昨年の11月3日に発足したという「ごみねっと川崎」が川崎市長あてに出した「ごみ焼却灰の海面埋め立て、方針決定に関する意見書(案)をご紹介します。
3・11以降、川崎においても大量の放射線物質によって汚染され、毎日出るごみと下水道の汚泥の焼却灰の線量が高く処理されずに臨海部に保管されたままになるという異常な状態が続いていました。川崎市当局は最終的に東京湾に直接海面投下はしないが、防波堤で囲まれた海面に投下して埋め立てる計画を明らかにしたのです。それに対して、「ごみねっと川崎」は問題点の指摘だけではなく、具体的な提案をだしていること、市民としての具体的な参加方法まで提示しています。
特にそもそも事故を起こした当事者である東電への責任を追及する具体案をだしていることは注目されます。地方自治体は住民の安全に責任を持ち、市民はそれに参加し、そして加害者である東電に行政と一緒になって責任を追及するというのはまったく正しいあり方です。私も「ごみねっと川崎」に参加したいと思います。
一点追加するとしたら、川崎のごみの問題は、川崎の災害対策と別なものとするのでなく、地震・津波の災害が起こった場合の対策と一体として取り組むべきことだと私は考えます。川崎市当局のゴミ対策はそのことだけを取り扱うのですが、臨海部に保管された放射線量の高い焼却灰と埋め立てに使われる海面が津波によってどのような影響を市民と環境に与えるのかという観点が完全に欠落しています。 崔
参考までに:私のブログ「オクロス」 http://www.oklos-che.com/ 「臨海部」を検索ください。多くの災害に関する文章をごらんいただけます。
首都圏を襲う地震・津波に総合的な対策をー住民参加案に賛同
http://www.oklos-che.com/2012/11/blog-post_23.html
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2013年1月4日
ごみ焼却灰の海面埋め立て、方針決定に関する意見書(案)
阿部孝夫市長 殿
ごみねっと川崎
共同代表 川岸 卓哉
同 加藤 伸子
同 國米リリ子
〒210-8544
川崎市川崎区砂子1丁目10番地2 ソシオ砂子ビル7階
川崎合同法律事務所内
川岸卓哉
電 話 044-211-0121
FAX 044-211-0123
Mail kawagishi@kawagou.org
第1 ごみねっと川崎の紹介
ごみねっと川崎は,2012年11月3日に放射能で汚染されたゴミ焼却灰,下水汚泥焼却灰の処理問題をきっかけに,廃棄物の焼却処理,生活ごみの減量,リサイクルを進める方法など,川崎市のごみ問題について考え,行政に市民の声を伝えるために発足した市民団体である。
第2 問題提起
2011年3月11日,東日本大震災によって発生した地震と津波によって,東京電力福島第1原発はシビアアクシデントを起こし,大量の放射性物質が大気中に放出され,川崎市にも降り注いだ。川崎市に降り注いだ放射性物質は,一般廃棄物(以下、ごみ)焼却灰,下水汚泥,下水汚泥焼却灰に高濃度に濃縮された。これまで,川崎市は,これら放射性物質で汚染された廃棄物焼却灰,下水汚泥,下水汚泥焼却灰を,国の埋立基準である8000bq/kg以下のものであっても、安全性の観点から従来の方法による処分をせず保管してきた。このような川崎市の安全性を重んじ,国の基準に拠らない慎重姿勢には敬意を表するとともに、市民として誇りに思うところである。
しかしながら、川崎市は,2013年4月以降、新たに発生するごみ焼却灰について海面埋め立て処理を再開する方針を決定した。この決定方針は,増え続けるごみ焼却灰を保管するためのスペース,費用の問題に追われ,これ以上保管による現状維持が困難なために、従来の海面埋め立てを可能にするべく研究を推し進め,決定されたものといわざるをえず、相当な問題がある。
第一に、検討過程について、市民への情報開示および市民参加が不十分・不透明である。市民が求めた情報開示請求に対しては,不当にも開示を拒否したものもあり、判例を示してからの開示となるなど、開示に消極的である。
第二に、処理の安全性の根拠、安全性の確保が不十分である。川崎市が採用した安全性の要であるゼオライト処理は、全ての放射性物質汚染を完全に防ぐものではなく、海面埋め立てによる海洋汚染の影響も検討されていない。安全性の大前提である浮島の海面埋め立て場が,地震,津波に耐うるかの検証も必要であるが,十分に検証はなされていない。
特に、川崎市の処理の方法が、汚染を完全に防ぐものでなければ、海外から見れば単なる放射性物質の海洋投棄である。昨今、トモダチ作戦に参加した米兵が、福島で被ばくしたと東京電力に対し、189億円もの損害賠償請求を連邦裁判所に提訴したり、また、米国のInternational Journal of Health Services誌が、福島の原発事故でアメリカ人の少なくとも14,000人が亡くなったとしていることから(2011年12月号)、主として米国において、東京電力や日本国を相手取った多額の訴訟が多数提起されることが想定され、その場合、海面埋め立てをしている東京都、横浜市などと共に川崎市も被告にされることは大いにありうることである。多額の弁護士費用や懲罰的損害賠償金などにより市の財政が逼迫するようなことは決してあってはならない。
第3 わたしたちが求めること
そもそも,放射性物質に安全な閾値はない。低線量でも人体に重大な影響を与えるものである。単位あたりに海洋に放出される放射性物質は微量であっても,総量で見れば大量の放射性物質が放出されることになることを看過することはできない。海洋へ流出する放射性物質は,希釈化されるものではなく,生態濃縮され、海中生物ひいては人体への影響が危惧される。近隣の漁業者への風評被害も考慮されなければならない。
このような放射性物質の危険性に鑑みれば,放射性物質を微量であっても海洋に放出することを決して安易に考えてはならない。私たちが求めるのは,放射性物質の絶対的に安全な管理である。
川崎市のごみ焼却灰処理の決定方針は,放射性物質の絶対的な安全性が確保されたものとは到底言い難い。川崎市は,保管場所,保管費用は,本来排出者責任を負うべき東京電力に毅然とした態度で請求すべきである。その上で,浮島の処分場への海面埋め立てありきの研究結果に拠らず決定方針を見直し,絶対的な安全性が確保されるまで慎重な検討を進めることを求める。
以下,川崎市に対する要求事項を記載する。本意見書送達後,2週間以内の回答を求める。
1.浮島の海面埋め立て以外の汚染灰の処理方法の検討
(1) ごみ焼却における、高濃度放射能汚染物質の分別
・一般市民の協力による、落ち葉・剪定ごみの分別
・業者による街路樹、公園管理者による落ち葉・剪定ごみの分別
・上記の分別ごみの減容化、放射性物質除去方法の確立の検討
(2) 東京電力への引き取り要求
・高濃度汚染灰の東京電力敷地内における管理要求
2 検討過程の透明化
(1) 市の方針決定に至るまでの情報の全部開示
・ 東日本大震災対策本部放射性物質対策特別部会の検討内容の全部公開
・ 国立環境研究所との研究内容の全部公開
(2) 今後の計画についての情報全部開示
・試験実施までのタイムスケジュール
・試験実施の計画内容
・試験実施までの関係部署、関係企業、機関等の役割分担や調整内容等
・予定される施設施行業者の選定方法
・予算化された経費の年度別収入支出内訳
(3) 広報紙による一般市民へのタイムリーで正確、丁寧な情報伝達
3 市民参加型の意思決定方法の確立
・検討過程でのパブリックコメントの実施
・検討過程に参加する市民部会の設立
・一般市民向け学習会,説明会の実施の要求
4 安全性の徹底した検証
(1)ゼオライト処理の安全性研究結果についての比較
・ 横浜市、大阪市の実施結果の反映
・ 川崎市のゼオライト処理の実験方法,結果についての公表
(2)海洋汚染への影響のシミュレーション
・ 川崎市での海洋汚染シミュレーションの独自実施
・ 安全評価委員会の海洋汚染シミュレーション結果の検討
(3)浮島埋め立て場の,地震・津波予想及び対策、評価の検討
5 国,東京電力への請求
・本来排出者責任を負うべき東京電力へ,川崎市は費用請求をしているが,国の基準以下のものについては支払わないことが予想される。徹底して請求を求めるべきである。また,最終処分も東京電力の責任で保管場所を用意するように求めるべきである。
・国に対しても,基準値以下のごみの最終処分場の確保を求めるべきである。
6 条例の制定
「もとより、すべての人は健康で文化的な生活を営む上で必要となる安全で健康かつ快適な環境を享受する権利を有するとともに、このような環境を保全し、将来の世代に引き継ぐべき責務を有している」(川崎市環境基本条例より)。
しかし、環境省の特措法では、希釈すれば上限のない高濃度の放射性物質も全国のごみ処分場に拡散可能になっているなど、放射能汚染を規制する内容ではない。2012年6月20日、環境基本法13条の放射性物質適用除外規定の削除法案が成立し、放射性物質は法律上も公害物質となった。放射性物質を公害規制の対象とする国による法律の制定にはまだ時間がかかることが予想される。
そこで、公害都市としての歴史を背負う川崎市においては。国に先んじて、放射能汚染に対する抜本的な対策を求め、独自基準、排出者責任等を盛り込んだ「放射能汚染防止条例」の制定を求める。
以上
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