2012年12月26日水曜日

原発メーカーの責任を問うーWeb Ronza より

11・10、NNAAの発足講演会の記事が大久保真紀記者によって朝日新聞デジタル WEB RONZAに書かれています。NNAAの北海道の仲間が知らせてくれました。ただしこれは有料です。私は登録して全文をコピーしたのですが、みなさんもそのようになさることをお勧めします。
大久保さんは、「日立闘争」の朴鐘碩の密着取材で彼の自宅で、子どもたちと一緒にお風呂にはいったということを本人からお聞きしました。彼女の記事がいくつかこのWEB RONZAにはありました。ゆっくりと読みます。もう一度、NNAA発足集会で何が語られたのか、みんなで確認したいと思います。
なお、葛飾市民TVの橋谷さんは当日の講演を素晴らしい編集でDVDをつくってくださいました。この場を借りて感謝いたします。田中三彦さん、鈴木真奈美さん、島弁護士3人のお話は多くの人に伝達し共有化したいですね。崔


原発メーカーの責任を問う
(大久保真紀 記者)

11月10日、東京都内で、福島の原発事故に関連した原発メーカーの責任を考える集いがありました。この日は同時に、モンゴル、韓国、日本、台湾、アメリカ西海岸の市民たちが、国際的に連帯して行動する「No Nukes Asia Action(反原子力アジア行動)」を発足させました。彼らは、原発メーカーの法的責任を追及するとともに、その問題、責任を知らせる運動や署名活動を進めていきたいと、記者会見しました。

 事務局長の崔勝久さんは、日本のメーカーらによって台湾で建設されている第4原発の問題、秘密裏に進められている使用済み核燃料をモンゴルに運ぼうとする計画などについて指摘し、「原発を輸出させない、モンゴルに廃棄物をもっていかせない、ということを全世界にアピールして協力していきたい」と意気込みを語りました。「いろいろ難しい問題があるが、このまま放っておいていいのか。メーカーは何の謝罪も,反省もなく、また世界に原発に売り込んでいる。抗議して運動していきたい。裁判を通してメーカーの責任を明確にしていきたい」と話しました。

 原子力損害賠償法では、第4条で原子力事業者以外は原子力損害による賠償の責任は問われないと定められています。同時に、原子炉の運転などに生じた原子力損害については製造物責任法、いわゆるPL法の適用はされない、とも定められています。つまり、東芝、日立、三菱重工などの原発メーカーはどんな事故が起こっても、現時点では賠償責任がないということを意味します。

 それが影響しているのか、官邸前の金曜デモも各地の再稼働反対を訴える抗議行動も、政府や東京電力などの電力会社に向けられているもので、人々の意識の中にはメーカーの責任を問う発想があまりないのが現実です。しかし、そうではない、原賠法で守られた形の原発メーカーの責任も問うていかなくてはいけないのだ、ということを確認するのが、この日の集会の趣旨でした。

 あれだけの事故を起こし、日本では将来は原発をゼロにしようという機運が高まっているにもかかわらず、原発の輸出は進めようとしています。日立が英国の原発メーカーを買収することも最近明らかになりました。2030年に原発をゼロにするという国の政策と、海外に原発を輸出するということは本来なら両立しないはずです。

 NNAAの設立会見に先立ち、「原発体制と原発メーカーの責任」と題する講演会がありました。

 福島県出身のジャーナリスト鈴木真奈美さんが、2006年に定められた国の原子力立国計画で、人材、技術を維持するために原子力輸出を推進するとされたということを報告しました。日本の原発建設は1990年代初めにピークを迎え、その後は徐々に減ってきています。今年の夏も結果的に原発なしで乗り切れましたが、電力需給のバランスから、それほど増設しなくてもいい状況が影響してのことだと鈴木さんは言います。さらに、電力市場の自由化への圧力が国内外からかかり、立て替え、新設は抑えられ、40年とされていた原発の寿命も、福島原発事故前は60年とするという方向になりました。新規建設がほとんどない状況では、技術や人材の継承が困難になります。その技術や人材を継承するための方策が、輸出の推進なのだ、と鈴木さんは指摘しました。

 原発の輸出問題は、原子力の平和利用、つまり国際法上の核拡散防止(NPT)体制とも深く関係しています。米国は原発の運転を縮小しても国際法上、核兵器を持つことを許されています。つまり、核の技術を持ち続けることができます。しかし、核兵器の所持できない日本の場合、原発をゼロにすることはそれはイコール核の技術を手放すことになります。米国は日本の協力のもと、核の拡散を防ぐ,反対に言えば、米国ら限られた国だけが核兵器を持ち続けるために他国の核の平和利用を進めるというNPT体制をしいてきたという歴史もあり、日本の原発問題は米国との関係も色濃く影響しています。鈴木さんは、国内の原子力政策の見直しは、それにとどまらず、原発の輸出問題、NPT体制についても議論をする必要がある、と力説しました。難しい問題だけれど、とにかく議論していくしかない、というのが鈴木さんの主張でした。

 鈴木さんの次に登場したのは、国会事故調の委員を務めた田中三彦さんでした。田中さんはかつてバブコック日立で原子炉の設計をしていました。1974年、田中さんは福島第1原発の4号炉の製造に関わりました。圧力容器の断面が法規の求める真円度を満たしませんでした。本来なら作り直すべきですが、2年以上かけて作ってきたものをやり直せば、会社がつぶれます。そこで、田中さんが懸命に計算をし、200トンの油圧ジャッキ3本で中から圧力をかけて整形し、それを高温で焼いて矯正するという作業をしました。圧力容器の鋼材に変化をもたらす作業だったかもしれません。しかし、当時の田中さんは、まずいかも、と思いつつも、会社のために懸命に働きました。

 その後、別の事情で退社しますが、チェルノブイリ事故の惨状を目にした田中さんは自分がかかわった矯正作業について公表します。当初、日立は矯正作業そのものを否定していましたが、翌日にはそれを認めました。ですが、「矯正作業はしたが、強度は問題ない」とし、国もメーカーが言うのだから、「問題なし」としました。一方、田中さんにはそれから、脅迫電話や無言電話、圧力があちこちからかかってきたそうです。

 田中さんはこの経験から、原発の「危険性」より、会社の存続の方が重視される、とみます。また、自らへの自戒も込めて、たまたま属した会社への自己超越的忠誠が働く、ということを指摘します。違法の発想が気にならない体質がある、というのです。「責任は会社がとる」という思いがこびりついている、と言います。田中さん自身、当時、少しは気にしたものの、そのまま、会社のために働き、特別表彰まで受けたそうです。ですが、その後、外に出て科学ジャーナストになった田中さんは、自分の行動を考え直すことになります。

 そして、こう問題提起をします。「組織に属する科学者、技術者は、いま携わっている科学、技術の社会的意味、社会へのインパクトなどを考える訓練を受けていない」
「会社」人なのか、「社会」人なのか。それは大きな違いだといいます。

 田中さんは、メーカーが福島の事故にどうかかわったのか、と疑問を投げかけました。原発についての技術的な知識の量は国よりも、電力会社よりも、メーカーが圧倒的に多くもっています。その知見、知識をあの事故を受けて、どう使ったのか、というのです。現地に入ろうとしたのか、あるいは、現地に入ったのなら、どういう発言をして、どういう指揮をしていたのか、検証する必要がある、と指摘しました。

 原発メーカーの日立の原子力事業基本方針には、福島原発関連の中長期対策の支援という項目が入っています。内容は4号機使用済みプール内の燃料の取り出しや、中期保管、最終的に廃炉に向けた取り組みとなっています。また、海外事業の推進強化も原子力事業の大きな柱として据えられています。その原子力事業の売上高を、日立は、2011年度の1600億円から2020年度は3600億円と見積もっています。田中さんは、福島原発事故の賠償責任を問われないメーカーが事故後の対応で金儲けをしようとしている、と話しました。

 原発メーカーの法的責任をどう問うていくのか。それはそう簡単ではありません。弁護士の島昭宏さんは、原発の場合、事故が起これば家やふるさとを奪われる人が多数発生することから、電力会社以外の責任を免除している原賠法は国民の財産を保障する憲法29条1項に反するのではないか、と指摘します。また民法上の不法行為責任を問えないかとも考えているそうです。いずれにしても、ハードルはかなり高いと言わざるを得ません。ですが、法的な責任を問うという行動を起こしながら、社会の関心を喚起し、メーカーの社会的な責任も問うていこうというのが、NNAAの目標です。

 NPT体制、エネルギー政策、企業倫理、経済、雇用など、原発の問題はさまざまな問題と複雑にからみあっています。しかし、難しいからといって逃げることはできません。まずは事実を知り、それと向き合い、議論することから始めなくてはなりません。福島の事故から1年8カ月。あの事故から何を学び、どこに進もうとするのか、それは、これからの問題です。



1 件のコメント:

  1.  他人に迷惑を掛けたら謝罪し謝るのが人の常では無いだろうか。原発メーカーの責任を問うモンゴル・韓国・日本・台湾・アメリカ西海岸の市民が11月10日、都内信濃町教会を借りて、国際連帯行動組織NNAA(No Nukes Asia Action;反原子力アジア行動)を立ち上げた。スカイプを駆使したメッセージの相互交換もあった。世界はずいぶんせまくなったものだと実感をいっそう強くした。集会のようすを朝日新聞デジタルWebRonzaに記者が掲載しているのを知った。隣国中国では原発の新規設置が計画され、3・11福島原発事故直前の民主党・管政権がベトナム政府と新規原発を受注していた。事故の場合には日本国政府が全て補償し将来の核廃棄物は引き取ることになっていると聞く。いまでさえ、1基を除き停止中の原発には使用済み核燃料棒が保管され、中間貯蔵施設の六カ所の再処理施設はすでに満杯だという。選挙中はダンマリを決め込んだ自民党政権は、原発再稼働の前に先ずは使用済み核燃料棒をどうするか国民にしめすべきだろう。

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