2009年5月8日金曜日

共同発表「多文化共生」と移民労働―安山市と川崎市の現地調査より」-立命館大学

共同発表「多文化共生」と移民労働―安山市と川崎市の現地調査より」-立命館大学韓国の安山市と川崎市を現地調査した、立命館大学大学院先端総合学術研究科博士課程の研究生が共同で論文を発表していますので、ご紹介します。植民地主義研究会によるフィールドワーク調査は、「アジアにおける多文化主義と移民労働の現状を現場から考察する」目的でなされたようです。
(http://www.ritsumei.ac.jp/acd/gr/gsce/2008/8.Joint%20lectures_paper.pdf)

発表者は以下の4名で、フィールド調査を踏まえた報告のレジュメになっています。
1.「都市と移民」  佐藤 量
2.「韓国における多文化共生―安山市と「国境のない村」」  原 佑介
3.「川崎市の多文化共生政策と在日朝鮮人の運動についての調査報告」 番匠健一
4.「<新>植民地主義から移民を考える」  岩間優希

佐藤さんの安山市についての論文の最後は問題点として、「多文化主義的社会運動の実験性がもたらす「理論の過剰」による「現場からの乖離」」を指摘しています。実際の「国境のない村」の外国人居住者は、中国出身の朝鮮族(67.9%)、中国人(17.8%)らしく、彼ら自身は、「『国境のない村』の価値と未来に対して無関心であったり、背を向け、別の土地を求めて出て行っている」現状への批判を紹介しています。

岩間さんは論文の「はじめに」おいて次のような問題意識を記しています。
「(川崎市と安山市)はそれぞれ、韓国と日本で多文化共生を実践する都市として注目されている場所である。・・・本研究ではこの二つの都市の多文化主義を、<新>植民地主義論の視座から検討していきたい。そうすることで、現在、都市を中心にして進行しているグローバル化がいかなるものなのか、<現場>に即した形で読み解くことができると考えるからである。」

論文の「おわりに」で岩間さんは以下のように締めくくります。
「現在の移民の流動は、<新>植民地主義的な背景によるものである一方、揺らぐ国民国家のなかで見出される新たな可能性としての面もある。・・・国民がそれ以外の在り方への変化する方向を探るとするならば、それには国民ならざる者の存在こそが鍵となりうるだろう。」

若い研究者が、日本と韓国で「多文化共生」を看板に掲げ有名な都市を訪れ、そこで何を感じたのかは、大変興味深く、また今後の研究がどのように深まるのか楽しみです。 

崔 勝久

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