拝啓 浅岡 川崎危機管理室係長 殿
浅岡さん、ご丁寧な回答をいただきありがとうございます。
これで貴危機管理室からは3回目のご回答をいただいたことになります。浅岡さんからのご回答に対して、さらに私の方から質問をさせていただきさらにそのご回答をいただいて、そこからは超党派の市会議員、有識者、市民運動のみなさんと一緒になって、川崎市の全市的な災害対策に対して寄与させていただきたいと願います。
以下、危機管理室からの回答に対する私の意見・質問は、浅岡さんのご回答の後に付けました。なお、浅岡さんのご回答は、私の質問の要約になっており、抜けているところもありますので、私のブログで公開した内容を参照ください(http://www.oklos-che.com/2012/09/blog-post_21.html
)。
私の肩書は以下のようにさせていただきます。
川崎・市民フォーラムの会 事務局
新しい川崎をつくる市民の会 事務局長
崔 勝久
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原発体制を問うキリスト者ネットワーク 共同代表 崔 様
川崎市危機管理室の浅岡です。
先日9月20日に「川崎市地震被害想定調査の中間取りまとめなどについて」を説明させていただいた時に、御質問に即答できずにペンディングとさせていただいた事項につきまして、回答を送信させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
①国や東京都の採用した地盤モデルを最新の知見として川崎市も取り入れたということであるが、この地盤モデルの根拠は何か。文部科学省で東大の佐藤教授のモデルをアップデートしたものとのことだが、このモデルは学会で発表されたものなのか。国や東京都がそのモデルを使っているとのことだが、川崎市はそれを検証して採用したのか。
川崎直下の地震については、東京湾北部地震と同じく、首都圏付近のフィリピン海プレートと北米プレートの境界で発生する地震を想定しています。平成22年3月に公表した前回の調査では、文部科学省の大都市大震災軽減化特別プロジェクトの成果によるプレートの形状を用いて地震動を計算しておりますが、今回の調査では、文部科学省が首都直下地震防災・減災特別プロジェクトの成果として平成24年3月に発表した内容を最新の知見として採用いたしました。地震動の想定にあたっては、川崎市東日本対策検討部会で学識者による助言をいただきながら設定させていただきました。
(崔)貴回答においても明らかなように、平成22年と24年とでは見解が変わっています。それは地震の発生、震源地、規模などはあくまでも想定であり、新たな事実の発見などにより変更される可能性のある「仮説」だということです。その「仮説」は有史以来の文献及び地震、津波の痕跡、新たな活断層の発見によって構築されています。しかし地震は既存の(発見された)活断層において発生するとは限らないというのは地震学会でも確認されているはずです。そのような事例は沢山あります。
要は、川崎市において最も大きな被害が発生すると思われる、川崎南部(そこは石油コンビナートを中心として工業地帯だからです)に最大の影響を与える震源地を想定した直下型地震が発生した場合(その可能性は否定できないはずです)、どのようになるのかということを私たちは知りたいのです。市の見解は国の見解に従っていますが、さまざまな可能性を検討して川崎独自の見解を出さないと市民の不安に応えることができないという認識のうえで、最悪の可能性を検証する必要があるのではないでしょうか。
②なぜ震源地が東村山市近辺なのか。これまで川崎臨海部に震源地を置くべきと訴えてきたが、それを採用せず、川崎市に被害が一番出る想定とのことであるが、被害が大きいのは臨海部に震源地があった場合となるのではないか。
「東村山市付近」というのは破壊の開始点になります。なお、「東村山市」に特段の意識がある訳ではなく、震源域(地震を起こす範囲の全体)を、川崎市直下を含む地域と設定しております。
地震動については、断層の破壊に伴い、破壊が進む方向で大きくなります。この現象は、実際に阪神淡路の際にも現れていまして、震源(☆の破壊の開始点)は明石海峡の方にありましたが、地震動の大きい地域は、神戸市から芦屋・西宮にかけての地域であり、これは破壊の進む方向が、破壊開始点から東の方向に破壊していったことによります。
今回の調査では、前回の調査でも同じですが、川崎市の特に東部地域に影響を与えるケースを想定しておりまして、震源(☆の破壊の開始点)を西の方に設定し、川崎市の東部に向かって破壊が進む設定としています。また、その時により多くエネルギーを出す範囲のことも考慮して、大きいアスペリティが東側にあるという設定にしております。
(崔)震源地をどこと設定(想定)するのかは、面で捉えるのだからと「特段の意識」なく決めたそうですが、震源地がどこなのかによって揺れの大きさ変わります。浅岡さんのご説明は地震動に関する一般論であり、震源地をどこにするのかで、被害状況が変わる可能性があるということを念頭においていらっしゃいません。想定はあくまでも想定であり、その場合、臨海部に最悪の事態をもたらす想定を提示されないのはいかがなものでしょうか。震源地の位置によってその揺れ、破壊力は石油タンクなどの工業地帯の施設に直接的な影響があるのではないでしょうか。
③川崎直下の地震で、津波はどうなるのか。
上端深さが十数キロもあり、地震規模もM7.3クラスの想定のため、川崎直下の地震では大きな津波の発生はほとんど考えられず、今回の川崎市の津波被害の想定としては、神奈川県が公表している慶長型地震による津波を川崎市域における最大クラスの津波として、対象津波に選定させていただいたところです。
なお、今回の東京都の想定でも、東京湾北部地震による津波は想定しておりません。
(崔)川崎市にとって最悪の被害の想定は、いくつかの地震の連動だと思われます。そのため震源地が川崎南部の臨海部周辺(東京湾南部)で発生し、同時に最も大きな津波を想定するいくつかの地震パターンが連動するという可能性もあります。神奈川県が公表した<「津波浸水予測図」について>(
http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/f360944/ 掲載日2012年6月11日)、及び平成24年6月16日、危機管理室から公表された「川崎市における地震防災対策について)においても、津波が防潮堤を超えたり、多摩川・鶴見川を遡上し川崎市街地に浸水することが、様々な地震のパターンによって示されています。しかしここには地震の連動による津波の影響(可能性)は示されていないのではないでしょうか。
3・11災害直前に作成された川崎市の被害想定を増子室長から説明を受けましたが、そのとき既に市は、津波によって多摩川、鶴見川の遡上による床下浸水などの可能性を明示されていました。しかし3・11地震と同規模、それより大きな地震・津波が来た場合の被害想定はまだ市民に明らかにされていませんね。
④がけ崩れはどうやって調査をするのか。机上でなくて、現地を見ないと被害想定は出せないのではないか。
急傾斜地崩壊による被害については、急傾斜地崩壊の起こりうる箇所ごとに、震度による危険度ランク別崩壊確率及び震度別人家被害率によって想定することを考えております。
(崔)3月に発表された「川崎市地域防災計画」の、「崖崩れが発生するおそれがある傾斜度30度以上で高さが5メートル以上の急傾斜地崩壊危険箇所は506箇所(平成13年度調査)」すべてを調査し、これまで公にされていなかった場所の公表もするということですか、それはいつの予定ですか。
またブログの5で指摘している、高層ビルが受ける長周波による影響についてはどのような見解、対策を考えていらっしゃるのでしょうか、その見解・対策の根拠となる調査結果及び公表時期など具体的なご回答をお願いします。
⑤なぜ市民意見を取り入れる場を設けないのか。パブリックコメントだけでは反映しきれないのは、これまで訴えてきた。
川崎市では、自治基本条例の基本理念に基づいて、より一層、市民の市政への参加を推進するとともに、行政運営の透明性の向上を図ることを目的に、パブリックコメント手続を制度化しております。
地震防災戦略等の各種防災計画の見直しにあたっては、市民の生活にとって重要である政策等の策定となることから、市の共通ルールとして定められているパブリックコメント手続を経て行うことを考えておりますが、より広くより多くのご意見を寄せていただくような工夫に努めていきたいと考えています。
(崔)パブリックコメントの重要性は認識しています。それは国においても原発の即時中止を求める多くの意見があり、そのことが政策決定に大きな影響を与えたからです。しかし川崎市のパブリックコメントに応じるのは140万市民の中で5人前後だと聞いています。パブリックコメントを多くの市民から求めるには、ネットで資料を公開するだけでなく、市民を対象にした地域ごとの説明会が不可欠です。「より広くより多くのご意見を寄せていただくような工夫」とはどのようなものですか。その「工夫」を市側が一方的に決めるのでなく、市民の意見を聞くことがまず先決ではないでしょうか。
市民フォーラムでこの間提案してきた「川崎方式」、すなわち市民、超党派の議員、行政、有識者、企業などが一堂に会して話し合う方法は検討されたのでしょうか。このことの実現を是非、求めます。このように災害の当事者となる人たちが一丸となって取り組まないと、市民が納得のいく、災害を最小に食い止める災害対策は作れないのではないでしょうか。
⑥臨海部の災害想定は誰がやるのか。災害影響評価を実施する業者は誰か。調査項目は何か。
平成18年3月に神奈川県が「神奈川県石油コンビナート等防災アセスメント調査報告書」を発表しております。
災害影響評価は、本市がコンビナート災害時における避難計画作成のため、タンクの火災や爆発等が発生した際の影響範囲を検討するもので、財団法人 消防科学総合センターに調査委託しています。
調査項目は、災害影響の算定・評価、避難時の留意事項などです。
(崔)「調査委託」は依頼者の問題意識に応じて、コンサル会社や研究機関が調査の上データを集め独自の基本ソフトを使って結果をだすものです。市民が災害と思っていることと危機管理室との間に齟齬がないように、コンサル・研究機関に依頼した内容を公開していただけますか。
3・11のときに川崎の石油タンクの内、16基に異常が発見されています。500KL以下の石油タンクは毎年の定期検査をする規制は適用されていません。石油の流出を防止する役目にもなる大型タンクの「屋根」を付けることはすべて実現されていますか。増子室長は市民フォーラムにおいていかなる地震が来ても石油タンクの損傷はないと断言されていましたが、私たちはその説明に疑いをもっています。側方流動、液状化、長周期の影響はアンケート調査でなく、企業の全面的な協力を受けての実地調査なしにはわからないのではないでしょうか。
また各企業が持つ劣化ウランなど危険物の実態や、地震・津波の災害時に市街地にそれらのものが流される危険性はないのか、また一般ゴミと下水道の汚泥の焼却灰は放射線量が高くそのまま臨海部に置かれていますが、これらも市街地や海に流れるのではないかと市民は不安がっています。行政は企業に対して、災害に関係する全面的な協力、情報提示を求めているのでしょうか。
⑦臨海部防災対策につい、神奈川県と連携とのことだが、横浜市とはどうなのか。
必要に応じて、神奈川県や横浜市、大田区等と調整します。
(崔)「必要に応じて」とはどのような意味でしょうか。災害対策は川崎市だけでなりたつわけがありません。すぐにでもそのような協議の場は設定されるべきではないでしょうか。私たちはその場への市民の参加を求めます。
⑧川崎市民にとっては、臨海部の防災対策は生命や生活、財産を守る上で重要な事項。企業からアンケート等をするにしても、根拠がなければ応じない事業所もあるのではないか。
趣旨をご説明して、ご協力を得るよう調整します。
(崔)危機管理室が「調整」するということですか。一定の法的強制力なくして全面的な協力要請は可能なのでしょうか。これは危機管理室の「調整」の問題ではなく、川崎市として災害対策とどのように取り組むのかという問題ですから、市長の判断が必要なのではありませんか。上記6の意見を加味してご回答ください。
⑨L1津波はいつ選定するのか。
国の動向や神奈川県が検討しているL1津波群の調査結果などを踏まえて、港湾局が中心となって検討いたします。なお、神奈川県のL1津波群の調査は11月頃を目途に進めていると伺っております。
(崔)津波の規模とその影響は国ではなく地方自治体が出すようになっていますね。川崎市は政令都市として独自なものをだすのですか、神奈川県の見解を採用するのですか。そのようなことを港湾局が担当することは可能なのでしょうか。その判断は市の定めた有識者に委託するのでしょうが、さまざまな可能性があるのですから市民及び市民が推す有識者を交えて議論すべきではないでしょうか。
ブログの中で指摘した「津波火災」に関するご回答をお願いします。これは3・11の火災発生で初めて明らかにされた事態です。東北地方よりも、川崎のような市街地の方が「津波火災」とされる自動車火災の影響は大きいと思われます。このことで、これまでの避難所の指定とそこへの避難による災害対策は見直す必要がでてきたと思われますが、危機管理室はどのように考えておられますか。有識者を招いての学習会を一緒にやりませんか。
また百年単位の地震を想定して、防潮堤などハードには基本的に手を加えないで「自助」「共助」などによるソフト対策が川崎市の中心的な考え方ですが、今回の3・11のように千年単位で起こる地震・津波対策は放棄されています。防潮堤が高ければいいというものではないでしょうから、これも市民と一緒になって対応策を考える必要があると思いますが、いかがでしょうか。
⑩臨海部で火災があった場合の指揮系統はだれがとるのか。消防なのか。それとも市長なのか。
石油コンビナート等災害防止法第29条及び神奈川県石油コンビナート等防災計画に基づき、市長は現地防災本部を設置して、防災活動の実施について防災本部の事務の一部を行うこととなります。
「一部」では全容の把握、指示はできませんね。重要なのは人命です。道路が封鎖され、船の運行もできず、救助用ヘリも飛べない事態になったとき、臨海部で働く人たちの救助は誰が考え、責任をもつのですか。国ですか、県ですか、政令指定都市である川崎市ですか。この事態を想定した指揮系統、責任体制が曖昧なままでは人名の救助はできないのではありませんか。
⑪追加質問
耐震性のある一定の基準に沿う新しい建物の他に、川崎にはそうでない古いビル、また古い木造の建物が多くあります。これらは直接的に地震の揺れに耐えられない可能性が高く、また「津波火災」の影響も受けやすいと考えられます。「自助」「共助」を強調する川崎市の災害対策案では、これらの建物をどのようにされるのか見えてきません。公共物の補強と合わせそれらの需要を川崎市の業者が担うようになれば「内需」につながるのではないでしょうか。どのようにされるつもりなのか、具体案をご提示ください。
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