ジャーナリストの伊藤孝司さんの見解の紹介
週刊金曜日の今週号(今日、発売)に伊藤孝司さんが「金曜アンテナ」として「日朝交渉は後退必死ー関空が朝鮮高校生徒の土産を没収」という短いが、的確な意見を書いています。
また「朝鮮から戻った人への荷物検査は、日本の独自制裁の一つとして実施されてきた。経済産業省から依頼を財務省の機関である税関は、外国為替及び外国貿易法に基づく朝鮮からの「輸出入禁止」の対象になるかを検査。これは、朝鮮訪問者への嫌がらせでしかない。」と結論づけています。
このニュースを平壌で知った伊藤さんは現地産の菓子をホテルで購入して帰国、空港でその旨申請したところ、案の定、没収されたとか。今回の土産品の没収の件は本国の大いなる反発を招き、伊藤さんは、この件は「日朝関係を後退させ」「生徒たちの心に一生消えない傷をつけた」と断じています。
私は伊藤さんの見解に賛成で、関空の税関は法に従って経済制裁によって北朝鮮からの輸入禁止品を没収しただけで、それは正当な行為であるという多くの、北朝鮮のミサイル、核実験、拉致問題から判断して北朝鮮には制裁をするべきだという意見は、日本の植民地支配の清算という歴史的課題を全く念頭に置かない歪んだ愛国主義的な内容だとおもいます。たとえば、自民党政調会長代理の片山さつき参院議員は、税関の正当性を主張しています。片山氏は「日本は、法と正義のもとに北朝鮮に経済制裁を主張し、「土産品も、生徒への嫌がらせではなく、経済制裁で持ち込みが禁止された輸入品ゆえに、法令に基づき押収した」と反論しています。(ZAKZAK 夕刊フジ https://www.zakzak.co.jp/soc/news/180711/soc1807110004-n1.html)
関空に直接連絡をとった知人の意見
一方、私のFBに直接関空の税関に連絡をした、以下のような知人からの投稿がありました。
<私が関空税関の広報室に問い合わせたところ、朝鮮民主主義人民共和国の製品の持ち込みは、対朝鮮独自制裁によって全面的に禁止されており、今回の土産物の没収も経産省の指示に従って行ったものであるとのことでした。
つまり、このような事態は全面禁輸の対象となっている朝鮮からの入国以外では考えられず、上記の「北朝鮮だけ差別したことではない」との説明と矛盾しているようです。また、『任意放棄』は、もし放棄しないと税関から高額の保管料を請求されることになりますので、事実上の強制と言っていいと思います。>
つまり、このような事態は全面禁輸の対象となっている朝鮮からの入国以外では考えられず、上記の「北朝鮮だけ差別したことではない」との説明と矛盾しているようです。また、『任意放棄』は、もし放棄しないと税関から高額の保管料を請求されることになりますので、事実上の強制と言っていいと思います。>
経済産業省の北朝鮮への対応処置
http://www.meti.go.jp/press/2017/04/20170407001/20170407001.html
経済産業省は、「外国為替及び外国貿易法に基づく北朝鮮に係る対応措置について」(平成29年4月7日閣議決定)に基づき、北朝鮮を仕向地とする全ての貨物の輸出禁止及び北朝鮮を原産地又は船積地域とする全ての貨物の輸入禁止等の措置を引き続き講ずることとしました。
措置の内容:
- 北朝鮮を仕向地とする全ての貨物について、経済産業大臣の輸出承認義務を課すことにより、輸出を禁止します(関係条文:外国為替及び外国貿易法(以下「外為法」という。)第48条第3項)。
- 北朝鮮を原産地又は船積地域とする全ての貨物について、経済産業大臣の輸入承認義務を課すことにより、輸入を禁止します(関係条文:外為法第52条)。
- これらの措置に万全を期すため、次の取引等を禁止します。
- 北朝鮮と第三国との間の移動を伴う貨物の売買、貸借又は贈与に関する取引(仲介貿易取引)(関係条文:外為法第25条第6項)
- 輸入承認を受けずに行う原産地又は船積地域が北朝鮮である貨物の輸入代金の支払(関係条文:外為法第16条第5項)
- 人道目的等に該当するものについては、措置の例外として取り扱うものとします。
措置の期間:
上記の措置は、平成29年4月14日から平成31年4月13日までの間、実施します。
日本政府の意図は何か?
税関も税関を支持する人も、今回の没収事件は一般的な検疫上の問題ではなく、日本政府の北朝鮮へのミサイル・核実験・拉致問題に対する制裁措置であることは認めています。つまり日本政府は国連安全保障理事会での制裁決議による制裁を根拠に、日本政府独自の制裁をしたと判断されます。国連決議は、石油の輸出禁止の他、「北朝鮮からの食品、機械、電気機器、木材の輸入と北朝鮮への産業機械や運搬用車両の輸出を全面的に禁止」(国連安保理による制裁措置 決議第2379号: 2017年12月採択)とされているからです。
つまり、国連決議はあくまでも経済制裁として北朝鮮との輸出入を禁じたのですが、日本政府はそれを拡大解釈して個人のお土産まで没収してしまったのです。しかし税関の「没収行為」は経済省の指示であったことは確認されていますが、すべての空港で税関が同じ措置をしているわけではなく、従来どおり、朝鮮学校の生徒のお土産品はそのまま通していることから判断して、今回の関空の「没収行為」は、日本政府が北朝鮮に対して南北首脳会談、米朝首脳会談のあと、日朝首脳会談が予定される中で、友好の雰囲気に敢えて水を指し、拉致問題などで北朝鮮を批判する意思を示し、北朝鮮の様子を伺ったのではないかと思われます。
私の意見
私の意見は、伊藤さんに同調するのですが、この件は「日朝関係を後退させ」「生徒たちの心に一生消えない傷をつけた」ことは間違いありません。しかし日朝関係に決定的な悪影響を与えたというより、もちろん、金正恩委員長や北朝鮮のマスコミは厳しく日本政府を批判しています。それを覚悟した上で、いわば確信犯的に、小さな規模で、朝鮮学校の学生の共和国からのお土産を没収することで共和国への国連および日本独自の経済制裁は続いていることを誇示したものと思われます。しかしそれは日本政府の「嫌がらせ」の範囲のもので、やらずものがな、すなわちやる必要のないものであったと考えます。日本政府は本質的に明確な歴史観のうえで、植民地主義の清算を訴え、日朝平壌宣言に基づき北朝鮮との国交樹立を目指す、と言うべきであったのです。そして次の課題は日朝首脳会談の開催です。これも日本政府は小賢しい策略をせず、正面から提示すべきでしょう。
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