2011年8月17日水曜日

「隠された東京湾炎上」ー川崎は想定外の地震でどうなるのでしょうか



「液状化で油や劇物が海に大量流出する 封印された「東京湾炎上」」というショッキングな見出しの付いた記事が、今州号の週刊誌アエラ(8月22日号)にありました。記事の内容はまさに川崎の臨海部の防災対策を求めていた私たちが危惧していた内容そのものです。

編集部の岡本記者は、「首都直下地震で東京湾に大量の油が流出する。東京湾は封鎖され、経済も大打撃を受けるーー。東日本大地震の以前に、そう予想した国の報告書が存在していた。だが、表に出ることはなかった、誰が妨げたのか。」と問題提起をしています。

記事によると、封印された報告書の名称は、「臨海部の地震被災影響検討委員会報告書」で作成者は国土交通省関東地方整備局が発足させた有識者委員会が2年かけて検討したものです。座長は8月20日の川崎市民フォーラムで講演・問題提起される早稲田大学の濱田政則教授です。そのメンバーの中に川崎市も入っていたのですが、どういう訳か「自分たちはいなかったことにしてくれ」と言って抜けたそうです。途中で川崎市の港湾振興部長の名前は消えていたことが判明しています。

当時関係した市の港湾振興部長は、委員を辞任した経緯は「覚えていない」その他のことも「知らない」というおなじみの官僚答弁をしていますが、これは彼を責めるのは酷というものでしょう。川崎市の委員辞退、報告書の封印、これには背景がありました。

まず3・11の地震で対岸の千葉の市原市のコスモ石油の製油所で起きたLPG(液状石油ガス)タンクの爆発で周辺の約8万人に避難勧告が出されたらしいのですが、「これだけですんだのは奇跡」だと海上災害防止センターの部長が語っています。地震による液状化、大きな揺れによる火災発生そして爆発、これらが川崎で起こらなかったのはまさにラッキーだったのでしょう。しかし横浜の埋立地は1メートルも隆起しているので、それより古い埋立地である川崎の近海部の人工島で何も起こらなかったはずがないのです。

事実、濱田教授の調査によると、護岸が約20センチ海側にせり出す「側方流動の前兆が起きた」そうです。濱田教授は、首都直下地震で想定される三分の一程度の揺れでこれだけの被害が起きているのだから、実際に想定外の地震が起こった場合どうするのかと心配されるのは当然です。臨海部で3・11の地震による影響はどうであったのか、これは企業が被害実態を報告する義務がなく、市も強制的に調査する気がなく、議会も一致して調査を要求することがなかった所為で、実態は何もわかっていません。実態がわからずしては何の対策を打ちようがありません。住民は対策を要求すべきだという私たちの言い分は当然至極のことなのです。

濱田教授たちの調査結果は、あまりに極端でいろんなところに影響がでるという理由で没にされたようです。しかしその調査も3・11以前のことで、3・11を踏まえて改めて被害の可能性を検証すると、さらに厳しい結果が出ることが予想されます。

東京湾の埋め立ては古くからありほとんどが耐震化されていないそうです。液状化が引き起こす「側方流動」によって護岸が崩れる可能性がでてきます。委員会は首都直下地震によって護岸が9メートル以上動くと予想しました。そのことで油が海に流失する可能性が高まり、火災の危険性も出ます。「油が大量に広がると、航路は閉鎖され、災害時の緊急物資の輸送もできなくなる」ということになります。そこで委員会の結論は、東京湾が2か月も封鎖されると経済的な影響も大きく、「公的資金の助成で護岸の耐震化を進めるべき」ということでした。

川崎市が抜けた理由は簡単でした。臨海部がいざというときにあぶないということを公表すると、関連する会社の株価も下がり、経営統合に影響を与えるということであったようです。現在、民間企業への立ち入り調査ができないため、「臨海部の古い護岸が、どれほど危ないか危なくないのか、市も把握できていない」のが現状だそうです。

ということで、8月20日の市民フォーラムは注目されます。行政と超党派の議員、そして臨海部の企業も参加して、上記の内容を日本で誰よりもよく知っておられる濱田教授が基調報告のうえで問題提起をするというのですから。Sustainable Communityを「持続する社会」とせず、私は「住民が生き延びれる地域社会」と意訳しました。

住民の生命、家族の生命は自分で守るしかありません。そのためにも、住民と行政、地元議員、企業が一緒になって、予想外の地震が起こった場合、それも一番あっては困る事態を想定して一緒に考えるしかありません。もはや、情報を隠す、被害状況を公表しない(させない)というのはもってのほかです。それは住民の生命を軽んじているということです。住民の生命より企業の株価の方が重要なのでしょうか、そんな意識、考えは許されるはずがありません。

3・11によって状況は一変しました。まさに今、住民が自分の生命を守るために立ち上がらないでどうするのでしょうか。住民主権の内実を求める動きがようやくこれから始まるのです。各党派は、党派間の利害関係や立場を主張するのでなく、住民の意向を踏まえ、住民と一緒に考え、意見の違いを対話を通して一致点をみつける成熟した態度をしめしてくれることを期待してやみません。

まさに、住民が中心になって、行政・議員・企業が一緒になってどのような住みよい地域社会をつくりあげるのかを話し合うべきなのです。それが地方自治における住民主権ということではないのでしょうか。そこではもはや国籍や民族が問題にされるべきではありません。自然がすべての人に襲いかかったのを目撃した以上、私たちは民族や国籍を越え、<協働>してより良い地域社会建設に向かうべきだと思います。

市民フィーラムは8月20日(土)午後1時から、川崎駅東口の東田公園内のさくらコミュニティセンターで開催されます。人数制限があるため希望者は事前にお申し込みください。担当:崔勝久(090-4067-9352)

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