脱核新聞 8号(5月発行)
2013/05/21 19:12
福島事故原子炉製造会社責任を問う
世界市民共同訴訟のために、日本環境弁護士連盟韓国訪問同行記
李大洙(脱核新聞運営委員)
日本環境弁護士連盟の島昭宏(しま あきひろ)弁護士は岡田卓己(おかだ たかし)教授(大邱・啓明文化大)と共に、去る4月18日(木)瑞草(ソチョ)駅近くの民主社会のための弁護士会(以下、民弁)事務室を訪問した。去年11月10日東京で、NNAA(No
Nukes Asian Actions,脱核アジア共同行動)設立会で、福島事故原子炉製造会社責任を問う発表があり、その資料が韓国に紹介されたことがある。
民弁の実務者として勤務しているイ・ヘジョン弁護士が快く迎えてくれた。まず、民弁の映像資料を通じて人権・環境・国際交流など様々な分野にわたって活動しており、900名の会員がいること等を紹介してくれた。引き続き、島弁護士も日本の環境弁護士聯盟(JELF)は550人会員で構成されており、ほとんどが環境関連の訴訟を担当していると紹介した。また、島弁護士はNNAA側の要請を受けて、日本環境弁護士連盟を通じて推進中の東芝・日立・ゼネラルエレクトリック(GE) の原子炉製造会社3社に対する世界1万人訴訟の背景と趣旨について説明した。そして、民弁が共に参加してくれることを要請し、民弁側としても原則として共感するが、実際にどのように進行が可能かについては、内部で議論してみなければなければならないと答えた。
次に、脱核法律家会ひまわり代表のキム・ヨンヒ弁護士を訪問した。島弁護士は、「地球温暖化によって直接的な被害を受けている南太平洋の島国ツバルと北極の白熊のための訴訟である二酸化炭素ない電力生産要求訴訟をしている」ことを紹介し、原子炉製造会社に対する訴訟は核発電の不合理な点を明らかにするものだと説明した。それとともに、「現在、製造物賠償責任法の適用を除外されている原子力損害賠償法が持っている問題点があるので、法・制度を変えなければならず、またもう一方で、核発電の非経済性も明らかにしなければならない」とした。
しかし、キム・ヨンヒ弁護士は「こういう訴訟に市民らが関心を持つことも重要だが、訴訟をよくやり遂げることが重要で、悪い判決が出されないようにしなければならない」と強調し、この訴訟は韓国にも影響を及ぼすだろうといった。「様々な原因中、製造会社の責任をどこまで問えるか、因果関係と責任をどのように立証するのかがカギだ」といった。島弁護士は「製造会社の欠陥を証明する準備をするが、根源的には核発電を許容して推進してきた政府と国家の基本責任を問うことが重要だ」とした。実定法より自然法を優先する立場と見えた。
城北洞(ソンブクトン)の緑色連合も訪問した。ユン・ギドン事務局長(緑色連合)は島弁護士の訴訟趣旨に共感し、「原子力損害賠償法の改正が優先されなければならないだろう」と伝えたし、ペ・ヨングン常勤弁護士は、「外国人が日本の裁判所を相手に訴訟するのは容易ではないが、寿命延長時に製造会社責任義務化規定を作ることが重要で、特に韓国の訴訟参加を引き出すために必要だ」という意見を提示した。
21日(日)には、ソウル駅近隣で生命会議等を通して、セマングム訴訟を進行したチョン・ジェギョン博士とパク・オスン弁護士が参加されて、具体的な議論ができた。神戸と下関で活動中の若い弁護士たちが同席した。日本政府は紛争和解センターを作ったが、電力会社の主張範囲を抜け出せずにいる状態で、米国と日本が責任集中制(電力会社だけが責任を負う方式)に基づいて原発輸出にまい進しており、韓国もその隊列に加わっている状態なので、ブレーキをかけるためにも必要な訴訟であることを明らかにした。
11月の訴訟を控え、全世界1万人の原告を集めて進行するために、韓国、台湾、リトアニア、インドなどと連絡をとり接触していると説明した。6月18日~24日、日本人20人が参加する韓国核発電所地域への韓・日市民共同巡回を通じて連帯活動を作り出す予定であり、6月以前に訴訟関連書類と資料準備を通して、韓国に提案すると明らかにした。チョン・ジェギョン博士は、生命会議側で参加が可能なことだと答え、必要ならば募金など具体的な方案を相談すると明らかにした。
今回の日本の弁護士らの韓国訪問と関連団体、専門家たちの懇談会をはじめとして、6月の核発電所共同巡回訪問を通じて、福島被害訴訟、特に原子炉製造会社を相手にする国際訴訟の協力が計画の通りうまく進行できることを期待する。
脱核新聞 9号(6月発行)
2013/06/11 14:34
李大洙(イ・デス)運営委員長
(アジア平和市民ネットワーク、牧師)インタビュー
「韓・日市民交流を通して、脱核共同行動を模索しよう」
日本の核発電所周辺地域住民の会および市民団体関係者たちが韓国の核発電所地域を巡回・交流する「脱核とアジア平和のための韓国原発地域韓日市民ツアー」が、来る6月19日(水)から25日(月)まで5泊6日間進行される予定だ。今回の行事をかなり以前から準備している李大洙運営委員長(アジア平和市民ネットワーク、牧師)にその趣旨と計画などを聞いてみる。
1.始めることになった契機は?
2012年に2度、日本核発電所地域訪問をしたことがある。日本の現地住民対策委で活動する方々をはじめとして、首都圏で脱核運動をするグループに会いながら、韓国現地との交流があれば良いという要請を何回も受けた。以後、首都圏脱核運動団体の方々と国内核発電所地域対策委の方々に、こういう日本側の意思を伝達し、その必要性について相談してみたところ、皆必要だという立場を明らかにしてくださり推進することになった。
特に韓・日の各地の核発電所地域住民と対策委の間の相互交流を通じて現況を共有し、共に連帯してアジア脱核のための共同行動を模索して行くことができたら良いだろう。
2.どのように進行されるか?
第一にに、韓国核発電所と地域活動の実態を理解するために、核発電所現地を訪問する。全南(チョンナム)の霊光(ヨングァン)(19日、水)を初日として、次の日に慶南(キョンナム)、陜川(ハプチョン)(原爆被害2世の会)または密陽(ミリャン)送電塔、釜山市、古里(20日、木)を訪問する。慶州(キョンジュ)の月城(ウォルソン)と慶北(キョンブク)、盈德(ヨンドク)(21日、金),、蔚珍(ウルチン)と三陟(サムチョク)(22日、土)等を訪問して現地住民と対策委関係者たちとの交流会などを持つ予定だ。第二に、首都圏脱核運動諸団体との政策会議など(24日、月)を通じて、韓・日市民社会間の協力と共同対応を相談する予定だ。個人的には、今回の行事について「脱核平和通信使」として来られるのだと考えている。
3.どういう方々が参加するか?
全21人で、福島を含んだ日本東北地域で活動中の牧師と活動家ら、日本のNNAA(No Nukes Asian Actions, 脱核アジア行動)役員と玄海核発電所(九州、佐賀県所在、釜山まで200km、参考としてソウル~釜山は330km―編集者 注)訴訟中の方々、そして弁護士、首都圏脱核活動をしている方々が主軸だ。その中には、韓・日歴史問題などで既に韓国としばしば交流した方たちもいる。大きく見れば日本のNNAA中心に活動している方々といえる。
4.今後の計画は?
今回の訪問を始め、秋には韓国から日本を訪問する予定だ。日本は地域が広く、一部地域を中心に訪問する予定であり、日本の現地で宿泊場所を提供する。今後、韓・日市民交流を持続しながら、台湾、モンゴルなどのアジア圏に拡大する予定だ。
核発電は個別核発電所だけの問題でなく、国家のエネルギー政策と核兵器まで関連する。密陽送電塔の事態のように、核発電問題は、個別地域の孤立的な懸案でなく、全国的な課題となるほど成熟する様相を見せている。お互いに激励し、相互理解を通して仲の良い隣人として、生きていく道を共に歩いていければ良いだろう。
5.アジア圏脱核共同行動の可能性は?
日本の場合、戦後マッカーサー占領司令部によって制定された現在の憲法、すなわち「平和憲法」9条で「非武装戦争不可」等を規定している。だが、日本保守勢力らはこれを改正して軍隊保有が可能な「正常な国家化」を主張し、核兵器開発と保有を試みている。その間、中国は改革開放と大国的ふるまいを通じて、米国とG2を形成し、東アジア秩序は再編されている。韓国もまたとても成長した。
米国は日本の再武装化を期待し、「アジアへの帰還」を通じて中国を牽制しようとする、いわゆる「新しい冷戦」を作っている。またここに、日帝侵略と植民支配の過去事、日本周辺国間の領土問題などが絡まっている。原発輸出とNPT(核拡散禁止条約)は2次世界大戦後に出現した双生児だ。20世紀後半の核(原発と核兵器)体制が人類に与えている誘惑と危険を共に考えてみなければならない。
今年は、韓国(朝鮮)戦争停戦60周年だ。北-米、南-北間の葛藤により、韓(朝鮮)半島および東北アジアで軍事的緊張が日常化され増幅されている。しかし、貿易など経済的に相互の関連が強まり、相互交流と協力は過去とは比較できないほど繋がりを持ち、緊張抑制と共同繁栄のどちらも可能だ。すなわち危機と可能性の間にある。
アジア平和を望むならば、世界秩序の明暗を理解しながら、核発電でない平和的なエネルギーへ切り替えるための市民の覚醒と努力が重要だ。脱核は、持続可能なエネルギー体制と世界平和を実現する人類史的挑戦だ。今は政府だけでなく、市民社会が主導的な役割をしなければならない。
発行日:2013.6.3
発行日:2013年5月
細かい法的な争点には通じていませんが、韓日ともに、今問題になっているTPPとの関連で、製造物責任の法的根拠(国という枠を越えられるか、グローバリズムに対抗できるか)が問われるのではないでしょうか。また同時に、この問題はそれぞれの「国語」と「法律文」の問題(対英語、という意味でも)もあると、一翻訳者としては感じています。
返信削除崔さん、画期的なツアーになりそうですね。がんばってください。
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