2009年10月28日水曜日

『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』を読んで

昨夜、NHKの「爆笑問題」があり、ゲストは、『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』(朝日出版社)の作者、加藤陽子さんでした。

中学生を相手に5回にわたり、日清戦争から太平洋戦争にいたる、日本の近現代史を講義したものを本にしたもので、「歴史的なものの見方」について記しています。豊富な知識を縦横に駆使しながら、学生を相手に丁寧に応えているので、私は大変面白く読みました。 特に、「絵・書き文字」は印象的です。下手うまで、まことに適確です。

歴史的な人物としては名前くらいは知っている人物の手記や著作を要領よく適切に引用しているので、歴史的出来事の背景がよく見えるようになっています。

戦争は引き起こされる、それを国民は自ら賛成するように「教育」、利益誘導されるので、後出しで簡単な批判はできないこと、しかし同じことが国民国家によっていつでも起こりうることが説得力ある形で書かれています。9・11テロと日中戦争の類似点、相手を「一種の討匪戦」と見ていたことを冒頭に記し、現在の問題を過去の出来事から見つめなおすという視点は、普通は説得力がないのですが、この本はその点でも成功しています。

自由社の中学歴史教科書が、横浜の一部の地区で今年採用され、2年後には全ての地区に拡大されることがほぼ決定的と報告しました。その教科書では、日本の東南アジア・太平洋地域への侵略は、実は西洋帝国主義からの解放戦争であった、日本の軍隊は「解放軍」として受け入れられたという記述が、日本の軍人を歓迎する現地の人の写真入りであります。

この本では、直接的に「つくる会」のような史観を批判していませんが、言外に、明確に批判していると、私は読みました。

満州に移住するように利益誘導する政策があったので、多くの貧しい農村から満州に行くようになったという背景の説明もあります。今生きる私たちはこのような国家の「誘惑」を直視して反抗できるのか、戦争を許さない闘いは、そのような足下の問題から始まるということも示唆しています。

爆笑問題の大田光は、加藤さんとの話で、最後に天皇や三種の神器に触れ、何もそんなことに関心を示さない若い人が、最後に伊勢神宮をはじめ、「日本の本質」に無意識のところで強く惹かれているということに触れていましたが、それこそ、ナショナル・アイデンティティの問題であり、そこに強く反発しながらも、同じ原理に囚われてきた「在日」のあり方に関係すると、私は勝手にうなづいてしまいました。

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