2018年6月20日水曜日

朝鮮大学での講演会「対決から平和へー今後の朝鮮半島のゆくえ」

6月19日(火)、朝鮮大学校で「対決から平和へー今後の朝鮮半島のゆくえー」という講演&討論会が持たれました。JR国分寺駅からバスで20分のところにあるこの大学は、美濃部亮吉東京都知事が昭和43年(1968年)に承認し建設されたものです。当時、革新首長として、神奈川知事、川崎市長とともに美濃部都知事が活躍していた時期です。在日の人権が保障される政策はすべてこの時期からはじまったのです。
★朝鮮大学校について
朝鮮大学校は共和国の独立と解放後の在日の思いで続けられた民族教育の頂点にたつものであると言って過言ではないでしょう。その一貫教育の中から巣立った多くの在日が民族の自尊心を持ち日本社会の中で生きてきたことを考えると、その民族学校及び朝鮮大学の存在の意義はいくら高く評価してもしきれるものではないと思います。
民族学校の問題点を指摘する本を私なりに読んできましたし、問題がそれなりにあることは事実でしょう。私自身は在日の差別問題に半世紀にわたり関わり、西川長夫の国民国家批判を学び国民国家は止揚されていかなければならないと考えていますが、しかし現にある差別的、閉鎖的な日本社会の中にある民族学校の存在意義は高く評価されべきものであると思います。

★浅井基文氏の講演
元広島平和研究所所長の浅井基文氏の講演中です。氏は3ページにわたる詳細なレジュメを準備され、以下の内容を40分で話されました。
・核デタランス(抑止力)の構築が可能になった共和国の動き。
・トランプと文在寅、金正恩という役者が偶然揃って歴史が進展した。影の主役は中国。
・米朝は相互信頼に掛けた。
・CVIGとCVID(体制保証と非核化)。トランプ政権中に短期間で米韓関係の進展を進めると北は判断。
・朝米宣言は朝鮮半島の非核化がターゲット。
・アメリカの韓国に対する「核の傘」、THAADの処理は課題として再燃する。
・安倍外交は時代錯誤。アメリカ依存。日朝首脳会談を提唱せざるを得ない苦しい立場。パワーポリッチクスの古い思考(北脅威論)。
・日本の可能性(米国に依存しない、世界3位の経済力の活用。朝鮮半島に対する歴史認識を変える、日本国家の主権者としての過去の犯罪を償う責任。安倍政権を批判しそれに代わる新しい主権者の誕生)

★討論
朝鮮大学の崔勇海教授の司会で3人の討論者が発題し、相互の討論を経て、会場からの質問を受ける形式で2時間、内容の濃い討論であった。
討論者
金志永(朝鮮新報社編集局)
朴正鎮(韓国の留学生、津田塾大学准教授)
李柄輝(朝鮮大学校准教授

発題、討論内容の要旨
会場はほぼ満席。
・共和国に対するトランプの決定した政策は、アメリカの議会の中では意見が分かれる。
・共和国は米国との関係を樹立しても親米国家になることはない。朝米関係が中心になるべき。
・トランプはアメリカの国益を重視する。
・金正恩は国内の矛盾を克服できるのか→国内は勝ったと思っている。
・和解に向けて金正恩のリーダーシップが発揮されている。
・北の専制政治と核開発は、米国の70年にわたる攻撃に備えるためにはなくてならないものであった。
・在日米軍(国連軍の看板) 国連憲章7条に基づいてない。実態は米軍。日本の基地を使うため。
・米朝宣言によってはじまる朝鮮戦争の終結によって日本の負担、軍事化は進む。
・駐韓米軍のあり方。国連司令部はどうするのか。不安感が高まる。

李柄輝:
・脱冷戦が重要。
・米朝の共同作業。平和の中で非核化が問われる。
・韓国の非核化は南に核がなくても米の軍事資産(グアムや日本における軍事基地など)によって平壌は瞬時に核攻撃を受ける危険性がある。
・米国のネオコンの巻き返しの恐れ。
・朝日新聞社の冷戦構造的な発言(6月17日の社説)。
・南北朝鮮は統一のパートナーでありながら敵対する矛盾した関係

金志永:
・今回の宣言には国名がなく、首脳同士の名前が明記されたもの。
・軍事演習中止のトランプの発言の意図。両首脳の共同作業の第一歩。
朴正鎮:
・北は核兵器をなくしてもアメリカは核兵器を持ち続ける。
・アメリカの演習は東アジアの全体の問題。

★板門店宣言について
金志永 
・米朝関係はスピードを上げる約束。万里馬スピード(千里馬の10倍)。
・米朝宣言第3項、南北の合意(板門店宣言)をトランプが支持
★朝日関係について
朴正鎮:
・日朝首脳会談は拉致問題の解決につながるのか。
日本政府の拉致問題解決の主張は1)共同宣言で正常化が言及されるべき。2)北朝鮮の再調査に日本外務省が参加すべき。3)責任者の日本国民が納得するか、日本は真相究明、被害者の全員帰国、責任者の処罰を要求する。これは金正恩の委員長の処罰につながる主張であり、「拉致問題」の再定義が必要。
・2014年のストックホルム会議で拉致問題の調査の結果が出されたが、日本側は受け入れなかった。
・米朝首脳会談の前に中国とロシアとの協議があったのではないか。

★金正恩が訪中した意図(3ヶ月で3回の訪中)
・こういう展開は続くと思われる。
・米朝関係は中国、ロシア、日本を巻き込んだ国際問題になる。
・米朝宣言により日米安全保障条約の存在理由が問われるが、17日の朝日新聞のように、その流れを見直す勢力が日本側に見られない。
・国連憲章10条、国連が認めるという項(前段)。どっちからの提案でなくても、国連軍の必要がなくなったと国連が状況した場合のことは想定、議論もされていない(会場発言)。

今後の情勢
・東京オリンピックの時に全ての同胞が歓迎する状況になって迎えたい。
・共和国では鉄道、ガス、電力のインフラが問題になっている。インフラの整備は進み、地政学的な条件が良い方向に向かう。周辺の大国は既に積極的に関わりをもちはじめている。
・北は日本のお金を当てにしているわけではない(植民地支配の清算のためにお金は日本の歴史的な課題で別問題)。日本のインフラ投資への参加は日本にとっても必要不可欠。
・朝鮮半島の秩序再編は進む。キーパーソンは金正恩になっている。
・日朝関係の重要性が重視されていない。日本は平和に貢献できるのではないか。戦略的な思考が必要。
・日本を蚊帳の外に置いてはいけない。
・東アジアビジョンが安倍には見えない。

★浅井氏のまとめ
1)トランプに展望、戦略はない。逆にトランプがついてくる案を提示すべき。
2)中国の習主席は金委員長に対米政策の方向性を示した。
3)安倍批判の酷さ、安倍を批判しきれない日本国民の弱さ(明るい展望は持てない)。
4)日本は自立的な対応ができない。

文責:崔 勝久

2 件のコメント:

  1. 1.安倍内閣では対応できない。また、金委員長も相手にしない。
    2.朝鮮・韓国人に対する差別意識を捨て、尊敬の念を以って対応できる内閣が出現できなけ れば、日本のみ疎外されることになる。
    3.日本は拉致問題の前に、植民地被害の責任を認めなければならない。

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  2. Unknown氏の意見に賛同します。そのうえで私は、日本政府の植民地支配の清算を明確にさせるべきだと考えます。①朝鮮民主主義人民共和国との国交樹立、賠償金の支払い ②慰安婦問題の解決(日本政府の「自主的な」ハルモニへの謝罪)、③被爆者問題の解決(日本政府の和解解消の撤回、共和国にいる被爆者を日本に招き治療を受けさせる)、④日本にある朝鮮学校への差別を全面的に撤回する(援助金の支払い)

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