2011年4月26日火曜日

原発推進は既定路線か?-朝日新聞の報道に疑問。韓国の宗教界への問題提起

4月26日の朝日新聞朝刊を読み、暗い気分になりました。まず天声人語では、福島事故後の朝日新聞の世論調査によって、原発を「増やす」という人5%、「現状維持」51%、「減らす」30%、「やめる」11%と記されています。世論調査は質問の仕方によって大きく変わるものなので、一概にこの結果だけで即断できないのですが、一応、日本社会の傾向と見ていいのかもしれません。

朝日新聞は、日経一面の日中韓の賢人会議の協議内容は取り上げず、日本代表の中曽根元首相に「原子力と日本人」面でインタビューした内容を大きく報道しています。彼こそ、戦後日本の復活を賭けて(国鉄を潰し)原子力政策を提示した政治家であり、「エネルギーと科学技術がないと、日本は農業しかない四等国家になる」という危機感から原発を国策として推進した人物なのです。

「大事故は遺憾千万 新設は難しいが原発政策は推進を」、この言葉こそ、これまで日立や東芝という原発の世界のトップ企業の社長、海江田現経済産業相・原子力経済被害担当大臣など日本の原子力政策を担う人物の後で、主役が登場してその総括をし展望を高らかに宣言した感じがします。

中曽根元首相は、事故は「遺憾」で、「今の状況が国民に理解され、納得されるまでは慎重に対応すべき」と言いながら、本音を出して、「大変な被害を受けたけれど・・これを教訓として、原発政策は維持し、推進しなければならない。・・・世界の大勢は、原子力の平和利用、エネルギー利用を否定していない。」、ドイツの脱原発宣言については「政権の性格だ。それぞれの国柄による」と開き直ります。さすがに取材した記者は「取材を終えて」、「過去の原子力政策者たちが原発事故の責任を逃れてはなるまい・・・事故が起きて被害を受けるのは結局、国民なのだ」と精一杯の抵抗を示そうとしていますが、新聞全体を見るとき、犬の遠吠えのような印象を受けます。

それは戦後日本の経済復興、経済成長は「エネルギーと科学技術」によって成し遂げられたとする政治家たち(そして日本の経済人や大多数の人たち)の見解にも拘わらず、その成功要因が実は今の日本のデフレや環境破壊をつくりだした根本的な失敗要因であったという立場、見解を朝日は出し切っていないからです。

世界の体制が原子力の平和利用(言葉はきれいですが、これは原子爆弾の製造と表裏一体であり、原発の推進ということです)を否定していないと見る中曽根元首相は、世界唯一の被爆国として、30年で3回も起こった原発の大事故から学ぶことをせず、風見鶏よろしく、まだ「世界の体制は・・否定していない」などと自己肯定をするのです。自分が音頭をとって推進した国策によって福島の大事故が起こった責任を全く感じていないのです。

自分たちの想いで決断した原発のどこに致命的な欠陥があったのか、この点に思いが至らず、またマスコミもこの点を追及しません。だから、原発に代わる代替案がないという政治家や一般大衆の声と、原発の危険性を訴える専門家の声を二項対立的に浮き彫りにするしかなくなっているのではないでしょうか。

確かに原発の仕組みは専門的ですぐに素人にわかるものではないようです。だから東電や保安院も地震発生後6時間のデータはひた隠しにして、想定外の津波でなく、他のどこの原発でも起こりうる、地震による原子炉の損傷だと言わずに住民の動揺を抑えようとしたのでしょう。しかし福島原子炉四号の設計リーダであった田中三彦さんのお話しを聴き、私は問題の所在が良くわかりました。私が記した講演内容の誤りを田中さんご自身が指摘・訂正してくださったものですから、是非、多くの人に転送してください。まずは問題を知ることから始まります。http://anti-kyosei.blogspot.com/2011/04/blog-post_24.html

どんなに安全を強調しても、使用済み核燃料を数万年地下に埋めるしか処置方法がないというのは原発の致命的な欠陥です。核燃料を入れる容器がその期間安全なのか、何の実証実験もされておらず、未来世代に大きな負担を負わせるだけです。また原子炉の運用にあたり最も過酷な労働を強いられている人たちの現実、そういう犠牲の上になりたつ「平和利用」なるものは承認するわけにはいかないでしょう。まずこの二点、マスコミは徹底取材をして、多くの住民に情報を提供する義務があると私は思います。

韓国は、大きな被害に遭った日本に代って東アジアでの役割を強めてほしいとアメリカから乞われ、ナショナリズムがくすぐられているのかもしれませんが、フランス同様、原発を国策として推進することを事故後も再確認した韓国政府に対して、人間の手に負えないことに邁進する、バベルの塔を建設するかのような、傲慢で愚かしい政策にどうしてアジア最大ののキリスト教国を誇る韓国の教会が沈黙を守るのか、私にはまったく理解ができません。

現実の矛盾を直視しその矛盾と立ち向かうより、魂の救いと教会勢力の拡大を図る教会のドグマの所為なのか、韓国では釜山地域の一角を除いて反原発の声は上がっていません。しかし今回明らかになった、そして事故は起こらないと思い込まされてきた日本での原発事故を知り、韓国のカソリックもプロテスタント教会も、仏教も、自己の全存在を賭けて明確な意思表明をすべきです。

そして何よりも、まずできるだけ多くの市民に原発の実態、何が危険なのかを知ってもらうことが肝心だと思います。このメールを読まれた韓国の方はすぐにでもアクションを起こして下さい。そして私たち日本に住む者と情報交換をし、一緒に運動を進めましょう。「まずは神の国と、神の義を求めよ」ではないのですか?

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