川崎・市民フォーラム主催の市長候補者3名を招いた集会が9月21日、国際交流センターでもたれ、130名が参加しました。マスコミは11社とのこと。
川崎市長選の現状説明
まずは客観的な情報から。川崎市長選(10月13日告示、同27日投開票)です。阿部現市長は3選中に、多選自粛条例を自ら作りながら4選を目指す噂が絶えなかったのですが、本人が正式に立候補しないと発表しました。「川崎市政をめちゃめちゃにする人しか候補に残らなかったら場合によっては(出馬を)考えていた。秀嶋氏が自民党の候補に決まった時点で、明確にもうやる必要ないと思った」と発言しているので、まんざらガセネタではなかったようです。秀島氏を後継者にすると公言したことになります。
その自公民がそろって推す元自治相出身、川崎の元市財政局長で、東京都でも勤めた秀嶋善雄さん(44)。典型的なエリート官僚ですが、福山雅治似のイケメンでソフトな雰囲気をもっています。
他の候補者は共産党が推薦する君嶋ちか子さん(64)でハローワークで長く勤めていたそうです。中央大学の博士過程に在籍とチラシにあります。
もう一人は福田紀彦さん(41)です。4年前に県議を辞め民主党から立候補しています。そのとき私は単独インタビューをしました。
2009年10月15日木曜日
民主党、福田候補の問題点、その(一)
http://oklos-che.blogspot.jp/2009/10/blog-post_15.html
2009年9月25日金曜日
福田紀彦、民主党推薦市長選候補者との面談、印象
http://oklos-che.blogspot.jp/2009/09/blog-post_25.html
福田さんは元ボスでみんなの党の現参議員、元民主党衆議院議員・横浜市長であった松沢成文氏の秘書から政治家になった人物で、川崎出身ながら高校、大学はアメリカらしいです。彼は今回はみんなの党が自主投票を決定したこともあり、それを逆手にとって、「とことん無所属」「市民市長」を謳っています。
自公民が推す秀嶋善雄候補を意識してかチラシには、「まだ続けますか?「天下り市長」 なんと!42年間も「役人出身」の市長が選ばれ続けてきました!(驚)」「川崎市は霞が関の植民地でもなければ、下部組織でもありません。144万人の大都市で、もうそろそろ「天下り市長」はやめにしませんか」と挑戦的です。福田候補の選挙戦略、イメージ戦略なのでしょう。
3人の候補者の公約説明の印象
国際交流センターでの集会は6時からでしたが30分、遅れました。主宰者の今井さんによれば、秀嶋善雄さんは当初出席を約束していたが急に出ないと言いだしたので、自民・民主の有力議員に頼み出席が実現したとか。ただし時間がなく自分の公約の説明をしたらすぐに退席をするので質問に応えることはできないということであったそうです(会場からの質問には後日書面で回答すると約束していました)。はっきり言って若くてイケメンですが、演説は下手。草食系。市民の参加により発展してきた川崎を更に発展させると強調。これは阿部の後継者であることをにおわせているということでしょう。
彼が集会参加を拒んだというのはある意味象徴的です。即ち、自公民の推薦ですから一定の固定票が見込まれるので(12万票は固いでしょう)、外見的なイメージ戦略でプラスアルファを求めるため、市民の厳しい質問の前でたじろぐような弱さを見せるを避けようと選挙参謀たちは考えたのでしょうか。共産党の候補者も固定票は4~5万票くらいなのでしょうが、最近の国政における共産党の躍進を受けて共産党関係者は力が入っているようです。とすると、福田候補が勝つにはまさに「とことん無所属」「市民市長」で浮動票を取るしか勝ち目がないということになります。今回の選挙は、自(保守市民)公(創価学会)民(連合)の固定票と、共産党の固定票プラス国政での流れ、それに「とことん無所属」の三つ巴ということになるのでしょう。
話しっぷりは県議での政治家の経験があり4年間の準備を早くからして来たせいか、福田候補が圧倒的に余裕があり、公約も整理されていたように感じます。しかし彼は徹底的な新自由主義者だと思われます。チラシに「市民株式会社「川崎市役所」に体質を変える」と掲げ、3120万円の退職金は受け取らないと宣言しています。徹底して合理的でありながら、思想的には保守で国を守るとか、愛するということを強調し、教育改革にも熱心です。集会場でも教育への「政治介入」というフロアからの質問に、若干、色を無し「教育委の新たな任命」を宣言し、それは当然のことで政治介入ではないと強調していました。
君嶋女史はインテリ風というより、現場・実務に強いという印象で、ハローワークで長く勤めていたという経歴を聴いてなるほどなと思わせるような感じです。話の内容はこれまでの共産党の政策であり、彼女の独自のものが何かを感じさせるものはなかったようです。市政全般にわたって勉強中という印象です。アベノミクスを支持する多くの国民の流れの中で、まだ馬脚が現れていない今度の10月の選挙で、共産党の4~5万票ほどの固定票にどれほどの上乗せができるのか、容易ではないでしょう。市民運動に寄り添う言葉を並べていましたが、実際の市民運動に(そのものが停滞気味な状況下で)関心を持ち一緒に行動し続けることができるのか、全くの未知数です。
質疑応答の中で感じた点
まず自公民推薦の秀嶋善雄さんはいなかったので何とも言えませんが、阿部さんとはかなり違ってくるだろうという印象です。阿部さんは市民の参加を強調しながらも市民の意見は聞き置くだけで、実際に一緒に考えるとか、その決定過程にまで市民の参加を認めることは一切、なかったのですが、その点は若干、期待できそうに感じました。
市民の3分以内の質問ということで、どうでしょうか、数回に分けられた質問タイム内で5人くらいが質問しそれに2人の候補者が1-2分で応えるという形をとりました。合計20~25名くらいの人が質問したと思います。いずれ主催者側から質疑応答の内容が公表されるでしょうから、私は自分の関心がある分野だけに限ってどのような質問、回答があったのかご紹介します。
焼却灰について
これは共産党の君嶋さん、「市民派」の福田さん、いずれも情報を市民と共有化する中で「安心」が生まれるということでは一致していました。阿部市政は焼却灰の内海投下についての説明を町内会の会長にして他の町内会会長、及びそこから町内会の住民に下ろして質問がなかったので問題なく情報伝達はできたと議会に報告しました。その説明を各政党は信じ議会において満場一致で焼却灰の内海投下を承認しました。私は環境局の人たちは市民への説明をしたかったのだろうと思います。それをさせなかったのは恐らく阿部市長本人でしょう。
秀嶋さんも他の2候補と焼却灰の問題に関しては同じように応えるだろうと推測します。彼だけが突出して福島の汚染水問題で飲料水並みにしても海面投下はだめだという運動が強い中で、敢えて市民の反発を買うようなやり方はしないでしょう。飲料水並みにするんだから「安全」であり、「安全宣言」をしたのだから何の問題があるのかというような阿部市政と同じ強弁は断じてないと思います。
外国人公務員の差別制度について
これは川崎が政令都市としては初めて外国人の採用を決定したのですが、採用した外国籍公務員の昇進を禁じ、市民に命令を下すような職務(3000職務の内2割)には就かせない、「いざというときに戦争に行かない外国人は『準会員』であって『会員』と『準会員』の間で差別があっても当然、8割も働ける場ができたのだからそれでいいのでは・・・」という趣旨の発言を阿部市長は12年間続けて謝罪も修正をしなかったのです。川崎は外国人の差別を制度化した唯一の都市です。
私は候補者に以下の3点を質問しました。二人ともその点は知っていると答えました。
1.労働基準法 第3条:第三条 使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。
2.地方国家公務員法:国籍条項はない(地方公務員になるのにそもそも国籍は問われてない)
3.「公僕」:公務員は恣意的に市民に命令を下すのではなく、全て法治国家として法に基づく対応をする
次に私は、それでは阿部市長が作った外国籍公務員の差別制度はどうするつもりかと質問したところ、共産党の君嶋さんは、廃止すると明快でした。一方、福田さんは、上記法律は知っているが、「差別」と「区別」という概念を持ち出し、「権力」が発生するときは外国人は無理、これは差別ではなく区別であるという説明でした。お二人とも「公権力の行使」という単語は使わなかったのですが、正確には、「公権力の行使」は日本人に限るという従来の日本政府の見解に対して、君嶋さんはそれを川崎では変える(前回の岡本候補者も同じ見解でした)、福田さんは国の見解を踏襲するという意見です。福田さんはそれを差別と言われるのが嫌で、「区別」と言っただけです。
「公権力の行使」について
川崎市は門戸を開放する時にこのような定義をしました。「一般市民の意思にかかわらず市民の自由や権利を制限するもの」と定義して182の職務を選び出し、具体的には、建築許可、食品検査、病人の隔離をする保健婦、税金の徴集、墓地への立ち入り検査、狂犬病予防に係わる犬の捕獲等の仕事で、よせばいいのに、それらは「日本の統治作用」に関するもので「公権力の行使」であるからだめだと説明しています。
参考資料:「国籍条項問題とは何かー川崎市当局との交渉から見えてきた地平につい てー」
http://homepage3.nifty.com/tajimabc/new_page_12.htm
ここで私の3番目の質問が活きてきます。即ち、公務員は全て法律、条令に基づいて市民への職務が実行するのであり、そもそもその「法」の順守は全ての公務員に求められるのであって、外国籍公務員だけはだめという法的根拠はなく、まさに労働基準法に反しています。これは法治国家の原則に反しているのです。
すなわち、福田さんは4年前に私が渡した『日本社会における多文化共生とは何か』(加藤千香子・崔共編、新曜社)を読んでいなかったのでしょう。彼のような個人の実力を強調する新自由主義者であれば、国籍なんか関係なく、川崎の行政にとってもっとも相応しい人を選ぶと言えばいいのです。国籍が違うことによって問題になる地方自治体の管理職の仕事とは何か、そんなものが実際にあるのか、明確に議論したいものです。日本人でないとだめな仕事なんてないのです。彼はそこまで徹底して研究せず、外国人が「公権力の行使」をするんじゃだめじゃないのというレベルでしか、考えていないと思います。
川崎・市民フィーラムが自公民推薦の秀嶋候補に質問書を手渡すそうですから、私の質問を正確に伝えて回答を求めたいですね。川崎・市民フォーラムによってこのような候補者に対する質問をする機会が与えられ、感謝です。第一回の質問で終わらせず、それを元にして第二ランドへの深めたいですね。ここでは紹介できなかったですが、実に多様で重要な質問が多く出たことをみなさんにお伝えいたします。
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