2016年5月19日木曜日

高史明の『月愛三昧ー親鸞に聞く』を読んでー在日を超える思想を学ぶ

高史明の『月愛三昧ー親鸞に聞く』(大月書店 2010)を読みました。900ページにもなる、5年をかけた書いた本だそうです。私は高史明は、「在日の枠を超えた」と思います。これまでの在日作家の金時鐘、金石範、李恢成、それに学者の徐京植などの歴史観、発想とはまったく異なる域に達していると感じました。
愛する息子の自死を長年にわたり考え続け、自らの存在の罪であること、無明であることを深く見つめる思想家です。しかしそのとらえ方を宗教の枠の中に囲い込まず、自らの罪なる存在と日本社会の罪を同時にとらえ返すという稀有な思索を深めていることに驚いています。その思想は知識・言語を介する人間存在の本質にまで及び、「知識の知恵」がもたらす近代の根本問題、および日本の歴史の実態を解析するのです。その思索の深さと的確さにただ驚き夢中になって読み終えました。
彼の本を読んでいて、日本の天皇を頭とする無責任体制の国体なるものがどのような系譜をたどって現在に至ったのか、知りました。戦後日本の「平和と民主主義」がいかに日本的朱子学の流れを継ぐものであるのか、本居宣長、山崎闇斎、福沢諭吉から小林秀雄につながり、敗戦の詔書に至るその闇の部分を親鸞の思想を軸にして解き明かす思索から多くを学びました。
あの高橋哲哉が、高史明との対談の(『いのちと責任』大月書店)冒頭で、娘さんが統合失調症を10年わずらっており、どうしてそうなったのかわからない、娘のことがわからない、研究者を辞めようと思ったという発言をしているのも、『愛月三昧』に圧倒されたからだと思います。日本の植民地支配の責任を問い原発体制との闘いを進めるためには是非読んでおきたい本だと思います。

この高史明の『月愛三昧』の紹介をしたところ、以下のようなコメントが送られてきました。

所蔵していますが、あまりの分厚さに気圧されて、未読のままです。崔さんのレビューをみて、これは絶対読まなくてはと、改めて思いました。ありがとうございます。

 私と同じ小平に住んでおられて、真史君の告別式や1周忌には行かせて頂いたもものです(娘は保育園の後輩)。未だ読んでいませんでした。25日済州島から帰国したらすぐ読みにかかります!

初めて知りました。ちょうど最近小説の親鸞を読んだところなので、読んでみたいととても思います。



私もこの高史明の分厚い本を読みました。この崔先生の素晴らしい書評を読み学びありがと   うございま  す。わたしも数年前、高橋哲哉先生の「いのちの責任」の読書会の機会があり、     お二人が参加して下さり読  みました。日本の歴史の闇に視点を合わせて一気に読ませる内   容で薄学の私にも迫るものがありました。  ここに崔先生の視点に学びました。止められない   むやみな日本の、原発政策の根底の意識を読み解くもの  があるとおもいます。闇に光を当て  明らかにする重い課題が、原発メーカー訴訟にあるとおもいます。

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