2021年4月14日水曜日

放射線汚染水の海洋放出に反対する抗議文

内閣総理大臣 菅義偉 様 経済産業大臣 梶山弘志 様 東京電力社長 小早川智明 様

東京電力福島第一原子力発電所の放射能汚染水を海洋放出することに反対します

政府が、近々、福島第一原子力発電所の放射能汚染水を海洋放出する方針を決定するとの報道がありました。私たちは、以下の理由で、この方針に反対致します。

1. これまで10年間に貯蔵された125万トンを超える汚染水は、多核種除去設備(ALPS)で処理しているものの、トリチウムを除去できないだけではなく、他の多くの核種に関しても基準を満たしておりません。仮に希釈して放出するとしても、海洋で問題になるのは濃度ではなく、絶対量であり、かえって希釈作業に携わる人々の被ばくの危険性を増すばかりです。海洋放出された放射性物質が、いずれ生物濃縮されて私たちの人体に混入することは避けられない宿命です。これは政府がいうような風評被害ではなく、人命と環境を蝕む深刻な実害です。

2. トリチウムの半減期は12.3年であり、リスクが十分に下がるまでには100年以上を要します。トリチウムが体内に入った場合、体外に排出されて半減するのに10日ほどかかるといわれており、β線による内部被ばくのリスクは避けられません。

3. 東電は福島県漁業協同組合連合会に宛てた書簡(2016年8月25日付)において、「漁業者をはじめ、関係者への丁寧な説明等必要な取組を行うこととしており、こうしたプロセスや関係者の理解なしには、いかなる処分も行わず、多核種除去設備で処理した水は発電所敷地内のタンクに貯留します」と約束しました。全国漁業協同組合連合会が、汚染水の海洋放出に一貫して反対していることを無視してはなりません。

4. アメリカ、カナダ、イギリスにはトリチウム分離施設が存在します。日本でも早急に技術開発を行うべきで、それまでは新たなタンクを増設して、海洋放出を控える努力をすべきです。

5. すでに韓国、中国、チリが福島第一原発の放射能汚染水の海洋放出に懸念を表明しており、国連人権高等弁務官事務所も国際的に深い議論を行うまで、最終決定を延期するよう日本政府に求めています。汚染水の海洋放出は、全世界に対する放出であり、未来に対する放出でもあります。あなたがたは、福島の漁民をはじめとする日本に居住する全ての人々に対して責任を負っているのみならず、海洋を介して接しているあらゆる国々、また海洋生物と連鎖している全地球生態系に対して、現在のみならず、将来にわたって、重大な責任を負っていることを弁えるべきです。

6. 日本は、広島・長崎および第五福竜丸における被爆国であり、放射能の恐ろしさについて、世界に向けて証言していく責務があります。福島第一原発の放射能汚染水の取扱いに対しても、慎重に慎重を期すべきではないでしょうか。

 私たちは、併せて、原子力発電所の再稼働に反対し、核兵器の廃絶を訴え、人間の知恵や技術では制御できない核開発を放棄すべきことを訴えます。

2021年4月9日 日本キリスト教会大会人権問題委員会 委員長 金田聖治

日本キリスト教会大会靖国神社問題特別委員会 委員長 小塩海平

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