2015年3月3日火曜日

日本の原発裁判の代表的人物である河合弁護士の発言の紹介

日本の原発裁判の代表的人物である河合弁護士が原発メーカーの「訴状学習会」で発言された内容を公開します。題目は私がつけたものです。本人は著者の名前こそ述べてませんが、題名をあげていますので、明らかに、著者の矢部宏治の主張を否定しています。これまで原発裁判で全敗をしてきたのは何故か、矢部はその原因を「統治行為論」として解明します。

河合弁護士は、「原発の訴訟で統治行為論が問題になったことは全くない」と断定するのですが、『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』(集英社インターナショナル)の中で具体的に、「現在に至るまで、高等裁判所で唯一の住民側勝訴(設置許可無効)の判決を書いた・・川崎和夫判事」は朝日新聞記者の質問に、「自分はそういう考え方をとらなかったが」、「原発訴訟に統治行為論的な考え方を取り入れるべきだという人がいることは聞いたことがあります」と答えています。

日本政府が原子力基本法に「我が国の安全保障に資する」との文言が追加され、原発問題は日本の安全保障の問題となっていることを河合弁護士はどのように考えられているのでしょうか。
以下の河合弁護士の発言の対する多くの方のご意見をお寄せ下さい。


2月4日の「訴状学習会」における河合弁護士の発言

「原発の訴訟で統治行為論が問題になったことは全くない」
[開始後59:29あたり]あとまあ忘れないうちに言っとくけど、えー、この訴訟、統治行為論のことも書かずに、どうせやったって負けるに決まってんだみたいなことを言う人、いる。でも、統治行為論というのは、安全保障の点では言われたことはあるけども、原発の訴訟で統治行為論が問題になったことは全くない。それからそんなこと、そもそも被告も主張したことないし、国も主張したことない。これは統治行為論で高度に政治的な問題だから裁判所はこの原発の安全性について判断してはいけないなどという主張をしたことは一度もないし、今でもない。そんなことは、原発訴訟では統治行為論なんて問題になったことがない。そのことをまず知っていただきたい。したがって、今後も統治行為論だから、統治行 為、これは高度な政治的な問題だから原発の問題は裁判所が入っちゃいけないんだなんていう判決がある可能性はゼロです。そんなことをしたら裁判所はもう袋だたきに合いますから、そんな恥ずかしいことは言いません。

安全保障の問題では沖縄の基地をどうしようかっていうようなとこ、それから砂川の基地をどうしようかっていうような時には逃げました。それは国家の安全保障の問題だということで逃げまし た。しかし、原発の問題でそんなことで逃げる恐れは全くない。そんなことを言う人が一部いますけど、それは僕は全くないと思う。

日米原子力協定を破棄しないと脱原発できない・・・それも全く間違い
動画の1:00:51あたりから:
それからもう一つ、日米原子力協定を破棄しないと脱原発できないんだみたいなこと言う人がいるけど、それも全く間違い。日米原子力協定が 一番心配していることは、日本がプルトニウムを作りすぎて核拡散するんじゃないか、それを防止するために日米原子力協定があるんです。日米原子力協定のどこにも日本は原発をやらなきゃいけない、やめちゃいけないなんてこと書いてあるのは一つもない。だけど何だか、えー「日本はなぜ基地と原発をやめられないか」という本の中にはそういうふうに書いてある。僕はそれは間違いだと思う。そんなことありえないですよ。

しかもアメリカっていうのは黒い意志があって鉄の意志があってですね、それを踏むと虎の尾を踏む と大変なことになるみたいな陰謀史観的な考え方をする人がいるけど、アメリカも必ずしも日本が原発をやれとか、やるなとか、そういう鉄の意志を持ってい るわけではありません。アメリカの中も割れています。現にカーターが、あのスリーマイル島の事件に恐怖して原発造るのやめたって言ってから、日本は40 間も原発できてないじゃないですか。ほんとに原子力村が強いんだったら、もうとっくにボンボンもっと造ってますよ。


だから、アメリカも一つの意志でまとまってるわけじゃない。原発やりたい勢力もあればやりたくない勢力もある。そのうちの原発やりたくない勢力に我々はアピールしていきゃいいだけのことで、 日米原子力協定を破棄しなきゃ日本の真の脱原発はできないなんて言うと、どうなるか。アメリカと闘って勝たなきゃ脱原発できないっていう結論になるわけで すよ。ということは脱原発なんか日本じゃできないっている結論になっちゃうんです。そういう間違った理論(議論?)をすることは、そもそもみんなの気持ちを萎えさせるし、真実とも反する。

我々は自分たちの世論を変えていき、裁判で勝ち抜いていくことによって脱原発はできる、アメリカと喧嘩しなくたって脱原発できる、そういうことをきちんと踏まえた上でですね、短期的に言えば仮処分、本訴で一つ一つの再稼働を止めていく、そしてその何年か経つ、これで4年ね、 日本はもう原発なしでやってんだから、あと4年かあと6年、原発なしでやってみせたら、日本の国民は体でわかりますよ。あ、原発必要ないんだ。そこをやっぱ り持ってくためには、裁判で頑張んなきゃいけない。

それでその一環として、やっぱりメーカーを脅かす。原発なんか安心して造らせないぞという訴訟をやると いうことは非常に意義がある。だけどそれは本当に本当に難しいハードルが目の前にある。だから、みんな力を合わせてやらなきゃいけない。それを、その何だか知らないけどゴチャゴチャゴチャゴチャ言って、僕はまあ、人間学的に興味あるからそれ(会場から笑い)メール、フォローしてますけど、でもそんな ことしてる場合じゃないんだ。本当にね、相手は強大なの。

「敵前でいがみ合いをしてる場合か、小異を捨てて大同につくべき」
それから、僕らは毎日、敵と渡り合ってんですよ。あなたがた、そういうことしたことあるのか?本当の敵と闘ってんのか?僕らは毎日毎日...裁判て厳しいですよ。本当に裁判官ここにいて、敵がいて、もう原発どんどんやるって言うのに論破してってやめろって判決取らなきゃいけない。その論争の闘いの厳しさ。そういう闘いを毎日やってる。島さんもそういうことにあえて挑戦し た。体も、ガンも抱えながらやったの。それをね、そのせい力をそぐようなことをしないでほしい。


僕らは本当に敵とこう闘ってる時に、後ろからゴンとやられ たらですね、おいちょっと待てよ、こうやって振り返ってる間にあっちから切り付けられちゃうんだから。そういう厳しい闘いをしてるんだ。本当にね、脱原発の闘 いっていうのは真剣勝負だし、単に闘うっていうよりもね、渡り合う感じなんですよ。本当に真剣に闘ってて、だからそういう人たちの意見をやっぱきちんと尊重して ほしい。いうふうに思います。で、敵前でいがみ合いをしてる場合か?団結しなきゃだめだ。大同小異、大同小異じゃない、なんだ,,,、要するに小さいこと は(会場から「小異を捨てて...」)小異を捨てて大同につく、ごめん。そうしなきゃだめだ。僕はそういうことを言いたくてこの会議に来ました。

日米原子力協定を受けて原賠法が制定され・・メーカーの免責が制定されている・・は事実に反する
1:28:15あたりから]ところで、あのーカンノさんのご質問で、あのーこういうふうに書いてあるんですね。えっとー「被告は原賠法で免責されているから参入したというのが骨子だと思うが」、これ意味がわかんないですけど...あーまあ、原賠法で免責されているから安心して原発を造っているんだという、それは事実だと思いますね。それをどう突破していくのかっていうのは、意味がよくわかんないですけど、あの「原賠法」は原子力協定を受けて制定されているが、どう追究するかというご質問ですが、あの、裁判っていうのはですねえ、初めっから全部考えられる論点を訴状で書かなきゃいけないわけじゃなくって、相手がですね、いや原賠法が有効だと、日米原子力 協定によって裏付けられてんだから、それは変えるわけにいかないんだという主張が出てきた時に初めてこっちが言えばいいことで、そもそも私は「原賠法」は日米原子力協定を受けて制定されているがどう思うか」って言われても,僕はそうじゃないと思いますよというお答えです。

日米原子力協定なんかなくてもですね、 世界中にこの、メーカー、要するに責任集中主義、それから別の言葉で言うとメーカー免責主義は世界共通の、ほとんど共通の立法なんです。日米原子力協定があるから、この条文があるわけじゃないので、日米原子力協定の問題をこの裁判の中で、僕この裁判の話ですからね今ね、メーカー訴訟の話で言うと、日米原子力協定が問題になることはほとんどありえないと思っています。

それは、どういう場合にじゃあそれが問題になるかと言うと、メーカー側がですね、いや、日米 原子力協定があって免責されてんだからと言う場合ですよね。もしくはそれによって原賠法が 作られたからって言う場合だと思いますけど、あの僕は寡聞にして日米原子力協定でメーカー免責だって書いてあるっていう条文読んだことないんですね、そんなこと書いてませんから。書いてないですよ、よく読むと。だから日米原子力協定を受けて原賠法が制定されていてメーカーの免責が制定されているんだってのは事実に反すると思います。

統治行為論なんていうのはね、そもそも問題になるはずない
1:30:30]それで、だから、裁判ってのは例えばね統治行為論でもね、統治行為論があるから、この裁判、触れてないから、あの訴状は出来が悪いなんていうこと言ってる人がいますが、僕はそんなこと全然なくて、統治行為論なんていうのはね、そもそも問題になるはずないんだけど、仮にそれを論ずるとしたらね、あっちが言ってきた時にそれに論駁すればいいんです。それを初めっから統治行為論でお前裁判逃げるつもりだろう、お前逃がさないぞなんていうことを訴状で書く必要はないんです。こうやって追いつめてった時に、相手がそれを抗弁につか、統治行為論の抗弁を使った時に、統治行為論なんてありうるかと。

そもそもね、原発のことで統治行為論なんて言うはずないんですよ。というのは、統治行為論というのは別の言葉で言うとね、高度の政治的問題については司法は入らないという論理ですからね。高度に政治的なんかじゃないんですよ、原発自体を見れば。ね、だから、それは、そんなこと、統治行為論がこの訴訟で問題になることはないし、今までどんな深刻な訴訟、原発訴訟でも統治行為論を被告側が持ち出したことはない。政治的にそういうことを言う人はいますけど、そんなことは裁判とは関係ない。

それは政治運動で解決すればいい、ことなんで。だから僕は統治行為論だの日米原子力協定が非常に問題だからっていう、それは、問題にあっちがしてくればともかくね、あっちが何も言ってこない、そもそも答弁もまだ全然出てきていない、何を言うかもわかんないうちに先回りして統治行為論やるつもりだろう、原子力協定の問題を論ずるつもりだろうなんてね、初めっから言ってく必要はないんで。正面からこっちが言いたいこ とをスパッと言って、あっちが反論してきたら再反論すればいいっていうのが、それが訴訟の構造というものです。

本や辞典じゃないんですから、全てのことを論じないと、論じてあらかじめ論じておかなきゃいけないなんていう論理は訴訟にはない。請求原因、こう、否認、抗弁、それから再抗弁ていう、そういう形で論争が進んでいくんですよ。それを初めっからデパートみたいに全部揃えて書いてないとその訴状は不備だなんていうのは、訴訟のことを知らない人の言うことです。ということを申し上げておきたいと思います。[1:32:45]


2 件のコメント:

  1. 2015-3-4<河合弁護士への反駁>
    日本政府が311以降に原子力基本法に「原子力政策は我が国の安全保障に
    資する」との文言を追加したことに対して貴殿はどのように考えられておられる
    のでしょうか?

    そもそも戦後、核の平和利用の名の元に当時の自民党政権と米国が協力して
    核反対論を押し込めて原子力発電を強引に推進してきた歴史的背景は国民の
    多くが知るころです。
    当時の資料に依りますと原発事故が起これば最悪シナリオは日本そのものを
    破滅に導くことは政府はすでに知っていました。
    これほどまでにも危険な原発を当時の新聞は「原発は絶対に安全、都会のビル
    の下にだって造ることが出来る」と国を挙げて喧伝したのです。
    戦後における米国の最大の脅威は旧ソ連による東アジア、東南アジアの共産化、
    とりわけ日本の共産化であったことは貴殿ならずとも誰もが知っている事実です。
    むろん、沖縄が戦後長きに亘って占領され、米軍基地が置かれたのもその
    理由からです。米国が核技術を日本に提供したのは単なる経済的な貿易に
    よるものと言うようなおめでたい人は現代ではまず、いないでしょう。
    米国の日本への「濃縮等の核技術」の提供は明らかに旧ソ連による極東
    アジアの共産化への米国の危機感が根源にありました。
    むろん、日本政府はその米国に同調し、政治的戦略を受け入れました。
    表向きは非核三原則、核の平和利用と称して。
    このように原子力政策(核技術政策)は当時から現代に至るまで政治色の
    濃い「統治行為論」の要素そのものなので出来る限り、表に出したくないし、
    出してきませんでした。
    さて、今回福島原発事故以降、政府は何故、「原子力政策は我が国の安全
    保障に資する」とわざわざ分かりきった文言を追加したのでしょうか?
    頭の良いあなた方、弁護士ならお分かりですよね。
    これから長年に亘って各地で原発訴訟は桁違いの頻度で起きます。
    それらに対抗するために国は憲法の上位にあるともいわれる原子力基本
    法にちょこっと上記の文言を追加することによって司法の場(検察、弁護、
    裁判所)はその意味を忖度することを期待し、ある意味、脅しているのです。
    そうなれば原発訴訟を原発反対の立場から弁護する弁護士だって敢えて
    家中の栗(統治行為論)を拾おうとしなくなります。
    貴殿は「被告側が統治行為論」を持ち出さなければ弁護側から敢えてそれを
    論点にする必要はないと仰っていますがそれは単なる感情移入論であって
    原発存在の本質に迫る勇気が弁護士として欠如しているだけではないでしょうか。
    貴殿のような「原子力マフィア」と批判して憚らない弁護士が原発裁判の代表的
    人物と知って改めて「原子力マフィア」の闇は深いと感じ取った次第です。


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  2. 『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』は原発訴訟を"後ろからゴンとやる"内容ではなく「中央の空気を読んだり、自分の出世を伺うような判決はもう許されませんよ」と、裁判官へのプレッシャーとなるような内容と読めました。つまり河合弁護士への援護射撃と読めたのですが、最前線で必死に戦っている河合弁護士からすれば「後ろからゴンとやる」内容に読めてしまうのも無理からぬものと察します。

    『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』同様、裁判官にプレッシャーを与えている方に、元最高裁の瀬木比呂志氏もいますね。

    ■「おまえたち、世論がうるさいから、原発については、とりあえず踏み込んだ判断をしてもいいかもよ」というサインを出したということですね。
    http://gendai.ismedia.jp/articles/-/41659?page=6
    http://gendai.ismedia.jp/articles/-/41921
    http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/news/157670

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