2011年4月28日木曜日

過疎地で原発が集積する構造ー地域の「発展」は経済だけで解決できるのか

今日は横浜国大のN教授の開講にあたっての3回目の授業でした。元々予定されていた授業を始めるにあたって、御自分の専門の地域経済学の立場から(そもそも、いかなる学問領域においても、今回の震災をどのように受けとめるのか、この問いなくして授業など始められるわけはないのでしょうが)、何はともあれ学生に話しておかなければならないという気持ちを強くもたれたのだと思います。まずは、以下のふたつのブログ内容を参照ください。

★「東日本大震災(巨大地震、巨大津波、原発危機の多重災害)」の影響と「復興」を考える(http://anti-kyosei.blogspot.com/2011/04/blog-post_13.html)
★東日本の「復興」を考えるーその(2)、川崎との類似点
(http://anti-kyosei.blogspot.com/2011/04/blog-post_21.html)

改めて阪神淡路大震災との比較から始められた授業では、大都市である神戸の場合、生活の再建によって産業や仕事は比較的短時間で立ち直ることができたが、東北地方の場合、農業や漁業は壊滅に近く、住宅は高台の最先端の集合住宅が計画されても多くの高齢者にとって金銭的にもネットワークの面でもうまく機能するかどうか定かでなく、またグローバリゼーションの時代でかろうじて生き延びてきた部品産業も大きな打撃を受け、元通りの世界のトップシェアを維持できるかどうかはわからない、従って神戸と違って、東北地方の産業や多くの人の仕事には大きな困難が待ち受けている、と再確認されました。

東北地方は家電、半導体、自動車産業に必要な世界的な基幹部材を作っていたのですが、それは結局のところ、工場労働力が大都会では十分に確保されず、北九州に拠点を作ったものの、第三の拠点として東北地方の廉価で多くの労働力が注目され始められていたのです。トヨタグループの場合、ホンダやニッサンのような国際企業でなく、世界戦略で廉価でより合理的な生産システムを持たずに国内での開発・生産を重視していたために利益率も低下していて第三の拠点を作ろうとしていた、その矢先の大地震だったのです。

トヨタの幹部の話では、ベンツやBMWのような付加価値のついた商品で利益を確保するというより、絶えずフルスイングしていかないと成り立たない企業体質であったため(それは韓国のヒョンダイも同じでしょう)、世界市場でトヨタがどのような位置になるのか注目されます。

問題は原発です。N教授は当初から原発地域のフィールドワークで地域の実態を詳しく調べられていたようで、誰を批判するともなく、大都会から遠く離れた過疎地にどうして原発が集積するようなったのか、その構造を話されるうちに、高ぶる感情を抑えきれないご様子でした。

最悪の事故を想定した場合、一民間企業である電力会社がいくら電力価格を独占的に、コストに一定の利益率をかけたものを設定し、莫大な利益が保障されてきたとは言え、原発事業を積極的に進めるわけはなく、そこには政治がからんでいたのです。自然災害などで発生した事故の保障は最大で1200億円、それ以上は政府が補填するという法律が作られ、巨額なおかねが動いたのです。

地元町長(村長)が反対しても、県レベルで決定され(県にも莫大なおかねが流れ、地方自治体の大きな収入源になるので)、地元の選挙でも賛成派が多数を占めるようになり、一定の期間が過ぎると、他の地域で原発を始めるには地元反対運動に抗するのにまた莫大な費用がいるため、一号機と同じ地域に継続して原発を作っていくようになるのです。一基も2基も同じ、一基で得たお金で作った公共施設もそれを維持管理するにはお金が必要で、そのお金がもらえるのであれば毒を食らわば皿までとばかり、三基、四基と集積されるのです。過疎地で雇用が生まれ、莫大なおかねは商業、金融を引き付け、一見豊かになったかのように見えます。

しかし地域で反対した住民は村八分でそこに住めなくなります。有能な人材はその地を離れるでしょう。豊かになったとはいえ、原発のような危険な施設(迷惑施設、沖縄の米軍も同じなのでしょう)をどうして押し付けられるかたちになったのか、それは地域社会に分裂をもたらし、決して発展にはつながらなかったのです。一度原発を受け入れた限り次から次への原発が集積されるような構造に地域社会は作りかえられていたと言えるでしょう。それはまさに電気を必要とする大都市、消費地に比して「不均等な発展」であるとしか言いようがありません。

地元住民が事故の後、東京電力や政府は原発は安全と言ったではないか、約束を破ったと詰め寄ったところで、もう遅いのです。中曽根元首相のインタビュー記事が朝日新聞で公開され、国鉄を解散させ原発を始めた人物に堂々と原発路線の継続を宣言する場を提供しました。Nさんも講義の中で憤慨されていましたが、みなさん、私の書いたブロゴを再度確認ください。http://anti-kyosei.blogspot.com/2011/04/blog-post_26.html

原発はそもそもエネルギー源として21世紀の中ごろまでのものとされていました。しかし福島の事故を目撃した以上、私たちは、脱原発に早急に取り組むべきだと思います。Nさんは孫正義の記者会見の内容を話し、ustreamのURLを黒板に書かれました。学生諸君に観てほしかったのでしょう。遅まきながら私は見て、孫正義を見直しました。心からの敬意を表したいと思います。みなさんも是非、ごらんください。http://www.ustream.tv/recorded/14195781

「孫正義の発言に注目」ー「心からの反省」(http://anti-kyosei.blogspot.com/2011/04/blog-post_6090.html)

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