2016年8月1日月曜日

8月1日、本日、原発メーカ―訴訟の島弁護団長を提訴しました!


選挙結果の驚き
知事選の結果、小池の大勝、鳥越の完敗、これは想定内でした。しかし朝鮮人の殺戮を街中で叫ぶ在特会のリーダーが11万票を取り、鳥越の十分の一弱だったことに私は大きなショックを受けています。腰を落ち着かせ、植民地支配の歴史を直視してこなかった戦後の平和と民主主義が何であったのか、について議論を深める必要があると思います。在特会への単なる「対抗」では、結局は彼らにひきずりこまれるでしょう。外国人は排除して当然とする「川崎方式」が地方自治体の全国的な制度になっていることを当然視する日本社会は既に異常です。

本日、原発メーカ―訴訟の島弁護団長を提訴しました
8月1日、本日、原発メーカーの責任を追及する訴訟を提案し、全世界39ヶ国から4000名の原告を集めた、「原発メーカー訴訟の会」の前事務局長の崔勝久と現事務局長の朴鐘碩は、原告弁護団長の島昭宏弁護士の数々の違法行為を提訴するため、精神的損害賠償金を求める訴状を横浜地裁に提出しました。

島弁護士の弁護士としての言動の適格性と違法性は弁護士会と裁判所が判断します
2014年の提訴から今日に至るまでの「訴訟の会」の混乱の原因は、島弁護士の、弁護士としてあるまじき言動と原告団の組織である「訴訟の会」への不当な介入によるもので、そのために「訴訟の会」は分裂、消滅の危機に陥り、原告の崔と朴は島弁護士の行動は弁護士職務基本規程に反し、弁護士法、民法に背く違法行為であることを明らかにするために、島弁護士を告訴する決心をしました。彼の所属する弁護士会には17名の本人訴訟団のメンバーが島弁護士の懲戒申請の申請をしています。島弁護士の言動が弁護士として許される行動であったのか、またその言動が違法であるかどうか、弁護士会と裁判所がそれぞれ判断をするでしょう。

提訴の最大の理由は、島弁護士による恣意的な委任契約解除です
主位的請求は、島弁護士の私たちとの委任契約の解除による、精神的損害に対する民法651条2項違反の損害賠償金の請求です。すなわち、島弁護士は私たち二人の原告を「訴訟の会」から追い出すために委任契約を解除したのですが、その際、島弁護士や共同代表の河合弁護士までもが民法651条1項は、「委任は、各当事者がいつでもその内容を解除することができる。」と規定していることをあげ、代理人もまた原告同様、いつでも委任契約を解除できるとうそぶいてきました。しかし彼らは同条2項は「当事者の一方が相手方に不利な時期に委任の解除をしたときは、その当事者の一方は、相手方の損害を賠償しなければならない。ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りでない。」と規定していることを無視していたのです。法律専門家の「嘘」、「不備」を法律素人が見破ったということでしょうか。

予備的請求
予備的請求としては、島弁護士が原告との委任契約書の作成をしなかったこと、被告が原告両名と十分協議することなく、その意思に反して訴訟活動の準備を行ったこと原告が中心となって原告団「訴訟の会」の集めたお金を「凍結」し弁護団に渡せと被告が「恫喝」的な要求をしてきたこと被告が原告朴の初の口頭弁論に向けた進行協議参加要請を虚偽の理由で拒否したこと被告は海外のすべての原告への控訴意思の確認を怠ったことなど、10項目以上の「関連事実」の数々をあげ、それら不法行為に対する損害金を請求しています。

被告が原告朴の進行協議参加を虚偽の理由で拒否したこと
このことの説明をします。2015年6月3日に行われた東京地方裁判所における進行協議は提訴以来1年半経って開かれる第一回目の口頭弁論に先駆けて持たれたものです。原告の希望者全員が進行協議に参加できないことは当然ですが、しかし、進行協議の参加者は、被告の日立、東芝、GE各社には3名、原告側には6名の枠がありました。しかし弁護団は、代理人しか参加できないと偽りの理由で事務局の朴の出席を拒みました。
いぶかしく思った朴は、主催者である東京地方裁判所に直接電話して、原告の進行協議会議への参加の是非について確認をしたところ、傍聴どころか当事者だから発言をしてもよい、原告の進行協議への参加は当然のこととして承認するということが判明しました。
しかあろうことか被告及び弁護団は、「進行協議に関する(弁護団からの)協力の要請を無視した」という理由、すなわち、進行協議には出席するなという弁護士の命令を朴が無視して出席したという理由で、2015年7月13日付で朴の代理人を辞任したのです。これは事務局長朴を「訴訟の会」から排除することを謀ったものです。

島弁護団の「訴訟の会」の会計不正の虚偽のキャンペーンについて(「会計正常化プロジェクト」なるものの正体
訴状はこのように記しています。
被告と弁護団と原告の一部である「世話人会」は、事務局の不正会計処理と決めつけ、事務局で決定した正当な国際連帯運動のための支出に対して「不正な会計処理を正そう」という歪んだキャンペーンを会報に流し、多くの原告に事務局に対する誤った認識を植え付けている」。
会計処理の問題と資金使途とは別の次元の問題である」(「訴訟の会」は一貫して国際連帯運動の構築を模索してきたのですが、そのため支出は「訴訟の会」には不必要という弁護団との見解の相違)。
資金使途についての見解が異なるということで会計処理が不正であると主張することは、結局、事務局の正統性を承認しないという次元の問題になる。これは最終的には、「世話人会」は「訴訟の会」を認めず、自分たちがそれに代わって原告団組織の正統性を主張することになるのである」。
「訴訟の会』会計にいかなる不正もありません。しかし島弁護団と「世話人会」は「訴訟の会」の会計問題をでっちあげ、「訴訟の会」の解体・消滅を謀り、新たな弁護団主導の「原告団」組織をつくるということです。

島弁護士告訴の最後の、最大のきっかけー「控訴委任状」が必要と言う弁護士の「嘘」
1審の敗北と控訴審に進むにあたって島弁護士の告訴を決意したきっかけは、島弁護士および原告弁護団による、「高裁に控訴するためには、原告委任状を提出する必要があります」という偽りのキャンペーンをはじめたことです。4000人の原告は提訴にあたり東京地裁に「訴訟委任状」を提出し、代理人の選出と、その代理人に「控訴」の手続きの委任を明記しています。最初に提出した「訴訟委任状」で全世界の原告全員が控訴手続きができるのです。

新たな「控訴委任状」なるものがなくては控訴できないと言い出した理由は何でしょうか?
訴状はこのように記しています。
本来、被告及び弁護団は最初の訴訟委任状を使って高裁への控訴手続きができるのである。しかしそのようにせず特に新たな訴訟委任状を求めるのは、地裁の原告が高裁の原告になる意思を確認するためにできるだけのことをしたが、連絡がとれなかった原告と返信がなかった原告を除いて、直接、新たな訴訟委任状を提出してくれた原告だけを対象にして控訴せざるをえないという口実を正当化するためである。しかしそれは「結果として」連絡のとれた、自分たち弁護団を支持する原告だけを高裁における原告にするということであり、「結果として」、日本人だけが原告になるようなやり方をしているということになる」。

しかし、そのようなやり方では本当に4千人すべての原告に控訴する意思があるのかを確認したことにはならず、控訴する権限があっても控訴できなかった原告、特に崔と朴らが中心となって集めた海外の2,500名の原告は、控訴をする権限を喪失することになる。それは原告として裁判をする権利がはく奪されたということである。国際連帯を謳って集めた海外39ヶ国2,500名の原告は、ほぼ全員、高裁の原告になれないという事態になるのである。

かくして被告(島弁護士)および弁護団は、自分たちに従う、日本人原告だけの訴訟をすすめることになる。国際連帯による法廷闘争は一審で終わりになるのである」。

島弁護士は新たな、原告弁護団主導の原告団を計画しています
「訴訟の会」の分断・消滅を謀ってきた島弁護士はその総仕上げとして、「原発メーカー訴訟原告団」構想を打ち出しました。それは「訴訟の会」の乗っ取りです。ようやくその正体が現れました。その会則案の第一は、「会員は弁護団を代理人とする委任契約を締結した原告」とあります。すなわち、原告団は弁護団を解任する権限を放棄し、弁護団の主導に従うということです。それは原告の主体の放棄です。原告団は弁護団と協力し合うことはあっても、その主導に従うというものであってはなりません。
原発メーカーの主体はあくまでも原告でなければならないのです。「原発メーカー訴訟原告団」は島弁護士主導の「原告団」であるということになります。島弁護士とその追随者がいまだに「訴訟の会」との対話を拒み続ける理由はなんでしょうか?

島弁護士の根本的な問題点
訴状は被告島弁護士の不法行為は、「日本社会の社会的、歴史的な構造の無理解に基づく」と断じ、島弁護士は原発体制が差別の上で成り立っているということを理解しようとせず、メーカー訴訟を提起した崔に対して島弁護士は、崔は「民族差別闘争を成し遂げるための手段として原発メーカー訴訟を利用」しようとしたとして、崔の事務局長辞任を求め、他の原告に対してはあくまでも弁護団の主導に従うことを求めて、従わない者には委任契約を解除すると恫喝してきました。
原告の精神的損害の内容に関して訴状は、このように記しています。
メーカー訴訟を提起してきた本人である原告らは、多くの犠牲を払って本人訴訟を担い、「訴訟の会」の分裂を防ぎ、「訴訟の会」として弁護団と本人訴訟団の両方の支持・支援することに全力を尽くしてきたが、(島弁護士の言動と不当な組織介入)のために大変な労力を費やし多大な精神的苦痛を被ることになった」。

島弁護士の違法行為を裁判にしたことで、原告4000人の「訴訟の会」は生き延びます
「訴訟の会」は、島弁護士たちの「原賠法の責任集中制度は違憲」論を支持し、支援します(年間の支援予算も組みました)、そして同時に弁護団を解任した40名の本人訴訟団の「原発の製造・輸出は違憲」論も支持・支援します。それは総会における決定事項です。弁護団と本人訴訟団の両者を支持・支援するの、両者が同じ原告(同じ事件番号です!)としていずれも原発メーカーの責任を追及するという共通の目標を持っているからです。どのような団体、個人に対しても、共通の敵に対して連帯できることは連帯する、あくまも対話の姿勢を持ち続けるというのは私たちの基本的な姿勢です。

「訴訟の会」の展望
「訴訟の会」は控訴を進めながら、法廷外の原発メーカーへの国際的な直接抗議行動を展開します。裁判のための裁判、法廷内で完結する法律専門家による「屁理屈」談義はもういいでしょう。私たちは、15年間で64基の原発の製造・輸出を公表した東芝を相手にして、BDS(Boycott, Divest投資引き上げ、Sanction制裁)の国際的な運動を展開します。

             前「原発メ―カー訴訟の会」事務局長  崔 勝久
             現「原発メーカー訴訟の会」事務局長  朴 鐘碩


                資料としての訴状

                     
第1 主位的請求について
 1 当事者について
  (1) 原告崔勝久(チェ・スング、以下「原告崔」という。)は、世界で初めて原発メーカーの責任を問う民事訴訟(以下「本件民事訴訟」という。)を提起し、全世界39ヶ国から約4千人の原告を集めた原告団「原発メーカー訴訟の会」(以下「訴訟の会」という。)の前事務局長であり、原告朴鐘碩(パク・チョンソク、以下「原告朴」という。)は、訴訟の会の現事務局長である。
 (2) 被告は、東京弁護士会に所属する弁護士であり、本件民事訴訟につき原告崔及び原告朴から委任を受け、その訴訟代理人をしていた者である。

2 弁護士業務委任契約の締結及び内容
 (1) 原告崔は、20125月ころ、東京都中央区築地3-9-10築地ビル3F所在のアーライツ法律事務所において、原告崔を委任者、同事務所で勤務している弁護士である被告を受任弁護士として、次の内容の弁護士業務委任契約を締結した。
  ア 原告崔は被告に対し、次の事項を委任し、被告はこれを受任する。
   原告崔を原告、株式会社東芝、株式会社日立製作所、ゼネラル・エレクトリック等を被告として、2011311日の福島第一原
子力発電所の事故に係る損害賠償請求事件について、被告を訴訟代
理人に選任し、原告崔がする一切の訴訟行為を代理する権限
    ② 訴えの取下げ、和解、請求の放棄又は訴訟参加若しくは訴訟引受けによる脱退
    ③ 控訴、上告若しくは上告受理の申立て又はこれらの取下げ
    ④ 復代理人の選任を含む一切の行為をする権限
  イ 被告は、弁護士法に従い、誠実に委任事務の処理に当たるものとする。
  ウ 原告崔は、被告に対し、着手金として金3万円とその消費税2400
を支払うが、支払時期・方法はおって協議して決める。
  エ 事件処理に必要な諸費用は、原告崔は被告が請求したときに支払う。
  オ 報酬は、被告が委任の目的を達したときに原告崔が被告に支払う。その金額はおって協議して決める。
  カ 当事者間に疑義が生じた場合には、原告崔と被告は、信義誠実の原則に則り、協議して決める。
 (2)  原告朴も、原告崔と同様、前同日に前記法律事務所において、被告との間で、原告崔と被告との間で締結された前記弁護士業務委任契約と同内容の弁護士業務委任契約を締結した。
 (3)   原告崔と被告との間、原告朴と被告との間の上記各委任契約については、契約書は作成されず、作成されたのは各訴訟委任状のみであった。
 (4)   その後、原告崔及び原告朴は、被告との間で、各委任契約の着手金について無償とすることでそれぞれ合意した。
 (5)  なお、本件民事訴訟の原告崔及び原告朴の代理人弁護士は、被告以外にもいたが、被告はこれら原告崔及び原告朴を含め4000名の原告ら及び原告ら訴訟代理人らの共同代表になった。

 3 原告崔及び原告朴らに不利な時期の被告による委任契約の解除について
  (1)  本件民事訴訟は、2014130日に東京地方裁判所に訴状が提出され、同事件は同裁判所民事24部に係属することとなり、その後紆余曲折を経て、第1回口頭弁論期日は2015828日に指定された。
(2)  原告崔及び原告朴は、被告らから本件民事訴訟の各被告の会社により裁判所に提出された各答弁書、証拠説明書、各証拠の各写しを受領した。
(3)  原告崔及び原告朴は、本件民事訴訟の被告らから提出された上記各資料の内容を精査し、他の原告らと議論を重ねてきた。
(4)  その後、被告の弁護士職務基本規定及び弁護士法に反する違法行為に起因する「訴訟の会」の混乱の中で、被告は原発メーカー訴訟弁護団としての声明文をだし、「代理人辞任声明等は、弁護団と崔との信頼関係が破壊されたために行われたもの」と説明した(甲第1号証2014124日付メール)。
  そして被告は、第1回口頭弁論期日が切迫した2015714日、原告崔及び原告朴に対して内容証明にて(甲第2号証)、本件民事訴訟の原告4000名のうち、原告崔及び原告朴についてのみ前記各弁護士業務委任契約を解除し、両原告についてのみ訴訟代理人を辞任する旨を通告してきた。
(5)  民法651条1項は、「委任は、各当事者がいつでもその内容を解除することができる。」と規定し、同条2項は「当事者の一方が相手方に不利な時期に委任の解除をしたときは、その当事者の一方は、相手方の損害を賠償しなければならない。ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りでない。」と規定している。
この「相手方に不利な時期」とは、事務処理自体との関連において相 手方に不利な時期であり、例えば、受任者から解約されたとき委任者が遅滞なく他人にその事務処理を委任するのが困難な時期などのことと解されている。
また、民法651条2項の損害賠償義務は、債務不履行を原因とするものではないため、相手方に不利であることにつき解約者の善意・悪意又は故意・過失の有無を問わないと解されている。
(6)  これを前提に本件をみると、原告崔及び原告朴は、第1回口頭弁論期日の前に委任契約を解除されたため、両原告とも、同期日までに別の弁護士を訴訟代理人として選任するか、原告本人として本件民事訴訟に出席し、いわゆる原告本人訴訟という形で本件民事訴訟を遂行すべきなのか、あるいは原告としての訴えを取り下げることとするのか、このような重大な訴訟に対する対応を極めて短期間のうちに決断せざるを得ない状況に追い込まれた。両原告ともに、本人訴訟を選択した場合には、法廷でどのような発言、訴訟対応をしたらよいのか分からず、大変混乱した精神状態になった。
   (7)  その結果、原告崔及び原告朴は、いずれも、同人らが中心になって集めた他の4000人の原告への責任上、訴えを取り下げずに本人訴訟として訴訟活動を行うことを決心した。
また、両原告ともに、他の弁護士に対して訴訟代理人として依頼すべきかどうかも検討したが、そのような弁護士を探した上で、法律相談のアポイントを取って事務所にうかがい、その上で、事件の内容等を説明して委任するかどうか判断してもらい、着手金、報酬金の金額も合意して弁護士業務委任契約の締結、というプロセスに及ぶにはあまりにも時間が足りず、さらに、経済的な負担も出てくるため、これについては断念を余儀なくされたのである。
(8)  両原告とも、被告による委任契約解除によって、原告本人訴訟として臨むために膨大な実務作業を行わざるを得なくなり、日常生活は完全にその準備にかかりきりになり、金銭的にも大きな負担を余儀なくされるに至った。
そして、その後、原告団の「訴訟の会」は混乱を極め、原告崔及び原告朴が訴訟を進めるためその混乱の中で組織を維持しなければならず、両原告の被った精神的苦痛は甚大なものであった。原告崔はそのストレスを一因とする心不全を患ったほどである(甲第3号証)。
 (9)  原告朴の受けた精神的苦痛は100万円を下らず、原告崔の受けた精神的苦痛は金200万円を下らない。

 4 結論
  したがって、原告朴は被告に対し、弁護士業務委任契約解除に基づく民法6512項の損害賠償請求として金100万円及びこれに対する本訴状送達の日の翌日から年5分の割合による遅延損害金の支払いを求め、原告崔は被告に対し、同様に弁護士業務委託解除に基づく民法6512項の損害賠償として金200万円及びこれに対する本訴状送達の日の翌日から年5分の割合による損延損害金の支払いを求めるものである。

第2 予備的請求について
 1 被告による不法行為
被告は、原発メーカー訴訟の弁護団長として原告両名に対し、以下の不法行為を行った。

(1)  訴訟委任状に関する不法行為
 ア 原告朴及び崔は、2014120日頃、被告に対し、同人が用意した本 件民事訴訟に関する訴訟委任状の用紙の住所、氏名欄にそれぞれ自己の住所、氏名を記載した。
   ところが、その際、原告両名の各押印について、被告は、原告両名に対し、押印は不要と虚偽の指示をした。
   訴訟委任状については、署名及び押印か記名及び押印が必要とされているところ、当時、原告両名は、訴訟活動について法律業務の専門家である弁護士たる被告から「押印は不要」と指示されたことから、この指示を受けざるを得ず、いずれも全く押印しないままの訴訟委任状を被告に提出した。
   被告は、原告両名に対し、訴訟委任状になぜ原告両名それぞれの押印が不要なのか、その説明は一切しなかった。
 イ これらの訴訟委任状は、被告から本件民事訴訟の訴状などとともに東京地方裁判所に提出されたものと思われるが、原告両名は被告からこの訴訟委任状についていずれもその写しを受け取っていない。
 ウ また、被告が裁判所に提出したこれらの訴訟委任状に原告両名の各押印部分がどのようになっているのか、被告は原告両名に対し一切報告も説明もしていないので、全くわからない状況にある。
 エ 弁護士職務基本規定(以下「規定」という。)21条は「弁護士は、良心に従い、依頼者の権利及び正当な利益を実現するように努める。」と規定し、第22条第1項は「弁護士は、委任の趣旨に関する依頼者の意思を尊重して職務を行うものとする。」と規定している。
   しかしながら、被告は、訴訟委任状への原告両名の各押印は不要であるとの虚偽の説明をした。加えて、被告は原告両名に対し、訴訟委任状への押印部分について報告も説明もしていないのは、委任者である原告両名の意思を尊重したものとは考えられない。

 (2) 委任契約書を作成しなかったことについて
 ア 被告は、原告両名と本件民事訴訟に関する弁護士業務委任契約をそれぞれ締結に際し、委任契約書を作成しなかった。
   被告は、その際、委任契約書を作成しなかったことについて、原告両名がこれを被告に対し望んだのではなく、かえって、原告両名は、いずれも、後日、原告両名らが被告に対して預けるであろう実費等に関する金員や被告からの報告等に関し疑義が生じることがないように心配していた。
 イ 規定第301項は「弁護士は、事件を受任するに当たり、弁護士報酬に関する事項を含む委任契約を作成しなければならない。ただし、委任契約書を作成することに困難な事由があるときは、その自由が止んだ後、これを作成する。」、第2項は「前項の規定にもかかわらず、受任する事件が、法律相談、簡易な書面の作成又は顧問契約その他継続的な契約に基づくものであるときその他合理的な理由があるときは、委任契約書の作成を要しない。」とそれぞれ規定している。
   しかしながら、原告両名と被告との間には、委任契約書を作成することに困難な事由は全くなかった上、規定第2項に該当するような理由も全く存在しなかった。

(3)  被告が原告両名と十分協議することなく、その意思に反して訴訟活動の準備を行ったことについて
ア 被告は2014130日に東京地方裁判所に訴状を提出するにあたり、それ以前の段階で原告両名をはじめとした原告と訴状の内容を準分に協議することをしなかった。そのため、原告両名が最終訴状の内容を知ったのは訴状が提出された後である。
イ 被告は原告と一緒になって訴状に関する検証と訴訟活動の内容を協議するべきであったにもかかわらず、原告団の「訴訟の会」の運動方針に関与し、事務局長であった原告崔が民族差別闘争を成し遂げるための手段として原発メーカー訴訟を利用する」という虚偽の理由をあげて辞任を要求するなどの行動をしはじめた。
ウ そのために崔が事務協局長であった時、及びその後事務局長を継いだ朴の時に「訴訟の会」は混乱し、被告は原告両名との対話さえ拒否し、「訴訟の会」は訴訟活動を進めるのに大きな支障を起こした。
エ 本来であれば、原告両名の意向を聞きながら、法律専門家としてその法的な理論化を試み、訴訟に盛り込み原告の主張を豊かにすべきであったにもかかわらず、被告は原告の意向をまったく無視するようになり、被告は原告の意思に反した訴訟活動を展開しはじめた。

4) 原告が中心となって原告団「訴訟の会」の集めたお金を「凍結」し弁護団に渡せ、と被告が「恫喝」的な要求をしてきたことについて
ア 両原告が事務局長の責任を担ってきた原告団である「訴訟の会」は当初から、メーカー訴訟を進めるために国際連帯運動を不可欠なものとしてきた。
イ 「訴訟の会」は原告である会員とサポーターによって構成されており、「訴訟の会」は、それら会員とサポーターの会費と、「訴訟の会」への寄付金によって運営されていた。
ウ 被告は「訴訟の会」事務局によって決定された事務局長の海外派遣について、そのような事務局長の海外派遣は認められず、もし実行するなら、「告訴」するという「恫喝」的な内容証明を送り付けてきた。
エ 被告は原告との対話を拒みながら、第三者の弁護士を通して、「訴訟の会」の資金の凍結、弁護団へのその資金の引きお渡しを要求してきた。

5) 被告が原告朴の進行協議参加を虚偽の理由で拒否したこと
ア 2014130日に提訴した原発メーカー訴訟は1年半後の2015828日に第1回目の口頭弁論開催が決定され、63日に東京地方裁判所において進行協議がもたれた。
イ 裁判所はその進行協議に参加する枠を被告3社に3名づつ、原告に6名の枠を設定した。
ウ 「訴訟の会」弁護団の一員で被告の事務所に勤める寺田弁護士から事務局総務の八木沼豊に進行協議期日についての連絡がきたので、八木沼は島弁護士以外は弁護団は全員、復代理人なので朴事務局長と総務の八木沼の二人の出席を求めた。
エ 同429日、再度八木沼は寺田弁護士に連絡をして最低1名の原告参加を求めたところ、被告島弁護士の意向を受けた寺田弁護士は、東京地方裁判所の書記官から「代理人だけの出席」の依頼があったという虚偽の理由で、八木沼の申し入れを拒否した。
オ 朴は原告団「訴訟の会」の事務局長として直接担当書記官に進行協議参加の意向を伝えたところ、書記官は、「原告当事者は、出席する権利があります。」と答えたため、朴は63日の進行協議に参加したところ、同書記官から、「原告ですから発言もできます。」と助言され、進行協議に出席した。
カ 協議終了後、朴は書記官に原告当事者が出席できない理由を尋ねたところ、
 同書記官は、「進行協議に代理人に出席してほしいと電話でお願いしただけです。原告は参加できないと言っていません。」と答えている。
キ 被告島弁護士は弁護団の中で唯一の代理人であり、他は全員復代理人であったため、また寺田弁護士も島弁護士の事務所に勤める立場であったことから、この件に関するすべての指示は島弁護士がしたものと判断するのが相当である。島弁護士は最初から当事者である原告の進行協議への参加を排除しようとしたことは明白である。
ク 被告はその後、朴が代理人の指示に従わなかったという理由で、東京地方裁判所が進行協議への参加は原告の権利として承諾したにも拘わらず、朴の代理人を辞任した。
コ その後、「訴訟の会」の一員である大久保徹夫は進行協議に参加しておらず、現場での参加者の発言などを知る由もないにもかかわらず、朴の強引な行為によって東京地方裁判所はしかたなく、しぶしぶと承認したという虚偽の情報を流している。

6) 被告は海外のすべての原告への控訴意思の確認を怠ったこと
ア 2014年の提訴にあたって約4000名のメーカー訴訟の原告が代理人を選定した時の訴訟委 任状には、控訴の代理行為を明記して東京地方裁判所に提出した。
イ 従って今回控訴の手続きにあたって、すべての原告に控訴人になる資格 が備わっていることは明らかである。東京地裁24部と高等裁判所の案内係に崔が電話で確認したところ(2016年4月8日)、アの事実があるのであれば、原告には控訴する権限があることが確認された。
 しかるに被告をはじめとする原告弁護団は、新たにこの訴訟委任状を提出しなければ控訴できないと虚偽の理由を言い募り、新たに訴訟委任状を集めた。
ウ 東京高裁の控訴受付係は、「すべての原告は最初の訴訟委任状で控訴する権限を代理人に授与しているが、ただし控訴審における審議のための委任状はまた別途必要になるかもしれず、それは改めて地裁があげてきた訴訟委任状を見て高裁が判断することである」と崔の電話での問いあわせに答えている。
エ 最初の訴訟委任状と現在弁護団が集めている訴訟委任状は「2014()2146号・第5824号」の事件番号がはいっているかどうかの違いであり、両者ともほぼ同文であり(甲第35号証)、控訴審での審議における委任に関する言及はない
オ 事実として、被告及び弁護団は、海外のすべての原告に敗訴の内容を説明し、問題点を明らかにする説明をしておらず、控訴の意思の確認をしていない。
カ 被告及び原告団が控訴の意思の確認を求め新たな控訴委任状の提出を求めているのは、日本人原告だけであり、39ケ国に及ぶ海外の原告すべてではない。それは「結果として」、崔と朴が国際連帯を求めて原告を集めた趣旨に反することになり、原告の裁判をする権利がはく奪されたということである。
キ かくして被告および弁護団は、自分たちに従う、日本人だけの原告による訴訟をすすめることになる。国際連帯による法廷闘争は一審で終わりになるのである。
このことによって、多くの費用とエネルギーを費やして原告を全世界から集めた崔と朴は、被告と弁護団による国際連帯の大義を実質的に抹殺する行為によって大きな精神的苦痛をうけることになった。
 
2 結論
被告のこれらの行為は、「弁護士の職務に関する倫理と行為規範を明らかに」した弁護士職務基本規定の中で特に、第21条(正当な利益の実現)、第22条(依頼者の意思の尊重)、第30(委任契約書の作成)、第36(事件処理の報告及び協議)、第56(秘密保持)に背いており、それは同時に弁護士法22条(会則順守義務)に反する違法な行為であり、両原告は被告島弁護士に対して民法709条及び710条に基づく精神的損害賠償を求める。

第3 結語
 (1)法的構成
被告が原告らの訴訟代理人を口頭弁論の直前に一方的に辞任したことは本件委任契約を原告らの不利な時期に行った解除であり、両原告として民法6512項に基づいて主意的主張として損害賠償を求める。
また予備的主張として、①両原告が中心になって集めた内外4000名の原告との委任契約書を締結しないままにしてきたこと、②被告は原告らに東京地方裁判所に提出する訴訟委任状に原告の捺印は不要と指示したこと、③被告が原告両名と十分協議することなく、その意思に反して訴訟活動の準備を行ったこと、④原告団「訴訟の会」の集めたお金を「凍結」し弁護団に渡せと要求してきたこと、⑤被告が原告朴の進行協議参加を虚偽の理由で拒否したこと、⑥被告及び原告弁護団は控訴手続きに際して、海外の原告全員に控訴の意思の確認をしなかったこと、これらの行為と不作為は、弁護士職務基本規定第5(信義誠実)、第21(正当な利益の実現)、第22(依頼者の意思の尊重)、第26(依頼者との紛議)、第30(委任契約書の作成)、第36(事件処理の報告及び協議)、第56(秘密保持)に背き、弁護士法22条に反する違法行為である。両原告は、民法709条、710条によってそれらの不法行為に対して精神的損害を被ったため、右損害の賠償を請求する。

(2)損害について
被告の上記の一方的な委任契約解除及び既述した違法行為と原告との契約関係を明確にした委任契約の締結をしなかったという不作為が、今回の「訴訟の会」の混乱と分断を引き起こした最大の原因である。
そのうえ、原告両名がその混乱を起こした当事者であるという誤った情報が被告及び被告を支持する原告一部の「世話人会」から流布され、両名が在日朝鮮人であるということが日本社会に根付く偏見と重なり、原告の崔と朴が主張する、原発体制は差別の上で成り立っているという重要なメッセージが十分に伝わることなく、両原告は精神的損害を被ることになった。
特に崔は201621日から体調を崩し横浜の労災に緊急入院し、2週間の検査入院の結果、心臓肥大をもたらした心不全はストレスによる可能性があると診断された。また416日大阪での集会の夜は胸の圧迫感から呼吸困難に陥り、日本赤十字病に救急車で運ばれた。医師からは次回、同様の症状が起こった場合は心臓にペースメーカーを埋め込むことを命じられている。これによって崔が被った精神的苦痛は金100万円を下らない。
またメーカー訴訟を提起してきた本人である原告らは、多くの犠牲を払って本人訴訟を担い、「訴訟の会」の分裂を防ぎ、「訴訟の会」として弁護団と本人訴訟団の両方の支持・支援することに全力を尽くしてきたが、そのために大変な労力を費やし多大な精神的苦痛を被ることになった。それはすべて被告の弁護士職務基本規定と弁護士法に反する言動に起因するものであり、それは金額に換算して少なくとも金100万円を下回ることはない。
以上により、上記(1)に記載された被告の一連の行為によって崔に生じた損害額は総額で金200万円、朴に生じた損害額は金100万円を下らない。

第4 関連事実
1 被告島弁護士との出会い
   原告の崔は、日本社会にあって311福島事故後、反原発の運動が大きく盛り上がるなかでも原発輸出に反対する声が小さく、福島事故を起こした原発メーカーの責任を問う意見がだされなかったときに、原発メーカーの責任を問う訴訟をはじめることはできないか、その訴訟の代理人になってくれる弁護士を探した。
しかし、一般の人には福島事故を起こした原発メーカーがあの家電メーカーの日立、東芝そして米企業のジェネラル・エレクトニック社(以下、「GE)であることは知らされておらず、その事実を知っている活動家や弁護士はかえって、原子力損害賠償法(以下、原賠法)4条の(原子力事業者の責任集中)と同3項の「製造物責任法の規定は、適用しない」によって、訴訟をしても勝てないと関心を示さなかった。 
そのときにeシフトという反原発のネットワークのメーリングリスト(以下「ML)に原発メーカーの責任を問う訴訟はできないかと崔が投稿し、それに対して、できると回答してきたのが被告であり、それ以来、被告を中心にメーカー訴訟の準備がはじめられるようになった。
当初崔が被告の事務所で被告に訴訟代理人を依頼したとき、崔は報酬としてとりあえず弁護士一人3万円を支払う約束をして被告は承諾した。
しかし思うように原告が増えず、約束のお金も払えなくなることを心配した崔はネットで「訴訟の会」関係者に弁護士への支払いのお金が必要であると緊急依頼のメールを送った。
それを見た他の弁護士からそのような話を聞いていなかったのか、被告にクレームが行き、それから代理人の費用は無償にすると被告から崔に連絡があった(甲第4号証)
原告らは、被告から、弁護団を選任して東京地方裁判所に提出した訴訟委任状の他に、原告と代理人との委任契約書の締結が義務付けられていることが弁護士職務基本規程に定められているということを一度も聞かされたことはない。

2 原告らが「日立闘争」と「地域活動」から学んだことと被告の反発
  (1) 崔
崔は、1970年に朴が原告となった日立就職差別裁判闘争(「日立 闘争」として知られ、戦後の在日の歴史の中でも就職差別の実態を明らかにした画期的な裁判とされている。)に積極的に関わり、右裁判闘争に勝利した後、川崎の地で在日韓国教会をベースにして、朴たちと共に日本人青年たちも一緒になって民族差別撤廃の「地域活動」を始めた。
そのとき、在日朝鮮人は国籍条項を明記する法律によって児童手当などをもらえない実情を地域住民から訴えられ、崔たちは川崎市と交渉をはじめて国籍条項を撤廃させた経験があることから、法律は絶対的・不動なものでなく人の尊厳が保たれるためにあるもので、人が法律のためにあるのではないことを学んだ。
崔は行く先々で、たとえ法律で原発メーカーの責任が問われないとあっても、そのことで傷つく人がいる限り裁判でも勝てる、私たちは「日立闘争」とその後の民族差別と闘う「地域活動」から、人権は法律より優先することを学んだと説明した。
そして原発は差別の上で成り立っていること、原発メーカーの責任は「原賠法」によって不問にふされていること、世界は核をもつ大国がNPT体制によって核兵器の拡散を制限しながら同時に、原発を拡散している事実を各地で多くの人に訴えかけ、グローバリズムは世界の新たな、植民地のない植民地主義であることを各地の会場で話をした。それらは初めて聞く話だと世代を超え多くの人から歓迎された。

しかし当初から被告は、NPT体制とか植民地主義という単語は「左翼用語」であり、そのような話は自分自身も「引く」し、若い人はメーカー訴訟に関心をもたなくなるので、事務局長たる崔は発言を控えるべきだと言い始めていた(相変わらず、植民地主義とかNPT体制とか、言ってますね。事務局長の立場でそういうことを言われると、僕らは参加できなくなってしまうのでやめて欲しいということです2014214日メール)
それでも同じ発言を言い続けネットで情報を発信する崔に対して、被告は、「事務局長が、原発体制の根幹は差別だと内外に訴え、自身のライフワークである民族差別闘争を成し遂げるための手段として原発メーカー訴訟を利用するなどということは言語道断(2014826日付メール甲第5号証)であり、崔は事務局長を降りるべきであるという主張をしはじめ、「訴訟の会」の人事にまで介入してくるようになった。
そのうえで、被告は、崔に対して、崔の事務局長の辞任か、自分の代理人の退任かという二者択一を迫る(2014年7月45日付メール甲第6号証)という、「恫喝」的な態度(一種のパワーハラスメント)をとりはじめた。
結果として崔は、被告のような原発メーカー訴訟の代理人になってくれる弁護士は余人を以て代えがたいと判断し、断腸の思いで自分自身から事務局長を降り、朴が事務局長になって今に至っている。

(2)朴
朴は上記「日立就職差別裁判闘争」の当事者である。日立製作所 の入社試験に合格したものの戸籍謄本を要求され、入試時に本名欄に日本の通称名と本籍欄に愛知県の現住所を記したこと、及び外国人であるので戸籍謄本は提出できないことを会社側に伝えた。
驚いた日立は、内部規約で外国人や身体障碍者、共産主義者、創 価学会員などは採用しないと決めていたにもかかわらず(この件は国会で問題にされ、日立側はすでにその内部規約は破棄している。)、「嘘をつく」人間は採用しないと解雇した。
それに対して朴は日立製作所を相手取り、民族差別による解雇は公助良俗に反して無効だとして、1970128訴訟を起こした経験をもつ。

朴は1974619日、横浜地裁で画期的な勝利判決(甲第7号証)を勝ち取りながら、裁判と並行してもたれた法廷外での直接交渉によって、日立の副社長(1974517日当時、新井啓介氏)は朴への解雇が民族差別に基づくものであったことを認めたうえ、朴本人のみならず植民地時代に遡る日立の朝鮮人差別に対する公式謝罪の確認書(甲第8号証)1974517日に交わしている。朴は現在、日立製作所の現役の嘱託社員でありながら、社内においても原発の製造を止めることを直接、日立経営者に訴えている(甲第9号証)。その確認書は朴が裁判勝利の後「開かれた会社」であることを求めて日立に再入社する根拠になったものであり、同時に現在おいても、朴が日立側に原発製造・輸出からの撤退を求める根拠にしているものである。


3 被告の不法行為は、日本社会の社会的、歴史的な構造の無理解に基づく
崔は、311福島事故を目撃し、自然災害や原発の過酷事故の前ではすべての人が犠牲者になることを強く意識するようになり、「国籍や民族を超えて協働して日本社会の変革を」とネット上で訴え始めた。
その結果、崔に対して「クソ朝鮮人!日本から出ていけ!!」という反発の声がツイターで広がり(甲第10号証)、そのこととグーグルとの関係は証明できないが、崔は3度にわたりグーグルが使えなくなった。

崔及び朴は日本生まれの在日朝鮮人である。
両原告は、「日立闘争」と「地域活動」において民族差別問題と取り組んできたが、原発体制は差別によって成り立っているということは、在日の被る差別の問題が戦後の原発体制と深くかかわっているということだけでなく(甲第11号証)、それは被曝労働者や原発立地における住民の健康の問題(甲第12号証)、国際社会における核保有国と非核保有国との関係、大都市と地方との関係や弱者・被差別者を生み出す国内植民地主義の問題、すなわち全世界のポスト植民地主義の歴史と新自由主義に基づくグローバリズムの実態を反映していることを3・11の福島事故以来、深く認識するようになった。
被告は、崔の「原発体制は差別によって成り立っている」という発言をとらえて、
原発が差別を助長する側面はあっても、原発問題が差別から生じているという考えはあまりに飛躍してます。民族差別を解決しても原発はなくならないのです(甲第13号証201375日付メール)
と記し、原発体制が差別の上で成り立っているという社会的、歴史的な構造を十分に理解できず、むしろ崔のそのような発言を訴訟とは関わりのないものとして封じようとした。

残念ながら、日本政府は原子力村企業と一体となって、3・11の福島事故にも拘わらず再稼働を認め、原発の輸出を進めている。差別の上に成り立つ原発体制を維持してきた日本社会は、戦後70年経過しても、在特会が街頭で「朝鮮人を殺せ」と叫ぶヘイトスピーチに見られるように、拡大再生産された排外主義が新たな愛国主義として力をもっており、国内植民地主義に基づく地域間の格差、弱者と被差別者を生み出す構造的な問題はますます深刻になっている。
東京弁護士会外国人人権に関する委員会委員の師岡康子弁護士は著書の中で、日本に住む植民地支配の生き証人とその子孫である在日朝鮮人に対しては、政府や国会が公式に謝罪の言葉を述べたこともない。(中略)このような日本政府の姿勢が、ヘイトスピーチを生み出し、悪化させている。・・・彼らは・・自分と日本社会の一部であり、その醜さを露骨に表現しているに過ぎない」(『ヘイトスピーチとは何か』(217頁 岩波書店、2013)と述べている。

両原告は、被告及び弁護団が今までの慣習的な専門職の殻を破って、弁護士として原告らの立場に立つという本来の職務に徹し、既述の時代背景に対し、原発体制は差別から成り立っているという認識を深め、原発体制の病巣を直視しながら原発体制に抗っていく戦を原告らと一緒に試みて欲しいと願ったが、原告らのこの要望は取り入れられることはなかった。

4 被告の誤った判断と指示に起因する混乱
被告は訴状の準備にはいる提訴の半年前の段階で、崔が韓国と台湾にも働きかけるのを見て、「韓国人(中国人もかな)が日本人より多くなるのが問題だと言っているんです。現在のヘイトスピーチ等の状況を見れば、例えば、韓国人2,000人、中国人2,000人、そして日本人100人という原告団が東芝や日立を訴えたとき、右翼の連中が騒ぐ格好の材料を与えることになると思いませんか?」、「日本人原告が韓国人原告より少ない場合は、提訴はできません。そこだけは、はっきりと申し上げさせていただきます。韓国人の集団が、日本のメーカーを訴えた、という構図になれば、この訴訟の意味は完全に違うものになってしまい、必死になって作った訴状が無意味になるからです。」(甲第14号証)と記している。

当時100人にも達していなかった日本籍の原告は最低でも1,000人いなくては、自分は代理人を辞めると被告は主張した。
そこで崔を事務局長とする事務局はネットを活用し街頭で必死になって署名活動に力を注ぎ、わずか半年の間で1,500名の日本籍の原告を集めた。
さらに崔は韓国、台湾、インドネシア、モンゴル、フィリピン、ドイツを訪問し、また、韓国で開催されたWCC(世界キリスト教会協議会)の世界大会に事務局メンバーとともに出席し、原発の問題点と危険性、および「原発メーカー訴訟」の意義を説明して原告になってくれるように協力を要請した(甲第15号証)

このような事務局の努力の甲斐があり、驚くべきことに、外国籍原告が39ヶ国から2,500名、日本籍原告1,500名の合計4千名を超える原告が集まったのである。
そして2014130日に東京地方裁判所で原発メーカー3社を相手にして世界初の「原発メーカー訴訟」が始まった。
日本の裁判史上、これほど多くの外国籍原告が集まった例はない。それほどまでに、この訴訟に対する国際的な関心が高かったということを示している。

街頭署名で多くの人が署名をして原告になってくれたが、そのとき被告は、署名があれば捺印は要らないという、自分の経験に基づく指示を事務局にだした。
しかし、東京地方裁判所に訴訟委任状を崔が提出した際、同裁判所の窓口で、訴訟委任状には署名だけでなく捺印も必要だといわれ、崔が何度も署名だけでは足りないのか確認したが、同窓口の右結論は変わらなかった。
結局、同窓口は、署名だけしかない右訴訟委任状を受け取らなかった。
その結果、事務局は、東京地方裁判所が捺印は必要不可欠という明確な法的根拠を示したため、海外を除く1,500名の原告から改めて捺印をもらうという、大変な事務作業を担うことになった。

被告は、同裁判所の右方針を真摯に受け止めるべきであったにも拘わらず、自分の非を最後まで認めようとはしなかった(「まず、大前提として、もし今、再び同じ状況に立てば、やはり押印なしでもいいから、住所氏名だけ書いてもらって、委任状を集めてもらうようお願いします(201396日付甲第16号証)。その事務作業のために両原告が精神的苦痛を被ったことは言うまでもない。

5 原告と訴訟代理人との委任契約書を作成締結しなかった被告の不法行為
甲第17号証(201536日付メール)、甲第18号証(201539日付メール)及び被告の甲第19号証で弁護団は「(信頼)回復に向けて話し合いをする意思があれば、連絡をいただきたく、そうでなければ辞任する旨を通知したに過ぎない」と書いている。しかし被告及び原告の一部の「世話人会」は「訴訟の会」との対話を拒み続けてきたのであるから、これは弁護団の意向に沿わない原告は「切る」(代理人を辞する)ことであり、「訴訟の会」から追放して自分たちがヘゲモニーを把握するという「恫喝」宣言であった。
被告が代理人辞任声明や混乱を引き起こす前にしなければならなかったことは、訴訟代理人と「訴訟の会」の原告らとの委任契約書の作成であったことは弁護士職務基本規程からしても明らかなことである。

被告は東京地方裁判所に提出した訴訟委任状とともに、弁護士職基本規程30条、「事件を受任するに当たり、弁護士報酬に関する事項を含む委任契約書を作成しなければならない。」また、弁護士法21条(会則遵守義務)で「弁護士は、所属地方弁護士会及び日本弁護士連合会の会則を遵守しなければならない。」と明記されているように、被告及び弁護団は原告との関係、条件を明示する委任契約を締結すべきであったのである。
委任契約に基づいて被告と原告との話し合いがなされ、どうしても一致できない場合は、被告及び弁護団はむしろ、代理人を辞めこのメーカー訴訟から去るべきであった。

それを、こともあろうに訴訟代理人にすぎない被告が、被告ら弁護団に従わない原告には訴訟を取り下げてもらい辞めてもらうか、本人訴訟の道を歩んでもらうという態度をとったことは主客逆転した根本的な錯覚であり、過ちであったと言うしかない。そこには誤った正義感と、弁護士という立場を嵩に着た権威主義が見られる。
それが民法651条の誤った解釈と自己正当化につながったのである。
  原告と被告との正式な訴訟委任契約書(委任事項を明記したもの)さえあれば、弁護団と「訴訟の会」との混乱も防げたであろうことは明白である。
甲第20号証で示される1122日の弁護団への申し入れや126日及び127日の代理人辞任に対する抗議や撤回の申し入れの時など、弁護団と「訴訟の会」とのあいだでの訴訟委任契約の締結がなされていれば、混乱は避けることができたと思われる。
被告は、弁護士職務基本規程第30(委任契約書の作成)に背き、委任契約書の作成義務を怠ったことは明白である。
被告は、一度たりとも、この規程を遵守しようとしたことはなかった。

6 弁護団長である被告の代理人辞任声明と会計引渡要求
「訴訟の会」は、年会費2千円を支払う原告(ただし海外と福島の犠 牲者を除く)と千円の会費のサポーターによる任意団体であり、原発メーカー訴訟の支援母体である。
被告は「訴訟の会」の混乱の中で、甲第1号証2014124日付メールにあるように、原発メーカー訴訟弁護団としての声明文をだし、「代理人辞任声明等は、弁護団と崔との信頼関係が破壊されたために行われたもの」と説明した。
その声明文は残念ながら多くの偽りに満ちたものだが、それを批判した「訴訟の会」の文書は弁護団の名誉のために証拠として提出することを控えることにした。名前は弁護団の一員であっても、メーカー訴訟に深くかかわることのない弁護士や、被告島弁護団長の独断的な言動をたしなめ原告との対話を試みようとすることのない、自立していない弁護士を批判しても意義はないと判断したからである。

被告と弁護団はその後、崔と現事務局長朴とを標的にして代理人を辞任する書類を東京地方裁判所に第一回目の口頭弁論直前に提出し、両原告を「訴訟の会」から追放することを謀ったのである。
被告のそのような弁護士職務基本規程に反し同時に弁護士法に違反する不法行為は、「訴訟の会」に大きな混乱と分断を持ち込むことになった。「訴訟の会」事務局は、弁護団に継続して対話を求め続けたが、被告及「世話人会」はそれを拒んだうえ、それに輪をかけ、「訴訟の会」事務局が原告からの会費と寄付金を集めたお金の使用の「凍結」と引き渡しを、自分たちにはいかなる所有権がないにもかかわらず、求めてきた。
「訴訟の会」事務局は、弁護団から依頼のあった必要経費は弁護団に支払っており、今年度は毎月5万円の経費を支払う年間予算案(甲第21号証)を組み提示したにも拘わらず、弁護団はその受け取りを拒否し、「訴訟の会」のもつお金全額を弁護団に渡すように要求するようになった。
被告は、自分たちを信頼し従ってくる原発メーカー訴訟当事者がいる限り、弁護団の言う通りにならない原告は切り捨てていいと判断したことは明らかである。
弁護団を支持する一部の原告の「世話人会」を「訴訟の会」に取って代わらせようとする思惑は、20164月末時点で、以下の内容からはっきりと窺い知ることができる。

ア・(甲第20号証201410月から2015年1月31日の部分)
イ・甲第22号証・20141230日付「訴訟の会」を退会し、原告団を作りましょう」(懲戒乙4号証 元会計の大久保徹夫の添付書類)
ウ・(甲第23号証・2015129日付で会計の凍結要求)
エ・(甲第24号証・第2回総会2015131日の議事録)
オ・20161月には、弁護団との関係改善の目的のため「訴訟の会」事務局の八木沼豊氏から弁護団への予算案(甲第21号証)(2015111日~20161031日の年間で60万円)の話し合いを求めたが、弁護団への支出案は、「弁護団」と「世話人会」より拒否された(201624)
カ・2016210日付の内容証明により(甲第25号証)弁護団から依頼された久保田明人弁護士は、「訴訟の会」事務局に通帳を含む会計資料一切の原本もしくは写しの引渡しの要求をする。

最終的に被告は、原告である前事務局長の崔と現事務局長の朴の代理人を辞任して、さらに「訴訟の会」の通帳を含む会計資料一切の原本もしくは写し、そして現金を使うことの「凍結」と現金の引渡を要求した。これは原告団である「訴訟の会」の弱体化、混乱と分断を進めて「訴訟の会」の乗っ取りを謀り、自分たちを支持する原告の一部の「世話人会」にその役を担わせようとしたものである((9)「弁護士」という「権力」を悪用した「訴訟の会」への不当な要求を参照)
それは弁護士職務基本規程第5(信義誠実)、第21(正当な利益の実現)、第22(依頼者の意思の尊重)、第26(依頼者との紛議)に明白に違反し、同時に弁護士法22条に反した違法行為である。

この被告の不法行為により「訴訟の会」の会員間の混乱と分断はますます激しくなった。両原告は「訴訟の会」として弁護団と本人訴訟団の両方を支持し支援する努力を重ねてきたが、被告の不法な言動に起因する組織の混乱から生じる人間関係から両原告は耐え難い精神的苦痛を受けてきた。

7 被告のその他の不法行為
被告のようないわゆる人権弁護士、反原発を謳う社会派弁護士が自分たちを選任した集団訴訟の原告を「切り捨てる」と「恫喝」するとはまったく考えられないことである。
たとえていうなら、強者(この場合法律に詳しい弁護士)が弱者(法律の素人)に対して、法的措置をちらつかせ萎縮させる「恫喝」を被告は行い、彼に従う形で他の弁護士もそれに名を連ねた。

すなわち、甲第26号証の「・・・刑事告訴を含む法的措置を採らざるをえませんので・・・」の部分及び甲第27号証の「・・・議論の範囲を完全に逸脱する明白な敵対行為です。・・・原発メーカー訴訟に対する妨害行為とみなし、再度の警告を発することなく即座に契約を解除します」においてこの点が明らかにされている。
被告は甲第19号証で「原告が訴訟費用として支払った会費を事務局長の海外渡航費に使うなど許されるはずはなく」と述べ、また「・・・韓国等へ行かれるという話を聞きました。これはもちろん、原発メーカー訴訟とは無関係の行動となりますから(甲第26号証)と断定している。崔は、原発メーカー訴訟の発起人であり、当初、被告の依頼者であり、原発メーカー訴訟の原告募集を海外でおこなった当事者である。その原告である当事者に対して、被告が、当初から決められていた国際連帯運動構築のための支援として事務局が決定したことを「刑事告訴」の対象にするというのは、全く理解できない話である。
崔がPFLPeace for Life)会議に出席し、メーカー訴訟に関心をもってもらい、原発体制に抗う国際連帯を目的にしたフィリピン、韓国への渡航費用は、原告のカンパで賄われた(最終的には「訴訟の会」がカンパの金を国際連帯基金とした)

しかし、被告は、「国際連帯によるノー・ニュークス権の実現を目指して 弁護団長 島昭宏」という名で「訴状」冊子の冒頭で以下のように記している。
本訴訟は、法律で免責と定められている企業を被告とする困難な事件であると同時に、世界中に張り巡らされた責任集中制度という原発体制を保護する仕組みそのものに挑む闘いである。したがって、国際的な連帯が不可欠であり、また世界中の脱原発を願う人々が結集する拠点として相応しいテーマといえる。世界初の原発メーカー訴訟を中心として、かつてない広がりを持つ運動が実現すれば、原発体制の根幹を揺さぶることになるのは間違いない。原発のない社会がいよいよ現実のものとなるのである。
この訴状を起点として、原子力の恐怖から免れて生きる権利が実現する社会を目指し、より多くの人たちが広く連携して、これまでにない国際的な運動が展開されることを強く願っている。2014221(甲第28号証)

被告においてもこのように国際連帯の必要性を強調しているように、「訴訟の会」は当初から国際連帯運動の必要性を強調し、「訴訟の会」の規約でも謳ってきた(1条の(名称および目的)と第2条の(活動)において「世界の人々と共に」と記されている。)。「訴訟の会」は一貫して海外の原告を集め、訴訟を進めながら並行して国際連帯運動の構築に注力してきているのである(甲第29号証)
したがってそれを被告が弁護団の名のもとに刑事告訴すると「恫喝」することは、逆に弁護士職務基本規程に反し、弁護士法22条反する違法の行為であると言わざるをえない。
最後に、「訴訟の会」のメンバーが弁護団の在り方に対する大きな不信感を抱いたのは、弁護団のなかに原発推進を謳う右翼団体の顧問をする弁護士がいたことが判明したときであった。
被告は、そのようなことは「メーカー訴訟」を進めるのに何の関係もないと主張していたが、最終的にはかばいきれず、その弁護士を弁護団からはずすことになった。
その過程において被告は、自分を批判する原告は「議論の範囲を完全に逸脱する明白な敵対行為」と断言し、「即座に契約解除」とメールで投稿するという「恫喝」行為を行っている(甲第27号証)
このような行為もまた「訴訟の会」の混乱と分断につながり、両原告の精神的苦痛を強めるばかりであった。
被告のこれらの「恫喝」的な行為は、弁護士職務基本規程第5(信義誠実)、第21(正当な利益の実現)、第22(依頼者の意思の尊重)、第26(依頼者との紛議)に反し、弁護士法22条に違反する不法行為であり、民法709条及び710条による賠償の対象になる。

8 東京地方裁判所主催の進行協議への原告の出席を虚偽の理由で拒否
201563日に行われた東京地方裁判所における進行協議に、原告の希望者全員が進行協議に参加できないことは当然である。しかし、進行協議の参加者は、被告の日立、東芝、GE各社には3名、原告側には6名の枠があった。
被告の甲第30号証では、「八木沼氏から「(原告朴と八木沼氏を)出席させてほしい」との要請を受けたときに、今回の進行協議期日は代理人だけで出席することを伝えています」と書いているが、原告側からの要請があれば、進行協議の枠から判断して、最低一人は傍聴者としてでも、進行協議に参加させるのは当然であった。朴事務局長と事務局総務の八木沼氏は、6名の枠に対して、原告が一人も参加できないことに強く抗議したが、被告は、裁判所の意向を盾にして受け入れを拒否したため、朴は、主催者である東京地方裁判所に直接電話して、原告の進行協議会議への参加の是非について確認をしたところ、傍聴どころか当事者だから発言をしてもよい、原告の進行協議への参加は当然のこととして承認するということが判明した(甲第31号証)

しかし被告および原告の一部の「世話人会」の大久保徹夫氏は当時の事情を、朴事務局長の強引な行為によって東京地方裁判所はしかたなく、しぶしぶと承認したという、虚偽の発言を記した情報を会報と「訴訟の会」のMLに流している(甲第32号証)
しかし、原告に参加する権利があると東京地方裁判所の裁判長が承認していたにもかかわらず、被告が偽りの理由でもって進行協議への参加を拒んだことは、弁護士職務基本規程第36(事件処理の報告及び協議)に背くと言わざるをえない。

しかもあろうことか被告及び弁護団は、「進行協議に関する(弁護団からの)協力の要請を無視した」という理由、すなわち、進行協議には出席するなという弁護士の命令を朴が無視して出席した、という理由で、2015713日付で朴の代理人を辞任した(甲第2号証)
これは明らかに、「弁護士の職務に関する倫理と行為規範を明らかに」した弁護士職務基本規程に反し、弁護士法22条に違反した行為であり、原告の朴が民法6512項による賠償責任を請求するのは当然であると言うべきである。

9 「弁護士」という「権力」を悪用した「訴訟の会」への不当な要求
2016210日付甲第25号証について被告は多くを否認しているが、実際問題として、この間、被告は「訴訟の会」との対話を一切拒否したままであった。被告から乞われた第三者の久保田明人弁護士は、弁護団と「世話人会」の情報のみで「訴訟の会」事務局を判断し、告訴を匂わすような「ご連絡」の通知を「訴訟の会」に送ってきている。「訴訟の会」が国際連帯のためにお金を使うことは認められず、会計処理上の不正があるので「訴訟の会」の集めたお金を「凍結」し、それを弁護団に引き渡せという要求をしている。
しかし事務局は、会計処理を会計の専門家に委託しており、領収書のなかったもの(現金の送付先は振込口座及び現金出納帳で確認できている)があっても、それは手続き上のミスの類であり、決して事務局及び会計が意図的な不正を働いたということはないと断言できる。

にもかかわらず、被告と弁護団と原告の一部である「世話人会」は、事務局の不正会計処理と決めつけ、事務局で決定した正当な国際連帯運動のための支出に対して「不正な会計処理を正そう」という歪んだキャンペーンを会報に流し、多くの原告に事務局に対する誤った認識を植え付けている(甲第33号証)

会計処理の問題と資金使途とは別の次元の問題である。
資金使途についての見解が異なるということで会計処理が不正であると主張することは、結局、事務局の正統性を承認しないという次元の問題になる。これは最終的には、「世話人会」は「訴訟の会」を認めず、自分たちがそれに代わって原告団組織の正統性を主張することになるのである。
ここ数年来、被告が主張してきた「訴訟の会」乗っ取りの計画が、被告と弁護団、原告の一部の「世話人会」と第三者の久保田弁護士が一体となって、いよいよ実行に移されようとしているということになる。

原発メーカー損害賠償請求訴訟(平成26()2146、第5824)には、原告らが参加している「選定当事者制度」(民訴法30)を用いた「本人訴訟団」が存在する。「本人訴訟団」の主張は、「弁護団」と「本人訴訟団」の両者を対立するものとは捉えず、「相補う」主張をし、同じ原告の中で複数の主張が存在することをよしとして両者の支援、支持を表明している。それにも拘わらず、被告と弁護団および弁護団を支持する原告の一部の「世話人会」が、「訴訟の会」のお金の「凍結」と「引渡」を要求し、それに従わない場合は告訴することを匂わし、「訴訟の会」が内部分裂しているかのような情報を弁護団の公式HPや会報で対外的に流し続けることは、反原発運動をさらに展開しなければいけないこの時期において、致命傷的な悪影響をあたえるものと危惧される。

特に、「本人訴訟団」が、原発の製造・輸出そのものが違憲(9条違反)であることを正面から主張する(甲第34号証)原発裁判は、平和を希求する思想として世界的に重要な意味をもつものであり、「本人訴訟団」を蔑ろにするような「恫喝」的な告訴を匂わすことは許されるべきではない。この行為もまた弁護士職務基本規程第5(信義誠実)、第21(正当な利益の実現)、第22(依頼者の意思の尊重)、第26(依頼者との紛議)、弁護士法22条に反する違法行為である。このような「恫喝」的な行為は両原告に精神的苦痛を与えるものであり、民法709条、710条による賠償責任の対象になる。

10 控訴審の訴訟委任状について
   弁護団および「世話人会」は、HPへの掲載と郵送でもって「高裁に控訴するためには、原告委任状を提出する必要があります」という虚偽の情報を流している。しかしそもそも4千名の原告は2014年の提訴に際して訴訟委任状を東京地方裁判所に提出しており、その中で被告をはじめとした弁護士を選任し、「原告がする一切の訴訟行為を代理する権限」を授与し、その中に、控訴と上告が含まれている。すなわち、その最初の訴訟委任状によって4千名の原告は控訴する権限があるにもかかわらず、被告及び弁護団は、新たにこの訴訟委任状を提出しなければ控訴できないと虚偽の理由を言い募り、新たに訴訟委任状を集めている。

  両原告はこの訴訟の第一審の期間、東京地方裁判所の書記官から裁判の実務に関する多くの助言を受けてきた。東京地方裁判所も高裁も、「すべての原告は最初の訴訟委任状で控訴する権限を代理人に授与しているが、ただし控訴審における審議のための委任状はまた別途必要になるかもしれず、それは改めて地裁があげてきた訴訟委任状を見て高裁が判断することである」と崔の電話での問いあわせに答えている(201648日)。
しかも、最初の訴訟委任状と現在弁護団が集めている訴訟委任状は「2014()2146号・第5824号」の事件番号がはいっているかどうかの違いであり、両者ともほぼ同文であり(甲第35号証)、控訴審での審議における委任に関する言及はない

本来、被告及び弁護団は最初の訴訟委任状を使って高裁への控訴手続きができるのである。しかしそのようにせず特に新たな訴訟委任状を求めるのは、地裁の原告が高裁の原告になる意思を確認するためにできるだけのことをしたが、連絡がとれなかった原告と返信がなかった原告を除いて、直接、新たな訴訟委任状を提出してくれた原告だけを対象にして控訴せざるをえないという口実を正当化するためである。しかしそれは「結果として」連絡のとれた、自分たち弁護団を支持する原告だけを高裁における原告にするということであり、「結果として」日本人だけが原告になるようなやり方をしているということになる。

しかし、そのようなやり方では本当に4千人すべての原告に控訴する意思があるのかを確認したことにはならず、控訴する権限があっても控訴できなかった原告、特に崔と朴ら中心となって集めた海外の2,500名の原告は、控訴をする権限を喪失することになる。それは原告としての裁判をする権利がはく奪されたということである。国際連帯を謳って集めた海外39ヶ国2,500名の原告は、ほぼ全員、高裁の原告になれない事態になるのである。
これは明らかに被告及び弁護団の不作為であり、憲法32条の「裁判を受ける権利」の侵害であり、弁護士職務基本規程21(正当な利益の実現)22(依頼者の意思の尊重)に反しており、弁護士法21(会則順守義務)に違反することになる。

かくして被告および弁護団は、自分たちに従う、日本人だけの原告による訴訟をすすめることになる。国際連帯による法廷闘争は一審で終わりになるのである。
このことによって、多くの費用とエネルギーを費やして原告を全世界から集めた崔と朴は、被告と弁護団による国際連帯の大義を実質的に抹殺する行為によって大きな精神的苦痛をうけることになった。


以上

                                     

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