2011年5月28日土曜日

核と平和に関する、日韓中のタイムリーなシンポに参加しました。

今日、恵泉女学園大学の主催で、「2012年東アジアの新たな平和をどう構築するかー核とエネルギー問題を中心に」というシンポに参加しました。400名をこえる女子学生に囲まれながら、2時間半、大変有意義でチャレンジングな時間を過ごしました。

2012年は米国、ロシア、韓国の大統領選挙があり、中国は共産党大会が開かれ今の首脳陣が代わります。北朝鮮は建国者の金日成の生誕100年を迎えるという年なのです。司会の内海愛子さんは、3・11を踏まえて、①アジアという地域をどう考えるか、②2012年に向けて新たな平和をどう作るか、③平和をどう構築するのか、という観点から発題者に話していただくと挨拶をされました。

発題者は韓国の韓洪九(聖公会大学教授、「朝鮮半島の危機と平和秩序構築」)、和田春樹(東大名誉教授、「北朝鮮の権力継承と冷戦構造の解体」)、中国人ジャーナリストの莫邦富(「中国の経済成長と東アジアの未来」)そしてコメンテータとしてインドネシア研究者の村井吉敏(早稲田大学客員教授、「東南アジアの視点から」)、シンポ企画者の上村英明(恵泉女学園大学教授、「日本の視点から」)という豪華メンバーで、本当を言えば、午後からも継続してシンポを続け、相互の討論やフロアーとの議論があればと惜しまれます。

みなさん持ち時間15分というとてつもない制約下で話されたのですが(韓教授は通訳が入り別枠)、しっかりと準備をされた内容の濃いお話でした。特に韓教授は完全原稿で事前に資料として配布され、体系的でしかも韓国の状況を正確に分析され、示唆に富むお話でした(私は主催者にメールをし、私のブログで多くの人に全文を是非紹介させていただきたいと依頼しました)。

韓洪九さんのお話:

「1. 韓国の国内状況」~李明博政権になりこれまで20年続いた民主化の流れと完全に逆行する政策を行い、民主政権に失望した国民の期待に応えるどころか庶民経済の危機を打破できずにおり、力強くなったのは財閥だけという状態になっている。

「2. 民主主義と南北関係」~李政権は北の崩壊を確信し、北批判を国内の守旧勢力の結集に利用している。李政権の「最大の失策は、北の金正日ー金正恩が厳然と現存する権力であるにもかかわらず、まるで崩壊しているかのように扱ったことにある。」

「3. 李明博政府と北東アジア」~反米とされた盧武鉉大統領は結果としてアメリカの望む政策を受け入れたが、同時に中国との関係を強化した。しかし李政権は、今や韓中貿易は日米の合計よりも多くなったのに、米国一辺倒になって米中間の危機さえ高めるようになった。

「4. 核兵器と核エネルギー」~李明博と金正日は相反する立場だが、核を愛するという共通点をもつ。北が核兵器に固執する理由は「体制の維持」であるので、米韓日でそれを保証し北の核兵器を買い上げればすむのではないか。
李政権は、福島原発事故をきっかけに逆に「世界の原発市場で韓国の主導権を確保し、原発輸出を韓国経済の新しい原動力にしようと考えている」。
韓国の反核運動は分裂し、原発や核廃棄場の運動は結局、「補償金攻勢」でその勢いを喪失してしまった。しかし福島事故以来、韓国の原発に対するムードは変わってきている。

「5. 終わりに」~「韓国は民主化運動を経験したという側面では、東アジアでも先に進んでいるが、平和運動の側面では極めて低いレベルにある」。
「東アジアの民衆たちが自分の社会の民主化のために努力するのが東アジア平和の出発点になる」。

和田春樹さんのお話:

日本では金正恩が後継者になり権力をつかもうとしているという観点からの報道が多いが、自分は金正日がナンバー2を置かず、金日成の生誕100年に向かって実権を持ち続けると考える。①経済復興、②ITなどによる経済の「改設」(ぺロストロイカ)、③国民生活の決定的な転換をめざすというものの実現は困難で、北は韓国に依存せず(吸収されることを恐れ)米日との関係改善を求めるが、両国政府は関心を示さない。「2012年に向けて北朝鮮が望んでいるのは」「核の問題の解決の前に朝鮮戦争の平和体制構築が先に来るのが当然である」ということであろう。

その他の発題者の講演内容は割愛します。コメンテータの両氏とも、経済成長が望めない時代での日本の新たなあり方をメッセージとして世界に発信すること、原発に関しては各国の市民の連帯が必要であることを強調されました。

韓洪九さん、その他の方々のご意見に私は共鳴するところが多くありました。私は、「原発体制を問うキリスト者ネットワーク」(仮称)作りの必要性を痛感しているのですが、その話を韓さんに話したところ、韓国の教会は民主化闘争以降沈滞し権力者との癒着を強めているがということでしたが、私はその中から日本の市民との「反原発」「平和」「人権」をもたらす交流ができると確信しました。

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