2009年5月3日日曜日

市議会の中に準区議会を創設~川崎市議会改革チャレンジ案(1)

みなさんへ

いよいよ連休に突入しましたが、みなさんはどのように
過ごされるのでしょうか。


地方自治体の在り方を変革すべきという思いが、うねりのように
全国的に出始めてきているように感じます。一般市民が政治に参加
できていない、これまでの地方自治の仕組みではだめだという
思いなのでしょう。

川崎市議会改革の在り方をこの間提案されてきた吉井さんから
具体的な改革案が提案されましたので、転送させていただきます。
これまで他地方で実施された「区民協議会」や、提案だけに
終わった京都案、名古屋で新たに河村ただしが公約とした掲げた
「地方委員会」案がありますが、吉井さんはそれらを全て踏まえた
上で、川崎市の改革案を提案されるのだと期待しています。

私としては、未だどこにおいても実施されず、提案もされていない
「外国人の政治参加」が吉井案でどのように提示されるのか、
楽しみです。「外国人の政治参加」と外国籍公務員の権利制限は
表裏一体です。これまでの最大の壁は、日本政府の「当然の法理」
見解でした。即ち、「公権力の行使」と「公の意思形成」は
日本国籍者に限るというものです。

最高裁判決は外国籍者の地方参政権を承認しました。
しかし川崎においては、外国人への「門戸の開放」を実施したと
いわれていますが、実際は、「当然の法理」を前提にした、
昇進と職務の制限を前提にしたものでした。その上、「外国人市民」
という特別の概念を作りだし、日本人市民と区別しています
(『日本において多文化共生とは何かー在日の経験から』(崔・加藤
共編著 新曜社)。

分権化という大きな流れが、日本の「外国人排除」というこれまでの
仕組みを根底から払拭するのか(憲法は禁止していない!)、
これまで通り、国政は元より、地方自治においても政治参加を
日本人に限定するのか、吉井案ではこの点を明確にしていただきたい
と願います。国籍条項は撤廃するという一言が入るのかどうか、
という一点です。

崔 勝久

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探検!地方自治体へ~川崎市政を中心に~  第87号 09/05/03
★市議会の中に準区議会を創設~川崎市議会改革チャレンジ案(1)~★
1.要約
2.これまでの経緯
3.指定市の中の市議会
4.準区議会の中味
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1.要約

川崎市は人口140万人に到達した。しかし、市議会があるだけという旧態依然とした状況で、市民の政治参加の機会は非常に乏しい。7区に分かれ、平均20万人の人口であれば、特例市と同じである。そこに区議会があるのが必然であろう。これはお隣の横浜市(人口365万人、18区)も含めて、どこの指定市でも共通の課題である。

そこで、「市議会の中に準区議会を創設」を提案する。“準区議会”はその言葉通り、行政区としての区の独立を明確に志向する考え方であり、その表現である。「各区委員会」では表現しきれない感覚、すなわち「区の独立=住民自治の拡大」を目指す言葉として“準区議会”辿りついたのが最大にポイントである。

次の機会に論ずるが、横浜市が1月に提起した「大都市制度」においても“区”はないがしろにされ、横浜市という「大都市」に呑み込まれたままになる。このままでは指定市の住民自治は危機的状況になる!

2.これまでの考え方

川崎市議会改革、何を、どのように進めるか(1)~議会基本条例への道~
http://www.h7.dion.ne.jp/~as-uw/images/mail_magazine/77.html
川崎市議会改革、何を、どのように進めるか(2)~議会基本条例への道~
http://www.h7.dion.ne.jp/~as-uw/images/mail_magazine/78.html
上記の報告で、議会改革の内容について以下の考え方を示した。
1)内部改革「議事機関のあるべき姿へ」
現状:三無状態 提案、討論、説明無し
2)権限拡大「議会を市長と対等の立場へ」
現状:圧力団体 行政への要望中心
3)住民参加「多様な双方向システムへ」
現状:一方通行 公式ルートは請願・陳情
4)地域自治「区議会を指向した運営形態」
現状:主体不在 地域課題が埋もれる

その後「川崎市議会議員と語る会実行委員有志」のなかで議論を進め、特に4)については指定市特有であり、住民自治としても議論する必要があるとの考え方でまとまった。それが、“準区議会”の発想である。

川崎市は人口140万人に到達した。一般会計予算5,800億円のうち、個人市民税が20%を占めるのであるから、人口が増えることは市長にとってウェルカムであり、そのような表現を記者会見で述べていたとの報道である。しかし、市議会があるだけという旧態依然とした状況で、市民の政治参加の機会は非常に乏しい。7区に分かれ、平均20万人の人口であれば、特例市に相当する。そこに区議会があるのが必然であろう。これはお隣の横浜市(人口365万人、18区)も含めて、どこの指定市でも共通の課題である。

そこで、先に廣瀬・法大教授、岩永多摩市議会議員をお迎えして開催したシンポジウム、「市民による“議会改革チャレンジ案”」において以下の提案をおこなった。
(議会の構成) 1.市議会の中に準区議会を創設
(住民主権)  2.情報の開示から循環へ
3.バリアフリーの住民参加
(議会の機能) 4.討論から意思決定まで
5.反問権?討論権!!

今回は1.について内容を説明し、続いて次回以降、2.~5.を説明していく。2.~5.は多くの自治体での議会改革でも叫ばれ、実践されてきたことを川崎市での具体的な課題として考えたものであり、これも指定市の事情を部分的に反映している内容である。

前回、報告したように川崎市議会は「議会のあり方検討プロジェクト」による非公開審議で遂に素案策定まできてしまった。市民への説明会も何もなく、パブリックコメントの〆切が5/22に設定されている。従って、これに対応して素案の内容についても合わせて検討する必要がある。とは言っても、今回の「市議会の中に準区議会を創設」については討論された形跡はどこにも見あたらないので、コメントもできない。

3.指定市の中の市議会

神奈川県は人口900万人、二つの指定市である横浜市(人口360万人)と川崎市(人口140万人)で人口の過半数を占める。更に、相模原市(人口70万人)が指定市へ移行することが予定されている。
残りの30市町村の中には、中核市(人口30人万以上)として横須賀市、特例市(人口20人万以上)として平塚市、厚木市、茅ヶ崎市がある。これを含めて平均人口を比較すると30市町村が11万人に対し、横浜市及び川崎市の区は全部で25区、平均人口20万人である。区は平均的な人口で指定市以外の平均を上回り、特例市並の人口である。

都道府県は広域自治体であり、その下に基礎自治体である市町村が『住民にいちばん身近な地方政府』として配置され、しかるべき事務事業の移管を受けている。指定市も基本的に基礎自治体であり、『住民にいちばん身近な地方政府』である。しかし、警察、高校等を除くほとんどの事務事業を行っており、県に対してほぼ独立運営している。

すなわち、指定市は『住民にいちばん身近な地方政府』である基礎自治体でありながら、実質的には都道府県並の広域自治体の仕事を行っている。例えてみるなら、イソップ物語の“こうもり”であり、「けもの」でもあるし、「鳥」でもあるのだ。そう考えると、広域自治体の中の市と同じように、指定市の中の区は少なくとも現段階で、特例市並の事務事業を行い、選挙による区長及び区議会を構成しても良いの
である。

これが道州制になれば、県、指定市はすべて廃止され、区がすべて市になるはずである。川崎市が廃止され、麻生市、多摩市、宮前市、高津市、中原市、幸市、川崎市である。尤も多摩市は東京都多摩市とかぶるから登戸市かもしれないし、川崎市は新川崎市であっても良い。

ここで大切なことは『住民にいちばん身近な地方政府』の規模に対する考え方である。身近という言葉を議会活動に引き写すと、“予算案の全体を把握し、コントロールできる範囲”があげられる。
議員各人が「全体を把握」していることが必要であって、会派が存在していてもできるたけ個人がそれぞれ判断することが住民自治へ繋がる道だからである。

例えば、東京都多摩市は先にも報告したように今年度予算をこの3月議会で修正可決した(84号「多摩市議会に学ぶ~予算案修正可決~」)。
http://www.h7.dion.ne.jp/~as-uw/images/mail_magazine/84.html
その修正案のなかには「高齢者おむつ支給事業」、「聴覚障がい者タクシー代・ガソリン費助成事業」の見直し案が入っている。これが“全体を把握”の良い例である。おそらく、声を上げられない高齢者、聴覚障がい者まで視野に入っているのであろう。なお、多摩市議会のH21年度予算修正議決に関して、例えば多摩市議会議員・橋本由美子さんのブログ、次の文章を参照「えっ! なんか変 教育の施策充実を喜ばない「多摩市教育委員会」」
http://yumiko001.exblog.jp/10104789/

ここまで来れば「人口(密度)と事務事業の質量」がポイントであって、議員定数の問題ではないことは明らかであろう。議論として良く引き合いに出されるのは、議員ひとり当りの人口に焼き直して比較することである。川崎市は140万人/63名=2.2万人/議員、横浜市は365万人/92名=4.0万人/議員(定数削減により、次回選挙から86名、4.2万人/議員)である。議員の人数を増やせば議会として市に対する理解が深まるかといえばそうではない。全体像が掴めていない議員が増えるだけ、議論がまとまらないのがオチである。

4.“準区議会”の内容

繰り返すが、 「市議会の中に準区議会を創設」は指定市として特有なことである。例えば、「各区委員会」を常任委員会であれ、特別委員会であれ、設置することである。同じような考え方は提案されていると思われる。

しかし、“準区議会”はその言葉通り、区の行政区としての独立を明確に志向する考え方であり、その表現である。「各区委員会」では表現しきれない感覚、すなわち、「区の独立=住民自治の拡大」を目指す言葉として“準区議会”辿りついたのが最大のポイントである。

指定市・川崎市は“住民にいちばん身近な地方政府”であると共に、東京都と横浜市に挟まれた首都圏と地域として140万人の地域政治を担う。東京都周辺の地域と同じように川崎都民の居住地域でもある。従って、「政策課題」と「地域課題」とをクロスオーバーするような複眼的視野を必要とする。
現在の常任委員会(総務、市民、健康福祉、建設、まちづくり)、特別委員会(予算、決算)に加えて各区特別委員会(麻生区、多摩区、宮前区、高津区、中原区、幸区、川崎区)を先ずは設置する必要がある。これが準区議会の具体的な姿である。その中で、各区特別委員会の仕事の中味と運営アプローチは以下のことが考えられる。

特別委員会の仕事
1)区に関連する請願・陳情等を審議
2)区計画、地域での施策を監視・評価
3)区予算並びに関連予算の審議、修正案作成

特別委員会の運営
基本的には通常の委員会と変わりないが、その中で、「住民自治の学校」として
住民参加を積極的にトライする。例えば、以下である。
1)請願・陳情の際の提出者の発言確保
2)議会報告会の実施
3)傍聴者の意見表明(福島町議会での「参画」に相当)
4)無作為抽出等も含めた住民との対話集会
要は不特定の住民と対話する覚悟ができているか、ということに尽きる。また、これとは別に市議会として道州制を視野、区の運営、区長・区議会の権限等検討が必要である。

先にも述べたように、現状は東京都23区と同じように、「特別区―事務事業の移管―区長、区議会議員の選挙」のシステムへ少しでも近づけるように積み上げておくことが大切で、「準区議会」を設置しることによって市議会での準備は整えたことになり、後は、市から区への権限委譲を促進することになる。このためには、特に予算案から区別予算の「款」を準区議会で審議するだけでなく、関連する項目、例えばその区で実施する投資的経費等も修正を視野に審議することが重要になる。このことによって、区議会と区長等が討論することになり、実質的に区の自治を進めることになる。更に、「住民自治の学校」として住民参加を推進していくことにより、住民が自治の具体的活動を身につけていくであろう。

現在、市から区への権限委譲は僅かである。仕事、人事を含めて、区長の存在が見えるように権限を振るわなければ区の独立はあり得ない。独任制としての首長制度は階層ごとに権限委譲を行い、住民との対話をおこなうようにすることが住民自治の本質に近づく道である。それをせず、「区民会議」を設置、住民をその委員に任命して市長の諮問機関にし、更に、実質的に予算の一部を裁量させたとしても、ごく一部の住民が予算をめがけて参加するだけで、バラマキ行政の変形版にいきついてしまう。市長による住民参加のPRに終始して、結局、住民自治に近づかない。

区の住民代表機能は議事機関である議会によってのみ可能であり、その第一歩が“準区議会”の設置であることを改めて強調したい。

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編集発行人 吉井俊夫
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