2009年5月31日日曜日

指定都市(川崎)における住民参加の仕組みについて考える学習会の報告

みなさんへ

昨日の小原さんを囲んでの学習会の報告です。
小原さんのお話の骨子は望月さんの文責で以下に記しました。
 
3時間にわたる講演と質疑応答は、大きく以下の3点が中心でした。
1.自治体の適正規模
2.政令都市という制度
3.定住外国人の自治体政治参加

講演から多くのことを学びましたが、そこから川崎の課題について今後深めていかなければならないと強く感じています。私の理解としては、課題として以下のことを念頭に置いています。

1.小原さんの政令都市という制度は、財源と政治の配分の面からの説明であったが、住民の政治参加の保障(決定権への関与)という観点から制度の在り方を考える必要がある。(人口2万人ほどの中学校区を核にしての、新たな組織の川崎市政の中における位置つけ、公選公募による委員の選出など、住民が政治課題の決定過程にどのように参加できるのか、その保障をどのようにすることができるのか、ということを議論の中心に据える。)

2.川崎では既に自治基本条例に基づく区民会議条例が作られ、4年前から区民会議が運営されており、その組織の意図・実態を徹底的に見直し、問題点を洗い直して新たな提案をする必要がある(例えば区選出の市会議員との関係、市長・議会との関係性など)。

3.その結果、地方自治法に基づく「地域自治区」「地域協議会」との関係を考慮した組織にするのか、現在の川崎の条例の改正か、あるいは根本的に政令指定都市の分割解体(新都市建設)か、などの可能性を検討する必要がある。

これらのことは10月の市長選挙の結果とも関係します。すなわち、今の阿部市政では上記のことの検討は不可能なので(住民参加の地方自治は形式的なもので住民参加を装った新たな統治でしかなく)、新たな市長の下で徹底的に検討することを約束する内容だと思われます。

崔 勝久

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指定都市(川崎)における住民参加の仕組みについて考える
  【川崎市長選挙に向けた学習会】講師・小原隆治(成蹊大学教授)

   日時 2009年5月30日



住民参加という事態を考慮するとき、参加する自治体がどのようなものであるのかということを知る(認識)必要があります。まず、自治体を知るための基礎知識を展開してみます。

Ⅰ、自治体の適正規模。これには自治体には2つの性格があります。①費用対効果の効率を追及する経営体。②市民参加の民主主義を実現する政治体の2つ、二面です。



その経営体としての適性規模はどのようなものかといいますと、市民一人当たりの費用がどれだけ必要かという問題を示されます。自治体の大きさによって費用が異なります。小さな自治体でも大きな自治体でも基本的経費は共通性がありますが、自治体の規模が大きくなりますと、独自な費用が必要になります。都市基盤の設備等です。



これは縦軸を「単位費用」、横軸を「人口規模」というグラフで、諸自治体をプロットしますと、人口1万人以下では急カーブになり、10万人位まで下部を水平に推移し、人口規模が増大しますと、上昇カーブに反転推移していきます。費用が増加する原因は色々ですが、公害問題、交通渋滞などが発生しますので。



政治体としての適正を考えるにはまず、直接民主制を実現する規模について、考察します。直接民主主義は自治体ではどのような事柄のでしょうか。首長と議会のリコールが直接民主主義の手法ですが、はたしてこれはどの範囲で可能なのかということを知らなければなりません。



神奈川県自治総合研究センターの『指定都市と県』という著作の164頁に「法定署名達成件数は人口3万以下の自治体に集中し、30万が上限(1947年から1984年間)という調査報告があります。また、今井照著の『「平成大合併」の政治学』ではリコール投票実地件数は人口1万人以下の自治体が全体の4割を占め、3万人を超えると事例は僅少になるとあります。(190、237頁)



住民の意見交換の場(地域コミュニティ)の種類と大きさは、①基礎自治体・指定都市の行政区(町内会連合会の規模)、中学校区(連合町内会の規模)、③小学校区、④単位町内会などでが、どの大きさを選ぶか、選定の基準を考察する必要に迫られます。



個人で直接的に話し合い、世話をする軒数が10軒から16軒だという体験論をきだみのるが発表しています。『にっぽん部落』45頁。



次に政令指定都市という制度について考察します。この制度は地方自治法上の特殊な大都市制度の一つで、別には「都区制度」(東京都)があります。指定都市制度の特殊性は一般市と府県とが分担する領域が減少し、どちらでも分担できる領域が増大するという現象が発生しています。仕事の配分が変わったのに、財源や政治という面での配分が不均衡になるという現象です。この不均衡をどのように改めるかという問題が存在しています。指定都市制度のまま不均衡是正か、分解解体して、複数の一般都市に戻すか、或は都区制度の区を基礎自治体に準用するかという複数の選択肢が考えられます。



最後に定住外国人の自治体政治参加の事ですが、私は国籍+相互主義が穏当ではないかと考えています。韓国では相互主義ということがすでに設定されていますが、日本の状況を踏まえての事例と考えられるでしょう。日本でも住民投票では幾つかの自治体が国籍を撤廃して実施した実例がありますが。国法で定めるよりも、条例による制度化が望ましいでしょう。



質疑応答

Q,現在の区民会議は市長の形式的な諮問機構に過ぎない。住民主体の区民自治協議会の形成の可能性の有無は。

A,現在の市議会、区民会議との兼ね合いが問題。



区民議員からの発言、現在の区民議会は市長の諮問機関であるが、実態は市会議員の出席を市長から要請されていて、選出議員は4名、16人は団体斡旋で市側の推薦。年間4回の議会を市議会場で行おうという案が市側かれ提案されています。議会は市民が話からの議題提案はなく、懇親を目的の食事会が殆んど。

                     09・05・31  (文責  望月)

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