2011年3月30日水曜日

東北の再生とは何かーNHKクローズアップ現代より

今日のクローズアップ現代は、電気に詳しい紹介会社のアナリストと、内橋克人でした。私は、内橋克人を『匠の世界』シリーズの時から愛読しており、小泉政権のときに、新自由主義を孤軍奮闘ながら批判している様子をいつも陰ながら応援していました。

夏に向けて電気の問題がどれほど深刻かをアナリストが説明した後、それを受けるように、日本の産業界のためには東北地方以外に生産基地を求めていく動きになっているが(海外移転も加速的に広がるでしょうー崔)、東北の人たちのやる気を無駄にせず、東北地方の復興と日本の産業の発展と結びつけるようにすべきという内橋さんの前振りがありました。

内橋さんは、持論のFEC理論(Food, Energy, Community)から、東北大学の学問と地域産業の振興を結びつけ、農業の振興(日本の農業を守り自給率を高めるためにTPP反対の立場に立つと思われる)、新しいエネルギー(彼はデンマークの風力発電の成功を良く取り上げてきたので、原発は反対の立場に立つと思われる)の開発、そして何よりも地域(彼はCommunityという単語を使ったが、私はもっと広い領域をさすRegionが適切であると思うが、いずれにしても日本語では地域社会になる)の再生を強調し、21世紀、世界に向けた新しい地域をつくるメッセージの発信が可能と結びました。

この2、3日中に、今読んでいる、中野剛志の力作『TPP亡国論』を紹介しますが、去年の末に話題になりはじめたTPP(環太平洋経済連携協定)も今では全く議論もされなくなっています。しかしTPPと、農業を中心とする東北地方の将来とは切っても切れない関係になっています。

経済界、政界、マスコミはこぞって「第二の開国」と宣言した管直人に賛成する流れですが、デフレが続く日本社会が関税を下げて農業を犠牲にし、輸出を増やすことによって日本を活性化させるという今主流の主張がどうなのかということは、もっと深刻に議論されなければならないと思います。

まだ被災地のごみさえ片付けられておらず、住民の避難所の確保さえままならない状態で、まちづくりに関する議論は早過ぎると思われるかもしれませんが、大前研一は震災後早々に、被災地は公共施設にして一般人は高台に住むようにして、魚港は統合し多少の犠牲を強いてでも、新たな震災に強い都市計画に着手すべきと政府に進言したことを明言していました。

私は内橋さんの言うことに近いのですが、もっと「住民主権による地方自治」を強調した上で地域産業論を語らないと、元の黙阿弥に戻ると危惧するのです。地域ボス、政治家、政党、大手ゼネコンが一体化して地域を仕切ってきた構造を変えないことには根本的には地域社会は変わらないと考えてきました。そして職場の確保ということで、他地方よりも安い労働力を武器にしている限りは、アジアの新興国には負け、脱工業化時代の付加価値のついた産業を立ち上げていくしか、実は東北地方の生きる道はないのではないかと考えています。

今までの工場がほとんど崩れた今、「復興」ではなく、内橋さんの強調する21世紀の世界に情報発信できるようなまちづくりを目指すべきだとおもうのですが、それを一般市民が加わり論議していく場が確保されるのでしょうか。

「東北地方の再生」とは何か、これは壊れた工場の建て直しや今まで通りの産業政策で終わるのでなく、地元大学(開発研究所)をコアーにしながら、住宅政策と産業政策を総合的に論議して早急な計画をたてることなのですが、その核心が実は、住民主権であり、地域に住む住民が自分たちの住宅環境への要望を含め、政治家に訴えるのではなく、自らが話合いの場に参加していくことが保障される、民主主義の新たなルールつくりであることに言及している人はお目にかかれません。

私はこの新たな民主主義の新たなルールというのは、実は、あらゆる人の差別を許さない社会づくりと結びつくと確信しているのです。原発反対は平和運動と結びつき、平和運動は、このあらゆる差別を許さないまちづくりと同時に実現されなければならないうことに、今の非常事態を憂う人は同意してくれるのでしょうか。

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