これは地方の住民自治に中央の権力が露骨に介入していることを意味します。戦後の均一化された日本社会、中産階級化した国民という幻想が原発の安全神話の崩壊と共に、すべて「作られた神話」であったことが表面化して来たのではないかと思います。

日本の戦後の植民地主義は海外で植民地をつくるという露骨なことはしなくなりますが、経済の面では水面下での公害の「輸出」、原発の輸出という形で表れているのではないでしょうか。しかしこのようなことは日本の戦後の運動が一国主義の枠を越えられず、全体としても戦前の植民地主義と正面から対峙してこなかったために、まだまだ圧倒的にマスコミ、教育によって人々の目は暗まされており、さらにナショナリズムの刺激によって真実を直視できない状態にされていると言って過言ではないでしょう。

東京、名古屋、大阪という日本を代表する大都市に極右的な首長が選ばれているということから近い将来の日本の姿を予感し、暗澹たる気持ちになるというのも正直な気持ちです。しかしそこをなんとか突破したいのです。まさにこれから本当の闘いがはじまるという予感がします。

参考資料:
「原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とヨルダン・ハシェミット王国政府との間の協定」について(略称:日・ヨルダン原子力協定)は、既に参議院、衆議院で通過されています。
・ヨルダンとの原子力協定案を可決 原発事故後初の国際協定 参院は31日夕の本会議で、日本からヨルダンに原子力技術を供与するための原子力平和利用協定締結承認案件を、与党などの賛成多数で可決した。協定は参院先議。2011/03/31 18:00   【共同通信】
・日本がヨルダン、ロシア、韓国、ベトナムの4カ国とそれぞれ結ぶ原子力協定が2日、衆院外務委員会で民主、自民の賛成多数で可決された。2011年12月2日 朝日新聞




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