2011年8月22日月曜日

投稿:「川崎市の防災体制を問う」フォーラムが開かれましたー伊藤英雄

集会は「大震災への川崎市の防災戦略は?」と題して、20日(土)午後 川崎区東田公園内“市立コミュニティハウス さくら“で開かれました。 

主催:川崎★市民フォーラムの会。 共催:川崎市社会保障推進協議会 川崎公害病患者と家族の会 新しい川崎をつくる市民の会 他。

当日呼びかけられた「追求課題」は多岐にわたる防災の柱として重要なものばかりです。
1. 東日本大震災前のすべての被害は公開され認識されているか? 特に臨海部企業の場合。
2. 被害状況と対応は、策定されていた『地震防災戦略』と整合したのか?
3. 新しい防災戦略をどう作るのか?その方法、また戦略の前提となる震災規模と被害想定は?
4. 行政・議会・まちと住民・企業、それぞれの役割と課題は何か?
5. 多額の揮発油税を納めている川崎市の臨海部コンビナートの防災に、国からの補助を求めるべきだ。
6. 原発事故に対してどう想定していたのか? 脱原発にどう取り組むのか?
これらの課題を市民と市行政職、各会派の議員、企業も一緒になって地域のあり方として議論し「対話」を通し決めて行くべきだ・・・。集会はそれの具体化へと一歩を踏み出したフォーラムで、三時間を越えての報告・質疑応答・意見を出し合う中味の濃い集会となりました。 一堂に会した参加者は六十五名。お疲れ様でした。

第一部 ★「基調報告と問題提起」は地震工学の第一人者、早稲田大学・濱田政則教授。
① 東日本大震災では地震・津波予知に失敗した。② 首都直下地震(川崎直下地震も)の切迫性は高まっている。
③ 川崎市埋立地の調査では、表面では見えないため発生せずで済まされた「液状化」が、実は深さ5~9メートルの地下層で大規模に起きていた。もしこのまま放置したら、には油タンク倒壊炎上、東京湾へ油や危険物が流出する、船舶の航行も不能となる。コンビナート炎上は避けられない。首都機能も麻痺すると警告されました。
これに対する防災はどうすれば良いのか・・・? 地震・津波の「想定」は川崎市直下大規模地震の発生(M=6.9超)で設定し直すべき事。いざとなれば内陸部でも大規模な崖崩れ、盛り土崩落(液状化の一種)も避けられないから、的確な防災のために市民も企業も、被害はしっかり報告し、危険や不安に感じる事を全市的に情報を共有する調査が早急に必要、と提起されました。
すぐにも出来る対策は、護岸補強工事。内陸部および住宅地での液状化には、更に個別の詳しい調査を前提に、市民全体で構築して行く態勢を作るべきだと話されました。

第二部 ★パネルディスカション および質疑応答。
参加者:行政 総務局危機管理対策室 増子講一課長
    議員:坂本 茂 (自民) 飯塚 正良(民主)  岩崎 善幸(公明)
佐野 仁昭(共産) 為谷 義隆(みんな) 猪俣恵美(自治市民)
特別参加:東亜石油 佐藤隆信さん。
    助言者:濱田政則教授   ★まとめ(今井克樹 「市民フォーラム」事務局長)
●川崎市の防災対策を、増子さんが説明。3.11以前は3ケースの「想定地震」を元に対策を立てていたが、今は不 十分となった旨の発言があった。震災後は①津波は無い、を変更し南関東地震で死者の発生を想定せざるを得ない。②液状化は、企業の報告義務がなく市内で4件の報告があっただけで、市でも詳しい実態を掴んでいない。企業にさらに踏み込んで情報提供を求めるのは困難だが、どのようにするのかは今日の議論を持ち帰りさらに検討する。
●次に各会派議員の発言。 現在の防災対策は十分でないとの認識は、共通のものかと思う。それではどうするかを巡り、さまざまな発言があった。議員の二回の発言の要旨。 

坂本:大規模密集都市の、防災策一本化は難しい。あまりに多様な課題で収拾がつかない。国・県・市とばらばらにならないよう、川崎の実情に合った「川崎方式」を考えて行きたい。また議員立法で「防災基本条例」を作って行きたいが、既存条例との検証が不可欠。日本は護送船団のようにひとつの流れになびく傾向があるが、既成概念を越えたい。
岩崎:自分を守る覚悟と準備が第一。情報伝達の方法、エリアメールなど活用。避難情報格差を解消したい。行政に震災の検証のリーダーシップをとってもらいたい。県にも依頼する。議員立法に賛成、アンケートなどで市民の意見を知りたい。
飯塚:坂元案に賛成。コンビナートの液状化、側方流動の対策は大事。津波対策では防潮堤が良いのか、財源を考慮したい。また火力発電所の事も含め「限りなく原発に頼らない」エネルギー政策を立てて行くべき。
佐野:臨海部の詳しい調査を徹底したい。その情報は「可視化」し市民が共有する形にすべき。コンビナート対策は企業に任せるのでは無く、特別委員会などが中心で進める。市内、平間プール付近で高放射線量の問題は深刻。液状化問題はパイルを打ち込むことで解決可能。3900億円出している石油税から還元させれば難しくない。行政に働きかける。行政が動かないのであれば市民に働きかける。「防災基本条例」ありきは反対。
為谷:防災計画は見直し。「今すぐ」原発廃止は難しい。エネルギーの多様化を図る。災害時に広域防災拠点そのものが維持出来るか、不安が無くもない。3・11の災害実態の踏み込んだ検証が必要。
猪俣:気仙沼町など被災地自治体を訪問し、機能停止した町の復興の困難を見て来た。議員はこの時どんな仕事が出来るのか。原発の危険を議員質問でずっと追及して来た。核燃料輸送の危険など。「国民保護計画」ではないが、いざ災害発生の場合に企業が私的な立場に居て「蚊帳のそと」はおかしい。企業に地域社会の一員として防災への参加・協力義務を明確にすべきだ。

●東亜石油 佐藤隆信さん:3.11震災では、十勝沖地震で炎上した「高圧ガスタンク」被害などは出なかった。
●助言者 濱田政則教授:想定の三分の一の地震であっても臨海部に被害があった。臨海部の実態(「前兆」)を調べることが最重要課題。行政・議会・議員・企業・市民・有識者が一体となって話し合う「枠」を作ることで、全国のコンビナート地域の先行例を作ってほしい。すべての事業所の協力と市のリーダーシップが求められる。①高圧ガスタンクの防災では神奈川県が国より先行し、液状化の調査・予測に取組んで来たし川崎市や民間事業所も協力した。②被害の情報を出来るだけ広く集め「被害予測」式を立てたい。③川崎市は、国に揮発油税を年間3879億円も出している。これを災害対策に生かせれば有意義だ。④原発の「原子炉安全審査会」に属し、これまですべての建設を容認して来た。今は深く反省している。
3・11の影響の全容把握は困難。企業がそれぞれ判断して情報公開していく見識をもってほしい。

●質疑応答: 多数の質疑がありましたが、その一部です。
@「川崎方式」の実現に各議員の考えはどうか。 
@液状化はしっかり調査して欲しい。また放射線の測定をもっと進めるべき。
@川崎区の場合、耐震性の低い住宅、生活の苦しい住民が災害弱者として見離されないよう、行政は耐震対策の予算をきちんと実行して欲しい。
@北部の盛り土の崩落を考えて行く講演会のお知らせ。
@町会の役員と、行政の防災リーダー育成が急務。
@これまで行政は石油税の還付などの市民の話などにはまったく耳を貸さず、南部は災害が起こったらどうしようもないとないと思われるが議員はどう思うか。
その他、生活の現場から多数の意見が、引きを切らずに出されました。

★まとめ;今井克樹「市民フォーラム」事務局長。 川崎の市民が不安に思う防災の情報公開が何より大事ではないか。議員は率先して当たって欲しい。市民と行政、議会と企業、それぞれの位置で得られる災害情報を共有し、被害の減少に向けて活かして行く「枠組み」を考えながら一緒に協力する。「川崎方式」を作って行きたい。
今日が、その一歩になったと言えるように、これから具体的な課題に向かって進めて行こう。
報告者コメント:3.11が想定をはるかに越える大規模な震災となってしまった事実をしっかり踏まえて防災に当たらなければ、地域の甚大な被害を防げない事。そのためには被害状況の詳しい調査と防災上の課題を、市民と行政職、議員、企業も共有する仕組みがぜひ必要だ。このような共通認識を得られ、意義の大き
い集会となった。( 新しい川崎をつくる市民の会  伊藤英雄)

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