2009年3月21日土曜日

春闘と国内植民地主義ー朴鐘碩

日立に勤める朴鐘碩の「春闘と国内植民地主義」と題する投稿
の抜粋です(「外国人への差別を許すな川崎連絡会議」掲示板より、
http://homepage3.nifty.com/hrv/krk/index2.html)。


形式的には民主的な手続きで運営されている大企業の組合の
実態がよくわかります。組合のメンバーが自由闊達に組合の
あり方について、その方針決定過程にどのように参加するのか、
問われているように思います。政治の世界をはじめ、広く
日本社会全体にわたって同じような現象があるようです。
形としては保障されているのに、言いたいことが言えない。
それをどのうように突破できるのか、変革できるのか・・・


崔 勝久
SK Choi

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春闘と「植民地主義」  朴鐘碩
 
経団連・人企連に加盟する企業の経営者によって非正規・派遣労働者が一方的に解雇される中で、経営者と企業内組合幹部は、正規労働者(組合員)の賃上げ・雇用維持の交渉を始めました。交渉の中心人物は、組合費を払っている一般組合員ではありません。
『日本における多文化共生とは何か』(新曜社)に書きましたが、日立労組(有野正治委員長・組合員35,000人)が組合員の意見・要望・質問をどのような方法で無視しているか、その一例を紹介します。

「職場討議資料」として「電機連合第95回中央委員会議案に関する日立労組見解」(HITACHI UNION NOW NO.954号)2009.1.16が配布され、職場評議員から意見・要望を求める以下のようなmailが組合員に展開されました。
「お配りするHITACHI UNION NOW 954号に記載されています、電機連合第95回中央委員会議案および議案に対する日立労組見解に関しまして、ご意見・ご要望がありましたら1月27日(火)までにお願いします。」
私は、職場組合員と執行部に以下のような質問をmail展開しました。
(略)


日立労組から誠実な回答はありませんが、それでもこのようなやりとりを何年もしつこく続けています。

「今後闘争の推進に職場組合員との認識ギャップが生じる恐れがあります。・・職場組合員との認識ギャップが生じさせないよう、情報の共有化と連携をはかり、あらゆる事態に対応できる体制の構築により、この厳しく難しい闘争を全力で推進していきます。」(NO.955 2009春闘要求に関する中執見解)と書かれていますが、組合は質問に応えず、組合員の意見・要望を平気で無視します。組合幹部自ら「認識ギャップ」を深めています。

日立製作所労働組合は、組合員の声を聞かず、有料の機関紙(HITACHI UNION NOW)に「結論」を掲載します。「職場討議資料」となっていますが、議案は、組合員に一切説明することはなく、職場で討議することもありません。
それでも一応組合員に意見・要望を求めるという「民主的」なプロセスを経ています。しかし、その実態は、上から予め「結論」が出され、組合員から意見・要望が出されてもその声を反映することはありません。意見・要望は、都合よく選別され、組合(幹部・役員)への批判、問題と矛盾は隠蔽します。労働条件は、組合幹部と経営者幹部で全て決定します。

スト権委譲投票は、ソフト支部(組合員約1,500)で90%を越えていますが、委譲率も90%近い状況です。しかし、各職場区の投票率は公開しません。私の職場区では管理職がいる前で「投票しろ!」という組合役員の「恫喝」はなくなりましたが、まだ他職場でその効果があるせいなのか公職選挙の投票率はるかに上回っています。普段、組合活動に関心もない、言いたいことも言えない、沈黙している組合員は「投票させられている」のか、「投票を拒否する自由もない」のか、投票・委譲率は異常な高さです。

組合員は、私のmailを読んで同調するよりも複雑な気持ちを感じているようですが、業務に追われて、意見・要望を出すことはなく、おかしいと疑問があっても沈黙しています。
経営者と正規労働者の給与から天引きされた組合費で生活している組合幹部は、「労使一体・協創」(「共生」)を謳い、組合員に「共生」を「強制」しています。職場は、ものが言えない、言わせない「暗い」環境になっていますが、「明るい活気ある職場」にするために上司と数人グループで昼食を取りながら懇談会が定期的に開かれます。昼休みを利用した懇談会は組合員が普段話す機会のない部長に(建前として)「言いたいことが言える」唯一の場でもあるようです。(ほぼ)全員参加するものの、積極的な姿勢で臨む組合員は少ないようです。(「できれば出席したくない」と感じている組合員も少なくないようです)
経済不況で、経営者責任よりも労働者一人ひとりの「(精神的な)頑張り」と「自己責任」が問われるような雰囲気が漂い、正規労働者は、余計なことは考えず黙って働いています。
上から「風通しのよい明るい活気ある職場」を課せられるため、職場の矛盾、問題点を提起できる組合員(正規労働者)は皆無の状況です。
連日、非正規・派遣労働者の解雇、ジョブレスの実態がマスコミ(の組合も連合に加盟し矛盾と問題がある)に報道される中で、正規労働者(組合員)をないがしろにした連合春闘は続いています。

2月2日、横浜国立大学で開かれた西川長夫立命館大学名誉教授の「多文化共生と国内植民地主義」を聴講して、私は「強者の多文化共生は、問題点・矛盾を隠蔽し、差別・抑圧を助長する。人間(労働者)を分断・管理・支配し、国民国家と利潤優先企業(資本)の論理を強化する」と(連合の)春闘を通じて改めて実感しています。
正規を含め劣悪な労働条件・低賃金で働く非正規・派遣・外国人の労働市場は、経団連・大企業資本にとって「広大な植民地」と言えます。

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