2011年6月9日木曜日

講演:東日本大震災をどう受けとめるかー日本の地震防災工学の「権威」の濱田教授



6月8日、早稲田大学の濱田政則教授の講演がありました。主催者側は、「大震災で川崎臨海部の液状化はどうなるか」というタイトルを発表していましたが、教授は上記タイトルに変更し、「首都圏の地震・津波」という観点からお話をされました。私は以前、朝日新聞で川崎の防災システムはいざという時には役に立たない可能性があるという教授の記事を読み、できれば私たちの学習会にお呼びしようと思っていたので、喜んで参加しました。

教授のホームページにある肩書からしても日本の「権威者」のようです。錚々たる肩書きです。
■地震防災に関わる委員会活動等(以下、一部のみ抜粋)
国土交通省「臨海部の被災影響度検討委員会」委員長(2007年10月~2009年3月)
内閣府中央防災会議「首都直下地震対策専門調査会」委員(2003年3月~2005年3月)
内閣府原子力安全委員会「原子炉安全専門審査会」委員(1993年~2009年1月)
文部科学省「技術・学術審議会研究計画・評価分科会」臨時委員(2009年5月~)
同分科会「防災分野の研究開発に関する委員会」委員長(2009年5月~)
防衛省「普天間飛行場代替施設建設事業資材調達検討委員会」委員長(2009年5月~)
 
まさに日本政府の防災を考える中心人物ですが、それでも講演の中では、中央防災会議などでも、参加するライフラインに関係する企業は本音を話さず、また行政を含め企業も積極的に情報提供をすることがないので、「壁を感じる」とおっしゃっていたことは印象に残りました。神戸大震災から多くを学び、徹底した対策を講じているのでお任せください、と言われるとそこからは何も進まず、特に今回のように「想定外」の地震によって臨海部の各工場は地震のゆれと液状化によってどのような被害をうけたのか情報を提供してもらえないと、専門家の予想がことごとく外れた宮城県域の大地震の失敗を活かすことができないとのことでした。また行政は担当者が変わることで一貫性がなく、絶えずその時の法律に従っていたという説明がなされ、何が防災上の弱点かの検証が不十分というご指摘がありました。

また教授はアカデミックな世界だけでなく、もともとは大手建設会社に勤め、川崎港に造られた人工島と陸をつなげる日本の海底トンネルに関わったことがあり、ドイツの当時は世界最高の技術で作ったものの、今回の地震ではトンネル内で漏水が見られたらしく、「気がかり」とおっしゃっていました。同じく、みっつの人工島ももはや「古い埋立地」になっており、護岸や地盤の強度も現在の基準からすると地震による「移動」は避けられず決して安心とは言えない状態とおっしゃりたかったようです。事実、今回は150ガルツしかなく、神戸の震災の4分の1以下、危険基準想定の半分以下だったのですが、それでも航空写真では液状化による被害は見えたそうです。しかし教授は現地調査をしてボーリングをしなくては正確な状況はつかめず、それではいざという場合の備えにならないので、情報公開を強く希望されていました。

他にお話の中で気になった点は、(1)3・11の地震でこれまでの常識は崩れ、いつどこでどのような規模の地震が起こると断定はできないので、臨海部の最悪の事態に備えるべきだという指摘です。最悪とは、臨海部の石油化学コンビナートでタンク内の内容物がもれると、火災の原因になり、またその内容物が海に漏れ出すと、2日で千葉まで流れる可能性が考えられ、そうなると東京湾の航海はすべて禁止で、湾沿いの火力発電に必要な物資は持ってこれなくなり電力供給に重大な影響を与えることになる、ということです。

(2)川崎市が川崎直下地震と想定しているのは川崎でなく、東京の東村山市であったことは市民のフォーラムでの課長の発言でわかったのですが(「川崎市危機管理室との応答ーやっぱり危機意識に欠けています」http://www.oklos-che.com/2011/06/blog-post_03.html)、教授の話では、活断層というものは見つからないものもあり、もっとも起こってはいけない「不都合なところ」を想定すべきというご意見でした。この点は私たちが一番気になる点なので、行政は早急に調査に着手してほしいものです。

(3)川崎市が(国のお金でー崔)大々的に扇島に建設した応急対応の終結場所は、そこまで大型船が物資を運びそこから積み替えて小型船で輸送するという前提なのですが、それも災害が発生すると物資がそもそも扇島に入ってこない可能性があるいという点も重要な指摘だと思いました。

講演会は共産党市議団の主催だったのですが、話された内容は専門家としての情報と分析であったので、行政と他党派は是非一緒に講演内容を聴いてほしかったですね。こういういい講演は今後、超党派で開催し、多くの立場の違った市民、政治家も一緒になって専門家の話を聞き、そこから行政・有識者・政治家・市民が一緒になって防災を考えるようなかたちになればいいと思います。行政は、いつでも市民の意見が反映されるようになっている(市民参加)と言うのですが、それは聴き置いて自分たちが決めるということなのです。特に防災の場合は市民生活に直結するので、市民参加でオープンな話し合いが求められます。

市民フォーラムで各党派、行政、有識者を次から次と呼ぶとのことなので、楽しみです。

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