ブログの読者から送られてきた、韓洪九氏の講演抄録を掲載させていただきます。
11月11日11時から日韓蒙3ヶ国同時記者会見の席上で、韓洪九氏が「反核エネルギー大学教授の集まり」の共同代表の一人として挨拶されている映像が送られてきました。現在はまだ100名くらいのとのことですが、イデオロギーや立場性を克服して、ただ「反核エネルギー」一点で合意できれば一緒にやっていくという幅広い戦線を韓国でも実現していただきたいと願います。なお、私たちに送ってきた彼らの宣言文は、「原発体制を問うキリスト者ネットワーク」CNFE)HPに掲載されています。
http://wwwb.dcns.ne.jp/~yaginuma/
またこの韓国の大学教授の集いに呼応して、日本側の大学教授を含めた幅広い結集を韓国サイドは求めています。来年2月にはドイツ、フランスに行き、現地で反核エネルギーの対策の実態を調べてくるそうですが、それに参加する日本の学者の参加を求めていました。ご希望の方は私の方まで連絡ください。
東京経済大学での韓洪九先生の講演
「韓国からみたフクシマ」2011.11.8
原子力マフィア
11月7日までの3日間、平和博物館のメンバー(事務局長、写真家など)、徐京植先生、高橋哲哉先生と共にフクシマを訪れてきた。
韓国の詩人イ・サンファ(李尚火)がうたった「忘れられた地、奪われた地にも春は来るのか」は侵略に対しての詩だが、フクシマでもこの詩が浮かんできた。日本では「原子力村」という優しい呼び方をするらしいが、韓国では「原子力マフィア」と呼ぶ。この原子力マフィアに対して、私たちは共にどう抵抗すべきなのか。
原発利益集団による原発拡大
韓国の李明博大統領はフクシマの事故のあと、「原発がだめだというのは人類が技術の面で後退すること」「原発ルネッサンスを守る」と言っている。
彼は現代建設の社長として、現在韓国で稼動している21基の原発のうち12基の原発建設に関わり、業界の副代表を務めたこともある人物だ。
原子力マフィアとは、研究費を求める学者・研究者、巨大受注を当て込む産業界、後援資金を求める政治家、官僚、多額の広告収入のあるマスコミ、リスクなく利益を保証される金融業界など、原発や核よって大きな利益を得る集団のこと。
彼らは2024年までに35基、2034年には40基の原発を韓国に建設し、エネルギー中の比重を59%に拡大しようとしている。
現在5基の原発をもつ古里(コリ)は300万人都市の釜山から30キロ圏内、6基をもつ月城(ウォルソン)は100万人都市のウルサンから30キロ圏内と人口密集地に近く、日本以上に事故のリスクは高い。
韓国は中東地域への原発輸出に成功し、最近はインドとも契約を結び、現在はトルコと協議中だ。つい先ごろ大地震のあったトルコに原発を輸出しようとしている。
こうした輸出では、核廃棄物を韓国が引き取ること、保安のための特殊部隊の派遣まで条件として契約を獲得している。李明博は単に原子力マフィアに群がる政治家ではなく、マフィアの中心、マフィアそのものと言える。
世界で建設中の原発2分の1は東アジア
現在、世界で建設中の原発の2分の1は東アジアにあり、核兵器も含めて核の密集地帯となっている。しかも東アジアには国家が国民に犠牲を強いるナショナリズムの強い国が多い。
フクシマ原発事故があったとき、韓国では大手新聞が
「済州島に降った雨水を毎日飲み続けてもレントゲン撮影より少ない」
「放射能の不安をあおるのは不純分子」
などと安全キャンペーンをはった。
国民の不安は高まっていたが、その後マスコミの報道はいっさい姿を消した。
核不感症の国
ヒロシマ・ナガサキの放射能被害調査の中で、日本人は1の単位まで出されているが、朝鮮人の被害者数は〇万人という大雑把な数字で、一度も正確に調査していないことが明らか。しかも被爆者のうち、朝鮮人の場合は半数が爆死者だ。
『息子の名前で』というドキュメンタリー映画は被爆2世の金亨律さんの記録だが、世界的にも被爆の遺伝は証明されておらず、彼は認定されないまま数年前に亡くなった。
韓国の反核デモの主流は 極右団体。金正日に核を持たせたくないという反核だ。
しかし統一されたら北の核兵器を所有できるという考え方さえあり、一般的にも「原爆のおかげで韓国が解放された」という認識で、国民の半数以上が核開発に賛成意見をもつ核不感症の国だ。
核廃棄物処理場に反対する住民運動
しかし韓国でも核(主に廃棄物処理場)に反対する住民の運動は行なわれてきた。
1990年には安眠島(韓国で4番目に大きな島)に廃棄物処理場建設計画がもちあがり、住民17000人の島で15000人の反対集会が開かれた。ここには8000人もの警官が投入され弾圧されたが、住民が勝利した。
1994年には住民が9人しかいない堀業島(仁川)を選んで建設計画がもちあがったが、隣の島や仁川市民の反対と、活断層が見つかったために白紙になった。
2003年には扶安島に建設計画がおこり、7万人の人口の町に6千人の警官が常駐するという異常な体制の下、高額の移転保証金で一時は決まりそうだったが、移転保証金が一括現金で支払われないことなどから反対が高まり、住民投票で85%の反対となり白紙になった。
こうした経過を受けて政府は、2005年には月城(慶州)、群山、ヨンドク、浦項(ポハン)の4ヶ所で住民投票を行ない、賛成率の最も高かったところに処理場を建設することを決め、その結果、慶州に決定した。
2005年はノ・ムヒョン政権だったが、民主政権であってもエネルギー政策はマフィアの手中にあったということだ。
しかし建設が始まった慶州の処理場は、世界でも珍しい新羅時代の海中墓地の近くで、活断層が見つかったうえ、1日20トンの地下水が噴出し問題となっている。こうしたことや、フクシマ事故の不安から、今年4月に行なわれた地方補選で、東海岸では原発誘致派ではない候補者を市民は支持し勝利した。
関東大震災ーフクシマ
関東大震災で朝鮮人の大虐殺があったことは皆さんご存知だが、それも含めて、大震災によって大正デモクラシーが終焉を迎え、軍国主義の道に突入したと考えられる。
フクシマを訪れてみて、人々の疲労感を感じた。
夏に訪れた徐京植先生も、その時と比べても疲労感が強まっていると言われていた。
被害者の疲労感や最下層労働者の犠牲は原発マフィアの解体なしにはなくならないし、それを許しておくことはファシズムへの道だ。
政府発表を疑うのは非国民?
韓国では天安艦事件の犠牲者を「国家はあなたたちを忘れない」と犠牲を美化しているが、捜索のときに亡くなった漁民たちについては一切触れていない。
また、疑問死事件を多く扱ってきた民主的弁護士が憲法裁判官候補となったが、国会で「政府発表を信じるか」という質問に「信じたいが、法を守る者としては1つでも疑わしい部分があればそうは言えない」と発言したことが問題となっている。
このように「天安艦事件(の政府発表)を疑うのは非国民だ」という空気が作られているし、2013年までの李明博政権終了までに原子力政策のほとんどのシナリオを決めてしまおうとしている。
脱核問題の争点化
与党の大統領候補としてあがっている4人は全員が原子力推進派だ。
来年4月に行なわれる国会議員選挙、12月の大統領選挙で、脱核問題を争点化できるかが、東アジアの平和にとっても重要になってくるだろう。
我々は6月にエネルギー代替フォーラムを開催し、今回帰国したらすぐに脱核教授会合を発足させる。
来年3月に開かれる核安保サミットと同じ時期に世界ヒバクシャ大会が開催される。そのときに、フクシマを取り上げたいと考えている。お金がなく苦労しているので、ぜひご協力いただきたい。
文責 中川 緑(小見出しは、紹介者寺島)
他に、韓洪九先生の発言はユーチューブにあります。
0813 ヤスクニキャンドル行動 2011
http://www.youtube.com/watch?v=NGl2-iP8KWQ
yatasan1948 さんが 2011/08/22 にアップロード
8月13日 「平和の灯を!ヤスクニの闇へ」キャンドル行動2011
集会妨害行動をする「街宣車」 シンポジウムでの潘朝成さん、韓洪九さんの発言
閉会まえの韓国闘争歌の合唱 李泳采さんのキャンドルデモの呼びかけ 集会に反対する「在特会」の行動 キャンドルデモなどの、ダイジェストビデオです。
http://toyata.blog.ocn.ne.jp/
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