2010年8月9日月曜日

「韓国併合」100年を問う国際シンポジュームに参加して抱いた懸念

国立歴史民俗博物館主催、「韓国併合」100年を問う会共催、岩波書店・朝日新聞社後援の「国際シンポジューム「韓国併合」を問う」が8月7-8日の2日間にわたって東京大学で開かれました。延べにして1000名を超える、主催者側も予想していなかった大盛況で、会場に入りきれない人も多くいたようです。

「韓国併合」100年にあたり、未だ植民地支配が清算されずにいることを危惧する、もっとも良心的な歴史学者と一般市民が集ったということでしょうか。よく準備されたシンポで、現時点での、日本の学界の「最先端」の問題意識と研究内容が披露されたということなのでしょうか。中塚明先生の講演をはじめ、5つのセッションがあり、「近代の東アジアと「韓国併合」」、「日本の植民地支配」、「戦後日本と植民地支配の問題」、「歴史認識の問題」、「世界史の中の「韓国併合」」についての問題提起と25名もの研究者の発表という形式でした。

講演と問題提起、それに15分くらいの短いものであっても各自の研究発表の内容は十分に準備されたもので、学ぶことの多いシンポでした。しかし2日間、最初から最後の打ち上げのパーティにまで参加した私には、大きな懸念が残ったということを正直に告白せざるをえません。

25名の学者の中で、またフロアーからの一般市民の発言を含めて、日韓両国が「人種的マイノリティ問題を中心にした多文化社会を迎えている」という現状認識をもって、「内部植民地」の問題と発表したのは、韓国成均館大学の尹海東氏、ただ一人でした。彼の発表については総括の中でも取り上げられていたこともあり、後日、みなさんにお知らせします。

これだけ外国人が増え、「多文化共生」政策を日韓両国政府が政策として掲げるということは歴史的にどのような事態なのか、その「多文化共生」とは一体何なのか、私には植民地支配の清算をすべきだという意識をもつ歴史学者が、「多文化共生」政策が尹海東氏のいう「内部植民地」(或いは、西川長夫氏のいう<新>植民地主義)の問題ではないのかということについて一切の関心を示さなかったということに、大きな危機感をいだかざるをえませんでした。歴史学者は実証的な研究を進めながら、今現実社会で生起している「多文化共生」についての明確な見解を示し、植民地支配の問題として警鐘を鳴らすべきだと思います。

立ち話でしたが、それでも東京外大の岩崎稔氏、岩波の小島潔氏などのように、私の外国人の「二級市民」化、「共生」政策の問題点の指摘に大きく頷いていた人もいたということを付け加えておきます。

ついでに私の目の前にちょうど、「8・22日韓市民共同宣言大会」のチラシがあり、「朝鮮植民地支配の清算」を謳っています。しかしそのスローガンは、「平和と共生の東アジアを!」というものです。過去の清算を願い闘う市民もまた、「多文化共生」が「内部植民地」の問題だという認識を持っていないのではないのか、気にかかります。

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