2011年8月8日月曜日

内部被ばくに警鐘~クリス・バズビー博士インタビュー (転送)


望月さんからの情報で以下のことを知りました。もうビデオをご覧になった方もいらっしゃるでしょうが、転送させていただきました。ヨーロッパの専門家は日本現地の状況をどのように見ているのか、私たちは知る必要があると判断しました。是非ビデオをご覧になるか、時間のない方はインタビューを翻訳したものをお読みください。

崔 勝久

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以下、OurPkanet-TV より

日本政府などが様々な基準に採用しているICRP(国際放射線防護委員会)と一線を画し、内部被ばくや低量被ばくについて長年、研究を重ねて来た欧州放射線リスク委員会(ECRR)の技術議長クリストファーバズビー氏。日本の汚染はどのような状況にあるのか。そして、どのようなリスクがあるのか。OurPlanetTVの単独インタビュー。
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/1190
 
ゲスト:クリス・バズビー博士(ECRR(欧州放射性リスク委員会)
インタビュアー:松元千枝(ジャーナリスト)
翻訳:堀田史恵/OurPlanetTV

■バズビー博士:日本人への提言
(原タイトル:内部被ばくに警鐘~クリス・バズビー博士インタビュー)
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/1190
インタビュー:2011年7月21日(成田空港)

ゲスト:クリス・バズビー博士(ECRR(欧州放射線リスク委員会)
インタビュアー:松元千枝(ジャーナリスト)
翻訳:堀田史恵・OurPlanetTV

質問Q:今回の来日の背景には、子どもたちの健康と安全がないがしろにされていて、福島の子どもたちの疎開を求める声があります。しかし、日本政府は被ばくレベルを引き上げ外で遊んでも安全だと言っています。(政府は)避難についてまったく検討していませんが、福島の現状をどうお考えですか―。

バズビー博士:日本政府は犯罪的に誤っていると感じます。子どもたちですら汚染の高い地域から避難させていないのですから。政府は、個人が集まった組織です。そして組織の個々人が、決定をします。誤った決定なのに、それに従って行動するようなことが、過去には、戦争犯罪で同じようなことがありました。

第二次世界大戦では、ヒトラーが政府として、多くのユダヤ人を強制収容所のガス室に送りました。政府として行なったことですが、最終的には個人個人に責任があります。これらは、戦争犯罪です。

今は平時ですが、戦争犯罪と同じと考えられます。これらの人々は、個人として責任があり名前も指摘できるわけです。彼らは、最終的に何らかの裁判にかけられ、(長い間)刑務所に入ることになると思います。

Q:日本政府は、ICRPモデルを採用していますが、ICRPの勧告に対しても、違反している部分があります。博士は、ICRPモデルを批判していますが日本政府に対してどうお考えですか。

バズビー博士:日本政府がICRPの基準にこだわるのは、ICRPが緊急時には20ミリシーベルトの被ばくを許容しているからだと思われます。今は明らかに緊急時ですから。通常の許容上限は1ミリシーベルトです。ですが、アメリカやヨーロッパでは、1つの放射線源からの被ばくは、0.1ミリシーベルトに抑えるように解釈されいます。しかし、日本政府は国民に1ミリシーベルトより高いレベルの被ばくを許容しているのです。

私自身の考えですが、エアフィルターの調査から、とても多くの人々が、20ミリシーベルト以上の内部被曝をしていると思います。日本政府は、意思決定において完全に機能不全に陥っています。ECRRモデルの情報や私たちが行なった計測結果があってもなお、日本政府が行動を改めないならば、最終的には裁かれることになると思います。

Q:ICRPとECRRの基準に違いがあるのはなぜですか。

バズビー博士:まず最初に知ってほしいのは、ICRPの基準は役に立たないということです。内部被曝によるガン発症数について誤った予測をだすでしょう。ICRPのモデルは1952年に作られました。DNAが発見されたのは、翌1953年です。

ICRPは、原子爆弾による健康への影響を調べるために設立されました。第二次世界大戦後、大量の核兵器が作られプルトニウムやウランなど、自然界にはないものを世界中に撒き散らしました。このためICRPは、すぐ対策を考えなければなりませんでした。そこで彼らは、物理学に基づいたアプローチをとりました。物理学者は、数学的方程式を使ってシンプルな形にまとめるのが得意です。しかし、人間について方程式で解くのは複雑すぎます。

そこで彼らは、人間を水の袋と仮定し、被曝は、水の袋に伝わったエネルギーの総量によると主張したのです。これはとても単純な方法です。人の形の水の袋に温度計を入れ、放射線を当て温度が上がったら、それが吸収された放射線量というわけです。

Q:ICRPは原子力エネルギーを推進していると言われていますが。

バズビー博士:彼らは、何かを推進しているなんて言いません。独立した組織で、科学者たちが放射線のリスクを研究しているといいます。決して、原子力を推進しているとは言いません。ただ、結果的にそうなっています。このようなことは水面下でいつも起こります。

私たちの多くは、ICRPはもともと核開発を推進するために設立されたと思っています。推進しないまでも、人々が核開発を阻止しないように設立されたと思います。人々が「牛乳にストロンチウムが入っていたから、ジミーが白血病になっちゃったわ」というと、「いえ、核兵器のせいじゃないですよ、放射線が少なすぎて影響しませんから」、そう言うためにICRPは設立されたのだと思っています。

そして医者たちが騒ぎ出したとき、彼らが何をしたかというと、医者たちをけん制するため、1959年にWHOにIAEAと協定を結ばせたのです。それは、IAEAが放射線と健康に対して責任を持つという協定でした。「IAEA=国際原子力機関」が「健康」について責任を持ち「WHO=世界保健機構」が、放射線のリスクについて考えてはいけないことになったのです。彼らは、蚊だのエイズだけを扱うことになりました。

そこは、はっきり区別されています。これが、ICRPが放射線リスクに対する理解を支配(コントロール)している証拠です。

Q:それが、ICRPが内部被曝を考慮していない理由でしょうか。

バズビー博士:そうです。でも彼らは、絶対にそれを認めないでしょう。

Q:博士は世界中で今まで40回以上、裁判で証言されてきたとのことですが、そのことについてお聞かせください。

バズビー博士:ECRRモデルを使い、今までたくさんの裁判をしてきました。人々の内部被曝の被害を専門家として証言してきました。米国では、放射性物質を扱う仕事をした人々や原子力発電所のそばに住む人々や、ロサンゼルスの核施設のそばに住む人々などです。英国では、核実験の退役軍人たちの裁判で専門家として法廷で証言してきました。これらの人々に共通しているのは、ガンや白血病を発症し苦しんでいることです。

これらの原因は、いま日本で話題になっている放射性物質による内部被曝です。そして、どの裁判でも勝ってきました。ECRRとICRPで、ボクシングの試合やコンテストをしたようなものです。法廷では、陪審員も偏見のない裁判官も3人の裁判官もみなECRRの解釈を好み、ICRPを好む人はいませんでした。

これらすべての裁判において、ICRPのモデルが正しいと証言する専門家を連れてくることが1回もできませんでした。ICRPの挙げる証拠は間違いばかりなので、証言するのが難しいのです。

裁判では証拠が必要です。「ほら、こちらが皆が信じているICRPで、彼がICRPの委員長で重要人物なんですよ」などということに意味はないのです。

Q:郡山の裁判に呼ばれたとしたら、何を証言しますか。

バズビー博士:専門家の証人として、証言をしたり報告書を書くのは喜んでしますが―、来日はせず、ビデオで証言します。なぜなら放射線量が高すぎて、私自身怖いからです。100キロ圏内には行きたくありませんし、100キロ圏外でも心配です。私は会津若松に行きましたが、土壌が非常に汚染されていました。持参した計器で計測した値は、想像以上で衝撃でした。

東京のホテルで街を見ていると、ビジネスマンが傘をさして通ったり女性も男性も皆、まったくいつもと変わらないんです。会津若松でも街もいつもと変わらないし、原発から5キロのところでも景色は何も変わらないでしょう。でもそこにある放射性物質は人を殺すでしょう。放射性物質は見えないのです。ガイガーカウンターがあれば計測することができますが、ガイガーカウンターに勘違いさせられる可能
もあります。実際には、マイクロシーベルトという放射線率には関係なく、放射線を出す物質が空気中を舞っていて体に入ることが問題なのです。それを知っていると、近くには行きたくなくなります。チェルノブイリに行ったために、多くの同僚が死にました。

Q:車のエアフィルターに付着した放射性物質を分析した結果を教えてください。

バズビー博士:私たちは、5台の車のエアフィルターを調べました。1つは千葉県内、4つは福島原発から100キロほどの場所のもので、そのうち1つは原発から30キロ圏内を走行したものでした。福島のものはすべて千葉より高いレベルの放射線量が計測されました。とはいえ、千葉のものもかなり汚染されていました。すべて原発から出たガンマ線核種で汚染されていましたし、ウランが含まれている兆候もありました。ただそれを見せるにはちょっと難しいのですが。また、そのうちひとつからはアルファ線の核種も検出されました。少なくとも、アルファ線を出す核種がひとつは含まれていることになります。直径0.5ミリほどのものです。いま、より精密な機械を使ってプルトニウムがあるかを分析しています。あと2週間ほどかかります。

この結果が何を意味しているかというと、空気中のセシウム137の濃度は、核実験のピークだった1963年の1000倍でした。…これはかなり深刻です。なぜなら、1963年の核実験で乳児死亡率が上がり、20年後には世界中でガンが増えたことを私たちは知っているからです。でも、その時より、1000倍も高いのです。千葉のものは300倍でした。そのことから、さらに遠い東京南部もかなり汚染されていると推測しています。

放射性物質の汚染は均一に広がっているわけではありません。すでにご存知だとは思いますが、ある場所ではかなり高いけど、ある場所ではそれほどでもない、それはチェルノブイリとまったく同じです。チェルノブイリの汚染地図は葉の形のようです。川の流域に沿うことが多いです。そういうことを私たちは発見しました。

やるべきことは多々ありますが、一つ目としては、放射線量の高い地域に住む人々は避難する必要があると思います。とくに子どもは避難しなければなりません。なぜなら子どもは最大で10倍放射線への感受性が高いからです。

今、突然亡くなるわけではありませんが、将来、そういうことが起こるのです。すでに、そこにいる人々の体は、法的な意味で傷つけられています。しかし今避難すれば、今以上には悪くならないのです。それが第一にやることです。

第二に、政府はすぐに航空機を使い汚染地図を作らなければなりません。これは昔からある技術なので、問題はないはずです。なぜなら、人々は情報を得る必要があるからです。情報はただあるだけでなく、誰もが知りたい情報を、インターネットで見たり、印刷できたりする必要があります。どこに行ったらいいか、どこに行ってはいけないか、どこに放射性物質があるのか、ないのか、判断できるからです。

そして私の意見ですが、チェルノブイリの避難区域と同じレベルの汚染がある地域は、立ち入り禁止にすべきです。30キロという範囲ではありません。物質によっては120キロも飛んでいます。もしこれが毒ガスで、明日にでも死ぬとなったら皆逃げるでしょう。ただ、明日にでも死ぬものではなく、何年か経ってから死ぬというだけのことです。

三つ目にすべきことは、比較的汚染の低い地域にとどまらなければならない人たちに補償をすることです。丸太で頭を叩かれるのと同じで、致死にいたる物質で体を汚染されるのですから、法治国家においてそれは違法です。汚染した原子力業界に補償を求めることです。また日本だけでなく、世界中の原子力業界に補償を求めてもいいでしょう。これは国際的な問題ですから。

次に、とにかくお金をかけて原子炉を囲む必要があります。原子炉の下を掘ってコンクリートを流し込み、上部を囲むには1兆ドルもかかりますがやらなければなりません。でなければ放射性物質はずっと垂れ流され、だんだんと北日本は放射能で使い物にならない土地となっていくでしょう。それだけでなく、世界中にも広がります。英国、ハワイ、グアム、米国の西部でプルトニウムが検出されましたし、ですからこれは世界的な問題であり世界的な解決策が必要です。「日本は不運だったわね」ではなく、すぐになんとかしないといけません。なぜなら、非常に大量の放射性物質が刻々と垂れ流されているからです。

ほかにやるべきことは、空気中の放射性物質のモニタリングです。現在、日本政府は、すべての核種の放射線濃度を公開していません。これは深刻なことです。政府はただセシウムだけを計測しています。ストロンチウム90、トリチウム、プルトニウム、ウラン、とくにウランは遺伝子に深刻な影響を与える核種です。

ファルージャでの調査では、髪の毛からウランが検出された両親の子どもに非常に高い割合で先天性の奇形が見つかりガンも非常に多いことが分かっています。ウランで被ばくした影響です。…まさに悪夢です。

Q:今回の来日で行なったいくつかの講演のなかで、福島原発の事故は世界の原子力産業を大きく変えるきっかけになると仰っていました。なぜそのようにお考えですか?

バズビー博士:世界は原子力の脅威を知りながら、すっかり無関心になっていました。福島原発の事故は青天のへきれきです。想像を絶する状況が今も続いています。この事故がきっかけとなり、人々は科学者に対し疑問を持ち始めるでしょう。専門家である科学者たちの言う「真実」を疑うようになるのです。

私からすると、とても科学者とは思えないとんでもない専門家たちです。現代の科学者は企業の手先のようなものです。彼らが私たちに伝えるのは、市場主義を追及する企業や政府が、お金を儲けるための情報です。

原子力は非常に象徴的です。人間にとって重要なことを問題提起しています。私たちは混沌とした状況にいますが、福島原発事故が、みなさんの視点を変えるきっかけとなるよう望んでいます。科学者に対する見方を問い直してほしいのです。それは新しいことではありません。科学者からの情報を素直に受け入れていたのも、ここにきて限界に達しはじめ、爆発寸前です。

この大惨事によって、人々の立ち向かう姿勢が強まるよう願っています。原子力だけに限ったことではありません。原子力は私たちの抱えている問題を浮き彫りにしましたが、人類が抱えている問題はそれだけではありません。携帯電話、遺伝子組み換え食品の安全性や地球温暖化など、あらゆる面で政府は科学者に頼っています


私が伝えたいのは、科学者は嘘をつくということです。理由がどうであれ、真実を伝えない科学者は存在します。科学的な知識をもつことが重要です。不可能なこと
はないのですから。

Q:ひとりひとりが科学者からの情報を注意深く選別することが必要なのですね。

バズビー博士:私たちは沈みゆくタイタニック号に乗っていて、舵を取る船長の手元にはお金のために操作された誤った情報しかないそんな状況です。

(インタビュー終わり)

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