2009年6月4日木曜日

『グローバリゼーションと植民地主義』(西川長夫編著)を読んでー朴鐘碩、日立の現場から

日立に勤務する朴鐘碩が春闘の現場から、西川長夫さんの編著を
読んだコメントをみなさんにお送りします。
西川さんの<新>植民地主義論が単なる机上の思想ではなく、
現実の矛盾、困難な状況を直視するのに重要な武器になっている
と思います。

崔 勝久

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「グローバリゼーションと植民地主義」西川長夫・高橋秀寿編 
人文書院 2009/03/30

(1)
この本は、西川長夫・高橋秀寿立命館大学教授を含め20名による世界的な「植民地を隠蔽し私たちに見えなくさせる大きな力」となっている「植民地主義」の歴史研究と「植民地なき新植民地主義」がもたらす矛盾・問題点を的確に指摘しています。私はこの現実とどのように向き合い切り開こうとしているのか、何ができるのか、また私はどう生きればいいのか、改めて問われたような気がします。

Ⅱ 国内植民地
「国境を越えた人種マイノリティ教育の移転-アメリカ合衆国の事例から」 宮下敬志
「アメリカ先住民のオジブワ族出身のデニス・バンクス(1937~)は、20世紀後半のアメリカインディアン運動(先住民による公民権運動)の活動家として有名である」
「バンクスは、青年期に受けた教育によってしだいに「非インディアン化」され、「従順なアメリカ人」として「飼い慣らされて」いったと回想している。とはいえ、その後の波乱の人生の中で、寄宿学校を含めた先住民に対する同化主義の傲慢さに気づいた彼は、運動家としての道を歩むことになる」

私は、日立製作所から採用を取り消されて、提訴したのは単純・素朴な「怒り」でした。「同化主義の傲慢さ」への怒りであったかも知れません。パラダイムの転換となった「日立闘争」を経験しましたが、「運動家としての道を歩む」ことなく、日立製作所で働くことになりました。

多国籍企業・日立で働く私は、この本を読みながら日立労組と会社の「2009年春闘」について考えました。約35,000人の組合員から組合費を毎月徴収している日立労組は、「「連合」「金属労協」「電機連合」の方針に従い、「個別賃金要求で4.500円、一時金年間5.0ヶ月とする」」ことが当初の目標でした。

ところが会社側は、ワークシェアリングを名目に月1日の休日増、管理職は5%、組合員は基本給3%減額という労働条件を提案し、日立労組幹部は組合員の声を聞くこともなく受け入れ、即妥結しました。

この事実が組合員に知らされたのは、春闘交渉が妥結した後でした。しかも妥結内容を説明したのは組合ではなく、職場の管理職を通じて結論のみが通達されたのです。組合員にとって全く寝耳に水でした。毎日、顔を合わせて共に仕事を進める上司から説明を受けた組合員は、視線をどこに向ければいいのか分からず、質問することもなく沈黙していました。

「日立製作所は、「基本と正道」の倫理を従業員に訴えておきながら、何故このような非人間的なやり方で労働条件を決めるのか?日立はそういう会社ですか?」という私の質問に、上司は、「質問されても回答できないから、会社に伝える」そうです。

「今更決定したことを文句言っても仕方がない。変わることもない。」という雰囲気が充満し、言われるままに、組合員は沈黙するしかありません。言うまでもなく、組合費で生活する組合役員の給与に関しては、一切触れることはありません。組合員だけでなくこのようなやり方に「怒り」を抑えきれない管理職もいたようです。

派遣、非正規、外国人労働者が一方的に解雇される中で、経営者責任を明確にせず、(世界)不況を正当化して(正規)労働者の自己責任を問い、労働条件を悪化させることこそ、「植民地主義経営」であり、「近代・文明化」技術の裏に必ず大きな陥穽があると、この本を読んで思いました。 「植民地主義経営」・多国籍企業の「偽装技術的躍進」は、人間の「文明化」をもたらしたのでしょうか?技術進歩という企業の「社会貢献」は「人間を解放する」と勘違いしたこともあり、「自分が植民地化されていることを認識するのはさらに難しい」のです。

以下、西川長夫さんの文章引用。

「いまなぜ植民地主義が問われるのか-植民地主義を深めるために」 西川長夫
「植民地を隠蔽し私たちに見えなくさせる大きな力が働いている。そしてその力こそがまさに植民地主義ではないだろうか。いま私にようやく見えてきたことは、国家と資本と文明概念に支えられた長期にわたる近代という時代は、グロ-バリゼ-ションと一体のものであり、その輝かしい近代の裏面には暗黒の植民地と植民地主義がべったり張りついている」

「自国民に向けられた「文明化の使命」、それは自己植民地化にほかならない。そしてそのような教育をうけて形成された「国民」が植民地主義を免れることは難しく、自分が植民地化されていることを認識するのはさらに難しい。」

「グロ-バリゼ-ションという用語は一方で新しい植民地体制の本質を示すとともに、他方で植民地の本質を隠蔽している」

「植民地主義は国民国家の、あるいは資本と国家と国民(民族)によって推進される(あるいは阻止される)共同事業となった。植民地主義は(あるいは反植民地主義は)国益と愛国心の名において語られ、帝国主義とナショナリズムとのかかわりで論じられることになる」

「新自由主義とは結局は<新植民地主義>ではなかったか」

「グロ-バル・シティは世界に開かれており、越境的なネットワークの一環として位置づけられる。これに対して国内植民地主義は1国内における文化的民族的特異性をもつ周辺地域(あるいはマイノリティ)が中央(あるいはマジョリティ)に対して植民地的状況に置かれていることに注目する。」

朴鐘碩
「外国人への差別を許すな・川崎連絡会議」HP掲示板より
http://homepage3.nifty.com/hrv/krk/index2.html

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