2013年9月21日土曜日

「ヘイトスピーチとレイシズムを乗り越える国際ネットワーク」の設立宣言の評価と疑問

「ヘイトスピーチとレイシズムを乗り越える国際ネットワーク」の設立宣言をご紹介します。これは私がこれまで見た中でもっとも納得できる、水準の高いものです。これまで在特会のヘイトスピーチに抗する形で「しばく会」とかなんとかいう会が在特会とぶっつかる現場を見て、正直、私は嫌な感じをもちました。在特会そのものが話にならない、そもそもあのような「朝鮮人を殺せ」と叫ぶデモは許してはいけないと思いますが、それにしてもそれに対抗する側の人たちと私たちとの対話が成り立つのか、いぶかしく思いました。

  2013年5月12日日曜日
  在特会が街にやってきた! Zaitok-kai is coming to Town!
  http://oklos-che.blogspot.jp/2013/05/zaitok-kai-is-coming-to-town.html

この宣言は、ヘイトスピーチの持つ意味を本質にたち帰って考えるという知性をもっています。ヘイトスピーチは在日だけなく、「女性を敵視し、ウチナーンチュ、被差別部落の出身者、婚外子、社会が障害となっている人たち(いわゆる「障がい者」)、性的少数者などの、社会的少数者」を攻撃していると捉えます。そのうえで宣言のいう本質とは、「国際社会がこれまで長い苦しみの歴史の中で築いてきた、世界人権宣言にも謳われる普遍的な人権概念を攻撃し、その価値をあざ笑い、踏みにじる」ものだとします。

従ってこのネットワークがめざすのは、マイノリティ集団や一国の国内問題ではなく、民「族や国境の壁を超えて、人権の普遍的価値を擁護し、防衛する行動」だというのです。私はこの宣言の内容に賛成します。

しかし一点、残念なことがあります。それはここまで「ヘイトスピーチとレイシズム」の問題を普遍化しながら、「ヘイトスピーチとレイシズム」(それにジェンダーまで含めるとして)、どうして原発体制の問題に触れなかったのかという点です。「本質」というのであれば、あらゆる差別を構造化し格差を作り上げている社会が原発を持ち、世界に拡げているという現実と無関係に「ヘイトスピーチとレイシズム」を乗り越える言われている点に私は問題を感じます。是非、この点を含めた本質論議にしていただきたいと願います。

また「植民地支配」という概念が戦前のものとされているように読めます。植民地主義というのはまさに現在の国民国家の実態であるという立場に私は立ちます。「国民国家は植民地主義を再生産する装置」(西川長夫)。

もう一点、この宣言が「民族と国境の壁を越える」というのであれば、どうしてこの宣言の中に一水会の鈴木邦男氏が共同代表の中にはいっているのでしょうか。一国平和主義を超える運動に日の丸を唱える人は相応しくありません。氏を排除せよとは言いません。しかし氏が本当に国籍・民族を越える運動としてこの「ヘイトスピーチとレイシズムを乗り越える国際ネットワーク」に参加されたのか、単なる人的交流からの参加なのか、知りたい点です。

共同代表との間で「ヘイトスピーチとレイシズム」の「本質」のなかに原発体制の問題が盛り込まれるのであれば、全面的に賛同し、協力したいと思います。

崔 勝久

ヘイトスピーチとレイシズムを乗り越える国際ネットワーク
          (のりこえねっと)
設立宣言
沈黙は許されない。
 いま、在日韓国・朝鮮人を標的とするヘイトスピーチが、各地で凄まじい勢いで拡大している。
 多文化のもとで共生する人びとの平穏な生活を切り裂き、民族差別や人種偏見に満ちた、侮辱的、脅迫的言動が繰り返されている。
 ヘイトスピーチは、街頭だけでなく、ネットやさまざまなメディアでも繰り広げられ、差別、偏見、攻撃の言説を執拗に展開している。
 なかでも日本軍性奴隷被害者(いわゆる「従軍慰安婦」)とされた女性たちに向けられる侮辱と憎悪の表現は、人権の価値を根こそぎ破壊するレベルにさえ達している。
 ナチス時代のユダヤ人などへの迫害、かつての南アフリカでのアパルトヘイトやアメリカ南部におけるKKK団のリンチを想起させるような激しい侮辱と憎悪表現に対して、日本社会からの反応は、いまだあまりに鈍い。
 在日韓国・朝鮮人は、日本による侵略と植民地支配によって生み出された。その存在の歴史性に対する決定的な無知と、「言論の自由」の尊重という口実のもとで、この社会の多数派は、この卑劣で暴力的なヘイトスピーチを黙認し続けている。
 ヘイトスピーチは、当面の標的とする在日韓国・朝鮮人だけではなく、女性を敵視し、ウチナーンチュ、被差別部落の出身者、婚外子、社会が障害となっている人たち(いわゆる「障がい者」)、性的少数者などの、社会的少数者にも攻撃を加えてきた。
 彼らが攻撃する人々は、日本の戦後体制の中で、人格権や生存権を政策的に奪われたり無視されたりしてきた人々と、みごとに重なっている。この意味において、日本におけるヘイトスピーチは、戦後体制が政策的に作り出してきた差別そのものなのだ。

 本質に立ち返って考えたい。
 ヘイトスピーチが傷つけるものとは何なのか、ということを。
 それは、在日韓国・朝鮮人だけではない。社会的少数派だけでもない。
 ヘイトスピーチは、良心を持つあらゆる人々を傷つけるのだ。国籍も、民族も、性別も、出自も関係なく、すべての人間には普遍的な尊厳と人権があると考える人々の信念、そして、なによりも平和に生きようとする人々の精神に対して、言葉と物理的な暴力で憎悪を投げつけ、侮辱し、傷を負わせる。国際社会がこれまで長い苦しみの歴史の中で築いてきた、世界人権宣言にも謳われる普遍的な人権概念を攻撃し、その価値をあざ笑い、踏みにじる。
 これが、ヘイトスピーチの本質なのだ。
 だから、この暴力に対峙し、決然と対決することは、単なるマイノリティ集団の利益のための行動ではない。
 また、一国の国内問題を解決するためのものでもない。
 民族や国境の壁を超えて、人権の普遍的価値を擁護し、防衛する行動でもあるのだ。
 それは、この日本社会にあっては、戦後体制によって市民的権利を剥奪されてきた人々の「市民として生きる権利」を希求する行動以外の何ものでもない。
 ここであらためて確認し、明記しておく。
 人間の涙の歴史を無に帰そうとする挑戦に、
私たちは、決して屈しない。
      ヘイトスピーチとレイシズムを乗り越える国際ネットワーク
                「のりこえねっと」 共同代表 一同 

共同代表
 (2013年9月19日現在) あいうえお順:
石井ポンペ(原住アイヌ民族の権利を取り戻すウコチャランケの会代表)
上野千鶴子(東京大学名誉教授)
宇都宮健児(元日弁連会長)
河野義行(松本サリン事件被害者)
雁屋哲(漫画原作者・エッセイスト)
北原みのり(ラブピースクラブ代表)
佐高信(評論家)
辛淑玉(人材育成コンサルタント)
鈴木邦男(一水会最高顧問)
田中宏(一橋大学名誉教授)
田中優子(法政大学教授)
高里鈴代(平和市民連絡会共同世話人)
西田一美(労働組合役員)
知花昌一(真宗大谷派僧侶)
中沢けい(作家)
前田朗(東京造形大学教授)
リリアン・テルミ・ハタノ(近畿大学准教授)
若森資朗(一般社団法人 協同センター・東京)
和田春樹(歴史家・東京大学名誉教授)
以上

■連絡先(9月18日現在):
住所;〒113-0033
    東京都文京区本郷3-13-3 三富ビル ペンの事務所気付
TEL 03-5804-3210
FAX 03-3453-2326
 担当 090-2481-5193()
Email info@norikoenet.org
URL http://www.norikoenet.org

■のりこえねっと記者会見のご案内
-ヘイトスピーチとレイシズムを乗り越える国際ネットワーク-
 日時:9月25日(水)12:00~13:00
 場所:新大久保「SHOWBOXhttp://showbox.jp/(職安通り飲食店「大使館」隣)
 (〒169-0072 東京都新宿区大久保1-17-8 1F
(返信は、info@norikoenet.org)

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ご住所 〒
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□ヘイトデモに対する現場サポート 
□差別禁止法の立法化活動
□差別に対する全国学習会への参与
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□その他(                                )
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ありがとうございました。

1 件のコメント:

  1. 崔さん、こんにちは。
    脱原発かわさき市民の参加者でありヘイトスピーチをまき散らす団体のデモに対してカウンターを行ってきたNです。
    日本と呼ばれている場所に未だ根強く残っている部落差別について崔さんのお考えを伺いたく存じます。

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