2014年3月22日土曜日

台湾の学生たちによる国会占拠は、民衆革命の前夜ではないのか

レイバーネットで台湾の学生たちの宣言文と、その解説がありました。是非、みなさんにご紹介させてください。台湾から招聘した洪申翰さんの講演から大きな刺激を受けていた私たちは、今回の国会占拠という行為の中に周到に思索し、準備されたことを思い知らされています。

これはまるで故西川長夫が描いた『パリ五月革命 私論――転換点としての68年』(平凡社)で出てくる場面のデジャブ―ではないのか、と私は写真を見て感じました。国会内を占拠した人の周りにこれだけ多くの人たちが彼らを支持し、そして自由に討論をしている姿が彷彿されます。


レイバーネットの解説も穏当です。アジるのでなく、今起こっていることがどのようなことなのかを考えようとしているのでしょう。しかし私はこれは台湾だけの特殊な問題でなく、市民の意見が反映されないと多くの人が不満を持ちつつ、権力者の動向に今ひとつ対抗する手段とそれを実行する思想をもたない日本の状況にオーバーラップして考えます。現在の閉塞した状況、何もかも法律に基づいて既成事実を積み重ねられてきている現実に対して抵抗できない現実。これをどのように打破するのか。


この現実の中には、台湾でも日本でも、そして韓国においても原発が稼働しており、その恐怖の前で人々が生きているという現実があります。もはや原発反対運動は一国内の運動で留まることはんまいでしょう。同じく、それは格差の問題、社会に根付く差別の問題と別には語れなくなってきているということを示しています。

私は、反核、反差別、反植民地主義の視点なくして反原発運動は闘いきれないと主張してきましたが、ようやくそのことが可視化されてきたように感じます。  崔 勝久




〔レイバーネット国際部・I〕

台湾の労働者にも大きな影響をおよぼす中国と台湾のサービス貿易協定の締結に対して、与党国民党の強引な議事運営に対して、青年を中心に数百人が台湾の立法院(国会)になだれ込み、議場を占拠するという闘争が3月18日から続いており、サービス貿易協定締結の撤回および「サービス貿易協定監督法」案の制定を求めています。

議場占拠中の画像は台湾の社会運動ウェブサイト「苦労網」などでみられます。 3/18 http://www.coolloud.org.tw/node/77804 3/20午前 http://www.coolloud.org.tw/node/77815 3/20夜(場外のコンサート) http://www.coolloud.org.tw/node/77832 このサービス貿易協定には、グローバル大国化した中国の大企業による台湾上陸に脅威をもつ広範な社会団体が反対や審議の慎重性を求めています。反中国的意識もあるようですが、運動の中心はサービス貿易協定など自由貿易協定は、大企業の利益だけを優先するという立場です。がんばれ!加油! 以下は、3/18議場占拠の場で発表された宣言と、それを見た香港の活動家の論評です。 ===============
3・18 青年たちの立法院占拠  ブラックボックスのサービス貿易協定に反対する行動宣言 私たちは十年後も台湾青年が22K(※)の生活を送らなければならないなんて考えたくもない!台湾は、コーヒーショップ、個人企業など、青年のベンチャードリームを実現し、一生懸命頑張れば「社長」になることができるベンチャー天国だと信じています。 サービス貿易協定の影響評価を行った研究者によると、台湾は64項目のサービス業のみを開放すると宣言していますが、この64業種には雑貨店、地元ファーストフード店、パン屋、文具店、理髪店、広告デザインなど、私たちの衣食住、生老病死すべてが開放リストに含まれているのです。
将来、台湾の中小零細企業は、資本が豊富で上流から下流までが一体となっている中国企業の台湾上陸に直面することになるでしょう。会社勤めか小農民か労働者か商人かにかかわらず、その生存は脅威にさらされるでしょう。個人の生活だけなく、ポータルサイトやウェブホスティング、印刷や出版経路など、わたしたちの言論の自由にとっても深刻な脅威となります。
サービス貿易協定への反対は、「中国なら何でも反対」ということではありません。サービス貿易の最大の問題は、自由化が大資本にだけ利益をもたらすことにあります。巨大企業グループは無制限に台湾海峡を乗り越えてきます。海峡をまたいでやってくる企業グループは台湾の中小自営業者を脅かすでしょう。中小企業のベンチャー天国だと誇っていましたが、将来は海峡を渡ってくる資本によってひとつひとつ合併されるでしょう。


サービス貿易協定の本質は、WTO、FTA、TPPとおなじです。この国家間の協議は、どれも国家が人民の保護を放棄することにあります。サービス貿易協定は、中国と台湾が統一するか独立するか、統一派か独立派かという問題ではなく、少数の大資本家が無数の小農民と労働者と小商工業者を飲み込んでしまう階級問題であるし、さらにはすべての台湾の青年の未来を過酷なものにする生存問題なのです。

わたしたちは、馬英九をトップとする少数の執政者が国会を人質にとって、粗暴にサービス貿易協定を通過させて台湾の未来を売り渡そうとしていることに強く抗議します。 3月17日、国民党の張慶忠議員は、混乱の中でマイクを奪い取って、わずか30秒で会議の決議を宣言してこういいました。「出席人数52人、法定数に達していることから開会する。議論事項は、海峡両岸サービス貿易協定の審査期限の3か月を超過しているので、法に従ってすでに審査済みとみなし、立法院[国会]に付託するものとする。散会。」これは、多くの人々の願いであった「逐条審査」をするという決議を裏切るものです。もし国民党が青年とすべての民衆に影響を及ぼす協定をこのように粗暴に採択ことができるのなら、国会による監督を受けることもなく、国会の実質審議もないのであれば、台湾経済の自立性にさらに深刻な影響があるとされる自由経済モデル区や物品貿易も、このように取り扱われることになるでしょう。台湾の未来はこんなふうに乱暴に扱われてはならないのです。
わたしたちはチャレンジする意思がないのでなく、競争にもさらされたくないも思っていないことを強調しておきます。私たちは、このような不公平な競争にさらされたくないだけであり、将来の生活が少数の特権集団らの手に握られたくないだけであり、私たちの仕事が大企業家や海峡を越えてやってくる資本家によってコントロールされたくないだけなのです。わたしたちの未来は私たちが決めたいのです。私たちは公平に発展し競争する環境とチャンスを青年に与えるべきだと考えます。 青年友人のみなさん。これら大企業グループ、大企業、少数の為政者らによる海峡を跨いだ政財支配集団は、いつでも台湾を投げ捨て、安い労働力を求めて世界中を駆け巡ることができるのです。かれらは吸血鬼と同じように、ある国の青年の血と汗を吸い尽くしたと思ったら、ほかの国の若い肉体を求めはじめるでしょう。台湾の青年のみなさん。台湾は私たちが生活する土地であり、生活を維持する場所です。この不公不義の経済貿易協定を阻止し、制度を踏みにじって強権復活を狙う政党を阻止するため、どうか私たちとともに立ち上がってください。どうか私たちと一緒に私たちの台湾を守ってください! 青年の訴え 1.私たちは人民を代表して国会を奪回します 2.野党は私たちの行動に参加してください。 3.馬英九は国会にきて民意に応えてください。 ※訳注 22Kとは2万2000元の賃金という意味で新卒者の初任給水準の調査結果。法定最低 賃金1万8780元を若干上回るだけの低賃金というニュアンスがある。 ============================ ◆ 自由貿易と保護主義を超えて-立法院占拠から考える Wing(左翼21) 台湾民衆による立法院占拠を見て、私が思い起こしたのは「オキュパイ・セントラル運動」(※)ではなく、1999年のシアトルの反WTOデモと2005年の香港の反WTOデモだった。なぜなら中台サービス貿易協定反対とWTO反対は実際には同じものであり、資本家と政治家が世界を分割することに反対する運動だからだ。WTOの各協定、中国と香港のCEPA(香港・中国経済貿易緊密化協定)、中国と台湾のECFA(経済協力枠組み協定)のどれであっても、それらが実践する自由貿易の原則は、大企業に経営の自由を提供することを主軸としている。それによって庶民が生活水準を向上させることはまったく難しい。 自由貿易は民主的ではないし民生も損なう 庶民の民生を損なうという以外に、これらの自由貿易条約は往々にして密室での協議によって成立する。庶民だけでなく、選挙で選ばれた議員でさえもその交渉過程を監督することができない。CEPAしかり、ECFAしかり、TPPしかりである。おもしろいのは台湾では国民党だけでなく、中台サービス貿易協定に反対している民進党もTPPに参加したがっている。それゆえ、民進党のサービス貿易協定反対という姿勢は、実際のところ庶民の生活を守るというところから出てきたものではないのである。 立法院占拠は階級の戦い 香港という資本家のパラダイスに戻って話をすれば、自由貿易に対する異議はもっと少ないものとなる。CEPAによる中国・香港自由往来政策に反対する多くの人々もこれを契機に自由貿易と自由市場による被害を顧みるという意識はない。中国から香港に買い物にくる観光客を敵とみなす一方、暴利をむさぼり労働者を搾取する資本家のことは気にせず、目下の経済構造の中心的矛盾についてはさらにあいまいなままである。台湾のサービス貿易反対の民意に反中感情があることは確かだが、いま議場を占拠している社会運動の活動家たちが掲げているスローガンは反中の感情をあおる意図のあるものは見受けられない。黒色島国青年陣線の「3・18 青年たちの立法院占拠 ブラックボックスのサービス貿易協定に反対する行動宣言」ではもっとはっきりとこう説明している。 「サービス貿易協定への反対は、『中国なら何でも反対』ということではありません。サービス貿易の最大の問題は、自由化が大資本にだけ利益をもたらすことにあります。巨大企業グループは無制限に台湾海峡を乗り越えてきます。海峡をまたいでやってくる企業グループは台湾の中小自営業者を脅かすでしょう。……サービス貿易協定の本質は、WTO、FTA、TPPとおなじです。この国家間の協議は、どれも国家が人民の保護を放棄することにあります。サービス貿易協定は、中国と台湾が統一するか独立するか、統一派か独立派かという問題ではなく、少数の大資本家が無数の小農民と労働者と小商工業者を飲み込んでしまう階級問題であるし、さらにはすべての台湾の青年の未来を過酷なものにする生存問題なのです。」 別な言い方をすれば、今回の占拠行動の中心となった青年たちははっきりとこう喚起しているのである。「これは階級の戦いなのだ」と。実際、台湾にしろ香港にしろ、サービス貿易協定が締結されれば、その域内では勝者と敗者が生み出される。われわれはずっと自由貿易の反対は鎖国あるいは保護主義だと聞かされ続けてきた。しかしこの「自由貿易」対「保護主義」の枠組みは、どちらも一国内には利害関係あるいは階級矛盾は存在しないという間違いの上につくられたものである。つまり、香港の一般市民が中国からの観光客によって公共交通や繁華街が人であふれかえっていることに憤っているときに、一部の経営者はそれによってぼろもうけしているのである。 もうひとつの貿易の構想 それゆえ、自由貿易反対は保護主義提唱とイコールではない。われわれに必要なのは民衆にとって真に有益な貿易である。2004年、ベネズエラとキューバはボリバル貿易同盟(ALBA)を発起した。この同盟は自由貿易協定ではないだけでなく、多国籍資本に対抗するという重要な原則が最初に打ち出されている。たとえばベネズエラはキューバに石油を提供し、キューバはベネズエラに医療人員と教員を提供する。 ラテンアメリカの左翼も完全ではなく、ALBAにも多くの欠陥があるだろう。しかし少なくともALBAは「自由貿易」ではない「貿易」の可能性をわれわれに提示している。このような「自由貿易」と「保護主義」の枠組みを超えた想像を、庶民の福祉に関心を持つ者は認識すべきだろう。 ※訳注 セントラル占拠運動とは、香港の香港の中心街セントラルを非暴力でオキュパイ(占拠)して、2017年に行政長官と議員の完全直接選挙を要求しよういう訴え。2013年初めに提起され、学者などをふくむ多くの賛同を得る一方、違法な闘争手段に訴えるべきではないという穏健民主派や親中派から批判がでている。


2 件のコメント:

  1. 私たち世界市民は、台湾での出来事に無関心にはいられません。
    私たち世界市民は、一部の資本家や政治家の餌食に絶対になりません、利用もされません。
    私たち世界市民は、反原発、核の破棄の為、民衆の力を結集し行動します。
    私たち世界市民は、世界の友と結び合い、未来の責任者である若者と市民を中心の、世界の断絶ではなく融合を、偉大なる人間本来の善の心を優先した、世界連邦への新たなる民衆運動を推進します。

    トルコより

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  2. 平井 啓三さんがあなたのリンクをシェアしました: 「なるほど。一方的なグローバル化に対する反対行動なんですね。よくわかります。日本の市民も安倍の対米追従の行動に疑問を提示しないと、ただでさえ貧困が進んでいる中での増税で自分たちの首を絞めるのに、命の危険につながると思います。反知性主義が席巻するなかで、マスメディアの流布する情報の中から必要な情報を選択し、自分の置かれた状況を把握する。そして、信頼できる人たちと一歩ずつ、できる手段でいいから、社会を自分たちの手に取り戻す行動に出ていく、それが必要でしょう。」

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