2014年8月4日月曜日

脱原発による伊方原発50km圏内と南予地域の活性化の提案

原告の一人で伊方原発50キロ圏内に住む二宮美日さんからのメールで、「ーー地域の活性化案」が送られてきました。一読してその深く現実を捉えられた洞察力と、なんとしても伊方原発のある地域の再編、持続する社会を作って行こうとする熱意に私は心打たれました。ご本人の承諾を得ましたので、ここに掲載させていただきます。

この伊方原発立地でのポスト原発の地域社会のあり方の模索は、伊方やその他の原発立地地域だけでなく、大都会(中心)から搾取の対象になってきた地方(周辺)を自立して生けていく社会にするにはどうすればいいのかを模索する地域において、日本だけでなく、世界においても、参考になるのではないかと思います。二宮さん、ありがとうございました。   崔 勝久

     脱原発による伊方原発50km圏内と南予地域の活性化の提案
          伊方原発50km圏内住民有志の会 二宮美日   20145

     脱原発の必要性
伊方原発で事故が起きれば風向きの関係で南予一帯から高知県、そして松山方面まで放射能が広がるばかりか、地球の自転によって韓国から西日本一帯が放射能の影響を受けます。また南海大地震が発生し、伊方原発事故が起こった場合、四国は原発事故現場と南海大地震震源地の挟み撃ちにあう形になり、四国外への脱出はほぼ不可能、伊方周辺住民の被ばくなしの避難は無理です。アメリカでは避難計画がたてられなかった地域の原発は廃炉です。

電気は確かに現代人にとって大切な物ですが、電気を作る方法は原発以外にもあります。ですが地域の自然や健康・歴史・命は代替ができませんし、それらを失ったことに対して誰も責任が取れません。責任の取れないことはするべきではありません。原発事故に対応した避難計画をたてるよりも、脱原発の地域づくり計画を建てた方が現実的で前向きです。

伊方原発50km圏内の南予地域や伊予市は農林漁業の一次産業と観光を重視した地域ですが、福島第一原発事故の後、原発の存在はこの地域の観光にとって邪魔でしかないはずです。規制庁がお墨付きを出したとして、原発が稼働しても安全だと思っている人たちがいるとしたら無知な人だけです。また観光客を呼ぶ場合、原発の存在とそのリスクを告知しないことは道義に反します。

伊方原発が廃炉になることは、わたしたちの願いですが、そのために伊方や八幡浜の住民が生活に困ることを望んではいません。伊方原発をなくすなら、それによって生計をたてていた人たちが同じように生活できる方法を提示すべきだと思っています。脱原発によって、より豊かな生活がおくれると示すことは、世界からも注目を受ける事になります。

     基本的考え方の転換
脱原発で大切なことは、現在の価値観や経済システムをもう一度分析してみるということです。原発推進は国の政策ですが、国の政策というものは、地域の有形・無形の財産を中央に吸い上げて、政治家や官僚につながる企業を儲けさせて、自分たちの天下り先を確保するためのものです。国民は早くその事実に気づくべきです。原発も一部大手企業を儲けさせ、そのおこぼれを地元に落として、原発受け入れ地域を隷属させてきたにすぎません。地元は健康と言論の自由と安心・安全を犠牲にして、多少豊かな生活を手に入れただけです。原発誘致により、過疎高齢化が解消された地域はありません。

 そもそも国の政策に従ってきたから、地方は現在のように疲弊してきたのです。これまではまだ地方に余力があったので、その弊害があまりわからなかっただけです。地方から財産を吸い上げながら、さも国のおかげで地方がなりたっているように見せているのが地方交付金や補助金です。

 では中央に吸い上げられてきた地方の財産とは何かと言うと、大気と水(水産資源含む)と大地(農林産物含む)と人、そしてお金です。地域経済をちゃんと分析してみれば、地方に金が入るよりも出て行く方が多いことがわかるはずです。またもし地域ごとをシェルターで囲う事が出来たら、都市部は酸素と水と食料不足に陥るでしょう。労働力(人)も、ほとんどが地方からのものでしたが、今は地方が高齢化してしまいましたので、地方からの労働力確保もままならなくなってきて、外国人労働者に頼るようになってきたのです。

 地方は大気と水を作り、国土を保全しているのは自分たちだからその管理費を正当に要求できるはずです。地域ごとに山林や耕作地、川や海による酸素供給量・水供給量・国土保全指数を出して、それに合わせて税金をもらい、その税金で地域の山や農地や海を守る仕事の経費にすれば地域の経済は回ります。

 ですがこれには法改正などが必要で、より多くの地域がそう思い、発言していかなければいけないことなので、すぐに実現できることでありません。ですからまずは、現状でできることから取り組む必要があります。一番取り掛かりやすいのは地域から外に金を出さない、地域のお金を地域で回していくということ、地域内での経済循環システムの構築です。

③脱原発をする場合のリスクと対策
1)原発推進交付金とその対策
 関西学院大学准教授朴勝利(パクスンジュン)氏の著書『脱原発で地域経済は破綻しない』にある『表6  2010年度原発立地自治体の「原発関連収入」(町村)』によれば、伊方町の2010年度の歳入総額に対する原発関連収入は32.4%(2013年度は2割超)、全国平均12.6%の約2.6倍ですが、原発が完成していない上関町、大間町に次いで低い%なので、一番脱却しやすいはずです。
原発関連収入の中で一番大きいのは固定資産税で、伊方町では2010年度22億円以上ありますが、これは元々運転が長くなると減っていくもの(『図3 原発の固定資産税の経年変化』参照)で、新しい原発を建てない限りいつまでも依存できる財源ではありません。朴氏によれば、財政力の弱い自治体であれば原発の固定資産税がなくなっても、地方交付金という仕組みで最大75%は戻って来るのだそうです。(『図4 税収減少前』と『図5 税収減少後』参照)
その他の原発関連収入に関しては『平成24年度 電源立地地域対策交付金充当一覧表』にあるように、平成24年度は約14億円の電源立地地域対策交付金があり、それにより住民に必要ないろいろな事業が営まれていますが、これは一般事業として計上して地方交付金の対象にできます。また、3億円以上かかっている『8電源立地地域対策交付金施設維持補修基金造成事業』というのは、電源立地地域対策交付金によって建てられた施設の維持補修のための基金ですが、その施設の利用実態をかんがみて、町財政の負担にしかならないものであるなら民間に払い下げることも検討すべきでしょう。
次に『核燃料サイクル交付金』ですが、これは危険なプルサーマル発電を受け入れたために支給された交付金です。『原子力発電施設立地地域共生交付金』というのは、原発の設計寿命の30年を超えて運転するための迷惑料で、原発が30年経ったところで5年間にわたり毎年5億円ずつ計25億円支給される交付金です。ですがその実施内容は、『原子力発電施設立地地域共生交付金実施スケジュール』と『核燃料サイクル交付金実施スケジュール』を見ればわかるように、伊方町に関しては防災対策ばかりです。地震と津波対策だけで、原発事故の避難を想定しなくていいのならこれほどの経費はいらないはずです。

2)      電源開発促進税
わたしたちは電気の消費者として毎年3,500億円ほどの電源開発促進税を負担していて、その半分弱が原発建設のための原発地元への交付金となっていますが、半分の1,750億円を福島の事故原発の廃炉や汚染水対策、被災者対策に、残り1,750億円を原発立地地域の脱原発促進費用に使えばいいのです。
元々『電源開発促進税』というのは、原発推進のための資金で、国は交付金というアメとムチによって地方を支配してきたわけですから容易に使用変更はさせてくれないと思いますが、この国は『主権在民』なのですから、本来税金を何に使うか決めるのは国民であり、民意を反映させるために各議員を出しているわけです。国の意向を住民に押し付けさせるために、地元選出の議員を出しているわけではありません。まず地元のわたしたちが、自分たちの地域をどうしたいのかを決め、それに添った協力が得られるように各議員に働きかけるべきです地方自治は決して国の下部組織ではありません国が間違った方針を打ち出していると思うなら、地方から変えさせるべきです。

3)市民の協力
伊方町や伊方原発50km圏内と南予地域が脱原発によるまちづくりをすると決め、その具体的な内容をホームページや各広報によって多くの人たちに知らせ、その内容に賛同してもらう人から資金を集めればいいと思います。
その方法の第一はふるさと納税です。これなら5,000円以上納税すれば、自分の住んでいる場所での納税の控除対象になります。第二は事業ごとの出資者になる方法で、地元の人こそ出資者になるべきです。他に『脱原発応援団』のようなものを作って、小口の寄付を世界中に募るのもいいかもしれません。
そして資金を提供して下さった人たちは、特別町民として広報を送り、金額に応じて特産品を送ったり、この地域に来てもらった時には宿泊や公共施設使用料の割引をしたり(その割引分は行政が支払う)して、交流を深めることが肝心です。伊方原発50km圏内を第二のふるさとと思ってもらえば交流人口も増えます。将来的には移住してくる人もでてくるかもしれません。

4)伊方原発廃炉・再生計画
まず、伊方原発は廃炉にします。廃炉といっても、放射能レベルの高い原子炉建屋は燃料棒を取り出して封鎖して解体は放射能レベルが減る30年後以降とします。使用済み燃料は乾式キャスクに入れて、敷地内に乾式キャスクを保管する耐震性の高い中間埋蔵施設を造って、他の放射能汚染物質とともに保管・管理します。そうすれば保管・管理の仕事もありますし、保管する燃料に税をかければ伊方町や愛媛県の税収になります。福島第一原発事故の際も乾式キャスクに貯蔵されていた物は、津波や地震に耐えて安全だったと言います。その他の施設は放射能汚染レベルによって解体するか、手を入れて利用します。
また不要な施設を解体して敷地内に余裕があれば、コジェネのガスコンバインサイクル発電所かマイクロガスタービン発電所を建設すればいいです。実際四国電力は津波による電源喪失に供えて、平成27年度完了予定で原発敷地内に非常用ガスタービン発電機を設置するようにしています。それよりも原発を廃炉にして、コジェネ発電をした方がいいでしょう。
「コジェネ」とは「コジェネレーション」の略で、電気と熱の両方を生み出し、同時に利用するシステムで「熱電併給」とも呼ばれています。その熱を吸収式冷凍法によって冷房にも利用できます。ヨーロッパなどではその熱を各家庭や施設の暖房や給湯に使っています。温室栽培の熱としても有効ではないかと考えます。また温水を各家庭や施設やビールハウスに運ぶための温水管の整備が必要になりますから、地元業者の雇用にもつながります。

5)原発関連の仕事で収入を得ていた人たちへの対応
 国が新しい仕事に移るための無利子融資などをする必要があるのではないでしょうか。あわせて、行政が相談窓口を設けて雇用相談にのる必要もあります。ですが脱原発によって創生される仕事にそれまでの仕事を活かすこともできますので、悲観する必要はありません。自分たちの生活のために再稼働を推進して、もし事故が起これば、全てを失うとともに、その人たちは加害者になります。再稼働を推進する人たちは、もし事故が起これば、それぞれの責任の度合いによって被害を受けた人たちに賠償金を払うべきです。再稼働したければ、それくらいの覚悟と責任感を持ってほしいと思います。
それよりは脱原発して、移行期間に多少苦労したとしても、健康で安全・安心な仕事につく方がいいのではないでしょうか。後世に禍根を残さないこと、未来の命に責任ある行動をとることが何より大切な事だと思います。

      地域内での経済循環システムの構築
地域経済が停滞しているのは、過疎高齢化のためではありますが、過疎高齢化は程度の差こそあれ日本全国の問題です。地域経済が悪化しているのは、単純にいえば地域に入ってくる金より出て行く金の方が多いからです。その割合が大きいのがガソリン・光熱費です。

 世界はグローバル化していますが、その内容は大企業に今まで以上に利益が集中するシステムを作ろうとしているだけです。今よりもさらに公共の福祉よりも企業利益を上位に持って行こうとしているのがTPPですし、原発輸出もそうです。原発は企業優位、市民劣位の典型です。現在日本をはじめ世界は「主権在民」ではなく「主権財界」といえます。

 日本の経済は元々近江商人の言葉にあるように「売り手よし」「買い手よし」「世間よし」の「三方よし」でした。ですが現在は「売り手よし」だけになってきています。原発を筆頭にした環境に悪影響を与え、人々を不安にさせる物は「世間よし」でなく、「世間よし」でない経済は、本当の経済活動ではなく[搾取]です。これからは「三方よし」の経済を復活させるべきです。

 「三方よし」の経済は『地域住民の心身ともの健康』をテーマにした経済です。現在は経済も政治も不健全な状態といえます。健康にとって大切な食糧を自給し、自然環境を守り、害になる原発は廃炉にすることはもちろん、廃棄物処理場建設にも十分な配慮が必要です。また地域活性化は短期決戦ではなく、持続性が大切ですので、この地域の世界の中での立ち位置や長期的視野をもって活性化計画をたてる必要があります。

 伊方原発50km圏内と南予地域全体がタックルを組み活性化計画をたてて、団結して県や国に予算や援助を申請すれば、県や国も無視できないのではないでしょうか。この地域の首長や住民がまちづくりについて意見交換をしたり、勉強会をする場ができればいいです。また西予市と内子町では『バイオマスタウン構想』を推進していますが、この地域全体が取り組むのがいいでしょう。
以下『健康』をテーマに、『食糧とエネルギーと公共事業の地産地消』を提案します。

1)      食糧の地産地消
 a、固定種栽培と無農薬・自然農法や有機農法の推進
生物の体に一番いい食糧は住んでいる地域で育つ動植物と言われています。人も自然の一部ですので、それぞれの風土にあった動植物に適合します。人が健康に生きるためには、地元の食材を食べることです。また食糧生産地が身近であればあるほど、その安全性も確保できます(放射能汚染された地域は別)。

 現在世界中で流通している野菜の種は「F1種」と呼ばれる一代雑種(一代交配種)で生育スピードが早く均一で形状もそろっていて歩留まりもよいといわれています。しかしF1種は一代限りのため、毎年業者からF1種を買わなければなりません。またF1種の小麦などが成人病など現代病の大きな原因になっていると言う説もあります。それに加えて、遺伝子組み換え食物の危険性も指摘されています。

 「F1種」の対極にあるのが「固定種」と呼ばれる品種で、自家採種が可能ですし、その土地の環境に適応するよう遺伝的にも安定していて安全です。固定種は同じ品種でも大きさや重さが違い、形も不揃いですが、味に深みがあります。それぞれの地域ならではの特産品とすることが可能です。

 さらに健康や環境を考えるなら、無農薬による自然農法や有機農法を地域全体で推進することです。一部で自然農法をしていても、隣で農薬を大量に散布していては農薬の害を受けますし、農薬に耐性を持った生物が発生する危険性が高まります。地域全体での取り組みが大切です。

 また、日本で稲作や家庭用殺虫剤をはじめとして広く使用されているネオニコチノイド系農薬は、日本では食品への残留基準が大幅にゆるめられようとしていますが、欧州食品安全機関の科学的意見として「人の神経と脳の発達に悪影響の可能性がある」とされ、規制の強化や毒性の再評価がされています。これによって受粉を助けるハチが激減しているともいわれています。

 F1種や農薬、化学肥料を製造している企業は同系統で、現在農業はそれら企業を儲けさせるためにあるといっても過言ではありません。農業と食料を自分たちの地域に取り戻すことが大切です。

 b、地あぶらの推進
 「地あぶら」というのは地域ごとに作られている油のことで、日本ではナタネ油、ヒマワリ油、ツバキ油、エゴマ油、ダイズ油、オリーブ油があります。愛媛県では西予市の「宇和高原ひまわり油」があります。
 現在流通している油の原料は9割以上が輸入物で、大部分が遺伝子組み換え作物で、ポストハーベストの表示義務もありません。また搾り方はヘキサンで原料から油を溶かし出す方法で、化学物質や添加物が大量に使われています。成人病の原因でもあります。
対して「地あぶら」は圧搾と濾過というシンプルな作り方で、抗酸化物質のレシチンやビタミンEなども豊富に含まれています。また、作付に耕作放棄地を利用することができるので、農地の荒廃を防ぐことにもつながりますし、高齢者にもあまり負担のかからない栽培品目です。

 地元に搾油所を作り、製品化・販売所展開をしていけば雇用拡大にもつながります。コストがかかりますから販売価格は高くなりますが、一般流通の油よりも劣化が遅いのでそれを消費者に理解してもらい、さらに健康・安全・安心で味が優れているのですから、消費者の心をつかむことができるはずです。

c、学校給食食材の地産地消
ここまでは「地産」について書きましたが、「地産地消」で大切なのは「地消」と言われています。それぞれの地域で作った物をそれぞれの地域で使ってこそ、地域内で経済が回ります。それにはまず行政が地元の物を使う事です。市役所や市立病院など公共の食堂はもちろんですが、一番は学校給食に地元産を使うべきです。「食育」とよく言われますが、地元の安全な食材を子どもたちに食べさせることが一番の「食育」ではないでしょうか。

現在学校給食の食材は、センター方式になったこともあり、数がそろわないとか値段が安いとの理由から、大手業者が一括して納入していることが多いようですが、その食材の産地や農薬残量、遺伝子組み換えか否か、放射能指数などあいまいな物もあり、安全・安心と言い切るには不安があります。

月に一度くらい、地元産の食材を使う日がある地域もありますが、毎日の食材を地元から納入すれば、地元農家は安定した収入を得ることができますし、地域経済は随分活性化するはずです。愛媛県ではすでに今治市で地産地消の学校給食に取り組んでおり、米は100%、パンの原料の小麦は80%が今治産で、野菜も今治野菜を優先的に取り入れています。今治市がやっているのに、他でできないはずがありません。

学校給食に使う穀物や野菜は無農薬に限ります。小麦の場合、製粉所が地元になければ作ればいいのです。それでまた一つ雇用が生まれます。野菜はできるだけ固定種を使い、地あぶらも積極的に使うべきです。野菜だけでなく、魚介類の納入は地元の鮮魚店、肉類は精肉店、菓子類は製菓店とできるだけ地元の店を活用すれば、地元の商店も潤います。猟友会にイノシシやシカ肉、漁業者に直接川魚や海魚を納入してもらってもいいと思います。

以上のことはコスト高になりますし、食材が均一でないと調理の手間がかかりますので人員の増加でさらにコスト高になるかもしれませんが、お金は地域外にはあまり出ず、地域内で回ります。そうすれば地域経済は活発になりますし、税収も上がります。コストが安いといっても、地域からお金が出て行くばかりでは、地域は疲弊するばかりです。
また「食」はすべての基本ですし、子どもたちの心身の健全化を考えれば、学校給食に投資するのは当然ではないでしょうか。一度に変えることが無理なら、「自校式」の学校から取り組み、給食センターの建て替え時期に「自校式」に切り替えて取り組むこともできますが、できれば少しでも早く取り組むべきだと思います。

2)エネルギーの地産地消
 a、集落コジェネの推進
エネルギーも消費地から遠ければ遠いだけエネルギーロスが多くなりますから、消費地で作る方が経済的ですし、危険なエネルギーを使う事もなくなります。現在はエネルギーとなる原料の多くが石油やガス、原発で、それを得るために地域から多くのお金が流出しています。金を流出させないためには、各地域(小字単位)で「集団コジェネシステム」ができればいいと思います。

また再生可能エネルギーの普及も叫ばれていますが、企業による巨大な太陽光発電施設や風力発電施設や水力発電施設は、やはり自然への負荷は大きいですし、大量発電、遠距離送電というのでは、今までと根本的に変わりない、企業優位の利益集中でしかありません。地域再生のためには分散型の小規模発電が有効ですし、経営形態も地域住民による共同経営方式がいいでしょう。自分たちのエネルギーは自分たちで作るという自主性が大切です。

電気と熱を生み出す方法はできるだけその地域の気候・風土・地形にあった自然の力(太陽光・風力・地熱・波力・水力・バイオマスなど)であるべきですが、大型の施設ではなく小型の物をできれば複数設置して複合的にした方が安心です。複合的発電には、各施設の情報や天候に基づいて電力の流れを規制して、需給に応じて電気代を決定する「スマートコミュニティー」を取り入れるのがいいでしょう。世界的環境団体グリンピース・ジャパンでは2008年に「低エネルギー社会」を目指した分散型エネルギーの未来図を『エネルギー[r]eボリューション』という報告書で出しています。(P10図参照)

また生み出すだけでなく、節電・節熱の工夫も必要です。節電・節熱にとって大切なことは住宅の低燃費化です。ドイツではチェリノブイリ原発事故後の脱原発プロセスとして「低燃費住宅」言い換えれば「省エネ住宅」の普及に全力を注いできました。日本でも「低燃費住宅」新築の補助制度はあります。

「低燃費住宅」を推進すれば地元工務店やそれにつながる企業が活性化し、地元の木材を使えば、林業の活性化にもなります。また製材が多くなれば廃材も多くなり、廃材をバイオマスで利用することもできます。廃材利用は間伐材利用よりも、ずっとコストが少なくて済みます。
さらに「集落コジェネ」なら送電設備や温水管の設置など、地元建設業や電気工事事業者でできますので、仕事が増えます。温水暖房を利用すれば、家庭の暖房代も温室栽培の灯油代も減ります。

まずは地元の理解が得やすく、積極的に住民がまちづくりに参加する集落で専門家を交えて、集落住民と協議を重ねて計画をたて、モデル地域を作るのがいいです。その集落で必要なエネルギー量を算出し、それが低燃費住宅やLEDなどの低燃費化をすればどれだけ少なくなるかも算出し、その低燃費化にかかる費用とコジェネ施設建設の費用なども算出して、コスト面や将来性なども考えて計画をたてます。そのコジェネ施設は基本的に集落住民の出資と各種補助金を併用するのがよく、電気代が多少高くなるとしても、その電気代は自分たちの収入にもなるし、省エネ意識も高くなるはずです。

 b、廃油の活用
「食用地あぶら」だけでなく、地域で出た廃油も「エネルギー地あぶら」バイオマスエネルギーとして積極的に利用するべきです。暖房用としてはもちろんですが、濾過して軽油の代わりに使えます。少し手をくわえてBDF(バイオディーゼル燃料)にすれば、さらに使いやすくなります。
また、廃油石けんは環境優良商品なので、併せて作ればいいと思います。

 c、ゴミの活用
太陽光発電、風力発電、小水力発電は、自然の影響を受けやすく不安定というだけではなく、時間がたてば廃棄物が増える、自然に負荷を与えます。それらに比べて今はまだコストが高いといわれていますが、各家庭の生ごみ(将来的にはすべてのゴミ)や農林漁業や地あぶらをはじめとした食品製造業などの廃棄物を利用したバイオマスは、廃棄物をエネルギーにするものですから自然への負荷が最も小さく、自然の循環システムに合っています。
 コスト高も、それによってゴミ回収費や焼却施設の建設・管理費などが少なくなれば、総合的に高くはないでしょう。理想的には「自分たちの集落で出たゴミはすべて集落のバイオマスエネルギーとする」というものです。バイオマス発電施設が、部落単位くらいにできたら理想的です。

3)      公共事業の地産地消
 これまでの大型公共事業は、元受を官僚の天下りのためにつくった財団法人か中央の大手企業が請け負い、地元企業はその下請けや孫請け、さらにその下請けという形で、おこぼれが落ちてくるだけでした。これからは大型ではなく、地元企業が元受になれるような小型公共事業、地域の身の丈に合った公共事業であるべきです。公共事業の予算を取ってくるのも地方行政の重要な仕事のはずです。これも単独市町村で要望するよりも、伊方原発50km圏内や南予全域で要望する方が取りやすいのではないでしょうか。

a、近自然工法の推進
人工的になってしまった山や川や海岸や田園や街を災害に配慮しながら元の自然に復元する工事方法を近自然工法といいます。これにはまず、地元の自然を知ることが大切です。森林ならゾーニングをしてそれぞれの場所にあった生産体制を計画し、それに合わせて林道を整備します。遺伝子保存林や保水林・保養林なら遊歩道か軽トラックが通れるくらいの林道でよく、それもできるだけそこにある材料(木や石など)で造ります。木材を生産する循環資源林なら、間伐・搬出に適した林道を自然への負荷を最小限にして造ります。

 河川改修も、まず河川周辺の生態系調査をしてから、魚道の設置だけでなく水の流れや岸辺林ができるだけ元の自然に戻れるような工事をします。また砂防ダムも、自然負荷の小さい物に改修します。海岸でも生態系調査の後、砂浜の復元や魚の棲家に配慮した復元工事をし、田園でも用水路をメダカや両生類や昆虫が生息しやすい環境に改修します。
 自然に配慮した事業に関しては、少額ですが各企業や団体がNPO向けの補助金制度を設けていますので、地元でNPOを立ち上げて行政と協力して進めていくのがいいでしょう。地元の雇用促進にもなります。

b、電線・電話線の地中化
景観に配慮して電線や電話線の地中化を図るべきです。電線や電話線の所有者が電力会社や電話会社なので元受はできないかもしれませんが、技術的には地元業者が元受でできる工事ですし、地震の時も、電柱が倒れる心配がありませんから災害対策にもなります。大がかりに急いでやる必要もありませんので、やりやすい場所から地域に合った事業ができます。

 c、サイクリングロードの整備
 愛媛県はしまなみサイクリングなどサイクリングに力を入れており、サイクリングの普及は健康にも環境にも良いものです。ですが現在の道路にサイクリンクが増えると危険です。地元と協議しながら、やりやすいところから近自然工法でサイクリングロードを整備するべきです。

     脱原発地域をブランド化
1)伊方は注目を集めている
 今日本の原発立地地域は、原発再稼働問題のために世界の注目を集めています。福島第一原発事故後、西欧諸国は脱原発の方向に舵を切りましたし、原発建設が勧められようとしているアジアやアラブ諸国では、市民による原発建設反対運動が起こり、市民同士による国際連携が進んでいます。

 政府は今年度のエネルギー基本計画で原発をベースロード電源とし、再稼働を推進しようとしていますが、国民の60%以上は脱原発を望んでいます。だいたい福島第一原発事故の事故原因の究明もできず、汚染水問題も解決できていない日本政府が、原発再稼働や原発輸出をすることなど恥知らずの行為としかいえないのです。国民に対しても、世界に対しても無責任な行為です。

 日本国民も世界市民の多くも、脱原発を望んでいます。その望みに沿った選択を伊方原発50km圏内がすれば、伊方の名前は全国と世界に広がり、さらに注目を集めるでしょう。脱原発をした地域として地域全体を売り出すことも、脱原発をした地域の農林水産物や商品として付加価値を付けることもできます。最初はそれで物が売れるはずです。リピーターがつくかどうかは、その商品やその後のサービスの問題ですが・・・

2)      複合的ブランド化
 国は森林経営計画に基づいた大規模林業や農業にしても集約的大規模農業を推進していますが、地域経済のためには地域の特性が出せる小規模・多角的林業や農業、漁業の方がいいのです。

山の場合、従来の林業だけでなく、山菜や山野草も商品になります。山の環境を整えれば登山や森林セラピーの山として観光もできます。ヨーロッパでは自然の森林が残っているのはスイスくらいだと言われています。南予地域の山はヨーロッパ人にノスタルジアを感じさせる山だと聞きました。水の豊かさは世界の奇蹟とも言われています。原発事故の危険性のある地域にヨーロッパの人たちは来ないでしょうが、脱原発して森林をさらに自然豊かな物にしていけば、世界から観光客を呼ぶこともできます。

農漁業も農漁産物の生産活動だけでなく、六次産業といわれているように加工・販売まで自分たちでやればよく、この地域なら柑橘類やひじきなどの加工がいいでしょう。農家レストランや農家民宿などグリーンツーリズムの活動でも収入を得ることができます。農繁期などに都会や海外の人たちに来てもらい、農業を手伝ってもらう代わりに食住を提供して観光や交流をしてもらうこともできます。放射能汚染水の危険性のない海なら、漁業も漁や養殖だけでなく、海の案内人など観光業にも参加すべきです。

この地域の各市町が連携して企画すれば、修学旅行生の受け入れもできます。特に放射能に汚染されている東北・関東地域の子どもたちの受け入れを積極的にするべきです。修学旅行だけでなく、東北・関東地域の子どもや家族の長期保養体制も整えるべきだと思います。
 また西予市のジオパークのように、伊方原発50km圏内と南予一帯を自然パークにすればいいと思います。それには各地域に自然保護官のような人を設置し、その人たちが自然を管理しながら生計をたてられる仕組みをつくる必要があります。

3)住民増加の努力
福島第一原発事故の後、本当に求められているのは安全な空気と水と大地と食料です。放射能汚染を気にしながら生活をしている人は多くいます。この地域が、放射能の危険性がない住みよい地域となれば、移り住みたいと思う人たちは少なくないでしょう。

空き家や空き店舗、耕作放棄地を把握して、所有者に貸すか売るかする気があるかどうかの確認をとり、貸す気のある場合は、空き家などは所有者の了解を得て、都市部の人でも生活しやすいように行政か委託団体が改修して、貸し出すのはどうでしょう。いきなり移住とかはないでしょうが、季節的別荘のような使い方をしてもいいし、季節限定の出店や週末農業のような使い方があってもいいのではないでしょうか。そうやって地域と交流していくうちに移住してくれる人もでてくるかもしれません。そういう人たちには、売ってもいいと確認がとれている家を紹介することができます。

また、学校給食が安全・安心でおいしければ、それが地域の学校の目玉にもなりますし、子育てしやすい環境を整えれば、子ども連れの家族が移住してくる可能性もあります。

 ですが一番大切なことは、地域が他者に対して開かれているという事です。言論の自由や人権や民主主義が保障された地域であるということです。ある事柄に対して発言することがタブーだったり、悪口ばかり言う人が多かったり、威圧的・過干渉な地域には人は集まりません。まずは自分たちが住みよい地域にすることが、住民や交流人口増加につながると思います。

4)情報のグローバル化
 食糧やエネルギーのグローバル化はよくありませんが、情報のグローバル化は今後とも勧めていくべきことです。今はどんな田舎にいても世界の情報を入手し、その国々の人たちとつながることができます。
 愛媛県の伊方原発50km圏内と南予地域は、日本の中でも僻地に入るでしょうが、ここでの取り組みは世界に発信することができます。自分たちの地域を「伊方原発50km圏内」というのではではなく「脱原発した伊方町50km圏内の町です」と世界に紹介できる地域になれればいと思います。

2 件のコメント:

  1. 補足です。石炭から石油に代わるとき、産炭地支援特別措置法が産炭地のために制定されました。いまは政府は全くその気がありません。このような法律の制定も同時に求めるべきだと思います。

    返信削除
  2. 人間と地域のあり方を根本から考えた総合的で現実的な素晴らしい提案だと思います。この提案を核としてさらに広がりのある総合プランに発展させ、圏内自治体の総合計画に結実していくことを願っています。昨年5~7月四国遍路で歩いた時、南予地方も通りました。海も山も豊かな自然で住民の皆さんも穏やかであたたかなところでした。脱原発のまちづくりへエールを送ります。

    返信削除