韓国在住の岡田さんが今年一年を締めくくる文書を送ってくれました。日韓とも保守派が勝利しました。そこから垣間見られるいくつかの要素を分析し、来年の運動に備えるべきことを提案されています。 崔
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皆さま、お元気でしょうか。
大邱在住の岡田 卓己(たかし)です。
今年も明日、明後日の2日間を残すだけになりました。私は、韓国での今年の仕事をすべて終えて、明日、日本の川崎へ一時帰国します。
今年を終え、新しい年を迎えるにあたって特に、日本語を母国語とし韓国語を理解できる友人と、韓国語を母国語とし日本語を理解できる友人の方々に訴え、お願いしたいと思い、このメールを書きました。現在の日本社会と韓国社会が抱える葛藤を越えるためにも、このような私たちは少なからぬ影響を与えることが可能なのではないか。それを、ぜひとも2013年にスタートさせたいと考えたからです。
2012年の衝撃的なできごとは、私にとってはこの12月の日本の総選挙と韓国の大統領選挙でした。日本の総選挙での、自民党と維新の会の躍進は予想できたことで、領土問題を含めて日本の多くの市民がナショナリズム・自民族中心主義にからめとられている現状の克服が必要だと常々考えていました。
しかし、韓国・大統領選挙における敗北は、私にとっても相当ショックでした。そして、選挙直後の釜山・韓進重工業解雇労働者の首つり自殺、現代自動車非正規工・派遣労働者の飛び降り自殺は、さらに多くのことを考えさせられました。「あと5年も待つことはできない」という彼らのの死は、これまでの運動の中での抗議の自殺という意味よりは、遺書の中から読み取れる「絶望」・「敗北」の意味あいがより強いと感じたのです。
http://www.labornetjp.org/worldnews/korea/strike/2012winter/1356193325049Staff
http://www.labornetjp.org/worldnews/korea/knews/00_2012/1356266559756Staff
http://www.labornetjp.org/worldnews/korea/knews/00_2012/1356428769571Staff
李明博政権の下で、MBC、KBS、YTNの放送労働者たちは、落下傘経営陣の退陣と国民への公正な報道を求めて長期間のストライキで闘いましたが、経営陣は居座りを続けこの労働者に圧力を加えています。双龍自動車の整理解雇労働者など解雇、非正規工労働者たちも、その解決への展望が見えないでいます。また、企業型マートの大量出店で、街中の商店の経営なども破壊され足下から生活の困難が眼に見える形で露出しています。朴槿恵新政権の下では、さらにこの傾向が加速されそうです。
では、私たちはどうすれば良いのでしょうか。
私は運動を勝利に導く道は、①現状の分析と課題・展望の正確さ ②私たちの運動の道徳的な優位性 ③それに基づいての、共同行動・連帯の広がりだと、常々考えています。
韓国では今回の大統領選挙での朴槿恵の勝利は、韓国が1987年6月抗争の一定の「勝利」以降も、朴正熙(=高木正雄)の壁を越えられていないことを示しています(特に大邱から見ますと、そう思えます)。他方、主体の側から考えますと、文在寅候補は今年の5月から安哲秀・市民派との「共同政府」を訴えましたが、結局民主統合党の方針になることはできませんでした。
ハンギョレ・サランバン
2012年05月11日10:33
[単独] ムン・ジェイン "アン・チョルスと単一化を越えて共同政府に進むべき"
http://blog.livedoor.jp/hangyoreh/archives/1625192.html
http://www.hani.co.kr/arti/politics/politics_general/532381.html
こうした事態の中で起こったのが、選挙公示直前、安哲秀氏の一方的辞退という苦渋の選択でした。
http://www.oklos-che.com/2012/11/blog-post_4196.html
(オクロスへの拙稿)
また、統合進歩党の李正姫氏も投票日直前に立候補辞退をしました。しかし、文在寅の3.6%の差をつけれれての敗北は、「共同政府」(選挙中民主統合党は「国民政府」と言った)への方向性の不徹底と民主党のこのようなセクト主義的な体質に責任の多くがあったと見ています。
では、私たち進歩左派・市民派の任務は何なのか?
私は、短い言葉でスローガン的に言えば、「赤と緑と青年たちの深い討論と共同行動、そして信頼に基づく連帯」だと思います。朴槿恵新政権の下では、解雇・非正規工労働者たち、原発のすぐ近くで暮らす住民たちを含めた地域からの脱核運動、青年たちの就職難や地域の人々の生活破壊など、今まで以上に連帯への模索が求められています。
振り返って日本の現状はどうでしょうか。
日本の市民の中からは、「脱原発」「原発ゼロ」の小選挙区での候補者一本化が訴えられましたが、「原発ゼロ」を目指す諸政党などからは、それに応えようとする政党の動きはほどんど見られませんでした。安倍自民党、石原・橋下維新の会の選挙での躍進は眼に見えていましたが、それを少しでも食い止めることが今後の日本の運動にとってどれだけ重要なのか諸政党は考えることさえできませんでした。地域からの生活をかけた共同行動への模索がなによりも必要になっています。
運動の発展にとって絶対に必要なことの一つは、国際連帯の思想だと思います。例えば、整理解雇・非正規工労働者問題ひとつをとっても、資本の側は「国際競争力」の名の下に、労働者を切り捨てています。日本・韓国をはじめ世界各地で労働者の生活が「国際競争力」の名の下に破壊されています。ギリシャやスペインでの金融危機も結局は同じことだと思います。資本家の新自由主義の下、FTAやTTPの締結は、多国籍企業に各国市場への一層の「自由」を与え、国内産業を破壊していきます。いまや、ほぼすべての問題の解決が、一つの国だけの運動の発想ではできないのです。ここに、"Think globally, act locally."では足りず、"think & act, globally & locally."が必要とされる由縁です。
私たちは今年11月10日に、NNAA(No Nukes Asia Actions)を東京にて立ち上げました。
http://ermite.just-size.net/nnaa/
この設立総会では、フリージャーナリストの鈴木真奈美さん、もと日立系エンジニアの田中三彦さん、原発メーカーの企業責任を追及しようとする弁護士の島明宏さんの3人が記念講演を行ってくれました。どの講演も、非常に中身の濃い報告で、今後私たちNNAAの基本的な立場を示してくれたものだと考えています。その内容は、朝日新聞デジタルの大久保真紀記者が端的にまとめられ、記事にされています。
http://astand.asahi.com/magazine/wrnational/2012111300003.html
http://www.oklos-che.com/2012/12/web-ronza.html?spref=tw
また、この時の講演記録は、葛飾TV(インターネットTV)の方のご協力で、DVDとしてまとめられました。記念講演のまとめファイルもあります。
さらに、NNAAや私の手元には、台湾RanYU島(少数民族が住む)住民の30年に渉る闘いの照会、モンゴルをウラン採掘と核燃料棒の製造、そして使用済み核燃料核燃料をモンゴルが引き受け埋設するという計画に関する資料もあります。日本の政府・企業は一体となってベトナムへの原発輸出を進めその燃料棒の提供と、使用済み核燃料の引き受け・モンゴルへ送り出すことが疑惑されています。韓国も、UAEなどへの原発輸出と核燃料の引き受け、モンゴルへの埋設など、日本と同様の政策を行うようです。かって日本は、アジアを侵略し、朝鮮(韓)半島や台湾を植民地にしましたが、今や韓国も国策として原発輸出を行い、核汚染を広め、他国を犠牲にするという、かって日本が行った植民地主義と同様の政策を行っています。これに関するモンゴルの現状なども、報告されています。
http://www.oklos-che.com/2012/08/blog-post_3.html
NNAAは、12月18日にリトアニア国民の反対にもかかわらず、リトアニアへの原発輸出を放棄していない日立製作所本社への抗議行動も、リトアニア市民や日本の市民団体と共同して行いました。
http://www.oklos-che.com/2012/12/blog-post_17.html
こうした資料を、日本や韓国の市民が共有していくことがぜひ必要だと思います。また、韓国側からも、釜山の정수희さんの機張郡吉川里などの住民の歴史に関する論文、先週に三陟(サンチョク)、蔚珍(ウルチン)などへ行ってくましたが、多くの資料をいただきました。こういった活動も翻訳して是非とも日本の市民も共有しなければならないと考えています。
原発問題以外にも、アジアの平和創造に向けての活動の資料なども可能な限り共有したいです。韓国では、「脱核新聞」の発行によって、各地域の住民たちの結びつきを強める
活動にも注目しています。
皆さん、日本市民と韓国市民が直接交流するためには、言語の壁があります。私は、日本語を母語としますから、日本語から韓国語への翻訳は非常に苦手です。また、韓国語を母語とする方も、その逆で同様だと思います。そうした私たちがお互いに協力できれば、非常に大きな力を発揮できると思いますがいかがでしょうか?
新しい年を迎えるに当たって、互いに協力していきませんか?
岡田 卓己
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