2015年2月13日金曜日

台湾の青年活動家の話をソウルで聞いて思うこと

台湾の反原発運動の中心にいるのは(彼らはそのような言い方は好まないでしょうが)間違いなく、緑色公民行動聯盟(GCAA)だと思います。台湾の教授たちが中心になってこの間の台湾の反原発および環境問題に関わってきた台湾環境保護聯盟(TEPU)から出て独自の運動を進めてきた、青年を中心としたGCAAは、3・11以降の反原発の20万人デモやその他地道な分化活動を進めてきました。国会占拠をした大きなうねりの中でも重要な働きをしたであろうと思います。

私は彼らと会い話をするたびに、彼らの発想の柔軟さと行動力に驚き、多くのことを学びます。彼らなりの批判があってTEPUから独立したはずなのに、彼らは大学教授たち長老への敬意を払い一緒にできるところは一緒に行動するという態度を続けています。いわゆるセクト的な独善性、排他的な臭いは微塵も感じません。私たちがもっとも学ばなければならない点でしょう。

一昨年、私たちはGCAAの来日を要請し、川崎における大衆集会とNNAA主催による講演会をもちました。その時のスピーカーが洪申翰(Hung Shin Han )さんです。東京新聞の取材の時も、川崎での1000名を超える集会の場でも、そして学習会の場でも、個人的な話し合いの席でも、彼は個人的な感情を表に出すことなく静かに、しかし情熱的な話をしました。とても30歳には見えない、老獪な活動家のようです。

   台湾の反原発運動のすごさから学ぼうー洪さんの講演より 
   http://oklos-che.blogspot.jp/2014/03/blog-post_18.html

台湾で国会占拠がはじめる数日前に日本で講演をした彼は、ガンジーの非暴力の思想を引用しながら1枚の、日本の霞ヶ関のような場所での大きな道路を占拠した写真を見せながら、馬政権が圧倒的多数の国民が願っていることを実現せず今のままの国民無視の政策を続けるのであれば、いずれ非暴力の手段で政権に立ち向かうと警告する、この道路占拠がその象徴であると、わずか30分ばかりの道路占拠の意味を話してくれました。そして数日後に、国会を占拠するSun Flower Movement(ひまわり運動)が始まったのです。

ここ数日、100名を超す学生と彼らを支持した教授たちが起訴されていますが、しかし中国との関係において自分たちの生活を守り、格差の社会の是正を求めるひまわり運動は全国的な市民の支持をうけました。彼らのメディア戦略そこに込められたメッセージは見事なものでした。それがどこまで実現したのか、今後するのかは台湾にとっては大きな課題でしょう。

   隣国台湾の「革命前夜」の実態を知り、学びましょう!
   http://oklos-che.blogspot.jp/2014/03/blog-post_2296.html

国会占拠を青年たちが解き後かたずけを終えた後、台湾でもっとも国民的な尊敬を受けている林義雄氏が死を賭してハンガーストライクに入り、日立・東芝が製造してきた第4原発の即時工事・運転の中止、を求めました。彼は総統(=大統領)の面会にも応じずハンストを貫徹したのですが、GCAAは事前に台湾駅前で無届デモを通知し林義雄氏のハンストに応える行動を起こしました。数万人という市民が駅前を占拠しました。その結果、馬政権は今後第4原発の建設はしないという言質は与えなかったものの、実質的に工事の中止を決定しました。

   台湾の林義雄さんの死を賭した、第四原発建設停止を求めるハンストに敬意を表し、連帯
   の挨拶をメッセージします。
   http://oklos-che.blogspot.jp/2014/04/blog-post_24.html

今回、ソウルで開かれた教会関係者と市民との合同の会議で再会したのが、この洪申翰さんでした。GCAAのこの間の「成長」は彼の発題の中に現れていたように思います。講演の
最後のスライドは「今後の闘争課題」というもので、次の3点が示されていました。
1.第4原発の完全廃棄と第1,2,3原発の寿命延長禁止
2.略奪的成長主義の産業構造転覆(市民運動VS地域性)
3.永続的エネルギー政策改革に向けた自治体と国民の役割
(ソウル OLNPP 重要参照対象)

GCAAは、私の判断では、第4原発の再工事はもはやなく(地域住民は早急に政権が正式な第4原発廃止を求めています)、第1、2、3原発も時間が経てば廃炉になるとみているようで、国民の関心が原発の代わりになる電源をどのように確保するのかにあると捉え、そのことを国民的なイッシュにして地方自治体のあり方にまで突き進めて考え具体化しようと考えているようでした。

彼らが優れているのは、単にエネルギー政策(自然エネルギーの活用)の変更にとどまらず、自治体への住民参加、具体的な節電方法にまで関心を示し、その分野ではもっとも果敢に取り組み、今世界から注目されている朴元淳ソウル市長の実践から学ぼうとしていることでした。若干30歳と26歳の若い台湾の活動家はそこで学んだことを台湾の地方自治体に伝え、具体的な行動をはじめるのではないでしょうか。場合によっては、彼らはソウル市長を台湾に呼ぶということまでかんがえているのかもしれません。

余談ですが、日本のエネルギー問題に関心をもつグループはドイツにばかり目を向けないで、ソウルに行き、彼らがどのような改革をしているのか、しようとしているのかしっかりと学ぶべきだと思います。私も市の担当者から話を聞き、驚きました。行政でこんなことができるのか!ソウル市だけで原発1基分の節電を公約しわずか2年間で実現させ、次はエネルギー自立都市をめざし、徹底した市民参加(新たな雇用を含め)のあり方を進めています。そのために100人単位で民間人を採用していました。
energy.soul.go.kr 参照。ソウル特別市環境政策課では日本語のパンフレットもありました。
             (ソウル市の環境政策課の担当者の話をきいているところ)

さらに注目すべき点は、「今後の闘争課題」の2番目です。「略奪的成長主義の産業構造転覆(市民運動VS地域性)」、富国強兵で工業化の道を進んできたのは日本、韓国、台湾も皆おなじです。しかし日本と違って韓国も台湾も、世界における米ソの闘いの影響をもろに受け、日本の植民地支配からの独立の後も軍事独裁政権下に長くあって(白井聡『永続敗戦論』参照、日本だけが平和と民主主義の国であったという神話は完全に間違いであったことが記されています)、そこから「民主主義国家」として出発し経済発展を目指した両国は極端な格差、さまざまな社会矛盾を抱えているのです。

ひまわり運動を経験したGCAAは一回り大きく深く社会の問題を捉え、単なるエネルギー政策の変更ではなく、地方を搾取して成長してきた大都市中心的、工業最優先の国のあり方を根底から変えなければならないと主張しはじめているようです。そこからは近代化批判の視点を明確にし、毛沢東からも学ぶべき点があるのではないかと考えているようです。

中国と台湾において国民国家を絶対化した台湾独立論でなく、国境を超えて課題を持つ市民同士が協力し合っていくという柔軟性をもっているように思えます。いずれ世界最大の原発国になる中国国民と原発の問題に関して一緒に対話を進めることができるのは彼らかもしれません。

世界中から原発をなくすことを目指す私たちにとってはなくてはならないパートナーです。
反核・反原発の世界的なネットワークづくりを目指すわたしたちにとって、彼れはいつでもそれでは具体的な地域社会の問題はどうするのかを問いかけてくるでしょう。その通りです。世界の原発体制は一国平和主義では突破できないものの、その破棄に向けた闘いの成果はまず地域社会のあり方に反映されていかなければならないからです。

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