2011年8月21日日曜日

コミュニティ放送の運営から除外される外国籍住民 ~電波法の外国人差別を正す~

FaceBookでいつも具体的な実践と重要な問題提起をしている吉田明彦さんから、「絶望的な悲しみと怒りをもって読んだ」というコメントと共に、「神戸 長田の多文化・多言語コミュニティ放送局 FMわぃわぃ::コミュニティ放送の運営から除外される外国籍住民 ~電波法の外国人差別を正す~」というメッセージが送られてきました。

従来の電波法によれば、「外国籍の役員が議決権の5分の1を超えてはならない」「外国籍の役員は業務を執行できない」「議決権を持つ会員(または株主)のうち外国籍の会員(または株主)の比率が20%を超えてはならない」ことになっていたのですが、今回、神戸大震災以降地域において在日外国人に対する大きな働きをしてきたFMわぃわぃが株式会社から特定非営利活動法人に変え放送免許を申請したとたん、従来の電波法を順守していたにもかかわらず、「外国籍住民は放送局の理事、取締役になれない」、「非常勤、常勤を問わず、理事はすべて業務執行権を持つことになることが判明した」という通達が総務省近畿総合通信局の担当者からなされました。「これは実質的には、日本の放送局の役員に在日外国人がなれないということです。」

日本社会は、どうして国籍・民族を越えて<協働>の働きをしようとする在日外国人を差別・排除しようとするのでしょうか。

崔 勝久

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2011年4月1日に運営母体を株式会社から特定非営利活動法人に変えたFMわぃわぃが、在日外国人に差別的な電波法の壁にぶつかりました。
 
FMわぃわぃの始まりは、阪神淡路大震災時に在日コリアンが被災者に震災情報を発信したミニFM局です。その動きに日本人やベトナム人などが合流し、一緒に救援、復興に取り組んできました。

その活動を震災救援時だけでなく、復興のまちづくりの中に位置づけていくために、多くの市民から寄せられた寄付金を資本金にして運営母体「株式会社エフエムわいわい」をつくり、1996年1月にコミュニティ放送の免許を取得しました。

以来、声なき声を社会に伝え、コミュニティの課題解決と異文化間対話の促進に貢献すべく活動を続けてきたのがFMわぃわぃです。

そして昨年、国籍や民族にかかわらず、より多くの市民が参加するだけでなく、オーナーとして支えていくコミュニティ放送局になることを目的に「特定非営利活動法人エフエムわいわい」を設立し、放送免許を「株式会社エフエムわいわい」から承継するため、放送免許を交付する総務省近畿総合通信局への申請を進めました。

外国籍住民は放送局の理事、取締役になれない

 放送局を運営する法人は、1950年に施行された電波法第5条第4項第2号によって、その法人の種別にかかわらず、「外国籍の役員が議決権の5分の1を超えてはならない」「外国籍の役員は業務を執行できない」「議決権を持つ会員(または株主)のうち外国籍の会員(または株主)の比率が20%を超えてはならない」ことになっています。

「特定非営利活動法人エフエムわいわい」は放送を継続していくことの地域社会に対する責任を鑑み、遺憾ながらも電波法に従い、理事8人のうち1人を非常勤の外国籍理事(韓国籍)とし、総会議決権を持つ会員の外国籍比率も20%以下としました。

 ところが、総務省近畿総合通信局の担当者に確認の上で放送免許承継の申請書類をいよいよ提出しようとしたときに、「特定非営利活動法人エフエムわいわいの役員構成では放送免許を交付できない」という連絡が、総務省近畿総合通信局の担当者から入りました。

理由を質すと「非常勤、常勤を問わず、理事はすべて業務執行権を持つことになることが判明した」という説明がなされました。

総務省の本省(霞ヶ関)にも確認をしたところ、業務執行権とは「直接業務を執行していない役員(社外取締役等)であっても、取締役会や役員会において議決権を有している以上、業務を執行する役員に含まれる」というのが公式見解でした。

 これは実質的には、日本の放送局の役員に在日外国人がなれないということです。「公共資源である電波が外国人に奪われない」ことを目的に制定されたこの法律が60年を越えて多文化・多言語コミュニティラジオ局に襲いかかったのです。

法律そのものの矛盾が露呈したことになります。

東日本大震災の災害ラジオ局でも課題浮上

 東日本大震災の被災地では、コミュニティ放送局や急遽立ち上がった十数局の災害ラジオ局が被災者にきめ細かな情報を伝えるとともに、寄り添い、心の癒しとなる放送を続けています。

そして、阪神淡路大震災時のFMわぃわぃと同様に、日本語のわからない外国人被災者に多言語で情報を伝えている放送局もあります。

しかし、一方では、外国人被災者がいるにもかかわらず「重要性が低い」という運営側(自治体)の判断で、外国語放送の時間を別の内容に変えてしまった放送局もあります。

外国人被災者の生の声が、運営側に届いていないため、そういった事態が起こるのです。

定住外国人の参画(所有、運営、参加)は不可欠

「コミュニティ放送とは、声なき声を社会に伝え、コミュニティの課題解決と異文化間対話の促進に貢献するもの」と国連や欧州議会では定義されています。

しかし、日本では商業放送(つまり民放)と同じくくりで、放送法、電波法のもとで運用されています。

多文化で豊かなコミュニティづくりには在日外国人のコミュニティ放送への参画、つまり所有、運営、および参加は不可欠です。

 法やルールはその本来の目的が何であるのかを、時代や状況に応じていつも柔軟に振り返ることが必要です。

もし矛盾があるのなら勇気をもって変えていく謙虚さが必要です。人々や社会が日々成長し進歩しているこの時代の中で恥ずかしくない法やルールであってほしい。

FMわぃわぃは仲間達とともに、その運動に取り組んでいきます。


2011年7月9日
特定非営利活動法人エフエムわいわい 一同
(http://www.tcc117.org/fmyy/index.php?e=1247)




4 件のコメント:

  1. 崔勝久様

     西中です。土曜日に行われた、川崎市の震災対応の
    住民会議に参加できず残念でした。地方自治体が、
    住民主権の声を上げていくことが、今後より一層重要に
    なって来ると思いますので(外国人地方参政権も!!)、
    またこのような取り組みがあれば、是非、教えて下さい。

    さて、下記のコミュニティ放送から排除される外国籍役員の
    件、本当に酷いですね!電波法改悪の件は、色々話題になりましたが、
    外国籍役員の排除については知りませんでした。
    私が不勉強だっただけかもしれませんが、
    法改悪反対の運動の視野も狭かったのかもしれません。

    実は、私、大阪生野区に在住していたころ、FMサランという
    コミュニティラジオに関わっていたことがありました。
    阪神淡路大震災発生の数日後に、FMサランのスタッフと一緒に
    ラジオ放送機材一式を車に積み込み、神戸長田区に持ち込んだのが
    FMわぃわぃの原点でもあります。以来、FMわぃわぃとは、
    色々おつきあいさせてもらっています。

    このところあまり関係していなかったのですが、
    この件は、是非、取材したいと思います。
    地デジ対応以降の総務省のメディア統合政策は
    絶対に容認できません。既得権益を守ること
    しか考えないマスコミも、このままでは
    自滅の道しか残っていないのに・・・・
    自分で自分の首を締めて一体どうするつもり
    なんでしょうね??

    在特会のような排外主義勢力対策も必要ですが、
    この程度の勢力にあたふたする前に、
    もっと危険なのは、行財政改革や情報一元化の
    名の下に、様々な行政分野で進行してきた
    新たな中央集権主義の再編だと思います。
    入管法しかり、電波法しかり、社会保障番号制
    しかり・・・・・

    震災・原発対応に追われているうちに、とんでもない、
    がんじがらめの排他的な世の中になっていないように、
    もっと多様な取り組みが必要ですね。

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  2. 崔勝久さま

     FMワイワイの件、問題が混乱しているようです。
     電波法の規定そのものを問題にするという方向もあり
    得ますが、テレビ局やラジオ局をすべて他国に支配され
    るのを防ぐという要素は、国民国家の法律である以上、
    全くなしにするのは難しそうな気がします。

     今度の問題は、FMワイワイが選択した、株式会社→特
    定非営利活動法人 という法人格転換が、やぶ蛇になっ
    た事例と考えられます。

     今度の問題は、特定非営利活動法人は、最後に残った
    旧・(広義)公益法人であって、法律上のガバナンス・
    システムが改正前の民法による古いものであるため、理
    事がすべて代表権を持ち、当然、業務執行権も持ってい
    るということが理由と整理されます。

     特活法人以外の広義公益法人は、会社法(のうちの株
    式会社)型の理事会制度を法律において導入しましたの
    で、理事のなかに、代表権・業務執行権を有する代表理
    事、業務執行権を有する業務執行理事、その他の理事と
    いう区別が法律上、存在します。

     これに対して、旧・公益法人と特活法人は、改正前の
    民法のガバナンス・システムなので、すべての理事が代
    表権・業務執行権を有し、定款上、特定の者に代表権・
    業務執行権を限定していても、内部的に制限しているに
    過ぎないという解釈になります。

     総務省の、業務執行権とは「直接業務を執行していな
    い役員(社外取締役等)であっても、取締役会や役員会
    において議決権を有している以上、業務を執行する役員
    に含まれる」とう解釈(崔さんのブログより)は噴飯者
    ですが、しかし、この法解釈の誤りを正しても、けっきょ
    く結論的には上記の問題に行き当たると考えられます。

     株式会社時代に問題にならなかったのですから、理事
    会を設置する一般社団法人や一般財団法人(公益認定を
    受けて公益社団法人、公益財団法人になるものを含む。)
    に法人格を転換すれば、問題は解決できると考えられま
    す。

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  3. チーム 「LOVE JAPAN」総裁 Mr.クリスチャン2011年8月22日 11:48

    崔君、元気ですか?
    法令がある以上、それに従わなければなりません。

    チーム「LOVE JAPAN」は今回の法務省の対応を、当然の対応として、支持します。
    ハレルヤ。

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  4. チーム「LOVE JAPAN」総裁 Mr.クリスチャン2011年8月22日 11:53

    誤字ありました。
    法務省ではなく、総務省でしたね。
    訂正します。

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