原佑介著『禁じられた郷愁ー小林勝の戦後文学と朝鮮』(2019 新幹社)を読みました。
本人も後書きで故西川長男さんのことを書いていますが、私は研究者でもなんでもないのですが、西川さんのお誘いがあって、西川さんの京都のご自宅での研究会に何度か参加していました。原さんの新著の構想はそのときに聞いたことがありました。ようやくそれがさらに発展して『禁じらた郷愁ー小林勝の戦後文学と朝鮮』という新著に結実したようでうれしく読みました。
植民地朝鮮で生まれ育ち「内地」に戻って書き始めた小林勝の足跡をたどりながら、彼の内面を当時の歴史状況のなかで読み解きます。単に作品の解説にとどまらず、小林が朝鮮に「こだわり」続けながら、「故郷を懐かしむ」ことをあえて拒んだのはなぜなのか、それは小林が植民地主義というものを根底から批判しようとした彼の生き方からくるものとして原はとらえています。
私の家族が親しく交わった故呉林俊のことにも触れており、彼の豪快なふるまいのことも思い出しました。繊細な絵をたしなむ呉林俊を家族で歓待しとても喜んでくれました。懐かしいです。
原は昨今の「ヘイトスピーチ」の目的は「憎悪の共同体」すなわち「日本という国を、朝鮮人が存在せず、朝鮮人に対する全体的で例外のない憎悪と侮辱意識で完全にみたされた国家に変革することである」とみなし、それは1923年の関東大震災における「善良なる市民による朝鮮人大虐殺と同じで「時が止まったままであるよう」だとらえます。そして「ヘイトスピーチ」に群がる「善良なる市民」と同一化します。原はそれを「じつに近代日本のナショナリステイックな自己認識の核心に属する事柄」だと認識します。
原の関東大震災の時の「善良な市民」とヘイトスピーチに群がる「善良な市民」との同一化よりも、私は今回の日韓関係の悪化において文大統領の責任と思う日本人が95%にも達したという報道に「憎悪の共同体」を見たように思います。
明日から9日まで韓国人被爆者が多く住む陜川(ハプチョン)でフォーラムをもちます。日本からは私を含めて13名参加しますが、いま最も重要な両国の民間同士の話し合いのなかでどのような地平が見えてくるのか、楽しみです。
私は残りの5%です。文大統領のせいだとは思っていません。彼が尊敬していた廬武鉉大統領が考えていた、日本とのきちんとした関係を実現しようと頑張っているのだと思います。今回のことは、あくまでも安倍氏の感情から発したことだと思っています。残念です。上手く表現できなくてすみません。
返信削除大石さんへ
返信削除コメントをいただきありがとうございました。
日韓関係が悪化しているますが、このようなときこそ両国の市民が会ってよく話うあうことが必要だと思います。私たちは毎年、韓国人被爆者が多く住むハプチョンで8月6日、「反核平和連帯」フォーラムを開催しています。今年の参加者で作成した声明文をお読みいただければと思います。http://oklos-che.blogspot.com/2019/08/blog-post_14.html
来年、大石さんもご一緒されませんか。