2015年4月24日金曜日

熊本一規氏の『電力改革と脱原発』を読むー(その1)原発をベースロード電源にする誤り

熊本氏は著作の中で大きく、三つの問題をとりあげています。ひとつは、原発を「重要なベースロード(負荷)電源」と位置づける日本政府の方針に対して、原発をそもそも「ベースドーロ」電源とすることが間違っているということ、二つ目は、電力システムの改革によって、原発電気の不買運動による原発事業者を潰す市民運動を起こすことができるということ、三つ目が、廃棄物・リサイクルにおける放射能廃棄物の恣意的な基準値の設定と実効性のない法律の改正によって、放射能汚染を防ぐことができないようにしている実態を明らかにしています。

ベースロード電源、エネルギーミックスとは何か
電力需要は大きくベース、ミドル、ピークの三種に分けられ、ベースは基盤を意味し、ロードは負荷を意味します。
ベースロード電源とは、「一年中存在する基盤部分の重要」でありそれにふさわしい電源のことを意味し、「発電(運転)コストが、低廉で、安定的に発電することができ昼夜を問わず継続的にに稼働できる電源」とされています。他にピークの需要に応じたピーク電源、ベースとピークの中間の需要に応じたミドル電源があります。

本日の朝日新聞のトップ記事は、「温室ガス削減     「25%程度」」「2030年目標 政府原案提出へ」「電源 原発20-22%」という見出しで飾られています。温室ガスの削減率が欧米に比して低いという指摘は朝日の2面でなされています。しかしこの数字は、電源構成(エネルギーミックス)、即ち、二酸化炭素排出量はどのエネルギーを使うかということと関連するので、ここでエネルギーミックスの中核として原発を20-22%と設定したということは、原発をベースロード電源とするという方針を決定したということになります。

熊本さんの論理は簡単です。中学生レベルの数学を活用しながら、石炭、天然ガス、原子力等の設備利用率と発電原価を縦軸、横軸にしながら、それぞれ曲線を描き、設備利用率によって発電原価は変わるということを明確にします。即ち、原発の電気料金が安いということは一概には言えないということなのです。

電源のベストミックス論とは何か
政府のいう「原発は重要なベースロード電源」は「電源のベストミックス論」と関係します。「各種電源をそれぞれに適した負荷に当てて、全体として効率のよい電源の組合わせを実現するという考えが「電源のベストミックス論」なのですが、そもそも「設備利用率の大きさによって安い電源は変わるのであり、設備利用率如何にかかわらず安い電源など存在しない」のです。

原発はベースロード電源としてしか使えないものの、実は高値のためベースロード電源としては失格
優れた電源は、需要に応じて出力調整が可能なものです。しかしそういう意味では、原発は運転し続けるしかなく、敢えて言うと、ベースロード電源としてしか使うことができません。検査のための一定期間の運転停止が不可避で、一定規模の地震が起これば運転は停止される日本の原発の設備利用率は、福島事故前までは直近の5年平均で64.7%、事故後の直近5年平均で47.1%にしかなりません。これはフィンランドや韓国の90%台に比べるとはるかに高くつく代物なのです。従って、原発はベースロード電源として失格であると、熊本さんは断言します。

日本マスメディヤは政府の真実を追求し、政府の嘘を暴かない
熊本説によると、政府は完全に嘘をついていることになります。しかし各マスコミは、政府のいう「ベストミックス論」と「ベースロード電源」の根本的な問題を明らかにしません。日本のエネルギー政策の根底にある嘘を暴き批判しない限り、単なる政府発表の数字を報道するだけで、真実を伝えることにはならないのです。

日本政府の究極の目的は、潜在的核武装
政府が原子力を「準国産エネルギー」と位置づけるのは、核燃料サイクルが実現されることを前提にしているのですが、そもそも日本で使用済み核燃料の最終処分地として直接処分(核ゴミをカプセルの中に入れ地下深く埋蔵)することを承諾する地域があるのか私には疑問です。私が日米モンゴル間で秘密契約を結び、ウランの採掘、輸出、核ゴミの輸入、砂漠に埋蔵しようというCFS構想に注目する所以です。
モンゴル国で進むウラン鉱山開発と潜む核廃棄物処分場建設ー今岡良子

http://oklos-che.blogspot.jp/2014/08/blog-post_3.html

日本政府が核燃料のサイクルの鍵になる再処理の道に固執するのは、原子力をエネルギー問題として扱い、安い、二酸化炭素を出さないなどと言いながら、その究極の目的として、高速増殖炉を使い再処理して得られるプルトニウムを利用した核武装(潜在的核武装)にあるということも最後に触れられています。

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