2015年4月20日月曜日

原発をベースロードとする政府の政策の過ちー熊本理論への賛意と若干の問題提起

先週4月18日 土曜日に川崎でベースロード電源として確定している政策の根本的な過ちを指摘する熊本一規(明治学院大学国際学部教授)を囲んでの学習会がありました。主催、現代技術史研究会M分科会

熊本さんの『電力改革と脱原発』(緑風出版、2014)を再読してみなさんに報告します。

(1)ベースロード電源として原発は不適切
原発は稼働率を勘案すると実は高コストであり、「ベースロード電源」としては適切ではないというご意見で、私は納得しました。運動体やマスコミは熊本理論を注目し、原発のベースロード電源論を完全に論破する必要があります。これは日本だけでなく、韓国においても同様です。しかし韓国の場合は、日本に比べて稼働率が圧倒的に高く90%台を維持しており、地震を前提にした日本の60%台とは比較にならないのです。


(2)韓国の運動ーイ・ジンソプさんの裁判支援を
しかしここは熊本さんがおっしゃるように、運動には各国独自の視点からの運動論があるべきだというご意見に与します。韓国は「安全性」に力点を置き、疫学調査を活用した住民の健康を追求する運動論が有効だと思われます。その意味でイ・ジンソプさん訴訟を扱った釜山地裁で、甲状腺がんと古里原発の因果関係を認定した判決の意味は計り知れないくらい大きいと思います。まもなく第2審がはじまりますが、韓国政府は必死になってこの裁判を覆そうとするでしょう。ここははやり市民の運動が大きくものを言うことでしょう。韓国国内だけでなく、世界的な支援が必要です。
5月20日、午後1時に釜山に結集しましょう。


(3)市民の不買運動で電力自由化が進めば原発はなくなるとする熊本理論
また今回は時間の関係で熊本さんの持論の、電力改革に伴う電力事業の自由化により、原発は市民の意識(運動)によって淘汰していくことが可能であるという点に関しては議論が進みませんでした。熊本さんは学生を連れて何度もドイツに行かれてドイツの改革の実態をよくご存知で、レジュメにはその問題点の指摘もありました。


(4)ドイツとの比較の危険性
しかしドイツの脱原発運動、脱原発宣言の背景には戦後ドイツのあり方が反映されており、近隣諸国との関係、地方自治のあり方、市民意識(歴史意識)においては日本とは違います。その違い抜きに政策的なレベルだけで本当に脱原発が実現されるのか、私はさらに議論が必要だと思います。

ドイツに脱原発宣言ができて日本ができなかった理由として、白井聡は将来にわたって原発をもたないと決断した国(ドイツ)と、潜在的核保有国である日本との違いをあげていましたが、脱原発を実現していくためにはさらに複合的な視点から思索を深め、具体的な実践論(運動論)を目指した議論の必要性を感じます。

(5)複合的な議論の必要性
①その第一は、市場経済と市民の意識だけで原発をなくしていくことができない要因を同時に複合的に検討すべきです。アメリカはスリーマイルズ島での事故以降、アメリカ国内での原発建設は全て中止になり、原発メーカーを売却したのです。そしてライセンスをもち日本や韓国に原発建設をさせているのが現在の状況です。しかしここにきてオバマ大統領は原発建設を許可しました。建設会社はアメリカのウエスチンハウスを買収した東芝です。しかし日本で原発メーカーとして輸出に力を入れる日立、東芝、三菱重工を批判する与論もなく、運動体も沈黙をしている理由はなんでしょうか。政治家で原発輸出に言及しても具体名をあげる政治家は寡聞にして一人も知りません。

②核兵器をなくしていく点では核保有国を含めた話し合いが進められているのは事実です。しかしNPT(核不拡散条約)体制は基本的には核兵器と核発電(原発)を別なものとして扱っています。原発はアメリカが「原子力の平和利用」を名目に各国に原発と核燃料を売りつけようとして、その条件として原子力損害賠償法によって事故があってもメーカーの製造者責任は問わないという法律を作らせました。日本は江戸時代の黒船よろしく、自らが原発を輸出するときには、自分がアメリカから押し付けられたように、輸出先の国にメーカーには責任がないという法律を要求しています。

③モンゴルの砂漠でウランの採掘権を獲得しているフランスのアレバは砂漠における公害、住民被害を起こしていますが、そのアレバの現地会社の34%の大株主は三菱です。三菱はトルコでの原発建設を請け負うのですから、その燃料はモンゴルで採掘したものになるかもしれません。

一方、原発運転から必然的に出る核ゴミの処理はどうするのでしょうか。日本で最終保管地を政府は探していますが、そんなことを受け入れる地方があるでしょうか。台湾も韓国も、どこも同じです。ですから日本は選択肢のひとつとして、アメリカ、モンゴルはCFS(包括的燃料サービス)の秘密契約を締結し、ウランの採掘と精錬、核燃料の輸出と核ゴミの輸入、埋蔵を決定したのです。このように核燃料と核ゴミの処理の問題は原発をなくす論議をするにあたって避けて通れない問題です。

   2014年8月20日水曜日
   官僚は平気で嘘をつくーモンゴルに核廃棄物を埋める話はなかった?
   http://oklos-che.blogspot.jp/2014/08/blog-post_20.html

④自国内の電気料金との関係で原発をなくしていくには有効で意味のある運動ですが、日本国内だけの問題に矮小化される危険性があります。核兵器を安全保障の最大の武器にしている核保有国の安全保障政策とその核の傘の下にいる限り、日本が近隣国を敵対視し潜在的核保有国であることを政策として決定している限り、仮に経済的に有利でなくとも、日本は原発をなくすことはないでしょう。


(5)いま、注目すべきは
いま注目すべきは、台湾の反原発運動の活動家が台湾の行政に働きかけるために学ぼうとしている、ソウル市の脱原発を目指した政策・実践です。熊本さんにも同行していただきながら、地域における脱原発運動を展開している人たちと一緒にソウルに行きたいですね。みなさん、いかがでしょうか。この秋にも実現したいですね。

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